大好き河津町!vol.20

踊子歩道の丸太打ち階段

2月23日、午前7時。本日は宗太郎林道の駐車スペースからスタートする。
一般車両通行禁止のゲート前、普通乗用車2台ほどが停められるこの駐車スペースに到着したのは午前4時のこと。それから仮眠を取っていた。

車から降りる。

気温は10度ほどある。寒さはあるものの、さほどキツいものでは無い。

ウエーダーを履き、上半身にはフローティングベストを纏った。
中には吸湿発熱のインナーとフリースも着込んだ。

踊子歩道の丸太打ち階段を登る。

丸太打ち階段を上がってすぐのあたり
途中、落石注意箇所あり
橋は渉らずに潜る。

平滑の滝下に向かう。

本日入る現場は平滑の滝下と呼んでいるところだ。正式名は「河津本谷第2号コンクリートえん堤」という。同堤体より上流1キロも無いところに「平滑の滝(ひらなめのたき)」という滝があるため、このように勝手に呼んでいる。

銘板によれば昭和55年建の透過型コンクリート堰堤で、林野庁系の治山ダムである。林野庁系といえばこれがかなり山奥の方にあるかと捉えられそうな所であるが、この平滑の滝下より上流部、※河津川はまだまだ長い。

国道414号線、新天城トンネルを河津町側に抜けると、新寒天橋もしくは「二階滝」バス停付近で河津川を見ることが出来るが、同川はこの付近より北東方向にさらに長くのびており(伏流区間含め)、その発端は賀茂郡東伊豆町との自治体界にまでさかのぼる。

地理院地図によれば、その自治体界境にある山の頂「青スズ台」の標高が1236.1メートル、そこからだいぶ降りて平滑の滝下が約400メートルなので、その標高差はおよそ800メートルもあるということだ。
そしてさらに水源として加わるのが前述の国道414号線より東側に見上げる斜面。その山の頂は「登り尾」といい、こちらは1056.8メートル。

周囲の高い山々によって平滑の滝下は年中つねに水の安定供給を受けている。

※過去エピソード同様、伊豆市を流れる本谷川と区別する意味で河津川としています。正式には本谷川。

銘板

午前中のゲーム

平滑の滝下には丸太打ち階段から20分ほどの歩きで到着した。

水は堤体の表面を薄く覆う程度、白い泡を立てながら放水路天端ほぼ全面より綺麗に落ちている。
これから温かくなるにつれ、水量はさらに増えていく一方、放水路天端を通過する水量は左右で不均一になったり、角度が付いてななめ方向に落水したりすることが経験上わかっている。

このくらいが見ため的にも一番綺麗だ。

そして落水によって生じるノイズも静かすぎず、うるさすぎず。音楽をするにはちょうど良い塩梅である。

直感的に選んだ立ち位置は堤体からおよそ60ヤードの地点。いつもより長めに取った。

風は向かい風で時折3~4メートルほど吹いて、アベレージでは1メートル以下。

メガホンをセットし声を入れてみる。

堤体全景(午前8時撮影)

美しい見ために反して

・・・。響かせ方がわからない。
堤体周辺の美しい見ために反して音楽的に楽しめていない。というか・・・、

そんなのは今日に始まったことでは無い。

というのが事実。
この堤体には初めてきて一目惚れして、しかしうまく響かせられず、だが何度もここに通って来ては歌っている。

いままでは何となくここに来ることそのものに価値のようなものを見いだしてやって来たが、やはり響きのことに関して単独に評価した時、まだまだ真剣みが足りなかったということを自覚する。

さて、どうしたものか・・・?

悩む。

足が冷えてきた。石の上に立って歌っていたが、さきに水に浸かってしまったウエーダーの靴底フェルトが気化熱作用で足先を冷やしてきた。

いったん退渓しよう。

立ち位置より下流側を見る

カンヅメを決め込んで・・・、

午後12時、いったん駐車スペースまで戻って昼食を摂る。昼食は来る途中に笹原のファミリーマートで買ってきておいたものだ。

なんて言ったって今日は2月の下旬。しかも祝日である。
天皇誕生日。
国道414号に出るべきでは無い。出てもいいがこれは確実に・・・、ハマる。

渋滞。

今年の河津桜まつりの入客状況は近年稀に見る活況だ。どうやら感染症の危機意識が本格的に解放されるなか、不安を解消し、心に寄り添うものとして花を見るという行動に出た人が多いようである。

それも日本という国でトップの人気を誇るさくらの花。

さらに静岡県含め、全国の都道府県で行われている旅行支援が3月31日終了であることも大きい。クーポンの使用期限から逆算して旅行先を決めた時、河津桜まつりの(観光地間の)競争力が偶然にも上がったという感じがする。

今頃、田中や笹原では観光客とそれをもてなす河津町民、業者で大盛り上がりのことであろう。

・・・。

閑散とする宗太郎林道。

夕方に備えて寝ることにした。

カンヅメを決め込んで多めに用意。

午後のゲーム

午後3時に起きて再び平滑の滝下へ。

午前中に比べて風が弱くなっている。また、堤体の水裏(下流側)が太陽の直射を受けて光っている。太陽の熱で気流が発生したりすることは音を鳴らす上では好都合だが、見た目が良くない。

そして、堤体をただ眺めるだけならこれでもOKだが、演奏行為に関してより高い集中力を求めている関係上、さらに堤体前は暗く保たれているほうが有利だ。

直射が離れてくれるのをしばし待つ。

午後3時50分。いよいよ、水裏の直射が無くなったところを見計らい声を入れてみる。

午前中同様、鳴らない。

左岸側の崖が気になる。これを意識すれば簡単に事がうまくいきそうに思えるが、そうでも無い。
今度は対岸の右岸側を意識して声を入れてみる。

あぁ。

あの木はイロハモミジか?あぁ、あのイロハモミジの樹冠のもうちょっと下の方かな・・・?

鳴っているのがわかる!!

堤体全景(午後3時36分撮影)
堤体全景(午後3時49分撮影)

来て良かった。

以降、この日は日没まで歌を楽しんだ。というか、

やっとここで楽しむことが出来た・・・。

反省点を上げると、これまで意識していた左岸側はあまり響き作りには向いていないということ。固い固い崖で響きが作れるかな?なんて軽い気持ちで甘く考えていたが、どうやら正解はその対岸の右岸側にあったようである。

崖で響きがカンカン作れるような堤体は他にあるため、この場所もうまくいくかと思って同様に挑んでいたが、そのような先入観は逆に響き作りをダメにしていた。

どうすればうまく響かせられるのかを考える上で、作戦のようなものを立てることは多くの場合に必要なことであるが、それに執着して、深く思い込むほどまでに決めつけるのは音楽を良くない方向に導き、また、可能性を失うということがわかった。

そして、ようやく楽しめるようになって思ったのが、現場に対する評価を自分自身で勝手に低くしていたということ。

まだまだ自分が未熟であるということ。

良かった点があるとすれば、この日自分がこの場に立てたこと。生える木々のうち、落葉樹の葉がほぼ無いという条件下うまれた響きのポイント変更によって成功体験を得ることが出来た。これで同所に次回以降来る時、いいイメージで入ることが出来るし、この日と自然条件が異なるシチュエーションでまたその日その時の再評価が出来る。

来て良かった。これに尽きる。今日は・・・。

いろいろと発見の多い砂防ダム行脚となった。

午後は微風に変化した。
堤体までの距離
ほぼ真西の堤体は午前中がおすすめ
暗くなるまで挑んだ。
退渓後は桜まつりに寄ってみた
踊子温泉会館うら
舘橋
浜橋の近く
満開の河津桜だった。

梅雪

そば処ささや

2月14日は修善寺へ。時刻は正午過ぎ。まずは食事処へ。

ここへ入るのは初めてだ。今まで幾度と無く店の前を通り過ぎてきたが、なぜだかここを左に折れることは無かった。大きな看板を構えたそば屋だが、戸田峠に通じるこの県道上、団体向けかなんかの雰囲気があって個人客である自分には向いてないんじゃないかと思い遠慮があったからだ。

それに、道はこのさき数百メートル行ったところにある「修善寺虹の郷」前までの区間、わりと急な登り坂である。急な登り坂を前に車のアクセルペダルをさあ踏もうかという時に、ふわっ。と現れるものだからいつも通り過ぎていた。

入ったことの経験が無かったとして今後別に困ることは無いが、過去のエピソードではこの周辺にある修善寺もみじ林や修善寺虹の郷のことについて、ちょっと偉そうにあれやこれやと講釈を垂れたような記憶が無くも無い。

せっかくの機会だからと今日は立ち寄ってみることにした。

そば、うどんの他、わさび丼も食べられる。

テラス席へ

店はちょうどお昼時ということもあり混んでいた。それでも入り口に置かれた記名札には誰の名前も無いような上京ですぐに中に通された。
カウンター席はあるものの椅子が用意されていない。
推察であるが、感染症予防のために撤去したか、もともと用意が無かったのであろう。
「一人です。」と告げると、こちらにどうぞとテーブル席を案内された。

いやいや一人でテーブル席(しかも4人掛け)など申し訳ないと思い、代わりに外の屋根下のテラス席を提案してそちらに腰掛ける。

接待の方が持ってきてくれた湯呑みが温かい。気温は9.5度ほど。同地は修善寺温泉街よりもさらに標高の高い場所にあり寒い。まあ、寒いには寒いが逆に言えばそれが山らしくていい。山上のそば屋の屋外テラス席で、新鮮な空気ともども栄養分を補給できるなんてありがたい。

食事を済ませ代金を支払い、車をいったん別なところに置いて再度店の前へ。なにやら店のわきに更に上に通じる階段を見つけたからだ。

椎茸そばとてんぷらのセット
店のわきに見つけた階段

修善寺梅林

修善寺梅林が有名であることは以前から知っていた。しかし、ここのところ静岡県東部地区の観光客の入客増の要因になっている河津桜や、競合するさらに早咲きの土肥桜や熱海桜で頭の中は桜モードになってしまっていた。

桜と前後して開花する梅の花のことなどすっかりどこかに飛んでしまっていて、今日もどちらかといえば観光のホットスポットを避けて修善寺に来たつもりでいた。

そば屋からほど近い大型バス専用駐車場から団体の観光客が列になって歩いて来た。先頭を歩くバスガイド風の女性は何食わぬ顔をして店の横を通り過ぎて行き、観光客もそれに続く。

通行証はどうやら要らないようである・・・?!

観光客を追って階段を登った。

観光客は帰り道に何か買って帰ったのかも・・・。

つぎつぎに

梅林には階段の始点(画像)から7分ほどの歩きで到着。登り専門になるのは最初のコンクリート階段の1~2分ほどで、あとは平坦な砂利道を歩く。

梅林に実際到着したときは一瞬気がつかなかった。ここからが梅林だという看板が到着を教えてくれたが、その看板の近辺には梅の花が咲いていなかったからだ。で、よく見ると奥の方に白やピンクの色彩が確認できる。

梅林全体満開とはいかない状況・・・。

花が咲いている木がちらほらとあり、それより大多数は音沙汰ない。それでも咲いている木を見つけては近寄って鑑賞する。桜のような鋭さをともなった開花ではないが、こちらは丸くふんわりとしていて温かみがある。

白やピンクやその中間色の花を楽しむ。梅林内に無数に植えられた木はこのあと時間を追ってつぎつぎに開花をするであろうから楽しみだ。

まだほとんど咲いていなかった。
意図的に早咲きと遅咲きを混ぜてるのだな。きっと。
寒いのによく咲いてるものだ。

橋へ

梅林散策を終えていったん修禅寺に立ち寄ったのち(散策で手がキンキンに冷えてしまい、立ち寄った。修禅寺の手水は温泉で温かいのだ!)堤体に向かう。

堤体は修善寺川第一堰堤。冒頭立ち寄ったそば屋前から戸田峠方向へ6キロ行くと左手に「広域基幹林道達磨山線」の看板があるのでそちらに折れる。折れたところから1キロほど進めば「三ツ石橋」の登場だ。

朱く塗られたガードレールの欄干がついた橋で、橋の中央から西の方向を向くと修善寺川第一堰堤はある。

橋を架けた者が意図したこと、橋を朱く塗った者が意図したことはわからないが、橋と堤体両者は互いに遠すぎず近すぎずの距離にあり、視覚的に一つのセットとして楽しめるように設計されているのではないかと個人的には思っている。

両者の銘板によれば修善寺川第一堰堤が昭和42年。三ツ石橋が昭和50年。あとに出来たほうの三ツ石橋が修善寺川第一堰堤ににじり寄っていて、その橋台コンクリートは堰堤下流の側壁護岸として浸食防止の機能を兼ねている。

機能的なWin-Winが得られるこういった堰堤と橋のセットというのは日本全国各地に見られると思うが、ここ静岡修善寺の三ツ石橋は谷の方角や山の斜度、そして先人たちの植えていった針葉樹、広葉樹のおかげもあり非常にハイバランスで良い景観をもたらしている。

架けてみたら・・・、なのか?
架ける前から!
なのかは不明だが、橋の欄干を朱く塗ってくれた方には僭越ながら賛辞と感謝を贈りたい。

こんな素敵なところを作ってくれてありがとう。

三ツ石橋
三ツ石橋から修善寺川第一堰堤。
北又川

レインコート

雨が降っている。

車の中で待機した。

しばらく待っていると雨が雪に変わってきた。
ラッキー!
濡れるのと、積もるのでは気分が違う。雪の方がやりやすい。それに季節限定で特別な感じがする。

レインコートを上下に着込み、インナーには電子メトロノームをセットした。これは最近ハマっているゲームのやり方で、チクタクいうメトロノームの音を聞きながらアカペラで歌う楽しみ方だ。

車の中から抜け出し歌ってみる。

音は渓畔林というよりはさらにその外側にある針葉樹の林に当たって帰ってくる感じで響く。口先50センチで失速するか、スギ・ヒノキまで届いて帰ってくる感じ。その距離まで音が届くようにメガホンを使用していることは効果的であると思った。

コンディション的には無風で悪い状態にあるが、強制的に音を送り込んでやることである程度は響きが得られたと思う。
北又川の降水(雪)による増水はあまり気にはならなかった。橋の上から挑むことでノイズ発生源からの距離が長く確保されるからだ。

この日は空が暗くなってきたところでゲームセット。再度キンキンになった手をカーエアコンで温めながら帰路に就いた。

無風だとキツい。
堤体は西北西向き
三ツ石橋から修善寺川第一堰堤までの距離
三ツ石橋の橋上より歌う。