透明人間

ドイツトウヒの木。勝沼中央公園にて。

ドイツ・リートというジャンルが好きなもので、堤体前で歌うのは専らドイツ・リートである。

したがって歌で扱う言語はすべてドイツ語。

これが難しい。

一つ一つの名詞に性が付くこと。男性名詞、女性名詞、中性名詞のうちいずれか一つ。

名詞にいずれかの性が付くことが分かったところで、冠詞が格によって変化すること。

同様に、名詞にいずれかの性が付くことが分かったところで、つづく動詞、形容詞が人称や格によって変化すること。

名詞の性によって変化した冠詞はさらに前置詞にくっついて融合形をなすこと。

複合語を理解すること。

この言語の難しさのなぜを一つ、二つ、と挙げていくと止まらなくなってしまう。

歌曲の元になった詩が一体なにを言わんとしているのか?詩が伝えようとする想いや情景を理解したいという願望あってはじめた語学学習も、目下休止中という状況である。

今まで自分が歌ったことのない歌に取りかかるときだけ、あらためて単語を理解しようと翻訳アプリの結果に注視したりはする。

おおざっぱに詩を解釈しようと程度には頑張るけれども、例えばドイツ語検定のような認定試験を通じて、語学基礎能力全般を向上させようといった取り組みには全くもって疎くなってしまった。そもそも、

ドイツ語が出来るようになりたいか?

という問いに対して自分自身、明快に「はい。」と返事が出来るような性格には到底、おもえない。苦悩するのは、出来るようになりたいか?という問いに対して単純回答すればいいところしかし、前述した言いわけのような文句を脳内再生あれやこれやといちいち応戦してしまうことにある。

こういったところは自信満々、「はい。」とすっきり返事ができる人のほうが清々しくてよい。今現在どれだけこの言語の語学力を有しているか如何にかかわらず、そういった人はすごいと思うし、ならばすでにこれは才能持ちであると言ってよいのではないかとも思う。

語学が出来るようになりたいという願望をしっかり学びの機会へとつなげられる人。

学びへの意欲という才能。

簡単なようであって、しかし、誰もが持っているわけではないもの。

意欲というたったそれだけのこと。しかし持ち合わせるのは容易でない。

うらやましき才能である。

勝沼中央公園

勝沼中央公園

9月7日、午前8時。山梨県甲州市勝沼町、勝沼中央公園。

ここは中央公園というだけあってちょっと広めな公園。

公園といえば公園樹。公園樹といえば樹木観察。樹木観察といえば図鑑。

図鑑を持って樹木の同定にスタート!

樹の名前を知ること。樹の名前を知ることといえば、普段フィールドで行っていることと同じだ。

自身が堤体前、もしくはそこにたどり着くまでのあいだに見た樹木について、その名が分からないときには図鑑を開いてどんな樹か?と調べるようにしている。(ただし、これは時間に余裕があるときだけ。)

これが砂防ダム音楽家にとって本当に必要なスキルなのかどうかはわからない。そもそも、歌うために堤体前に立つこと。その大義は遊びであり、遊びという絶対的決まりに照らし合わせてやっていいことなのか、ダメなのか?そこは慎重に判断されなければならないはずだ。

学問やりに来ました。勉強しに来ました。みたいなことを現場で言うのがそもそも嫌だ。

植物学は不要。

したがって、堤体前に繋がる日常生活の樹木。たとえば公園樹や街路樹、庭木などを用いて樹木に造詣を深めること。予備学習として、公園に生える木を観察したりする行為は基本的に必要ないといえる。

つまりのところ必要ないことをやっているということ。必要ないとしながらも続けているのは、

学びへの意欲?

木を見ると、この木はなんという木なのか知りたくなる。

観察の場所を変えるたびにいろいろな木と出会う。

あの場所にあった同じ木がここにもあるという偶然に出会ったり、似たような木なのだけれど生育する温度帯の違いで、異なる種類であったりすることがおもしろい。

例えば、使用している図鑑の著者が北海道で撮影したという写真の葉と同じものを山梨で見つけたりすることがおもしろい。

もちろん、今まで見たことの無かった新しい木に出会うことはめちゃくちゃ楽しい。

いろいろな木が知りたいという願望を学びの機会へとつなげられている。

・・・、

才能か?

南エリアはシラカシ並木。
勝沼中学校側はミニ学習林の様相。
ちょっとした遊具もある。
トイレは最新機種に入替え済みで新しい。
勝沼中央公民館側のトウカエデ並木。

慶千庵

午前10時50分、勝沼中央公園を離れ、昼食に向かうことにした。

気温35度。猛烈な暑さのなか選んだ昼食は「ほうとう」。(暑さに負けないように、温かいものを食べよう!)

中央公園ちかくに「慶千庵」という店があることをスマートフォンで調べ、歩いて向かうことにした。

午前11時10分、慶千庵に到着。店の門をくぐり抜け中に入ると、すでにヒトダカリ状態ができあがっていた。

店の姐さんが客の名を呼んでいる。どうやらこの店は入り口のところにウエイティングボードがあるらしく、さっそく記帳しに行ったのであるが、驚いた。

入り口玄関のすぐ横に氏名を書くバインダーがちょこんと置かれている。

バインダーの紙には罫線マスで区切られた紙が挟まっている。また、罫線マスの一番左側には1~20の番号が振られていている。問題は、もうすでに16までの数字が氏名で埋まっているということだ。

17の右に「モリヤマ」と記入し、待つことに。

やれやれ・・・、

この待ち時間が飽きなかった。門から玄関までの通路は30メートルほど。その通路と両サイドは見事な庭である。庭というのだからもちろん木もある。

木のことは先ほど中央公園で一区切りやってきたつもりであったが・・・。

結局ここでまた“再スタート”することになり、脳を活性化され、適度な疲労感とともに時間をつぶすことになった。おかげで腹が減った!

その後は名を呼ばれ、無事ほうとうにも逢りつくことができた。

店を退店する際、依然として多い来客には心底びっくりしたが、逆を言えばそれだけ大勢の人が、この見事な庭に接しているということ。味にも見映えにも儲けさせてくれる店であった。

昼食は慶千庵へ。
大きなウメの木
ナルコラン
ヤブラン
カリブラコア?
かぼちゃほうとう

堤体に向かう

午後0時20分、堤体に向かう。

慶千庵の門を出て、南へ200メートルほど歩いた。目の前には本日入渓する日川。ぶどう橋より日川の様子をチェックする。

異常なし。

ぶどう橋より再び慶千庵の店の前を通って、勝沼中央公園駐車場(勝沼中央公民館駐車場)へ向かう。

午後1時10分、勝沼中央公民館駐車場にて車に乗り込み駐車場を出庫。「勝沼地域総合局入口」信号交差点から旧甲州街道を東へ。

午後1時20分、「柏尾」三叉路より国道20号線に連絡し東京方面へ。

午後1時半、国道20号線「景徳院入口」信号より左折し、山梨県道218号線に入る。

山梨県道218号線にしたがって進み、砥草庵まえ、日川渓谷レジャーセンターまえ、天目トンネルなどを通過。

午後1時45分、やまと天目山温泉の日帰り入浴施設入り口にある「天目橋」のさらにもう一本上流側「六本杉橋」をわたってから700メートルで天目山駐車場。(ここはトイレがある。)

天目山駐車場からは4.1キロの行程。天目山荘、高山荘、嵯峨塩館といった民宿・旅館の前を経由して到着するのは川に降りられるスロープの入り口。当日はスロープに立ち入り禁止の紙が貼られたバリケードがあったため、さらに100メートルほど進んで道幅の広くなったところに車を駐車した。

ぶどう橋
ぶどう橋から日川
堤体に向かう。
山梨県道218号線を行く。
日川に沿って山道を登ってゆく。

観察センター

午後2時、車から降りて入渓の準備・・・、いや、眠い!

やっぱり今日は頭を使いすぎている。頭の中にある樹木名を取り出したり、また取り入れたり。名をすでに知っている樹木であっても、図鑑に書かれた生態のことを読んだりしていて、さすがに疲れた。

木を見ることは楽しいのだけれど、やっぱりあれこれ頭を使うので疲れる。ここだけはどうしても避けて通れない難しいところだ。

車のシートをリクライニングにし、午睡をむさぼった。

午後2時20分、むくっと起き上がり入渓の準備。

車の後部ドアを開け、バックルストッカーからウエーダーを取り出す。おもむろにウエーダーに履き替えると、履いていたスニーカーを車内へ。

空を見ると曇っている。

夏山はいつだって安心できない。履いていた靴ぐらい干してから出発したいところであるが、突然雨が降ってくることもあるので空には見せられない。隠してから行く。

午後2時50分、ウエーダー以外の装備も整ったところで出発。まずは道路を歩いて銘板を撮りに向かう。

山梨県道218号線の道路路肩沿いには谷から生えた木々の枝葉がちょうど同じ高さで延びている。あれやこれや樹木の観察センター状態になってしまっていて、ここでついつい足が止まる。

ん?

なんとよくよく見てみれば、ブナとイヌブナという二つの似て非なるものが揃って展示されているという偶然が!ホントにこれが自然散布によるものなのかどうか疑いたくなるくらい優秀な観察センターである。

午後3時20分、銘板の撮影と観察センターの見学を終え、いよいよ谷を降りるときが来た。

谷は登山用ポールの補助を借りながら降下する。目に見えているルートを行くこと、大きな石には決して乗らないことを条件にあせらずゆっくり行けば誰にだって降りられそうな坂だ。とにかくあせらずゆっくり・・・。

寸刻、下り坂と格闘したのち河原まで降りることが出来た。

銘板
道路の高さと枝葉の高さがちょうど良い。
もはや観察センター状態に。ミズナラ。
ブナ
イヌブナ

ゴー!

午後3時半、川を見て驚いた。激流。

当地点からおよそ3キロ上流には上日川ダム。川の様子から察するに本日は上日川ダムのゲートが開いている。しかも、暫く水を貯めてからの解放であることが目の前の状況から推察される。

放水路天端から落ちる水によって発生する、爆音ならぬ瀑音があたりを包んでいる。

ゴー!

とも

ドー!

ともつかない音によって。

いや、音というよりも空気の振動そのものに全身が包まれているような感覚に近い。

全身に迫ってくる震動は、耳には音の耳栓を嵌めたように作用している。

これでは堤体前を鳴らすとか、鳴らさないとかそういうレベルの話しには到底ならないだろう。無理だ。

河床の洗掘にともなって側面崩れたあたりは若干えぐれていて、音が和らぐか?と思い対岸に移ってみた。しかし、全くそのような効果は得られなかった。

これはダメだろう?

とにかく、今日は歌って空間を鳴らせるような状況にはない。

上流より襲来する水の多さを眺めつつ、途方に暮れる。

嵯峨塩4号堰堤

どうにもならない状況

午後3時40分、自作メガホンをセットし声を入れてみる。

すでに歌う前からどうにもならない状況であることはわかりきっているところ、それでもやってみようという気持ちが失われず準備をしてみた。

声を入れてみる。

が、

やっぱり・・・、鳴らない。

声を発する楽しさは得られていようか?とりあえずは声が出せている。大いなる相手を前にして。

歌うという行為そのものはいつも通り出来ている。

しかしいつもと違うのは、音が鳴らないという状況。と、鳴らない状況をつくっている原因が、圧倒的な水の量にあるということ。

たしかに鳴らない。しかし鳴らないけれど歌えなくなるわけではない。

北方系。日が堤体を直接照らさない時間が良さそう。
高い堤体では長めに距離を取る。
空気は程よく動いている。
強い流れ。下流側。

これはもったいない?

結局、この日は午後5時半まで堤体前で過ごした。

いやはや、こんなタイミングで現場を訪れることになろうとは思ってもみなかった。

ノイズ・・・、というより空気の振動に全身が包まれているような環境で声を入れていくという体験が出来たことはよかった。

しかし、声を入れるからには響きとして音が還ってくるような状況の方がありがたい。

これが、通常、音楽的な楽しみかた。

プラス!

では、与えられた状況下そこから遊びを作り出すという工夫ができるかどうかが、今後の課題なのではないかと思った。

歌えなくなるわけではない。ということが再確認できたなかで、ならばその状況で歌い手が持ちうる限りの能力を用いて、道具の力も借りて、こんな日でもゲームとして成立させていけるかどうか。

物理的なもの、精神的なもの。解決にはどちらが必要か?もしくは両者ともに必要なのか?

演奏施設である堤体前を無駄なく使えているか?

歌い手自身、堤体前がときに遊びのベースを違った形で提供してくれることに気がついていなかったらこれはもったいない。こういった状況下でいかに遊べるようにするかもプレーヤー側は問われているかもしれない。

激流の日であった。

無理だ。ダメだと言った。しかし、

もしかしたら逃してしまった大いなるチャンスだったかもしれない?!

学びへの意欲という才能。

とは、冒頭のはなし。自分じゃ絶対に無理だと思ったことをやってのける人がいるのもまた世の中のおもしろさ。たのもしさ。

ならば、常にもっともっと上に人物がいることを想定して挑まなければならない。こういった状況下で声を入れていくような音楽というのが未来の世の中にはあるのかもしれないということを忘れず。

ここで遊べない。という事実に何となくさせているのは、その「情報」をつくっている「時代」というたったそれだけのこと。

損をするべからず。

チャンスを逃すべからず。

こんな場所でさえ遊べてしまう透明人間の存在をその背中を追いかけてみたい。

透明人間を追いかけよ。
サワシバ
コハウチワカエデ
シナノキ
バッコヤナギ

北杜市へ

山梨県立フラワーセンターハイジの村

今回は山梨県峡北地方、北杜市へ出かけてみた。

北杜市といえば八ヶ岳が有名だ。八ヶ岳南麓に広がる自然豊かな地域は、観光スポットの多い非常に魅力的なフィールドである。

そして今回、事前に入手した情報によればいまの時期は「明野のヒマワリ」が当地の名物であるという。

ヒマワリといえば黄色に咲く大輪の花を思い浮かべるところ。広大な畑に咲いている大輪のお花見とあっては大きく期待感が持てる。一面に広がるヒマワリの大海原を夢見て北杜市へと車を走らせた。

北杜市明野へ

明野サンフラワーフェス

8月16日、午前9時15分。北杜市明野サンフラワーフェス駐車場。

なんと雨が降っている。

この日は台風7号が千葉県沖に接近中ということで、午前中はあまり良くない予報であった。

ひとまずは車内待機を決め込み、カールーフに当たる雨粒を聞くことに。

雨に加えて風も。しかし、風はさほど強くないようである。駐車場に何人かいる係員の人たちは透明なレインコートを着てせっせと車の誘導に精を出している。と、そこへ入場してきた車からは到着するや否やさっそく傘を差し、元気よく畑の方へ飛び出していく人らがいる。

外へは出ようと思えば出られるくらい。

けっして弱いとはいえない雨で、かといって激しすぎるわけでもない。

今ここに来るまでには長い登り坂を上がってきた。そして、八ヶ岳山麓の小さな丘にまでようやくたどり着いたという安心感。

妙に金持ち気分になって留まる精神的余裕。快適性優先の車内で過ごす。

午前10時。雨が小康状態になってきたため車外に出てみた。

視界は良い。

うす雲に覆われた空は太陽を遮り、その雲は遠く川(釜無川)の対岸、鳳凰三山、アサヨ峰、甲斐駒ヶ岳といった山の頂を隠すように延びている。群青色の山に雲の白いライトが当たって、少し色褪せたようになっている様子がはっきりと見える。

色褪せた山を見つつ、引き寄せられつつ。

フラワーフェス駐車場を横断すれば一気に視界が開けた。

一面のヒマワリ畑。

下の畑まで降りられるスロープを近くに見つけ、さっそく下まで降りてみる。

丈は成人の身長ほど。また、それより高いものでは2メートルほどのところに掲げられた花もある。ヒマワリ以外の草花は一切植えられていない単一圃場だ。それがまるで壁のようになって連なっている。

壁のすき間からは、またその奥に植えられた花が顔をのぞかせる。

目の前にも奥にも黄色いヒマワリ。

目線を上げてもジャンプしても全てヒマワリの花。

よくこの場所にこれほど多くのヒマワリを持ってきたと。もちろんそのときの経過は明らかではない。しかしながら、よく見れば一輪一輪の花はまるでそのマスクが異なっている。花の中央部、筒状花と呼ばれるところの咲き具合が一本一本異なっているからだ。

さらに筒状花は咲き具合が違うのと同時に、それを円形ひとまとめにして、出っ張り形状がまた一本一本違っている。

きれいな球体のようなもの、真っ平らに近いもの、途中一回だけ波打つもの。

栄養状態の似通った条件で育つとなりあう花たち。気象条件的に近い環境で育った花たち。それでもなぜか似ても似つかず皆全てが違っているという不思議。

個性がある。

さらにご丁寧にも、吹いている風は花をユラユラ揺らしてくれていて、手前側にある顔も奥側にある顔もまんべんなくその違いを見させてくれる。

一面のヒマワリ畑
高いのは目立つ。
まん中の円形(筒状花)の感じが一本一本ちがっている。
風はおよそ2メートルほど。
来客者用の椅子席も用意されている。
トイレもしっかりしたものが用意されている。

ハイジの村へ

午前11時40分、車に乗り込んだ。

向かう先は「山梨県立フラワーセンターハイジの村」。

フラワーフェス駐車場を出発し、茅ヶ岳広域農道を韮崎市方面へ。すると、ものの100メートル走っただけでハイジの村入り口に到着。

そして入り口看板から坂を上がっていったところにある第一駐車場に向かうと、あっという間に到着することができた。

駐車マスに車を置きエントランスへ。

エントランスでは多くのツバメが入場を出迎えてくれた。入場料を支払い中へと入る。

入ってすぐの広場には剪定されたバラをはじめ、多くの花苗が並べられている。

前に来たときもこんなだったっけ?

ここは何ヶ月か前に来たことがある。冬だったと思う。そのときには雪が降っていて、誰もお客がいないようなときであった。

花はなにも咲いておらず、ヤギの小屋に行けばヤギは怪我の療養中とのことで会うことが出来ず、ゆいいつ元気にしていた魚にエサやりをして帰ってきたことを覚えている。

魚の池に行こう。

さて、どこにあったっけ?

入場券と一緒にもらった地図を見ながら魚の池(虹の池)に向かう。記憶の中に微かに残っている情景とくらべれば、今は圧倒的にみどりが多い。足もとに生える草も、頭上を覆っている木々も色濃く立派な葉を付けている。セミの鳴き声がすごいが、これも冬に来たときには無かったものだ。

園内の坂を下って行く。するとようやく虹の池に到着することが出来た。

池の前に設置してある自動販売機に100円玉を投入する。さらに矢印の書かれたダイヤルを回してやると、最中に包まれた鯉用のエサ(ペレット)が落ちてきた。自動販売機から最中を取り出し、桟橋に向かう。

魚といえど脳は学習能力に満ちている。人が桟橋に乗っただけでいろいろ理解するようで、水面にワラワラと寄ってきた。

さっそく最中をちぎって池に投入すると一気に活性が上がった。水面に鯉が集まりすぎて、陸地が出来ている。陸地のド真ん中にエサを落としてやると競ってエサを取りに行く。

他方、ちょっと離れたところの水面に投げ入れてやれば、そこに向かって一目散突進してくる。他の魚に取られないよう焦って突っ込んでくる。は、いいが焦って空振り・・・。

そしてエサを落とさないでいると。

「はよぅ」

とばかり、水面でパクパクねだってくる。

まったくかわいいヤツらだ。やっぱ魚が一番だ。魚は裏切らない。

今日もまた魚にエサをやった。

魚に遊んでもらった。

次に来たときにはもっとウマそうなものをご馳走してあげよ。ペレットじゃなくて熊太郎とかバイオぶどう虫とか。

魚との再会を誓い、池をあとにした。

エントランスで迎えてくれたツバメ。
虹の池に向かう。
虹の池に到着。
ワラワラと集まってきた。
エサを投げ入れるとこのありさま。
はいよ~
ここの池にはニジマスも泳いでいる。

堤体に向かう

午後2時、ハイジの村を出発。堤体に向かう。

まずはハイジの村駐車場から茅ヶ岳広域農道に出てフラワーフェス駐車場に再入場する。

そういえば朝からなにも食べていない。

フラワーフェス駐車場に出店していた八ヶ岳スモークの店でくんせいのセットを購入。これをキッチンカーのすぐ横、特設で用意されたテーブル席で食べようとしたら、しかし風が少し強くなってきた。

これはせっかくの食事を風で飛ばされてしまっては堪らないので、車内へと避難することにし、再度ヒマワリ畑に降りて風を測ってから車内へと戻った。

ようやくの食事。

車外から見ると依然としてフラワーフェス駐車場には車両が入場してくる。午後になっても活気は衰えていない。台風接近中という予報であるものの、当地へやってくる人たちにとってはあまり気にならない情報のようである。

花に対する欲望には勝てず?

各々、冷静に分析した結果と思う。台風といえどその低気圧の中心は、遠くここより直線距離にて200キロメートル以上も離れたところの海上にあるという話しだ。まったく影響が無いかといえば、午前中より吹く風のとおりであるが、それによって欲望を我慢しなければいけないほどの天災が控えているわけでもない。

気象条件に関するワードに対して、冷静な判断をすることが求められているだろう。

八ヶ岳スモークのセットを完食し、車を発進させた。茅ヶ岳広域農道を北進する。

午後3時15分、朱色欄干の橋「孫女橋」を渡って道は丁字路に。右折し、みずがき湖方面に向かう。

午後3時半、みずがき湖のすぐ手前まで来た。みずがき湖ビジターセンター前の丁字路で右折。塩川トンネルをくぐり、通仙峡トンネルを迂回(通行止めのため)。その後、日影橋、東橋の二本の橋をわたると、道は増富ラジウム温泉の旅館街に入る。

そのまま旅館街を通過し、塩川の流れを縫うように遡っていくと「みずがき山リーゼンヒュッテ」前。このリーゼンヒュッテ前からさらに400メートルほど進むと三叉路が現れるので左折し、700メートルほど坂を登った。

午後4時15分、本日の目的地である「人神橋(ひとがみはし)」に到着。

八ヶ岳スモーク
くんせいのセット
再び計測するとやはり強くなっていた。
堤体に向かう。
孫女橋と丁字路
増富ラジウム温泉峡付近
塩川の流れを縫うように遡る。
堤体と人神橋

金山沢荒廃砂防ダム

外は雨が降っている。この雨はつい数分前から降りはじめたものだ。

レインジャケットをはおり、車外に出る。

ウエーダーを履き、フローティングベストを着用する。ほかヘルメット、グローブ、登山用ポールなどはいつも通り。

さて、本日は人神橋の上流およそ80ヤード上流にある堤体で歌う。

堤体名は「金山沢荒廃砂防ダム」。ここは橋の上から直接堤体に向かって歌うこともでき、また沢に降りて下から歌って楽しむこともできる。

二通りの楽しみ方ができる優秀な堤体だ。では二通りの選択肢の中から本日は沢に降りて歌うことを選択。橋の下流側に向かう。

人神橋の下流側すぐの道路から土手を伝って金山沢に入り、橋の下をくぐる。するとすぐに堤体前に立つことが出来た。

堤体を見上げる。

主堤と副堤。二段構成になった堤体は目立った欠損なども無く、きれいに左右バランス良く水が落ちている。

降雨による著しい増水は見られない。水は透きとおっていて、その下に敷かれた黄土の砂れき上を歩く感触が心地よい。

新雪を踏むような柔らかさが気持ち良く、しかし途端に水が濁ってしまうのであるが、その濁りも川上から絶え間なくつづく新しい水によってすぐに払われてくれる。

そして、気持ち良いものといえば底質のほか、頭上を覆う渓畔林もまた。左右両岸、高さ5メートル以上はあろうかという高い護岸の上には渓畔林が伐られること無く残されている。

樹木の構成の大部分はヤマハンノキ。この木々が堤体前の暗がり作りに大きく貢献している。

立ち位置正面には堤体本体。左右は高い護岸によってできた壁。頭上には渓畔林の枝葉によってできた屋根。

歌うための部屋はすでに出来上がっている。

あとは実際、声を入れて楽しむだけだ。

金山沢荒廃砂防ダム
金山沢荒廃砂防ダムを下から。
右岸側(壁)
左岸側(壁)
屋根となる渓畔林

特徴的な響き

自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

全く響いている感じが得られないので立ち位置を変えてみる。

ここで選び直した立ち位置は堤体からおよそ60ヤードの地点。下がれるところまで下がってみた。これより後ろに下がることは出来ない。堤体に対して“ななめ撃ち”に声を入れることになるからだ。

川が護岸もろとも大きく左岸側に向かってカーブしている。しかし堤体より下流すぐのところ、60ヤード以内の立ち位置に入れば問題ない。堤体に対して真正面に正対することを意識すれば、これが最大限とることのできる距離なのである。

再び声を入れてみると、なんとか。どうにか。響いてくれた。

左右の護岸に覆われた内側、外側では響きを聞くことが出来ない。

響きを聞くことができるのは堤体の放水路天端向こうにある堆積地の方と、自身の背後に控えている人神橋からである。

堤体本体に接触した声はそのまま跳ね返って橋まで届いている。

響いているのは前と後ろだけ。

横はほとんど響いている感じがしない。

距離は最も下がってこれくらい。
これはときおりビューッと吹く風。無風の時間が長い。
北方系。日中は反射の光がキツいか?
銘板その1
銘板その2

事故れないということ

結局この日は午後6時半まで堤体前で過ごした。

雨の中のゲームであったところ、思いのほか楽しむことが出来た。雨中のゲーム、霧中のゲームでは空を覆う雲等の影響によって空間が白っぽく、明るくなることが厄介なのであるが、今回はそういった類いの光りにほとんど悩まされることがなかった。

立ち位置の左右には高さ5メートル以上の高い護岸があり、これが効果的に働いてくれたとおもう。

横方向からの光の侵入。雨中のゲーム、霧中のゲームでは最も避けて通りたい物質を高い壁は見事に断絶してくれた。響きの面では不自由を食った面もあるところ、堤体前の暗がり作りという点では大きなアドバンテージを与えてもらった。

ゲームは天気という与えられた条件のなかで行うという特性上、管理制御の効かないことにも接することとなる。そのなかで堤体選びからはじまるゲームプランがあり、あとは入渓の時間調整であったり、明るさ調整であったりという、逆に管理制御できるものによって遊びの質を上げていくことができる。

また、今回もまたフラッシュフラッド(鉄砲水)対策をおこなった上で入渓することが出来た。こちらは難しく考えず、渓行ツールとして準備が万全にできていれば良いというもの。フローティングベストとヘルメット。

着ているだけでよい。被っているだけでよい。

また、この日は台風7号接近というワードがニュースを駆けめぐるなか山へ出かけた。よくよく分析してみれば当地とは直線距離で200キロメートル以上も離れたところに台風の目があり、暴風域よりさらに外側、強風域は神奈川県東部まで。

さらに台風本体より西側に、本日おとずれたエリアは位置している。台風の描く円のうち左側半分は可航半円だという論もあるなかで冷静に分析してもらった上で、ここへやってきている。

だからこそ、絶対に事故れないということ。

あ~、あの人ったら台風の日になんて行くから・・・。

残念ながら便乗して、一つのワードでまとめにかかるのが世間だ。遠く東の海上で起きている事象に対して、それを取り消すということは出来ない。なんの日に行ったのかと論ずれば、やはり当人は台風の日に山へ向かったのだと言われてしまう。

台風の日の山の事故。ということにされてしまう。

この日は、いつも以上に慎重に慎重に歩かせてもらった。道路のアスファルトの上を歩くとき、金山沢へ入渓する直前、土手を歩くとき、また入渓をしてから。もちろん例によって“転ばぬさきの杖”、登山用ポールを使用した渓行を行ったことは言うまでもない。

こういう日だから。ということでは無いけれども装備は万全に!

歌い手はみなアスリートと同じくチャレンジャーだ。勇気を持って挑むチャレンジャーが馬鹿にされるようなことがあってはならないはずだ。

歌いやすい堤体だった。
ヤマハンノキ
カツラ
シラカバ
オニグルミ

本日もまた道の駅からスタート

日帰り入浴施設。庭付き。

今や日本中にある道の駅。

大きなものから小さなものまで全国にあるものを全て合わせれば※1,213ヵ所にものぼるという。

道の駅といえば土産物の販売、農産物の直売、地元産食材を使用したレストラン、観光案内所、広々としたトイレなど、その土地を訪れる者にとって便利で頼れる、そして何よりもワクワク感をあたえてくれる非常に重要な観光施設である。

では、今回おとずれた道の駅はなんと温泉付きらしい。しかもトップ画像にあるようなテーブルセット付き、ちょっと雰囲気のある庭までついた日帰り入浴施設であるという。

ひとっ風呂浴びるまえに、あるいは風呂から上がったあとに、気持ちの良い風にあたることができる。

木の下のベンチに腰掛け、ゆっくりすることができる。さらに、樹木の放つ新鮮な空気を大きく吸い込んで全身に取り入れることができる。

この地に来ることさえ出来れば・・・。

葉で溢れる木の下で鮮烈な緑に染まってみる。気持ちの良い風に吹かれてみる。たまにはそんな休日があってもいいかもしれない。

※Wikipediaより引用

「ふれあい橋」と道の駅たばやま(中央奥)

道の駅たばやまへ

7月13日、午前9時。山梨県北都留郡丹波山村「道の駅たばやま」へ。

日帰り入浴施設「のめこい湯」は午前10時より営業開始であるという。施設のオープンを待つあいだ、冒頭のテーブルセットの置かれた庭で過ごす。

植えられている木はイロハモミジ。

この植えられた木々の下に潜り込めば分かること。それは一枚一枚の葉がとても小さなものであるということだ。そして葉はうすく、一枚だけでは光を透過してしまっている。

しかしながら、これは枝につく葉の枚数が非常に多いためしっかりと天を覆いこんでいる。

葉の重なっているところの緑、葉の重なっていないところの緑。

印影をはっきりとするダークなところ。光り輝く明るいところ。

どちらも甲乙つけがたい緑だ。しかも樹高が高すぎず背丈に近いことから親しみやすい木である。

午前10時、のめこい湯のオープンに合わせて入館した。館内では入浴を満喫したあと食事を摂ったり、休憩室でゴロ寝をしたりして過ごした。

イロハモミジの木の下へ
中央プロペラ状のものは種
見上げてみる。
ダークなところも。
奥にある建物が「のめこい湯」

ささら獅子舞

午後0時50分、のめこい湯を退館。道の駅たばやまの駐車場に戻り、車を発進させる。

本日向かう堤体の・・・、とは逆方向。西に進路をとった。

向かった先は住所にして丹波山村奥秋。奥秋にある「子の神社」へ。じつはこの日、丹波山村は祭礼の日であるという。

祭りの名は「祇園祭」。その祇園祭では「ささら獅子舞」の奉納があるというので見学に向かうことにした。

午後1時20分、丹波山村役場駐車場に車を停め、歩いて子の神社に向かう。丹波山村役場から子の神社までは歩いて10分ほど。

子の神社に到着するとほどなくして社殿の前がにぎやかになった。

初めて見るささら獅子舞。

激しい舞が観衆を圧倒する。それがすさまじく体力勝負であることは自明の理だ。油単と獅子頭に隠された舞い手の表情はうかがい知ることが出来ないが、それらを頭に乗せ、生じる暑さもまた大きな負荷となっていることだろう。

「いいぞ!」

舞い手を担当する若い衆に、お囃し役の兄貴衆から激励の声が飛ぶ。

午後2時10分、場所を移して丹波山村奥秋「嶋崎油店」から丹波山村役場前を経由し熊野神社へ向かう道は「道中岡崎」と呼ばれるささら獅子舞一行の行列歩き。

午後2時20分、道中岡崎が熊野神社に到着。ここでは舞い「白刃」の奉納。

剣士役も加わり、舞いが披露される。

やはりここでも激しく、躍動感あふれる舞いが演ぜられ観衆を魅了する。舞い手の厳然とした振りに対して演目時間は限定的なのかと思えばそれはまったくの誤解で、太鼓と篠笛による伴奏は容赦なくつづいた。

一観衆として舞いに魅了されつつも、舞い手の残り体力が心配になってきた。

ハラハラしながら見つづけたのち、ようやく舞いは結びをむかえた。

熊野神社での白刃。その舞いはほぼ途中休憩なく続けられ29分にも及んだのだった。

青竹を高跳びのごとく飛び越えた!(子の神社まえ)
晴天。舞い手にかかる負担は容赦ない。
道中岡崎(丹波山村役場まえ)
道中岡崎を追いかけ熊野神社へ
熊野神社では「白刃」が奉納された。
ラストはまさに体力勝負。
花笠が手に持つささらはパーカッションの役割。
五穀豊穣、家内安全。奉納の意義は深い。

堤体に向かう

午後3時15分、ささら獅子舞の激しい舞いを脳裏に残しつつ熊野神社を出発。丹波山村役場まで戻り、駐車してある車に乗り込む。本日向かう堤体は丹波山村の最主要河川である丹波川の支流「後山川」に設置された堤体(堤体名不明)だ。

国道411号線大菩薩ラインを東進する。丹波小学校まえ、小室バス停(甲武キャンプ村入口)、滝口第二洞門、サヲウラ登山口などを経由。丹波山村役場から5.3キロほど走った地点には後山川にかかる「親川橋」。

親川橋の手前には車1台ほどが停められる駐車スペース。しかし、ここはすでに先行者が陣取っていたためUターン。200メートルほど来た道を戻って丹波川沿いにある駐車スペースに車を停めた。

午後3時45分、入渓の準備。足もとはウエーダーで固め、上半身は接触冷感素材の長袖を着る。曇天の空は少し怪しい様子であったため、レインジャケットをバッグに押し込んだ。

ほか、計器類をたくさん詰め込んだフローティングベスト、ヘルメット、グローブ、登山用ポールなどはいつも通り。

午後4時05分、やはり200メートルほど戻ってきた道を取り返し、親川橋へ。親川橋はわたらず、そのまま橋の西詰にある林道入口より林道に入った。

午後4時10分、林道(ここは林道といってもわずか200メートルほどしかない。)から後山川の河原に到着。さらに後山川の上流に堤体を確認した。

午後4時15分に堤体前着。

国道411号線大菩薩ラインを東進する。
道の駅たばやまを上から。
滝口第二洞門
親川橋
丹波川沿いにある駐車スペースに車を停めた。

躍動感

水は堤体を湛水。非常に勢いよく流れている。上流からの圧力が相当なものであるらしく放水路天端の底を切った瞬間、水は投げ出されるように下に向かって落ちている。

さらに落差の小さい副堤では、その見え方がより顕著なものとなる。同じく天端の底を切ってからの落下運動に水平方向への慣性が反発する。ただ落ちるのではなく、大きく飛距離をかせぐように、ジャンプするように水は落ちている。

主堤を落ちる水。副堤を落ちる水。

水という物質が自然法則にのっとって落ちているというだけなのに、これはどう見ても生命を宿した生き物のように見えてくる。

生き物のようであり、さらに言えば躍動感あふれるその姿から連想するのはつい数時間前に見てきたささら獅子舞のことだ。

本日のゲームはチャレンジになるだろう。勢いがよくて、エネルギッシュで、多少荒っぽい後山川の流れに歌で挑戦してみたい。

後山川の堤体
水は投げ出されるように
立ち位置は80ヤード≦付近に立ちたいのだが明るすぎた。
無風であったりときおりいい風が吹いたりという展開。
ガーン!機種によってバラバラ。(湿度計測)

シナノキの下に入る

設定した立ち位置は主堤からおよそ70ヤードの地点。シナノキの枝が後山川の流れに向かって伸びていて、微かに暗がりを形成している。

自作メガホンをセットし声を入れてみる。

意外にもよく鳴っている。

堤体本体と左右両岸、早い勾配の坂。三面に出来た壁の内外で声がよく響いている。落水の発するノイズは水の勢いに見合って決して弱いものではない。しかしながら、不思議とその非常に騒がしい環境のなかで声は鳴っている。

目の前に課題として突きつけられているノイズ。

歌い手として発する声。

両者が混じり合っている印象は薄く、独立して響いている感が強いが、やはり勢いある流れを目の当たりにしつつその中で声が響かせられている現状を体感し、気分が高揚する。

歌っているうちにみるみる気分が良くなっていくことがわかった。

あとはこの明るさだけか?

よく鳴ってくれる堤体前であった。

堤体との理想的な距離

結局、この日は午後7時まで堤体前で過ごした。

今回は非常に勢いのある流れを相手に歌った。再認識したこととして、水の勢い、強い流れであるとか、分厚い流れであるとかいったものを目の当たりにした時点ではまだ響きが出せるかどうかといったことを判断してはいけないということ。

実際に歌ってみて、響きを聞くことの大切さ。

ファーストインプレッション(第一印象)ではもっと難しい展開が待っているかな?と思ったが、予想に反してよく鳴ってくれる堤体前であった。

惜しむらくは、堤体前の空間が若干明るめなところ。やはり今回も立ち位置を設定する段階で渓畔林による暗がりを探ったが、樹木の途切れるゾーンが堤体前に見受けられたことが残念であった。

主堤からおよそ70ヤードという距離はそれが理想だったというのではなく、暗がり欲しさにやむを得ず決めた立ち位置である。

堤体の規模、落ちる水の規模から言って出来ることならもっと遠くから声を入れたかった。

響きが良くとも、結局のところ歌い手が音楽に没頭し、のめり込んでいけるような状態に持って行けないと楽しくない。明るさは敵で暗がりが味方となる。

夕刻の暗がりに期待し、夜を迎える直前まで粘ったが堤体前はメリハリなく闇に落ちていくだけであった。落水が光を持っているだけに暗がりもそれに対応できる充実したものが欲しいところである。

しかし、学びの多い堤体であったことは事実だ。何といっても勢いある流れを相手に響きが出せたことは自信につながったし、歌っているそのときは気分も高まった。

今回、堤体前を鳴らすことが出来たことについてはいい思い出として心に仕舞っておきたい。次回、ここを訪れたときにはまた今日とは違う環境で挑むことになる。

そのときには今日以上に良いゲームが出来るようにしたい。水が減った状況で挑むのか、増えた状況で挑むのか、気温は、天気は、湿度は、渓畔林は?

あのささら獅子舞の日はよかったのになぁ~

なんてことにならないように。

そう思うと砂防ダムって一期一会なんだなぁ。と思う。

一回一回、堤体前を訪れる機会はどんな状況であろうと大切にして行かなければならないと思った次第である。

堤体前へはスニーカーでもエントリーできる。
しかし水際に近づくのであればフェルト底が必須となる。
渓畔林も全くダメというわけではないが
ちょうど立ち位置の頭上で途切れてしまっている。
シナノキ
ウワミズザクラ
アワブキ
ケヤキ

大好き河津町!vol.22

こちらはKawaZooで買った土産。

歌える堤体さがしに出掛けること。

歌える堤体さがしに出掛けることは、山へ出掛けることと同義だ。

そして、山へ出掛けることは、そのさきで様々な生き物に出会うことを含んでいる。

林道を横切る動物。飛び立つ鳥。水中を走る魚。じっと構えている植物。

山で歌う音楽家は思ってもみず、様々な生き物に出会うことができる。

思ってもみず。

なかでも特に印象的なのがヤツとの遭遇である。

石が動いた!

体感型カエル館KawaZoo

KawaZooへ

6月22日、午前10時。まずは河津七滝温泉、河津町町営駐車場から歩いて3分、KawaZooへ。

看板には「体感型カエル館KawaZoo」とあるのでこちらが正式名称のようだ。

開館は午前10時。きょうは一番乗りで入館した。

ここは、カエルを専門にする博物館。展示は室内と室外に分かれている。

受付にて入館料を払い、まずは室内の展示スペースへ。

室内の展示スペースには小型の水槽が幾つも並んでおり、それぞれの水槽には種類ごとにカエルが展示されている。水槽の一つを覗いてみれば、中には砂が敷かれ、観葉植物が置かれ、流木が配置され・・・。さながら熱帯魚の飼育水槽のようであるが、中には水が張っておらずポッカリ空間があいている。

そして人間側の歩く通路は若干暗めで、対してカエルの棲んでいる各水槽は観察がしやすいようライトアップされている。

このライトアップという条件に対しては全体的に見ると様々で、あるカエルは水槽のガラスギリギリのところまで出てきて“大サービス”してくれたり、あるカエルは流木の奥向こうの死角に隠れてまったく出てきてくれなかったりする。

奥に籠もって出てきてくれないカエルばかりだったら全くカエル博物館の体を成さないところであるが、そこは大サービス勢の奮闘ガンバリもあって見応えのある施設になっている。

まぁ、籠もっていて出てこれないヤツらにもいろいろ事情があるのであろう。人生いろいろ。会社もいろいろ。カエル生もいろいろ。

常に明るく元気よく表舞台で生きられるとは限らない。いいときもあれば悪いときもある。

人間どもにスマートフォンで撮影され、もてあそばれることに対してプライドが許さないのかもしれない。あるいは施設が閉館したあとの夜遊びダンスパーティーで暴れまくって、昼間は眠たいのかもしれない。
はたまた夜は飼育員がいないのをいいことに格闘技大会とか相撲大会をしているのかもしれない。

カエル社会にもいろいろ事情があるであろう。そのなかでダメなやつはそっとしておいてやるのが優しさだ。くれぐれも水槽のガラスをバンバン叩いて起こしてやろうなんてことはやってはならない。

午前11時、かわって屋外の展示スペースへ。

四角く囲われた通路の中心には田圃と同様の環境が再現されている。ここは在来種のカエルが放たれていて、それらをすぐ間近で見ることができるというコーナーだ。

ここでは本日のお目当てであるアズマヒキガエルを探してみることに。

う~ん・・・。

石が動いた!

とはいかなかった。

とうのお目当て、アズマヒキガエルのことを見つけられなかったのだ。渓を歩いていれば比較的よく出会う馴染みあるカエルであっただけに少し残念であった。

屋内の展示スペース
マダラヤドクガエル
アイゾメヤドクガエル
ジュウジメドクアマガエル
マダガスカルキンイロガエル
ウーパールーパーにも会える

水量チェックに向かう

11時15分、KawaZooを出る。さて、本日向かう堤体は小川No.1コンクリート堰堤。KawaZooより北西方向に向かう道を4.5キロほど行ったところにある。

では、そちらに向かう前に河川のチェックということでKawaZooにほど近い出合滝の様子を見にいくことにした。

KawaZooから北西方向に100メートルほど歩けば初景橋。その初景橋の手前には出合滝に向かう階段がある。

階段を降りて行くとすぐに河原に到着することができた。河原といってもサンダルを脱いで水浴びができるような感じではなく、太い樹木調の手すりが据え付けられた観覧用の道が滝へとつづく。

もっともここは遊歩道であり、また河津本谷川の轟音を伴った激しい渓流区間のすぐ横を歩く。この激しい流れを見たら大抵の人はそれで満足するのではないか?

遊歩道沿いは低くも高くも生える植物によって小庭のような趣。これは大変に心地よい。

午前11時25分、出合滝に到着。

ここで河津本谷川、荻ノ入川ともに水量豊かなことを確認。小川については荻ノ入川に流れ込む支流で、ここ出合滝よりおよそ2.5キロ上流に合流点がある。

小川に対する印象は“湧き水の川”といったところで、河津町指定有形文化財である煉瓦の洞遺跡あたりが年中、水が流れている状態で見ることができる。

問題はそれよりもさらに上流部で、ある地点より先は年中ほとんど水が流れていない。

流れのもととなっているのはワサビ田最上流部に見られる湧き水で、そこから上流部が伏流区間だ。(年中ほとんど水が流れていない区間。)そして当の小川No.1コンクリート堰堤もその伏流区間のうちに存在している。

しかし本日のこの出合滝周辺の水量を見るかぎりはいい予感がする。いい予感とは水が多いこと。水が多いということは、伏流状態が打開されている可能性が高い。

伏流区間といえど、降雨によってもたらされた水が地下水として処理しきれなくなった場合には状況が一変する。地表水、つまり川となった姿でわれわれ人間の目で見ることができるようになるのだ。

ここ一週間のうちにだいぶ雨が降ったことが大きい。あとは実際に上流部に行って現実がどうなっているかである。

さきほど降りてきた階段をかけ上がり初景橋前の道路に戻った。そしてそのまま目と鼻の先にある出合茶屋へ。出合茶屋では入渓前の軽食を摂った。

遊歩道を歩いて出合滝に向かう。
出合滝
ムクロジを見つけた。
イシガケチョウ
出合茶屋
出合茶屋のクリームあんみつ

堤体に向かう

午後0時20分、出合茶屋を出て町営駐車場にもどり車に乗り込む。目指すは小川No.1コンクリート堰堤である。

エンジンをかけ出発。

初景橋、前之川橋、河津七滝オートキャンプ場まえを通過。道はオートキャンプ場を過ぎると林道の様相を呈す。さらに奥へすすみ、河津国際スポーツビレッジまえ、沼ノ川橋、煉瓦の洞遺跡看板前などを経由。

午後1時10分、小川No.1コンクリート堰堤近くの駐車スペースに到着した。(駐車は堤体よりも上流側へ。下流側はワサビ田の農家さんがワサビ田の管理に利用するため。)

車から降りて堤体を確認する。堤体は林道のすぐ真横、斜面を見下ろしたその先に見ることができる。案に違わず堤体上流部、下流部ともにしっかりと水が流れ、川が形成されていることが確認できた。

よし。

そして立ち位置となる堤体下流部は河床がかなり下がったところにあることも確認。林道から見た高低差では、おおよそ20メートル下といったところか。はるか先に見える川底は白っぽく苔も生えていない。

大きな石がゴロゴロと転がる川の流路形状は蜿蜒とし、落ち込みを伴いながら下流へと続いている。

水慣れしない川である印象が強いゆえなのか、渓に荒っぽさを感じる。もちろんそういった感覚はこちら側の勝手な解釈であり、実際は自然法則にのっとった水の物理的移動が起きているだけだ。

初景橋
煉瓦の洞遺跡の看板にしたがい左折する
林道を奥へ
林道下にはワサビ田を見ることができる。
林道、堤体横に到着。

上級者向け?

午後1時50分、堤体前に下りる。

やはり林道上で見た時と同様、全体的に荒っぽいという印象。

おそらくはこれより上流部、普段は伏流している区間が降水に対してかなり強いのではないかということが考えられる。雨が比較的大量に降っても大地がそれを伏流水として処理してしまうため、洪水といった現象がなかなか起きづらい。

小石や砂利の供給に乏しく、また大石は一度固定されてしまうとそのあと数年~数十年にわたって永遠その位置から動くことが無い。

渓には大きな石がゴロゴロと転がり、そのあいだを縫うように水は流れ、または落ち込みを作って下流へとつづく。視覚面においても音響面においても非常に騒がしい渓といった印象を受ける。

自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

鳴らない。

騒がしい渓であるからといった理由も考えられようが、音が響かない理由はそれだけではない気がする。

鳴ってくれる堤体前というのは、たとえ騒がしくてもその環境のなかで声が響いてくれる。大きなノイズに音を壊されながらも、しかし音が残ってくれるようなイメージだ。

そしてそんな場所こそ最も魅力的な堤体前と言えるのだが。

どうであろうか?今、頑張って鳴らそうとしているこの堤体前は声が残るというより、とにかく抜けていくイメージが強い。物体、たとえば石とか壁とか樹木とか声がモノにあたって返ってくるという感覚が全くといっていいほど得られない。

天に向かって長く伸びた樹木は、堤体前の空間をポッカリ拡げている。それを原因とするのかどうかはわからないものの、全体としてみれば下は荒れている河床、上は高すぎる樹冠の樹木類で、音を響かせようとする歌い手に寄り添ってくれるような要素に乏しい。

上級者向けの堤体なのか?

堤体前は荒っぽいという印象。
風が弱い。
荒れる渓では立ち位置の制約が多い。
ほぼ真西を向く堤体だ。
堤体前は56年の歴史をもつ。
樹冠位置が高い
頭上は全天を覆う渓畔林

あれこれ試したが・・・、

結局この日は午後4時半まであれこれ試しながら粘ったものの、堤体前を鳴らすことは出来なかった。季節限定で堤体を湛水する水が見られたこと。また、全天を覆う渓畔林の樹冠の下で歌えたことは大変に心地よかったが、歌い手として堤体前に来て響きを楽しむというところまでには至らなかった。

もちろん、こういったことはいつ来ても同じようになるかどうかはわからない。日を改めてチャレンジすればそのときには風も違う、温度(気温)も違う、湿度も違う、川の水量も違うというすべてが異なった環境下でのゲームとなる。

いいときに来ればもっと簡単に鳴ってくれる堤体前かもしれない。

しかし今日はダメであった。

ゲームは一旅人でもある歌い手に対して必ずしも良い条件を用意してくれるとは限らない。自身、そこに難しさがあると思うし、またそれが魅力なのでもあると思う。

しかし今日は運が無い日みたいであったから(お目当てのカエルが見られなかったことも。)次回来たときには運の良い日でいい思いをしたいものである。

堤体前の騒がしさを耳に残し、退渓した。

粘ったが解決の糸口は見つからなかった。
オオバヤシャブシ
スギ
ウラジロガシ
タブノキ

夏至といえば・・・、

今回は常連さんにはお馴染みのあのゲームです。

夏至が近づいてきた。

この時期は退勤後のゲームがおもしろい。

会社の就業時間が終わってから入渓し、あたりが暗闇に包まれる直前、日没前まで歌って帰ってくるという遊びだ。

山に行き、渓に立ち入って歌うという行為。

「この日に行こう!」と何日も前から計画を立てつつ各種手配を済ませる。さらにツールも用意して当日をむかえるというのが通常のやり方であるが、退勤後のゲームはもっと本能的で衝動的だ。

「この日に行こう!」は、多くの場合ない。

「よし、今日は!」といった感じで、急遽その日に行くことを決定して行動にうつす。

会社帰り。今日だけはメシのことも風呂のことも忘れて山にでかけよう!

そして渓に立ち入り、堤体前に立ってみる。

堤体前に立ってみる。

で、一体なにをすればいいの?

???

そう。この遊びの特殊性はそこにある。

少しでも歌うことを意識して出掛けているのならば、堤体前に立ってみて歌えないということはまあ、まず少ないだろう。

それはとくに良い堤体の前に立ったとき。

ここでいう良い堤体とは「歌える堤体?」という問いに対して最適解を出せる堤体のこと。

良い堤体は歌う気がなくてもその場所に立ってノイズを聞いていると、自然と歌えるようになってしまう。なぜなら良い堤体はロケーションやノイズそのものが歌うことを誘ってくれるから。

そんなに・・・、今日は。というような時も。

歌いたくて歌いたくてしょうが無いようなモチベーションの高いときも。

「こんなに歌うつもりじゃなかったのに・・・。」

ときにはそんな入渓前の人の気持ちを180度ひっくり返してくれるような驚異の状況に遭遇することさえあるくらいだ。

まずは堤体前に立ってみて!

自分自身が知らなかった自分自身に出会い、びっくりなんてことがあるかもしれない。

歌って気持ちよくなって、また翌日から元気よく働けるように準備しよう。

「三島沢地工業団地案内図」前

工業団地発。退勤後のゲーム

6月14日。本日のスタート地点は静岡県三島市「三島沢地工業団地案内図」前。

正直いってここは今まであまり来たことが無かった場所。日没前のゲームを提案するのにスタート地点をどこか決定する必要があったが、国の運営基盤を支える製造業へのリスペクトも込めて今回はこちらをスタート地点とすることとした。

午後4時50分にスタート。場所は三島市東部、山の中腹に設けられた工業団地。一級河川「沢地川」に沿って走る一本の道は三島市市街地へつづく主要道路。

静岡県道でも三島市道でもないこの道は三島市市街地のなかでも中心部・JR三島駅方面に向かって一直線に下りて行くことができる非常に重要な、なおかつ最短ルートの道である。

それはまさに「集中化」という言葉があてはまるような状態だった。

道路は勤務を終えたであろう方々の帰宅ラッシュ。

車、車、車の次にまた車。

渋滞というまでの現象は見られないものの、通勤目的とみられる車が非常に多く、車列状態を形成していたのだった。

まるでオイルタイマーから生み出された油粒がコロコロと坂を転げ落ちるように。次から次へと一本道に車がつづく。

これではこちらは邪魔になってしまっているだけではないか。軽い気持ちで来るんじゃ無かった・・・。

帰宅ラッシュの車の車列に割りこみ、何事も無かったように坂道を下った。

申し訳ないなということと一つ社会勉強になったなという気持ちを得たスタートとなった。

オイルタイマー

箱根峠をこえ神奈川へ

午後5時10分、三島市加茂インターチェンジより伊豆縦貫道へ。下田・伊豆市方面を選択し、伊豆縦貫道に上がる。

午後5時15分、三島塚原・箱根出口の看板にしたがい伊豆縦貫道を外れる。外れた先には三島塚原インターチェンジの信号交差点。交差点を左折すると道は国道1号線となった。

国道1号線に乗ってからは箱根峠への道をひたすら登りつづける。

さらに細分化された名称としては、三ツ谷バイパス、笹原山中バイパスの二つの区間を経由。箱根峠を通過したのは午後5時45分のこと。

午後6時前、国道1号線箱根新道「黒岩橋」を通過。通過直後には下り車線側に見慣れた駐車スペースがある。車はその駐車スペースに停車させた。

三島塚原インターチェンジの信号交差点。左端は伊豆フルーツパーク。
やさしく走ろう。たとえ急いでいようとも。
ドラゴンキャッスル
山中城2号トンネル
駐車スペース

逃げる相手は必死

午後6時、車から降りて入渓の準備。ウエーダー、フローティングベスト、ヘルメットを装着するとともに谷沿いを吹き下ろす冷涼な風が吹くことも考え、レインジャケットを着用。また、手にはグローブをはめ、登山用のポールを1本握った。

午後6時15分、本日入渓する須雲川の床固工区間の堤体に向かって林道の坂をおりてゆく。樹木の葉に覆われた林道はかなりの暗さ。そしてこれを画像に収めようとデジタルカメラでの撮影を試みたが、手ブレのような画像になってしまいうまく撮ることができない。

解決策として携えていた三脚をとりだし、わずかにもカメラが動かないように固定してやるとなんとか撮影することが出来た。

肉眼ではいろいろなものが捉えられているのに、カメラにとってはすでに営業時間ギリギリのようである。

午後6時20分、床固工すぐ横の護岸帯に到着。

!!!

ひときわ大きな茶色の物体が激しく動き回る光景が目に飛び込んできた。

茶色の物体の正体はニホンジカ。

こちらはハンターじゃないのだよ。という眼差しを投げかけるもシカはかなり動揺しておりあちこち動き回っている。

しなやかな足の筋肉で川水をドボンドボンと蹴りながら、床固工の区間を上流へ下流へと必死に逃げ回る。全体が側壁護岸に囲われた床固工区間であるため、簡単にはその外に出られないようだ。

こちらは驚きとともに見つめていたが、ついには覚悟を決めたようで川岸向こうの高さ2.5メートルほどの側壁護岸に向かって大ジャンプ。すると、前足2本だけが護岸上に着地。あとの後ろ足2本は宙ぶらりんの状態になり、躯の大部分はまだ護岸の下に向かって重力で引っ張られている。これでは落下してしまいそうな危うい状況だ。

しかし、なんとか宙ぶらりんになったところから2本の後ろ足をつかって護岸のほぼ垂直になった壁を捉えると、そこから何度も壁を蹴りつづけ、どうにか護岸上にあがることに成功。そして直後には林の奥へと消えていった。

申し訳ないなということと一つシカの逞しさを勉強したという複雑な気持ちとともに入渓点着。

落ち着いたところで高さ2.5メートルほどの側壁護岸をおりる。

2.5メートルでは少々高すぎるため、石が置かれていてもうちょっとイージーになった高さ2.0メートルほどのところより河原に降り、堤体前着。

堤体に向かうまでの林道。
逃げ回るシカ
堤体前へ

優秀な堤体前

午後6時25分、とくに焦るわけでも無く。(ここまで写真撮影によってかなりの時間を消費していた。撮影が無ければ推定30分は早く到着できていたはずだ。)

しかしまぁ、こんなもんだろうといった感じ。

刻一刻と迫りくる暗闇に対する余裕であるが、唯一すでに難しくなってきている写真撮影についてはなるべく早いうちに済ませておこうということでカメラを手にとった。

床固工区間の頭上はほぼ全面、落葉樹のみどりに覆われている。歌うときの目標物とする堤体より下流50ヤードくらいは川の中央にギャップ(樹冠の切れ目)があり、空から光が差し込んでいる。

しかし、それ以外は左右両岸の渓畔林より延びる枝と展葉する葉によって暗がりが形成されている。

本日は日没前のゲームである。通常と異なっているのは、上空より差し込む光が必ずしも悪にはならないということ。辺りすべてがまっ暗闇に包まれるその時間がタイムアップとなるため、その時間をなるべく遠ざけるためにも、光の進入経路はある程度確保されておきたい。歌に入り込むための暗がりと「ゲーム時間の延長」につながる明るさがバランス良くミックスされた、優秀な堤体前に来ることができた。

川の中央は適度に光が差し込む。
フサザクラ
オニイタヤ
イロハモミジ
オオバヤシャブシ

響かないときにやること

自作メガホンをセットし声を入れてみる。

レーザー距離計で計測した43ヤード付近は響かない。あせらず後退し、48ヤード付近に立ち位置を変えてから声を入れてやると、堤体手前、奥、側壁護岸外側の渓畔林でよく響いてくれた。

少し残念なことがあるとすれば、堤体より48ヤード付近は川のほぼ中央位置にキンボール大の大石が置かれていること。これではここを立ち位置とすることが出来ないため歌い手は右岸寄りもしくは左岸寄り、いずれかに立って歌うこととなる。

見た目の印象から左岸側を選び出して歌ってみたら安定して声が響いてくれた。風も1メートル毎秒程度、断続的に吹いてくれていてこれが響きの面においても快適性の面においても非常に心地よく作用してくれている。

川の中央にある大石を避けた水は足もとを流れ、特徴的にノイズを発生させているが、周囲の広い範囲で声がしっかり響いてくれているので、このノイズはあまり気にならない。むしろ、その決して弱くはないノイズを克服できたということが自分自身にとって充実感につながっていた。

自身、ちょっと難しいことをクリアできるようになると途端に気分がデカくなってしまうところは我ながら面白いと思った。

43ヤード付近は大石の上流側。
断続的に吹く風。
再掲。211度。
なるべくなら川の中央に立ちたい。

暗闇のなかで

結局この日は午後8時まで堤体前で遊んだ。照度計も持って入渓したのだったが、それよりも自分自身の目で見て感覚的に「日没前」と言えたのは午後7時半頃までのこと。以降30分間は暗闇の中で声を入れていくというゲーム内容に切り替わった。視覚情報が絶たれるなかで、響きに対してはより一層、明るいとき以上に集中して楽しむことが出来た。

渓という演奏場所に立って音楽を楽しんでいくためには何をすればよいか。

ノイズの音に包まれた環境下では歌い手自身が響きを聞き求めにいくことが大切なのではないかということを最近かんがえるようになった。

堤体とそのまわりの広い範囲に声を入れるというという行為。

声を入れるだけでなく、入れた声を索しにいくという感覚も大切にしていきたい。誰のためというわけでなく、自分自身が歌を楽しむために。

暗闇を見つめ、歌い、そして声を索して遊んだ。

ゲームは思い立った日が吉日。
さて、退渓後は場所を移して・・・、
小田原市内の日帰り入浴施設へ
ここは深夜営業をやっている店だ。
風呂上がりの一本。と、
豪華な食事。
これで明日以降も頑張れそうだ。

前日準備

今回は宿舎での前日準備からお届けする。

5月11日、午後7時。

午前中は宇久須川でゲーム、午後は西伊豆町堂ヶ島での観光を終え、宿舎に帰ってきたところ。

夕食と入浴もそこそこに部屋にもどる。

あすは伊豆市猫越川上流、河原小屋沢への入渓を予定している。それでは床に就くまえに前日準備ということで、ツールの確認を行うこととした。

普段、使用しているツール。by森山登真須

厚底シューズのように

ツールについてはおおよそ画像のとおり。

ウエーダー、レインジャケット、グローブなどのアパレルからフローティングベスト、ヘルメットなどの保護具。登山用ポールは歩行の補助に。他、現場でのコンディションを把握するための計器類、ICレコーダー、ビデオカメラ、図鑑、熊鈴、ヘッドライト、ホイッスル、緊急時に使うものなど。

砂防ダム等堤体類に到着すれば、お待ちかねの歌が待っている。堤体前にてしっかり声が入れられるようにするための補助器具、自作メガホンも忘れてはならない。

メガホンの収納にはテニスラケットのバッグを流用している。バッグはワンショルダー(片方の肩にかけるタイプ)で外装がナイロン製のもの。ワンショルダーの利点はヤブ漕ぎ時、樹木の回避能力に優れていること。

倒木等をくぐり抜けるとき、背中側にある収納部分をわき腹側にスライドすることで背中側のクリアランスを大きく確保できる。チェストバッグを背負っていては引っかかってしまって抜けられないような低い空間も、スルリと抜け進むことができる。

デメリットとしては肩掛けベルトが一本になるため、収納物による荷重の分散性能に劣るというところ。これについては、とにかく余計なものをなるべく持ち込まないことで解決を図っていきたい。フィールドでの経験をもとに、持ち込む収納物の最適化を日々進めている。

また、収納については上半身に着るフローティングベストも大きな役割を果たす。こちらは本来釣り用に開発されたもので、釣りの仕掛けを収納するためのポケットが複数個ついている。

フローティングベストは入渓後つねに身に着けている、さらに手の届くところにポケットが付いているという特性があるため、すぐに取り出して使いたいもの、使用頻度が高いものの収納に向いている。風速計や、堤体との距離を測ったりするのに必要なレーザー距離計については、こちらに入れておくのが便利だ。

収納力という性能、水に浮くという性能、固いものに当たった時に衝撃から守るという性能。いずれをとっても、フローティングベストを着ることの優位性は大きい。

従来言われてきた煩わしさ。独特の厚地によって足もとの視界が制限されるとか、夏期における暑苦しさといった理由から渓流師にはほとんど相手にされてこなかったフローティングベストであるが、自身は将来への期待も含めてこれを積極的に利用させてもらっている。

いつかはナイキ社が開発した厚底シューズのように、重量増、でも着用することによって歌い手のパフォーマンスが上がるようなベストの登場を待ち望んでいる。その待望の日を迎えるために、今から質量だけでも慣れておくのだという期待も込めて、このちょっとズッシリ詰め込んだ相棒を身に付け今日もまた渓に立ち込んでいる。

フローティングベスト。パーソナル・フローテーション・デバイス(PFD)とも。
計器類を持ち込む。他のアウトドア系遊びと大きく異なる点だ。
ICレコーダーと歌詞の書かれたカード。歌詞を忘れた時に困らないように。
高倍率のビデオカメラと図鑑。
緊急時に使うもの。右はポイズンリムーバー。

仁科峠を越える

翌5月12日午前6時半。宿舎となった西伊豆クリスタルビューホテルを出発。まずは昨日見て回ることの出来なかった賀茂郡西伊豆町宇久須の各所を巡ることに。

午前7時、まずは宇久須港すぐにある改築されたばかりの公衆トイレを見学&初利用。コンクリートの建屋で堅牢そうな頼もしいものが出来上がった。

午前7時10分、外観のみであるが「AGCミネラル株式会社伊豆事業所」の社屋を見学。風格滲む木造の社屋は、かつての国産板ガラスマテリアルの重要生産拠点。地元では旧社名である東海工業の名で親しまれている。

午前7時20分、黄金崎クリスタルパークまえを通過。宇久須隧道をくぐって黄金崎に向かう。

午前7時半、黄金崎近く「こがねすと駐車場」に到着。駿河湾の海に突き出る「馬ロック」や新しく完成したハートのモニュメントを見て過ごした。

午前8時には宇久須神社に到着。拝殿ではつるし雛が出迎えてくれた。もう少し暑くなった頃には地元特産のガラス風鈴が吊されることであろう。

午前8時10分、参拝を終えふたたび車に乗り込む。静岡県道410号線に沿って山を登り、仁科峠を目指す。

午前9時5分、仁科峠の少し手前「西天城高原牧場の家」にて遅めの朝食。朝食後は牧場の牛を見にいったりして過ごした。

午前10時15分に仁科峠(標高897メートル)を越えた。その仁科峠からは1.2キロ、標高にしておよそ120メートルほど下がると風早峠の丁字路。右折し、伊豆市湯ヶ島方面へ。

午前11時半、伊豆市湯ヶ島「持越川」に架かる水抜橋西詰丁字路へ。河原小屋沢へは水抜橋を渡らず直進となるが、トイレに行きたくなったため左折し水抜橋を渡る。そのまま1.7キロほど走って「天城ほたる館」まえ。鍵が掛かっているんじゃないかと心配された入口ドアは幸いにも施錠されておらず、無事に用をたすことができた。来月には観光客で本格稼働となるであろうトイレをありがたく使わせてもらった。

午前11時50分に水抜橋に戻り、進路を修正して河原小屋沢方面へ。丁字路より2.5キロほど進んで猫越集落最南端の民家を過ぎると、道はそのまま林間へ。林間に入ってすぐのところには通行止めの看板が現れ、車はその通行止め看板の手前、道幅の広くなったところに駐車した。

宇久須港
改築されたばかりの公衆トイレ
AGCミネラル株式会社伊豆事業所
黄金崎クリスタルパーク
黄金崎に向かう。
こがねすと駐車場まえ
馬ロック
仁科峠に向かう道。(静岡県道410号線)
宇久須神社
つるし雛。宇久須神社拝殿にて。
西天城高原牧場の家
牧場の家のなか
朝食。チーズ焼きカレー
朝食後の散歩
牧場の牛を見にいった。
宇久須の街並み。牧場の家から
仁科峠。手前側が賀茂郡西伊豆町、奥が伊豆市。

すぐにスタートができる

午後0時10分、車から降りて入渓の準備。

前日、宿舎にてセッティング済みのフローティングベストを身に付ける。フローティングベストのポケット、自作メガホンを入れたバッグにすべてが収納してあるので、それぞれ着用する&背負うことですぐにスタートができる。

午後0時25分、歩きの行程をスタート。目的地となる堤体「洞川No.9玉石コンクリート堰堤」は堤体のすぐ横に猫越支線林道が走っているため渓行区間はほぼゼロ。

午後0時35分に猫越川橋を通過。

午後0時45分に猫越支線林道上、目的の堤体すぐ横に到着。堤体本体すぐ下流の傾斜を慎重に降り、ようやく堤体前にたどり着いたのが午後0時55分のこと。

猫越川橋
猫越支線林道
ジャケツイバラ
コガクウツギ
マルバウツギ
クマノミズキ
堤体すぐ横に到着。

白泡の壁

前日の宇久須川同様、やはりこちらも春の堤体といった感じで水がたっぷりと流れている。

この水は三蓋山、長沢頭、手引頭といった山稜と、その支尾根を頂とする山からのものであるという。

地形図で見れば猫のひたい程度の面積である。大した範囲に見えないが、やはり数多の谷から供給され、持ちうる限りの集合体となった水はとめどなく行き、あるときはこの場所のように大きな落差を生じさせながら下流へとつづく。

大きな落差には光が交錯し、白泡の壁を作る。

壁は輝く。

渓畔林の生み出す暗がりの中からその白泡の壁を見ていると、その輝きはよりいっそう眩しいものになる。

眩しいものに対する思い。

興奮か。
不快か。
悲しみか。
平凡か。

自身は興奮していた。

メガホンをセットし声を入れてみる。

白泡の壁

歌ってみてさらに興奮が高まる

鳴る。歌ってみてさらに興奮が高まる。

歌っていたのはメンデルスゾーン。34の2番「Auf flügeln des Gesanges」。

Auf flügeln des Gesangesは冒頭の2ブロックだけ歌う。

Auf flügeln des Gesanges, Herzliebchen, trag ich dich fort,
Fort nach den fluren des Ganges, Dort weiß ich den schönsten Ort.まで。

この2ブロックだけを歌う。一回一回とくにこれといって歌い方を変えるわけでもない。しかし、立ち位置を変える。たったこれだけのことで響きが変わる。

あっちに行ったりこっちに行ったり。場所を変えながら声を入れていく作業を行う。

声を入れていく作業。それは遊び。

とにかく、まず堤体前に着いたらメガホンをセットして歌ってみる。立ち位置を変えればそれだけで響きが変化するからいろいろな場所で試してみる。遊びが最優先で、写真を撮ったり、計器類を用いて測ったりするのは後回しにしている。

堤体前で遊ぶのが一段落し、ようやくここでフローティングベストのポケットに手をかける。取り出して扱うのは堤体前のコンディションを計測する計器類。

計測を行う。計測・・・、これもまた遊びの一種。計測をして遊ぶ。

堤体を目標物としていろいろ立ち位置を変えてみる。
河原小屋沢の流れ
銘板
206度。南南西で午後型。
この距離は参考までに。
0.6メートル/秒の微風

最高の時間

結局この日は午後5時まで堤体前で過ごした。

通い慣れた伊豆の銘堤はいつもと変わらず最高の時間を与えてくれた。そして落葉樹の葉が出揃うこの5月上旬の期間は、他のシーズンでは味わえない強大な魅力に満ちている。

日照時間が長くなり、精神面に不調をきたす方もまた多いであろうこのシーズン。山へ出かけ、木々でつくられた暗がりの下で過ごしてみるのはいかがであろうか?木の下の暗がりという非日常空間の中で時間を過ごし、しかる後には新たな気持ちとともに社会生活へ戻ってゆくことが出来るかもしれない。

木は、山は、川は、いつもその場所で待っていてくれる。遠慮することは無いであろう。

そこに展開される自然物の恵みを受けながら、本当はもっともっと生きやすい世の中なのだということを知って、心身ともに健康に生きていくこと。それが多くの人に自由に出来るような時代の到来に期待している。

洞川No.9玉石コンクリート堰堤
木々が風でユラユラ揺れているときがチャンス!
コナラ
ミズメ
リョウブ
アカガシ
全天を覆う渓畔林

ノーキャスト、ノーバイト

宇久須港

5月11日、朝5時を迎えた。場所は賀茂郡西伊豆町宇久須。

暁の海。海面を撫でるように吹く風とさざ波。

ノーキャスト、ノーバイト。訳せば、

竿は振らなかった。魚は食いつかなかった。

といったところか?

夜明け前、ここまで来ていながら釣りをしなかったのは海の状況がさほど芳しくなかったため。

ちょっと荒れ気味なくらいがよく釣れる。

釣り人であった頃からの経験則は、にわかを引っ込み思案にさせた。

余計な考えだったかもしれない。

やってみればよかったかもしれない。釣れなくてもいいから。あの玉の鉄のゴロゴロいうプラスチックの塊を思い切り海に投げ入れてみれば、それだけで充分気持ちがスッキリしたかもしれない・・・。

エサ代は掛からないはずだ。なにも失うものは無い。だが、どうしてもこの日はルアーを投じる気にはなれなかった。

べた凪の海を眺めつつコンビニのコーヒーをすする。

階段をトボトボ、
公園へ。
ここは浜海浜公園。
時計を見にいく
静かな朝。

赤川との合流点へ

海がダメとも川があろうと気持ちを切り替える。

午前5時半、交通量もまばらな国道136号線を歩き、新宇久須橋より宇久須川を見に行く。

異常なし。川底は白く。

午前6時、浜海浜公園駐車場にもどり車にのりこむ。駐車場を出て、宇久須南信号交差点より静岡県道410号線を東へ。

午前6時10分、宇久須川にかかる清水橋ちかくにて停車。再度、川のチェックを行う。

異常なし。川底は白く。

ここは、伊豆半島の隠れジオスポット。清水橋ともう一つ上流側には神田(じんでん)橋。川底が白くなっているのは宇久須川と支流である赤川の水が合流したあたりから。

宇久須川の微かに濁った水に、川石・護岸ともに赤錆びだらけの赤川の水が加わると、その地点から下流側は川底が白く変色している。

見えているのは水酸化アルミニウムの沈殿物。

最も顕著に色付いているのは合流点付近で、以降下流方向は帯状に白い。帯は合流点よりおよそ2.5キロにわたって最後、宇久須川の河口へ至るまでの区間およんでいる。

宇久須川の支流、赤川の上流にはかつて珪石を採掘する鉱山があった。おもに第二次大戦終戦後には国産板ガラスの原料として、昭和40年以降は軽量気泡コンクリート(ALC)の骨材原料として産地の珪石は利用されてきた。

国家の発展に大きく寄与してきた険阻の地下資源採掘である。結果、ここでは酸性水の流出という現象が起きた。(もちろんこれは採掘前より先天的な現象として、すでに存在していたということも考えられる。)では、それがどのように環境に作用したのか?といったことについては今後、経過観察を続けていかなければならない。

最終的に宇久須川の流れ出る西伊豆沿岸地域は魚類のほかイセエビ、アワビ、トコブシ、サザエ、テングサ等の漁が古より行われてきた。これは時系列にすれば珪石鉱山が開業する以前から開業して以降、そして現在にいたるまでのことであり、さらに広く海域を見わたせば最深部2500メートルを誇る駿河湾の海では深海魚漁が、やはり今も昔も行われている。

狭い水域であるほど影響力は大きいであろう。前者の西伊豆沿岸地域とは沼津市戸田から賀茂郡松崎町あたりまでの範囲について。

これまでの堤体さがしにおいては赤川同様、微酸性~弱酸性の川・沢は伊豆半島内で他にも多数見てきており、やはり川底が赤や白に変色している場所もこの目で確認している。

焦点として捉えるべきは宇久須川だけではなくさらに多い。

植生などは川の近く、渓畔林を構成する樹木において異常現象が見られたという記憶はない。シカも相手にしないアセビ、ヒサカキ、ヤブツバキなどは一年中いつでも良い樹勢を見せてくれ、こういった植物は特殊な水のなかに含まれる微量元素を補給しながらむしろ元気にやっているのだと感じるほどである。

釣りの分野では渓流師は悪水として嫌う人が多いが、自身含めた海釣り師はむしろこういった川の近辺でいい思いをすることが多い。どういうわけか降雨時に河口より大水が出たタイミングにおいて、よく釣れるというケースに出くわすのだ。

伊豆半島全体として赤川のような特殊な川が多いため、それがあらゆる生物にどのように影響を与えているのか?ということについては今後も注視し続けていかなければならないだろう。

隠れジオスポットへ
清水橋より。
右の太い川が宇久須川。中央、細い川が赤川。
両者の流れが混じると川底が白くなる。

入渓点へ

午前6時35分、ふたたび車に乗り込み発車。宇久須川に沿うかたちで静岡県道410号線を東進する。

午前6時40分、竜神峡ます釣り場まえを通過。

午前6時45分、静岡県道410号線上、入渓点至近地点に到着。道幅の広くなったところに車を駐車し、入渓の準備。

午前6時55分、準備完了。まずは入渓点の目印となる看板の撮影に向かう。

二級河川宇久須川起点静岡県。

看板を画像に収める。この看板のすぐ横に堤高6メートルほどの堤体があり、その上流堆積地より入渓する。

午前7時、遡行を開始。ソフトボール~バレーボール大の石が敷かれた渓をのぼってゆく。ところどころには幼稚園児でも座れそうな石椅子が。ちょっと一休み出来そうだ。

堆積地をこえれば渓畔林の多い区間へ。スダジイの高木にフジ、テイカカズラが絡む暗い渓畔林の下ではしっかりと水が流れている。水深にしてくるぶし上程度の水を蹴りながら遡行をつづけた。

午前7時25分、目的の堤体に到着。(堤体名不明。)

入渓点の目印。
入渓点よりすこし上流地点
アカメガシワ
渓畔林に隠れながら遡行する。
あと少し・・・。
堤体前へ。

春の堤体

水はしっかりと流れ、いかにも春の堤体といった感じである。放水路天端上を流れる水はしっかりした厚みを持っており、その厚みある水を朝の太陽が照らす。

主堤より湛水する水は水褥池へ落ち、水褥池につづいて副堤から落ちた先の護床工区間は小池のようになる。さらに大型重機タイヤサイズの石で構成された荒瀬へと流れはつづき、荒瀬から推定1メートル以上はあろうかという深く掘られた淵に向かって水はダイブしている。

好感触の気持ちを抱くのは、堤体前におけるノイズの質について。普段、接する機会が多いのは、川石に水が衝突することによって発生するタイプのノイズ。

今まさに接しているこの堤体前のノイズも落ちこみによる縦方向への衝突が見られるが、異なっているのはその音ひとつひとつの小粒感。細かさ。

細かなノイズに集約された堤体前は声を入れるという行為を試みる前段階から、すでにこれから楽しいゲームが待っているということを予感させてくれる。

堤体は84度。東北東。
風は微風。
距離は75.6ヤード。
頭上は覆う渓畔林

声を入れてみる

自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

期待していたとおり声が良い感じで響いている。堤体前を支配するノイズがきめ細かく、そのきめ細かく迫ってくるノイズに対して声が混じり合う感覚が非常に心地よい。

水が落下したときに発生するノイズに対して、人間の声をかき混ぜていくという行為がこれほどまでに心地よいのは、その混じり合う音同士の攪拌が非常にスムーズに行われているからであろう。

豊富な落水に起因する空気の動きも感じられ、微風は声をよく運んでくれている。渓畔林の葉によって形成された影の下に入り、歌い手自身が音に集中できていることも大きい。

自然体にしていながら音を聞こうとする体勢になることが出来、結果、響きに対する感度が上がるという好循環に陥っていた。

ハゼノキ
コナラ
高いところにあるヤブニッケイは見上げる。
右岸側
左岸側
ノイズがきめ細かい。

つくられた空間の中で

結局、この日は午前11まで堤体前で過ごした。

経験則・・・、であろうか?堤体前の環境は砂防ダム音楽家に歌う行為そのものを誘った。

その質の良さ。まだ一日の半分も過ごしていない者を歌へと駆り立てる良質な堤体前のノイズ。

正直、堤体前に到達した段階で歌おうとする気がどれほどあったのか?ということについては記憶が無いが、結果的に声を入れるという行為が出来たというについて、また、その最中に感じられた非常に心地よい、力まなくてもいいという感覚は、自然界からの誘いをうまく受け取ることが出来た結果なのではないかと考えている。

他動的につくられた空間の中で自分自身がやったことといえば、ノイズに対してただただ声を合わせにいったということだけ。

歌うことが出来て、歌い手自身の心の中に沈んでいるものを外に放出することが出来、非常に心地よい感覚に包まれながら遊べた。

最高の朝を満喫することができた。

良質なノイズに声を合わせていく。

急きょ変更!

富士川クラフトパーク

5月2日午前6時。場所は山梨県南巨摩郡身延町「富士川クラフトパーク」。

長いゆるやかな階段を下りてネモフィラ畑に向かう。

階段の中央には下の噴水へとつづく水路。水は流れていない。

夜間は噴水を回すモーターを止めているようである。夜が明けた現在も稼働にはまだ時間が早いようで、御影石の並べられた水路は薄く表面が濡れているだけだ。

そういえば昨日は雨が降ったなぁ・・・。

本日は雨後のゲームである。川の状態が心配だ。本日入る予定の下部川は富士川を挟んで対岸側にある。

目の前にある噴水のモーターも、川の水量も自らの手でコントロールすることはできない。さらにいえば堤体の方角も、太陽の位置も。歌い手である人間にとって出来ることといえば、その時期、その時間を狙って入渓することで、太陽をある程度思い通りの方向に構えたり、渓畔林の生育具合がある程度予測できたりするくらいだ。

自分が何かを変えるんじゃなくて、相手が変わるからそれに合わせて自分が動くということ。

便利な世の中にあって、敢えて不便なやり方を選んでいる。常に受け身の立場で動くその一連の行動は一見、不幸で無駄の多いことのように思えるかもしれないが、成るようにしか成らないという“結果”に応じてリアクションしているのは結局のところ疲れない。

受動的であるということは楽なのである。

演奏施設である堤体前についてなにか作るという思考はない。作るということはエネルギーを使うこと。

土木職人がたまたまそこに置いた石があり、流れてきて自然に置かれた石がそこにあり、たまたまその場所に散布されて根付いた植物が生えていたり、その植物に誘われてどこからかやってきた動物が息付いている。

偶然その場所に出来たものを見に行く遊びをしている。

そう考えると、現場で起きていることをあまりにも考えすぎるのは良くないことなのかもしれない。

肩の力が抜けてきた。よし、今日も行ってみよう。

水の流れていない水路。
メタセコイアの葉
触ってみる。
ツツジのなかま
ひとけの無い静かな朝の公園
ネモフィラ畑

毛無山登山口駐車場へ

午前8時半、富士川クラフトパーク駐車場を出発。「上沢」信号にて国道52号線を横切って東進。富士川にかかる富山橋をわたり直後にあらわれる波高島トンネルをくぐる。

午前8時40分、波高島トンネルを抜けて800メートルほど走ると右手側に橋。橋の名称は「いで湯橋」。このいで湯橋をわたると道は下部温泉郷に入った。直進し、JR身延線と交差する下部踏切をわたってすぐ左にある下部温泉駅に立ち寄る。

駅前駐車場に車を停め、駅舎の離れにあるトイレへ。トイレを出ると下部川のチェックに向かう。

午前8時50分、下部温泉駅近くの「ふれあい橋」より下部川をのぞき込む。前日の雨による増水は・・・?

どうやら大丈夫そう。水はいたってクリアーで、しかも荒れている様子も無い。ホッと胸をなでおろす。ふれあい橋を完全にわたりきり、下部リバーサイドパークと湯之奥金山博物館の足湯をすこし見てから早足で下部温泉駅前にもどった。

ふたたび車に乗り込み出発。

道なりに東進し、神泉橋、善隣橋をわたりながら下部温泉街を抜けきる。

午前9時半に身延町湯之奥「門西家住宅」付近を通過。湯之奥集落の最終民家も越え、さらに奥へ奥へと車を走らせ午前10時05分、毛無山登山口駐車場に到着した。

下部踏切と下部温泉駅
ふれあい橋からの下部川
下部温泉街をぬける。
イチハツの花
冬季閉鎖のゲートを越える。
奥へ奥へとすすむ。
毛無山登山口駐車場

スタート直後は寒い?!

午前10時05分、毛無山登山口駐車場のすぐわきを流れている下部川の様子を再度チェック。さきほど確認した下流部同様、やはり荒れている様子は無い。入渓の準備に取りかかる。

上半身はTシャツの上にレインジャケット。その上にフローティングベスト。下半身はスラックスを履いたまま上にウエストハイウエーダー。

5月上旬、標高900メートルという条件下、本日はこのシステムで臨む。気温は15.5度ほどあるものの、ときおり冷たい風がピューッと吹くタイミングにおいては寒い。

入渓前の準備段階で寒さに不快感を覚えたところであるが、いったん歩きはじめれば丁度よくなることであろう。スタート直後からは渓行にてダラダラ登りほどの傾斜を上がり続けていく行程が待っている。堤体前で過ごすときに着る長袖シャツやフリースはバッグの中に収納した。

午前10時半、毛無山登山口駐車場のガードレールの切れ目から下部川の河原に降りる。ここが本日の入渓点。入渓点直後には4~5メートルクラスの堰堤を確認。右岸側から堰堤を巻いて堆積地に上がる。

さらに100メートルほど遡行してまた堰堤。今度はバットレスタイプの鋼製堰堤で高さは4~5メートルほど。これも巻いてさらに100メートルでまたしてもバットレスタイプの堰堤。

以降、バットレスタイプ・重力コンクリートの堰堤が入れ替わり立ち替わり出現し、そのたびに右岸側・左岸側いずれか巻きやすそうな方向を選んで一つ一つ越えていった。

堰堤は全部で9基越えた。ようやくの目的地は10基目の堤体。到着時刻に腕時計は正午を示していた。

入渓点より。いきなりの堰堤越え。
堆積地を歩く。
数えて8基目の重力コンクリート堰堤。
スッポンダケのなかま。
目的の堤体に着いた。

ミスが発覚・・・。

堤体にたどり着いて、まず真っ先に探したもの・・・。

太陽。

まずは太陽がどこにあるかと確認に入る。上を見上げ、分厚い雲が払われるそのときを待つ。

自分自身が犯してしまった大いなるミスに気がつくのに、さほど時間は掛からなかった。

分厚い雲が薄くなってきて、強く光る一点がぼやけながらも徐々に把握できるようになってきたときのことだった。

ん?

なんと太陽が現れたのは、堤体に向かって正対したときで右斜め後方。程度としては完全に背中側とまではいかないが、右手を水平方向に伸ばしてそのいちばん後ろに下げられるくらいの角度で後方にある。

ガーン!!!

原因は過去にこの場所に訪れたときのデータの読み間違え。148度、南南東の堤体を間違えて南南西であると誤認。南南東の堤体でベストタイムということを考えれば、この堤体はまぎれもなく午前型の堤体である。

もうとっくに左岸側に移ってしまった太陽を見ながら、言葉では言い表せない気持ちになった。

冒頭の話しではないが、太陽も堤体本体も移動式のセットであれば自分自身の好きなように動かして、光の位置関係を調整することができる。しかし、現実にそんなことは出来ないわけで、今このシチュエーションにおいて自身がやれることといえば、太陽を背負った向きのまま歌うことだ。

太陽が堤体の水裏に反射して出来た非常に明るい空間の中で、多大なる違和感とともに歌えということか。

う~ん。

夕方・・・、夕方の暗がりを待とう・・・。

正午過ぎに再計測。コンパスが太陽光により輝いてしまっている。
太陽光が反射体にあたると空間が明るくなる。
堤体水裏の斜面、落水が反射体となる。
銘板

急きょ変更!夕方ゲームへ

かくしてゲームは夕方、日没前のその時間まで持ち越されることとなった。

長丁場を堤体前で過ごすことが決定・・・。になったわけであるが、その待ち時間については何ら億劫であるとか面倒だという気持ちは湧いてこなかった。

むしろ大好きな堤体前で長く過ごせることに喜びを感じていた。

自慢じゃないが「砂防ダム音楽家」として活動してきていて、やっぱり砂防ダム等堤体類(この日は治山ダムであった。)そのものが好きなのである。

嫌いだったらこんな山奥に行っていない。これがあって、これで何度も何度も遊ばせてもらって今日まで生きてくることができた。

決して響きのいい、見た目のよい堤体に出会うばかりでないことはもちろんだが、それも一つの堤体の個性として勉強させてもらってきていて、ときには響くかどうかの勝負をして遊んでいる。

堤体前にいるだけで楽しい。もちろん歌えばもっと楽しい。どんな堤体でも・・・、とまでは言わないけれど。

砂防ダムというものは環境破壊の悪だ。という向きもあるけれど、それは過去のことである。これからはこれをレジャー施設として、レクリエーション施設として利用していくことが新世代には求められる。悩める21世紀人類の心の支えになってくれる友はとてもやさしい。友はこうしている今この瞬間においてもガラガラと音を立てながら、山の奥で歌い手が遊びに来てくれることを待っていてくれている。

それはどんなタイミング、いつでも。

こんなにも偉大なものを悪と決めつけて拒絶しつづけるのは本当にもったいないことだと思う。

堤体に遊びにでかけよう!

木々の枝葉の下で過ごす。
サワグルミ
オノエヤナギ
ホソエカエデ
こちらは隠し持って行った最中。非常食に変わった。
最中は駅前で密かに買っていたものだった。

大きなプレゼント

この日、堤体前をあとにしたのは午後5時15分のこと。

結局、太陽の光のあたりかた、見えかたが良くない状態だとも言いながらも好奇心が勝ったりして、ときおり歌ったりしながら5時間以上の時間を堤体前で過ごした。

なかでもとくに印象的だったのが、太陽が山の稜線の中に完全にかくれた午後4時半以降の時間。

夜の帳が下りようかという緊張状態のなか、ピーンと張り詰めた空気の中で明らかに自分自身が歌に対して集中できているということがわかった。

風の無い、空気のほとんど動かないシチュエーションに対して瀬のノイズは大きく、響き作りは困難を極めたが、高い集中力のなかで何度も声を入れることにトライできて楽しかった。

自分自身で意図的にメンタルをコントロールするのではなく、環境に身をまかせながら自然に集中力をあげてもらえたのは大きなプレゼントであった。

肩の力を抜いて、受動的に目の前の景色にのぞむことが出来たと思う。

充実感をもって堤体前をあとにした。

段差が多く賑やかな溪だ。
太陽が山の稜線にかくれたのは午後4時半頃のこと。
風は無風。
細い木がたくさん生えている。
響きの面においては厳しかった。

木賊堰堤

釈迦堂パーキングエリア上り

4月7日。本日は高速道路にあるパーキングエリアからスタートする。

山梨県甲州市勝沼町「釈迦堂パーキングエリア上り」。時刻は午前6時半。

まだ土産物を扱う店舗も食堂もオープン前の状態。

あたりを見回す。

ちょっと遠くの景色が気になる。

方向は建物の反対側。距離にして200メートルほど。

視線の先には「釈迦堂パーキングエリア下り」。そのパーキングエリアから一段高くなったあたりの景色が非常に賑やかなのである。

上り線パーキングエリアを出て博物館に向かう。

釈迦堂遺跡博物館

パーキングエリアの通用口から出て、東京方面に少し歩いてから高速道路にかかる高架橋をわたる。

そして東京方面に動いた分を取り戻すように今度は甲府方面に歩くと、ひときわ大きな建物の前に出ることができた。

釈迦堂遺跡博物館。

朝の7時前でやはりこちらも開館前のようであるが、それに反して多くの車が駐車場に詰めかけている。

何故?などという疑問はまったくもって必要なく、その明らさまな答えは自身の目に否応なしに飛び込んでくる。

桃の桃色。白色。さくらも咲いている。さらには「臨時駐車場」という看板。

桃祭りなのか?さくら祭りなのか?

スマートフォンで調べるもとくにタイトルは見つからず。

目の前には博物館の植栽の花桃。建物のすぐとなりでは「駒沢農園」の桃畑。眼下に山梨県峡東地方の平野がこれまた桃の花色で染まっている。近くに遠くにそれらを一枚一枚丁寧に写真に収めていくのが現地に出向いた人々の仕事。

自身もせっせとそのタイトル無し、撮影義務なしという仕事に加わり、カメラにたくさんの写真を収めた。

写真を撮っていくなかで面白いのは、博物館の無機質な感じと桃の花の温かさという相反する両者を一枚の画に収めるという作業。

これは普段自身が行っている堤体と渓畔林を一枚の画に収めるという行為にとてもよく似ている。

砂防ダム等堤体。渓畔林。

両者はそれぞれ個別に撮影することにもちろん価値があるわけだが、さらにお互いがミックスされることによってその魅力が何倍にも増す。

渓畔林は美しき見た目のみならず。

とくに音楽目的で何基もの砂防ダム等堤体類を歩いたことがある人にとっては、樹木・渓畔林から得られる響きというものが、歌うことの成功・失敗に大きく影響するということはすでに周知の事実であることと思う。

堤体前の木が生えたところは、そうでないところに比べて圧倒的に響きが良い。自身は「反響板効果」なんて呼んでいるわけだが、木の密度とか、木で構成された渓畔林の奥行きであるとか、木が生えている斜面の感じなどでその影響力もまた異なる。

したがって、実際に響きが良いのかどうかは現地に行って歌って確認しないといけない。

予想どおり良く響いたか?

予想に反して響きは悪かったか?

予想に反してめちゃくちゃ豊かな響きが得られたか?

事実を確認する行動を取らないといけない。事実を確認して、そのまま遊べるなら遊べば良いし、何かしらの対処が必要ならばその方法を考えて後日、再訪ということになる。

まずは現地に出向くこと。そこから全てが始まる。

今回、釈迦堂遺跡博物館を訪問したのは事前に得ていた当地の観光情報から。観光情報をもとに実際行ってみれば、うわさに違わぬ景色をしっかりと自身の目で確かめることができた。

情報の発信者には感謝申し上げたい。

釈迦堂遺跡博物館前。
釈迦堂遺跡博物館
駒沢農園の入口
駒沢農園内。ユキヤナギ、菜の花、スイセンなども咲く。
レンギョウもこの咲きよう。(駒沢農園内)
平野のピンクがかった部分はすべて桃の花。

釈迦堂パーキングエリアを出発

午前8時、釈迦堂パーキングエリアに戻り、建物内にあるイートインスペースにて朝食。朝食後は、同じく建物内の土産物店で桔梗屋のどら焼きを買ったのち、車に乗り込んだ。

午前8時半、釈迦堂パーキングエリアを出発し東京方面へ。

午前8時40分、勝沼インターチェンジより中央自動車道を降り、国道20号線にてやはり東京方面へ。

午前9時、いったん車をおりて国道20号線「立会橋」の橋上より本日入渓する「日川」の様子をチェック。

異常なし。

午前9時5分、再び車に乗り込みさらに東へすすむ。

午前9時15分、国道20号線「景徳院入口」信号より左折し、山梨県道218号線に入る。

午前9時25分、市営景徳院駐車場にて停車。駐車場内にある公衆トイレに立ち寄ったあと再出発。

山梨県道218号線にしたがって進み、砥草庵、日川渓谷レジャーセンター、天目トンネルなどを通過。

午前9時35分、やまと天目山温泉の日帰り入浴施設入り口にある「天目橋」のさらにもう一本上流側「六本杉橋」をわたり、700メートルほど坂を登ってゆく。

午前9時40分、甲州市大和町木賊「天目山駐車場」に到着。

釈迦堂エビ塩ラーメン
弁当コーナーも充実していた。
勝沼インターチェンジ
国道20号線を東京方面へ。
国道20号線に架かる「立会橋」
立会橋から日川をチェックする。
国道20号線「景徳院入口」信号
甲州市市営景徳院駐車場
天目山駐車場

待機スペースに

午前9時40分、天目山駐車場にある消防用の水栓とホースの格納庫前を避けて車を駐車する。

さて、本日入渓する日川であるが、目的とする堤体は「木賊堰堤」。事前の調査によれば堤体の方位は250度で西南西。

予想されるベストタイムとしては午後2時から3時頃までの間。歌い手、堤体、太陽の3者が一直線に並ぶ時間である。放水路天端上を流れる水が強く光り輝く現象が見られる時間がこのとき。理想を言えば、木賊堰堤の堤体前に何らかの「影」に関する要素が用意されているとなお良い。

強く輝く光と、暗がりとして存在する影。両者の明滅の差を一つの視野の中に取り込んで、聴覚的にだけでなく視覚的にも堤体前を楽しみたい。

重要な設定時刻内にしっかり遊ぶための準備。頭にあるのは、事をはじめる前に待機スペースにてしっかり体を休ませるということ。

車を降りて、天目山駐車場のすぐ東側にある階段を登ってゆく。階段を登りきれば「栖雲寺」という寺。その栖雲寺の境内にあるのが「天目山石庭会館」。入口の前にある箱に志納金300円を投函したのち、建物の中に入る。

引き戸を開けてすぐに見られる部屋が「富士之間」。たたみ17畳ほどの部屋は南向きにて日当たり良好。さらに廊下を歩いて奥には「石之間」という25畳の部屋もあるところ、本日は富士之間で待機することとした。

部屋の隅に置かれている座敷用長机の折りたたみ脚を立て、ひっくり返して据え置く。その長机に携えてきた袋をやおら乗せ、取り出した箱もあけて手にしたのは先ほど釈迦堂パーキングエリアで買ってきた桔梗屋のどら焼き。いっしょに用意した桔梗屋オリジナルのペットボトル茶とともにいただく。

本日、エアコン等空調設備なしの日本間は、室温が20.5度。暑くはない、寒くもない快適な温度だ。

完食後。

甘~い粒あんのどら焼きで上がる血糖と、室内の快適温度と時間的余裕もあればやることは大体決まってきてしまう。

暁をおぼえず・・・。

ほどひどくならない程度に。

春眠をむさぼった。

天目山石庭会館
「石之間」はたたみ25畳という広さ。
石之間から禅庭をのぞむ。
引き戸を開けてすぐの「富士之間」
桔梗屋のどら焼き、緑茶と駒沢農園の桃(桃は瓶が開かなかった・・・。)
さんすいにせいおんあり!
階下にはきれいなトイレがある。

時は来た

昼もまわって午後1時、天目山石庭会館を出て天目山駐車場にもどる。

駐車してある自家用車にて入渓の準備。

足もとはウエーダーで固め、上半身は長袖シャツとフローティングベスト。背中には自作メガホンの入ったバッグを背負い、頭にはヘルメット、片手には登山用のポールを1本にぎる。

午後1時半、天目山駐車場に接する道路隔てて反対側の民宿「さいぐさ荘」前の坂を下ってゆく。この坂は竜門峡遊歩道という整備された道で、降りはじめはコンクリート階段敷設のエントリーしやすい趣き。

さらに降りていって日川により近いところではスギ林の林間を抜ける道。間々の大雨によって手すりの基礎が壊れてしまっている箇所も見られるが、渓谷沿いの遊歩道にしては比較的安定している。

木賊堰堤は遊歩道を降りてゆく途中に確認。木々の葉のあいだから覗かせる白泡の光と音による圧倒的な存在感は、その地に向かってすすむ歌い手に方向感覚をガッチリと握らせ迷わせない。

やがてスギの林間にて遊歩道を外れ、日川に移る。

午後2時に堤体前着。

さいぐさ荘まえ竜門峡遊歩道。
コブシが咲き始めていた。
春の陽気のなか堤体に向かう。
遊歩道はやがてスギの林間に。
堤体前着。

べらぼうに高い

水はガラガラ勢いよく流れている。

およそ2ヶ月前に当地を新規開拓して見つけた堤体は、当時よりも若干水量アップして勢いよく流れている。ちなみにその新規開拓当日の天気はくもり。

晴れた日の堤体前は、本日が初となる。

方位は前述のとおり250度。堤体本体のスペックは高30.0m長75.0m立積29354.35㎥(銘板より)。

30.0mは副堤の基礎部分から主堤の袖天端までの長さを示す値であろうが、べらぼうに高いということは言うまでもない。とくに主堤は放水路天端より溢れた水が、主堤の水裏斜面を転がり落ちるあいだををはっきりと目で追いかけられるほど縦は長い。

上流より途切れることなく供給される水が、次々と底を切って空気中に飛び出る。

音を伴い生命感に溢れる白泡。

そして一瞬、放水路天端上を通過するときの水は強く光り輝く。光のもととなるのは太陽。

太陽光の当たらない水裏斜面を転がりおちる水(影)、反して放水路天端上を一瞬通過する水(反射体)には直射日光が降り注ぐ。(画像A)

水裏斜面に光が当たらないようにすることで、堤体前の空間が無駄に明るくなることを防いでいる。反して放水路天端上はいちばん明るく。いちばん明るい部分があることによって、そのすぐ下にある影の部分はよりいっそう暗いものとして捉えることができる。

方位は250度。
銘板
距離は100~115ヤード付近。
渓からのノイズも申しぶんない。
画像A。堤体の水裏は向かって左側の斜面。水表は向かって右側の斜面。

より良い環境を求めて

午後2時、自作メガホンをセットし声を入れてみる。

鳴ったり。

鳴らなかったり。

響きが安定しない展開。堤体前の空気が風で揺すられているあいだは鳴っている感覚を得られるが、その風がピタリと止まった瞬間、声が失速する。

風が吹くのを待って声を入れてみるも、すぐにまた止まってしまうのでフレーズが続かない。

歌い心地はきわめて悪い。

午後2時20分、ベストタイムを迎えた。歌い手、堤体、太陽の3者が一直線に並ぶ時間である。

光の明滅差は?

影が弱い。

堤体前の空間が白んでいて、これでは歌い手が救われない。もっともっと堤体前に暗がりが供給されていて、空間が色づいてきたり、影が全体的に覆ってくれさえすれば歌に対して楽に入り込めるようになるはず。

現在の状況ではまだまだ空間が明るすぎるので、歌い手は歌に集中しようと相当意識的にならないといけない。

もっと自然体で歌うために暗がりが欲しい。暗がりの供給元となるのは堤体前に生える樹木で構成される渓畔林。

渓畔林が葉に覆われ、影が生成されるようになればもっと楽に歌えるようになるはずである。

この日は結局、退渓時刻となるなる午後4時まで堤体前で過ごした。決して良いとは言えない状況ながらもときおり思い出したように歌ってみたり、周辺の木々を観察したりしながら、巨大堰堤に見守られる揺籃になって河原を這いまわった。

今日得られなかったことはまた次回。事実の確認をするためにまたこの地を訪れることとしたい。

次回はもっと良い状況で歌えることを期待して。

1.5メートルの向かい風。長続きせず少しずつ吹く。
ベストタイムは午後2時20分頃。
渓畔林。枝が葉を付ける今後に期待。
落ち葉。左からイチイガシ、ケヤキ、クマシデ、アカメガシワ、フジ。
キブシの花穂
フサザクラの花
バッコヤナギの花穂
午後4時まで遊んだ。

ワニの背中

ワニの背中(イリエワニ)

今回は、雨が降ったので雨の日対応ということでお送りする。

演奏施設となる堤体前。その堤体前に出かける折りに、毎回調べるのが当日の天気。

晴れ予報の日。くもり予報の日。雨予報の日。

行き先を決める判断基準のひとつとして、天気予報のデータを参考にしている。

―この日は晴れるから、○時頃にこっち向きの堤体に入りたい。―

とか、

―この日はくもりだから、午前中~午後早い時間は周辺環境の観光地で過ごして、日没前に夕方ゲームで堤体前に立ちたい。―

とか。

あらかじめ空の状況を予測して、その通りうまくいったときの喜び。これ以上のものは無いであろう。

では、そのように行く日の天気のことを完璧に知った上で、思ったような状況の堤体前にいつも立たせてもらえるかというと、これがなかなか難しい。

まず、渓行の計画はどれくらい前からという点。直近では1週間前。長いところでは1~2カ月以上も前から、どこの堤体に行くかと決める。

問題となるのはやはり天気予報なわけで、1週間以上も前から当日の正確な天気を知るということがなかなか難しい。

宿泊先の予約もリュックサックもおやつもバッチリ済ませて、いざ当日~

雨。

なんてことは、誰しも学生時代の修学旅行から経験してきたことではないだろうか?

雨が降ったら雨の日対応で活動を行う。

雨が降ったら中止にするのも一つの選択肢。

重要と思われるのは、歌い手自身が納得するかたちで当日をおさめるということ。

雨の降りしきる中で楽しくゲームができた。

雨が降って堤体に向かわなかったから、事故から免れることができた。

そう考えると、行くのか?行かないのか?もはや、その判断を行う地点からこの遊びは始まっているとも思えてきた。

熱川バナナワニ園

熱川バナナワニ園

2月23日、午前9時。

雨予報ということで向かったのは賀茂郡東伊豆町「熱川バナナワニ園」。

まずは当施設に留まりながら、雨の様子をうかがうことに。

入場チケットは本園ワニ園にて購入。

今回で3度目の訪問となったバナナワニ園。

本園ワニ園と植物園、国道135号線隔てて反対側にある分園。計3園あるうちまず向かったのは植物園。

バナナワニ園3園のうち最も展示が多く、経路も長い。よって、ややもすると。人によっては。体力勝負になりかねない?!植物園から見学をスタートすることとした。

先ほど購入したばかりの入場チケットを入り口にて提示し、温室内へ進む。

1号から8号まである温室内には所狭しと植物が展示されている。各温室にある引き戸の出入り口は、室内の温められた空気を逃がさないようにするための工夫だ。

温室のガラス越しに、屋外の雨を見ながら通路を進んでいく。

湿気を帯びている。

空気は。

それも、においを伴っている。

これは、甘いにおい。とか、美味しそうなにおい。とか、そういった類いのものでは無く、本当に生きた植物たちの呼吸するにおいだ。

「植物園」の看板を掲げているが、「テーマパーク」としての機能も併せ持つ。

所狭しと植えられた植物により、通路は圧迫され歩きにくい。レジャー施設の中にいるはずなのに、自らの鼻は草木の呼吸のにおいに詰められ、視界は熱帯性植物に遮られて妙にドキドキしてしまう。

居心地としては絶対というまでに良い感じはしない。しかしながら、逆にこんなにもドキドキさせてくれるあたりはむしろテーマパークとして優れているかな?と。

1号温室のブーゲンビレア
インコは温室間の屋外通路に展示。
ネペンテス
カラテア・マコヤナの葉

ワニ園へ移動

午後12時10分、植物園からワニ園へ移動。

こちらもやはり植物園同様、屋根付きの施設。ワニ池のある大型ドームは植物園の各温室とは打って変わって明るい雰囲気。

ワニ池に使われている温泉(加水調整済み)は伊豆のスタンダード、ナトリウム―塩化物泉で匂いは少なめ。

数多の猛獣が棲んでいるこちらの棟のほうが、植物園よりドキドキのかけらも無くあっけらかんとしている。

人々はみなリラックスムードで写真撮影などに興じている。

冒頭画像のイリエワニ
表面はいかにも固そうだ。
クチヒロカイマン
ホウシャガメ

雨の影響か・・・?

午後12時50分、いったん昼食を摂るためバナナワニ園至近の食堂に入ることに。昼どきということもあって店はウエイティングボード対応。名前を書いてしばし待つことになった。

ほどなくして、店の中へ通してもらった。通す前の段階で、「お時間かかりますが、大丈夫ですか?」との事だったが、二つ返事でかえす。雨の日のゲームでは太陽の位置を気にしなくていいのだ。

満席に埋まる店内。ここに入る前、向かいの「ますみ食堂」もちょっと覗いてみたけれど、やはりかなり混んでいる様子であった。

雨の影響か・・・?

伊豆半島各所、様々な観光スポットがあるが、雨の日でも楽しめるというところは意外と少ない。

殊に東伊豆町というところでいえば、ここ以外にはほとんど思いつかない。あとは、イチゴ狩りのハウスか土産物の物販スペースくらい。屋外で温暖な気候を堪能できる場所が多いという点で、雨が降ってしまうと逆に都合が悪くなってしまったりするのは難しいところだ。

ほとんど傘をささなくてよい、雨をしのげる場所としてバナナワニ園の存在は大きい。

入渓前に立ち寄らせてもらった、貴重な待機スペースであった。

うめや食堂
アジのつみれだんご汁定食
今回の訪問で多くの時間を費やした8号温室。
オオオニバスの浮く池
カランテ
パフィオペディルム・ルヴィガテム
カトレア・グアテマレンシス
オンシジューム・スプレンディウム
パフィオペディルム・スピセリアヌム
コルクに着生したランのなかま。

堤体に向かう

午後1時40分にうめや食堂を退店。

午後1時50分、依然として止まぬ雨の中、バナナワニ園の駐車場を出発。堤体に向かう。(今回、分園は時間の都合でスルーすることに。)

本日入る沢は熊明川。

バナナワニ園の駐車場を出て、奈良本の丘陵地帯を登っていく。ところどころに現れる源泉井のやぐらは当地域ならではの光景だ。

ストロベリーファーム太田農園、自性院、間当橋などを越えて、奈良本分譲地の最終民家を越えると道は林道の様相を呈す。

熱川ウインドファームの風車群を見ながら林道を登り続け、「林道大川小溝線」の看板にて右折。右折したあとは3.7キロの行程。坂を下るようにして進み、※ブルドーザー道のバリケードを見つけたら近くの道幅広くなったところに車を駐車する。

※バリケードには午後3時に到着。計算上、1時間10分の行程となるが、これは写真撮影等の時間も含む。バナナワニ園~バリケード間の距離は16.2キロであるため、通常は1時間未満の行程で到着することができる。

町内のいたるところに源泉井が。
間当橋
熱川ウインドファームの風車
「林道大川小溝線」の看板

雨で増水すると・・・、

午後3時、車から降りて入渓の準備。レインバイザーを装着し、雨の中でもしっかり目が開けられるようにする。

ほか、ウエーダー、レインジャケットなどはいつも通り。

午後3時10分、バリケードのわきを通って熊明川に沿うブルドーザー道に入る。

本日入りたいのは、熊明川の7基ある谷止工群のうち下から5基目。7基の下流側にある堤体ほど建造年数が古く、上流側ほど若い。バリケード通過直後に現れる1基目、昭和61年造の谷止工周辺は渓畔林が濃く、ブルドーザー道からの視界がはっきりしない。

谷底の熊明川をはっきり目視で確認することが出来ない。しかしながら、明らかにこの川が増水しているということをその轟音から判断することができる。

普段は本当にチョロチョロとしか流れていない川。源頭となる箒木山の頂上からは1~2キロと距離が離れていない最上流部の谷止工群は、雨で幾らか増水すると良い案配になる。

ブルドーザー道にしたがって歩き、2基目から4基目の谷止工もクリア。

午後3時半、目的の谷止工に到着。

バリケードのわきを通ってすすむ。
ブルドーザー道
下から2基目の谷止工
目的の谷止工に到着。

ワニの背中

水は降雨のおかげもあってよく流れている。

あらかじめ決めていた立ち位置は、ブルドーザー道の終点のようなところで一段高くなっており、増水した強い流れから逃れることができる。

立ち位置から堤体までの距離は62ヤード。高低差は目視可能な堤体基部まで推定10メートルほどあり、大型ダンプのタイヤサイズくらいの石で構成される段差渓。

流路は谷止工下流部よりほぼ直線的に下っており、段差渓でノイズを発生。堤体前はかなり騒がしい。

メガホンをセットし声を入れてみる。

鳴らない。

やはり、目の前に広がる段差渓のノイズが、堤体前の音環境を支配してしまっている。

ひとつひとつの段差から生まれるノイズの強さ。プラスしてその範囲もタテおよそ50ヤード(約45メートル)×ヨコ約10メートルほど。

単純計算で約450平方メートル。ワニの背中よろしい段差渓から発生するノイズはあまりにも音を響かせるのに難しすぎる。

背中の凸面に立つなどして立ち位置の変更もしてみたが、これはむしろノイズ発生源との距離を近め、さらに暗澹とした。

渓畔林はしっかり生えているものの離れすぎている。音を響かせるのに有利なのは、左右両岸ともにもっと川の中央に切れ込んでいてお互いが狭まった状態。横方向に空間がポッカリ空いていて、何の引っかかりも無く、音は外の空間へと逃げていってしまう。

矢印部分を立ち位置とした。
段差渓はワニの背中のごとく。
騒がしい中でも意識は堤体本体に。
銘板

退渓へ

午後4時半、退渓することに。

音が響かないながらも、この場に来て歌えたことはよかった。

まずは堤体前に立てたこと。

これは運が無ければ成し得なかったことである。雨が降っているというなかで、過去に拾ったデータから現場の今日の状態を予測して、実際にこの場に来てとりあえずは声が入れられたこと。

雨がもっと大降りであった。風がもっと強かった。中止にせざるをえない状況に陥った。ということにならなかったのは、運が良かったことに他ならない。

今日の状況では音が鳴らせなかった。しかしながら、今日のこの雨はやがて止み、川の水量は間違いなく減少に転ずるであろう。

では、そのとき歌ってみたらどうなるのか?

今日の結果は今日の結果でしかない。落ちこむことも無い。

鳴らせるチャンスはきっとあるはずだ。

距離は62ヤード。
ほぼ真西向きの方角。
追い風で微風。
運に恵まれて立つことが出来た。
堤体前。上流側から見たようす。
今日の結果は今日の結果でしかない。