11月19日、午前5時。まだ夜も明けない駐車場から向かうのは、道の駅内にある温泉施設。
伊東マリンタウン朝日の湯。
朝風呂営業も行う同施設は、すでに開店をしているはずだ。
伊東マリンタウンは横長の建物。よく見れば、そのいちばん南側の一角だけはかすかに明かりが点いているのがわかる。
気温は11.2度。
温められた車内から抜け出してきた身には寒いとしか言いようがない。
ただでさえこんな感覚なのにさらに寒さ倍増なのが、風を切り裂いてすすむ早歩き。しかし、この冷たい空気から逃れるためには一刻も早く建物の中に入りたい。
足早に・・・。
ようやく玄関から建物内に入り、下駄箱、券売機、受付へとすすむ。チケットと引き換えに手渡されたのは、借りもののバスタオル。使用後の管理が省略できるとあって、ドライブゲームにはありがたい。
階段を登り、ようやく男性浴場へ。
塩化物・硫酸塩泉の温泉で体の芯から温まる。
湯上がりには食堂のテーブルでモーニング。テーブルのすぐわきには開き戸があり、そこからテラスに出られる。
水平線の遠く向こうに赤く出現したのは、今日のゲームでお世話になる太陽だ。
朝のウォーキング
午前6時40分、駐車場に戻って車に乗り込んだ。
本日、向かうのは伊豆市の菅引川。その菅引川の入渓予定時刻にはまだ早いので、伊東市内を散策することに。
伊東マリンタウンを出て、国道135号線を南進。渚橋てまえの信号交差点を右折する。
午前6時50分、「キネマ通り」アーケード入り口近くのコインパーキングに車を停め、散策をスタート。
東海館、木下杢太郎記念館、ラヴィエ川良、暖香園、ダンコーエンボウル、伊東市中央会館、音無神社、松川遊歩道などを見て回った。
朝の7時台ということもあり、ホテル以外の建物は営業開始前という状態であるが、その外観だけでも見て回る朝のウォーキングが心地よい。太陽はまだ低く、建つ家やビルによって出来た日のあたらないところを歩いていると、ひんやりとした空気が襲ってくる。
うっかり湯冷めして、調子を悪くしてはいけないので、そんなところはちょっと足早に通過し、日なたになった所へ逃げ込む。
歩道の整美された比較的道幅の広くなったところを選んで歩き、コインパーキングへと戻った。
ここに来るなら・・・、
午前8時15分、コインパーキングから出庫。いったん国道135号線に出てから「伊東駅入口」信号交差点より静岡県道50号線へ。
JR・伊豆急行伊東駅をチラリと見たのち、「いちょう通り」から静岡県道12号線へ。
伊東市市街地を南下してしばらく走ると「中伊豆BP入口」信号交差点。ここで右折をすれば伊豆市方面であるが、まだ時間に余裕があるため左折し、10分ほど車を走らせて「一碧湖」南東部、観光橋横の駐車場に車を停めた。
車から降りて一碧湖に向かう。
ここは大昔に火山活動(マール)で出来た湖だという。
伊東市の大室山・小室山、両者の中間には(伊東市)吉田という地名があるが、この湖は古くは吉田の大池と呼ばれていたらしい。当地に残る「大池の赤牛」という伝説には、かつてこの湖に住んでいた赤牛によって村人らは幾度にもわたって漕ぐ船にいたずらをされたり、時には襲われたのだという。
・・・。
静まりかえる湖畔。
まぁ、ここに来るなら焼肉屋とか牛丼屋のあとは控えたほうがよいだろう。
いよいよ伊豆市へ
午前9時15分、観光橋横の駐車場にて車に乗り込み、直後に出発。
来た道を戻るようにして進み、「中伊豆BP入口」信号交差点にて今度は伊豆市方面へ。そして道なりにしばらく走り、現れるのが「冷川トンネル」。この冷川トンネルを抜けたところから北進(静岡県道12号線)→西進(静岡県道12号線)→「八幡東」信号丁字路→南進(静岡県道59号線)の順にすすむ。
静岡県道59号線を南進してゆくと、場所は伊豆市原保(わらぼ)。伊豆市原保にて左手側に現れる「若菜園」という造園店を過ぎて200メートルほど走ると、信号機のない十字路。この十字路を左折し直後にあらわれる「灘隈戸橋」を渡らずに右折。菅引川に沿って道を南進する。
菅引川沿いの風景は、前半が水田地帯を見る農道。後半が林道。ちょうど宿泊施設の「てづか村」を過ぎたあたりで林道の様相を呈す。さらに、てづか村より1.2キロほど進んだあたりが入渓点。いちど離れていた川がふたたび林道に寄り添っていることと、低めの堤体があって堆積地ができて、降り立ちやすいことが入渓点である理由だ。
強い意志
午前10時半、車から降りて入渓の準備。ウエーダー、フローティングベスト、ヘルメット、手には登山用のポールを1本にぎった。
登山用ポールについては、購入時においては2本セットである。2本セットのうち、1本だけを使用するということだ。
川は今回入渓する菅引川に限らず、どこも大小の石がゴロゴロしている。これが言うまでも無く、固い。
やはり、あってはならないのが渓行中における転倒事故だ。
渓を歩くことに際して、事故を起こさないために気持ちを切らさないようにしたい。
「絶対に転んでなるものか!」という強い気持ち。
強い意志。
精神的なもの。
と・・・、同時に。
万一、転んでしまった時のことを考えておかないといけない。
とっさに手が出せる状態にあるかどうかということ。良くない例としては、両手に何かを持っていて、着地の準備が遅れてしまうことだ。
仮に”絶対に転ぶ”ということが保証されていたとすれば、両手には何も持っていない状態が理想的である。
意図するのは、立位の保持能力を高めるために握った片手だけの登山用ポールと、万一、転んでしまった時のための何も持っていない片手だ。なにも持っていない方の片手は、大きな石や安定した樹木につかまる際にも大変に役に立つ。
フライング
午前10時50分、菅引川第二堰堤に到着。
水は目立って増水とも減水とも言えない量で落ちている。
太陽はまだだいぶ右岸側にあり、これから時間が経つにつれ、左岸側に移ってゆくだろう。
堤体に向かって真正面に立ったとき、歌い手、堤体、太陽の三者が一直線のならびになる時をベストタイムとしている自身にとっては、まだ少し時間が早い。しかしながら、まずは試しに・・・、とばかりにメガホンをセットし声を入れてみる。
鳴っているのがよくわかる。
水が主堤の放水路天端より水褥池に向かって落ちている。水褥池より溢れ出た水は副堤の放水路天端を伝って堤体下流側へ落ちている。落ちる水の粒を受けるのは面状になった水のかたまりであり、受ける衝撃によってノイズが発生している。
ノイズは断続的に攻めてきている。
堤体を正面に見て
堤体を正面に見て歌い手が立ったとき、その者がノイズを耳に受けるということは不可避であるが、決してその中にあって響き作りが出来ないわけでは無い。
堤体前を吹く風に助けられて、音が遠く離れたり、逆に近づいてきたりする動きの結果を響きとして聞くことが出来る。
実力でいえば歌い手自身の能力100パーセントというわけではない中で、運良く自然環境を味方に付けながら遊びを展開してゆく。
聞くことにも集中しながら、ノイズに紛れて返ってくる自分自身の声を楽しむ遊びだ。
また、ノイズに対して戦っているという感覚を持つことも楽しい。響き作りを邪魔する者がいるなかで、それを克服してゆく。(打ちのめすということだ!)
体を使うだけでなく、頭も使って。敵に対して効果的な戦い方ができた時には、ゲームに対する充実度がさらに増すであろう。
やがて時は過ぎ、堤体に向かって真正面に立ったとき、歌い手、堤体、太陽の三者が一直線のならびになる時刻。この日は午後の12時半のことであった。
さらに30分ほど歌を楽しんで午後1時に退渓。
退渓後は伊豆市のラーメン屋「あまからや」に向かった。
楽しい秋のドライブゲームであった。