6月16日は賀茂郡東伊豆町を流れる白田川に。
時刻は午前6時半。まずは国道135号線白田橋。
白田橋近くの堤防柵に災害時用の表示看板を見つけた。描かれた文字には「ここの堤防高は海抜16.8メートル」とある。海が近い。
さて本日はこの海抜16.8メートルの地点から車に乗り込み、白田川(同100メートルのあたりから名称変わって堰口川)に沿って北西方向に走る。標高400メートルあたりの地点までが車での行程となり、以降は林道を約1.5キロほど歩いて堤体に向かう。
天気は快晴。風も山の方から3.3メートルほど吹いて期待感が持たれる。
水はここのところのグズついた天気により増水気味ではあるが、本日はここから比較的長い行程を経た先にある上流部に入るため、その点についてはどうにか解決されるであろう。
近くのセブンイレブンに寄ってトイレを借りたあと水を買い、車に乗り込んだ。
期待感
午前7時すぎ、気になることがあっていったん車をおりる。
場所は標高200メートルを過ぎたあたり。針葉樹林に包まれるようにして続いていた林道の景色が突然開かれた。
目の前に飛び込んできたのは、広く伐採された土地と、今走っている林道から堰口川の河原へと降りられるコンクリート打設のスロープ。
ここは2年ほど前から続く、堤体の工事ヵ所だ。堤体名は堰口川第6堰堤。樹木の伐採、スロープ造成、堆積地の土砂の掘削を経て、今後は堤体の肉厚増しの工事が行われるのであろう。
遠くに小さく見える堰口川第6堰堤は、水通しの穴より勢いよく棒状放水しており、しかもその水が太陽の直射日光を受けていて、なんとも見るに無残だ。
この堤体の渓畔林となる針葉樹の木々も広く伐採されていて、堤体前空間としての魅力をかなり大きく失ってしまっている。
そのまま放っておけば美しいものにわざわざ手を加え、マイナスに転じてしまっているということが非常に惜しまれる。
堰堤というものに砂防の機能が担保されることは非常に重要であるということはわからなくも無い。しかし、これは一般市民が広く訪れ“見る対象”であると同時に、今後はレクリエーション施設として有効活用していくべきものだと考える自身にとっては、現状の段階をただ見ているというだけという立場ではあるものの、まだまだ改善の余地があるのでは無いかと考えられ、落胆の思いとともに密かに期待感を寄せている。
どうにか・・・、どうにか・・・、と願うこと。
それはみんなが遊びに来たくなるようなワクワクする河川構造物(堰堤)への生まれ変わりだ!
渡渉は2点。
ふたたび車に乗り込む。林道をさらに奥地へと進み7時45分、ひとまず車での目的地に到着。
早速、車をおりて入渓の準備をする。
入渓の準備を済ませ出発。そして降車地点からしばらく歩くこと40分、目的の堤体に到着した。(堤体名不明。)渓を確認する。
海抜16.8メートルの白田橋付近よりずいぶん上流に上がってきたつもりではあったが、これくらいではまだまだ源流の域には来られていないということが水量の多さからわかる。
川は堤体からの落水、そのあと堤体前の空間、ともに勢いよく流れている。
強い流れに足を取られないよう、チャラ瀬状に浅くなった区間を探し出し、渡渉する。渡渉時は必ず登山用のポールを使って体を保持し、片足+ポールの常時二点支持を意識しながら歩を進める。
流されるリスクが増幅するのは、片足一本だけで立った時で、この状態で上流からの強い水圧を受けてしまうと、その水圧に耐えきれなくなって転倒してしまう可能性が高まる。
片手に握ったポールを一本の足の代わりとして使い、常に片足とポールの二点が川底に着地している状態を作りながら歩いていく。
この上ない暗がり
無事、対岸にたどり着くことが出来た。
渡渉は慎重にやらせてもらったが、ここからはやや急ぎ気味に支度をする。
風速を計測。風は断続的に吹いて1.9メートルほど。つづいて堤体からの距離を計測。距離はおよそ56ヤードほど。
自作メガホンをセットし声を入れてみる。
声は非常によく響く。
渓は大型重機のタイヤサイズくらいの石がゴロゴロしているが、その石の数自体はそれほど多いわけで無く、また全体的に河床勾配がゆるやかだ。立ち位置の前後にいくつか水の落ち込みが見られるが、増水気味なせいかあまり目立ってノイズを発生させている感じも見受けられ無い。
響き作りの障害となるような要素は意外と少ない様子。
また、声を響かせる側としては両サイドの壁が非常によく掘れていて、しかも鳥瞰図上ヒョウタン型に波打っている面が効果的にはたらいているのか、音が大変よく響く。
渓畔林もイヌシデ、イロハモミジ等見られるなか最も多いのはアラカシで、高木層の及ばなかった光のすき間をヒサカキ、イワガラミが埋める。したがって、上空からの光の遮断能力は相当に高く、この上ない暗がりを堤体前に形成している。
運が良かった
午前10時、堤体水裏を落ちる水の大部分を直射日光が照らすようになってきたためタイムアップ。
およそ1時間半、堤体前で過ごしたわけであるが、その間にしっかり歌が楽しめたことが何よりであった。
今回入った堤体はほぼ北向きであるため、より早く入渓することによって、さらに暗い空間において音楽を楽しむことが出来るであろう。反面、早起きがあまりに過ぎるとメンタルが追いつかず、音楽に“ノル”ことが出来にくくなってしまうのは難しいところだ。
部活動の朝練をしに来ているわけでは無いので、このあたりは自分自身のコンディションとよく相談しながら決めたいところであるが、今回はそのあたりの時間の調節がうまくいったような気がする。
また、水量に関して言えば今回はギリギリ荒れすぎない程度の条件で入渓出来、運が良かった。水の流れが横方向に大きくなる分には意外とノイズは大きくなりすぎないのだということが分かったし、比較的強い流れの中で登山用ポールを用いた渡渉の練習が出来たことは良い経験になった。
今回の経験をまた次回以降の堤体選びの参考にしていきたい。
堰口川の朝ゲームは大成功のうちに終わった。