福井県小浜市・大飯郡おおい町

今回は福井県小浜市・大飯郡おおい町でのエピソード

9月2日午前10時半、まずは小浜港川崎の岸壁へ。

遊覧船の乗船券はさきほど購入したばかりだ。午前9時半の始発便はすでに出港済みということで第2便の11時発の船を待つあいだ船の写真を撮ったり、岸壁で釣り糸を垂れる人の様子をうかがうことにした。

木で出来た自作であろう竿掛けに乗る長さ5メートルほどの磯竿と大型のスピニングリール。道具は随分と年季がが入ったものだ。そこから深い緑色の海に向かって垂直に消えていく釣り糸。何を狙っているのであろうか?

となりの人と談笑しながら竿先を見つめる釣り人。

Tシャツにサンダルという出立ちで、その人のものかは不明だが背後には1台のママチャリが置かれている。

岸壁は遊覧船乗り場の桟橋近く。

船への乗船を待つ観光客。釣り人。1台のママチャリ。

ともに一つの港の風景として同居する。

ふと、桟橋のほうを見ると乗客が船に乗り始めていた。鞄から乗船券を出し、入り口ゲートにて提示する。

桟橋を経て船に乗り込んだ。

いざ、出港!

ビュービュー

遊覧船は定刻通り午前11時に出港した。

船は座席数42席。総トン数19トン。航海速力は24ノット(時速約44キロ)。高速船だ。

船酔いはしない自信があったが、ブリッジからの立ち見を選択。揺れは座席室よりも大きくなるが、風をさえぎる遮蔽物が無いため船酔いしやすいかどうかということに関して言えばこちらはデメリットばかりでない。

なんて思っていられたのは出航前でのこと。

風が強すぎた。

船が航走することによって生じる風に、とてつもない風圧を受ける。おそらくは小さな子どもや年寄りなどは立っていられないほどの強い風だ。軽くて小さな持ち物(スマートフォン)などはとくに注意が必要。誤ってその手を離れた折りには、ブリッジ上には残っておらず海に向かってダイブするであろう。

船は小浜湾北部に突き出た岬に向かって航走。

というより爆走!(感覚的には。)

ビュービューと風を受けながら、船が切り裂く海水の曳き波を見ながら、たしかにこれは非日常のアトラクションだと思いながら、手すりに掴まりつつ耐え続けた。

小一時間。船はようやく岩場付近に到着し、ドリフト(漂泊)をはじめた。

景色は断崖絶壁の岩壁。波の浸食作用によって出来たというその岩壁は雄大で、のみならずその上を彩る風衝樹形の木々も見事である。

断崖絶壁の岩壁と風衝樹形の木々をセットで楽しむ。

ややあって、船は再び前進をはじめる。そして次の名所が近づくと再びドリフトに切り替え,、鑑賞する間が与えられる。

船は航行とドリフトをくり返しながら進んだ。

途中、「蘇洞門」では近くの桟橋に着岸。乗客全員が桟橋に降り、おもいおもい写真撮影などに興じた。

その後は再び乗客を収容し、桟橋を出発。正午に小浜港へと戻った。

小浜市内。画像左寄りのグレーの建物が小浜市役所。
これも小浜市内。こうのとり大橋が見える。
巨大な岩壁を多数見ることが出来る。
蘇洞門近くでは桟橋より上陸させてもらえる。

南川を上流部へ

小浜港に帰港してからは周辺を散策。昼食は遊覧船乗り場反対側にある市場の食堂で摂った。昼食後は本日入渓する予定の河川をチェックするため「大手橋」へ移動。

大手橋から南川の様子をうかがう。

異常なし。

その後は、小浜郵便局、雲城水(名水百選)、台場浜公園などを散策したのち車に乗り込んだ。

午後2時、国道162号線に乗って南川上流部を目指す。途中、「名田庄大橋」にて自治体名は大飯郡おおい町へ。なおも南川に沿って進み続けると、午後3時に「道の駅名田庄」に到着。

五右衛門は「若狭小浜お魚センター」内にある。
五右衛門の刺身定食
大手橋と南川。大手橋は工事中であった。
小浜郵便局(名水百選の雲城水はこの建物のすぐ横にある。)
道の駅名田庄
へへっ。

湖畔好きには・・・、

道の駅名田庄ではトイレと休憩を挟んだのち午後4時に再出発。

ここから先は南川第1堰堤、野鹿谷堰堤、野鹿の滝、頭巾山登山口とつづく。

まずは10分ほど走って南川第1堰堤。この堤体は水通しの穴が無く、水をかなり貯めている。当日は放水路天端ギリギリの高さまで水が貯まっていて、その不思議をネットで調べたら小水力発電装置併設ということであった。

実質的に貯水ダムとして機能する堰堤を境に上流部は見わたす限り水面で、深さに関しても午前中に小浜港の岸壁から見たそれと全く変わらないほどの深い緑。何といっても貯水池独特の静まりかえった雰囲気が秀逸であった。

堤体本体より林道を奥に200メートルほど進めば、駐車場が設けられているため静かな湖畔の雰囲気を楽しみたい人はこのあたりで過ごすのが良いであろう。

道の駅名田庄からは県道771号線を使う。
南川第1堰堤(画像左端、白く突き出たコンクリート中に水力発電の配管が走る。)
南川第1堰堤。水表側。

渓流好きには

もっとガラガラに鳴る、渓流区間に触れたいならば林道をさらに進む。南川第1堰堤より1キロほど進んだ先にある分岐を左折。

野鹿谷に沿って10分ほど走れば野鹿の滝入り口看板前。それより5分手前には今回の目的地である野鹿谷堰堤を見ることが出来る。

入渓点は堤体本体より林道をさらに200メートルほど下がったあたり。ちょうど林道が野鹿谷に向かって大きく突き出たあたりで、カーブミラーが1本立っている。

車はそのカーブミラー付近の道幅の広くなったところに置いた。

時刻は午後5時15分。入渓の準備を済ませ、川に立ち入る。

林道をさらに奥へ。
野鹿の滝
入渓点となるカーブミラー

川の水量、渓畔林、渓相などは事前に林道から確認済みである。川石やデコボコしたナメに苔が乗っているのは、この渓が比較的洪水時でも安定している証拠であろう。涵養機能の高い山からの水ということだ。

入渓点からものの5分程度歩いて、堤体本体を確認。さらに5分ほど歩いて堤体前に到着。

堤体は、主堤、副堤の二段構え。

渓畔林はケヤキを中心に、イタヤカエデ類、チドリノキ、シラキ、イロハモミジなど。堤体により近いところのケヤキにはフジがよく絡んでいて、左岸側、右岸側の隔たりを繋げるようにしてビロ~ンと蔓を伸ばしている。

入渓点近くにて。
堤体が見えた!(画像右上。)
堤体が見えてからも焦らず進む。
堤体前に到着。

空白地帯

堤体前の立ち位置は左岸側に立った。ただし、その左岸側。とはいっても、正面目の前にはかなり右岸側寄りになった堤体本体の姿がある。

川が幾分カーブしているため、必然的に限定された立ち位置であるが、幸いにも堤長の直線より直角の交点延長線上には立てている。

距離的にはおよそ41ヤードほどの位置に立つことが出来た。

早速、自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

立ち位置のすぐ左岸側には壁状と言うまでに切り立った斜面がある。ここは無理をせず、正面、またそれより右岸側に向かって声を入れていく。

右岸側の視界の先にはスギの高い木が数本、堤体完成後に自然に生えてきたであろうケヤキ、ゴロゴロと無造作に放置された捨て石、その捨て石には何十年分ものあいだスギの枯れ葉が降り積もり、その隙間をぬってシダがガシャガシャと生えている。

ゴミの投棄などは無く(ナイス!)、しかしながら美しく整備されたとは言い難いこの右岸側のちょっと高くなったところに声を入れていくとよく響いていることがわかる。

空気の動きで言えば、ほぼ無風という条件下、なぜこれほどまでに良い結果が得られているかと疑問を呈せば、その答えは堤体前に広がるノイズの空白地帯にあるような気がする。

主堤より水叩きに向かって落ちる水。水叩きより副堤の天端上を通過し、天然の石組みに向かって落ちる水。

なんとこの堤体前周辺で聞くノイズの発生源はこの2ヵ所に絞られている。そこから下流を見れば、ちょっと深めの淵があり、それが徐々に浅くなって細いヒラキになる。

この淵+ヒラキの区間がおよそ35ヤード。重要なのはその区間に大きな石などが入って段差が出来ていないこと。段差が出来ればその場所に落水が発生し、たちまちノイズの発生源となってしまう。

上方より水中を見渡せば、渓魚の好きそうな水のヨレは確認できるが、それはそれは大層静か~にヨレている。

歌い手としては前述の2ヵ所のノイズを敵として戦えばよい状況にあり、渓畔林のもたらす反響板効果を使えば、水量豊富な落水相手でもしっかりと響きを作り出すことが出来る。

南西向きの堤体は午後型。
当日、風はほとんど吹かなかった。
距離は41.4ヤード。
遮られながらもチラリと見えるのがまた良い。
左岸側
右岸側。見ためは悪くも響きは良い。
この空白地帯が効いた!

退渓

結局この日は午後6時半まで夕方ゲームということで歌を楽しんだ。

水量豊富な落水相手のゲームであったが、当地に偶然もたらされた自然環境の中で、偶然にも良い形で響き作りをさせてもらえ、大満足の結果となった。

歌える堤体さがしをしていく中でノイズの大小はあまり気にするべきでは無いということを再確認した旅であった。

どんな堤体でもまずは歌ってみるという基本を忘れず、また次の堤体に挑んでいきたい。

ノイズの大小はあまり気にするべきでは無い。