西沢リベンジ

彩甲斐公園

山梨市三富川浦、笛吹川上流西沢の堤体にチャレンジしたのはおよそ4ヶ月前のこと。(山のタコ焼き屋

当日は堤体を湛水する水が太陽光によって照らされるという、視覚上の特長に触れながら日没前ゲームをおこなった。

堤体の方角と時間ごとの太陽。両者の位置関係を考えながら、計画的に歩いて現場に立つことが出来たことにより、魅力的な状態にある堤体に接することができた。

堤体の見た目。ということに関しては、少ない時間ではあったが満喫できたと思う。

では今回は、さらに響きの面について楽しむことが出来るよう挑んでみたい。

前回上手くいかなかったことについてのリベンジ砂防ダム行脚となる。

彩甲斐公園の四阿
トチノキ
トチノキの冬芽
肉眼ではうっすらと富士山が。(画像では×だった。)

彩甲斐公園

2月10日、午前8時45分。山梨市牧丘町、彩甲斐公園。

長い階段を登りきり、丘の上にある四阿へ。四阿からは、うっすらと富士山が見える。

雪。

今週月曜日となる2月5日から翌6日にかけて山梨県内では全域で雪が降った。ここはだいぶ日当たりが良いようであるが、ところどころ公園の芝生の上に雪が残っている。

本日入渓する笛吹川上流の西沢は、現在地よりもさらに500メートル以上も標高が高い地点。

雪はさらに深くなるに違いない。

雪見のゲームになることは確かだ。

準備はしてきたつもり。

果たして・・・、どうなるか?

午前9時20分、階段を降りて下にある道の駅「花かげの郷まきおか」へ。

花かげの郷まきおかにて朝食を摂る。さらに昼食用にとパンを購入した。

道の駅「花かげの郷まきおか」
朝食に摂った「山菜そば」
こちらは豚の角煮が入ったちまき
昼食用にパンも購入。

国道140号線

午前10時、トイレを借りたのち車に乗り込む。花かげの郷まきおかを出発し、国道140号線を雁坂トンネル方面へ。

笛吹川の流れに平行する道をひたすら登り続ける。

空は快晴だ。歌うには好都合と言えそうな青空が広がっていて心地よい。空からの光は山の斜面の雪に反射し、山村の風景を照らしている。

除雪されきった、剥き出しになって乾いたアスファルト面をスタッドレスタイヤで吸いつくように登りつづけた。

午前10時半、広瀬ダム・広瀬湖に到着。湖面はやはり数日前に降ったと思われる雪でほぼ全面隙間無く覆われている。

午前11時に西沢渓谷市営駐車場に到着した。

広瀬ダム・広瀬湖
しっかり除雪された道を行く。
「道の駅みとみ」前もこのとおり。
日かげは雪が溶けにくい。油断せず。

2つのアイテム

午前11時、車から降りて入渓の準備。

本日は、雪の日仕様ということで2つのアイテムを用意した。

まず、1つ目は貼るカイロ。貼るカイロの使用箇所は足の甲。足の甲側から足を温めるため、これを靴下に貼り付けた。

2つ目は、サングラス。

眩しさを軽減するアイテムである。

歌うという行為について、集中力をもって取り組みたいというのは毎回の願いだ。過去の経験からすれば、集中力を失うことの最大要因は明るい場所に立つこと。

屋外という環境下、しかし案外暗いところというのは見つかるもので、日常的にはそういった場所を立ち位置にしながら歌うことに取り組んでいる。

しかし、今回の場合は季節が冬で、落葉樹の葉がすべて散って失われてしまっていること。また、地面や堤体本体に降り積もった雪の影響で、堤体前がかなり明るくなってしまっていることが予想される。問題の解決策として、歌い手側から直接、視覚上の刺激を軽減させてしまおうということでサングラスを用意した。

ほか、ウエーダー、レインジャケット、フローティングベスト、ヘルメットなどの装備はいつも通り。

スタート時の気温は9度ほど。とりあえずは堤体前で歌うときの装いで。取りも直さず静止状態と同じ格好で歩き始めることとした。もし、途中で暑くなってしまったら歩くことを一旦ストップして、レインジャケットの中に着ている長袖シャツやフリースを脱ぐようにしたい。せっかく苦労して堤体前にたどり着いた折、大汗で濡れた着衣によって直ちに撤収ということになれば全てが水の泡だ。

快晴の空の下スタート。
貼るカイロの使用例。
これで雪からの冷えも怖くない。
サングラス

歩きをスタート

午前11時15分、西沢渓谷市営駐車場から歩きをスタート。

不動小屋前の道路は除雪されていた。さて、これはどうしたものかと疑問に思いつつ雪が除けられている道を歩いていると、西沢渓谷散策路入り口のゲート手前にて工事看板を発見。

工事看板の内容を見れば、散策路の奥にある橋を工事中だという。

業者の車両出入りがあるがゆえの、除雪であることを解した。また、本日これから歩くルートに工事中の橋が関与していないことも確認。ホッと胸をなでおろす。

散策路入り口のゲートを越え、なおも除雪された道を歩く。

午前11時55分に前回と同じ入渓点「ヌク沢」に到着。

およそ20メートルほどの高低差を降りてゆく。斜面の吹き溜まりに積もった雪は深さ30センチほど。うち上から20センチくらいは歩を進めるごとに足が潜って固定される。

登山用ポールの補助も得ながら、一歩一歩確実に足を潜らせながら斜面を降りきった。

ヌク沢に降りるとそのまま沢に立ち込み、下流側へ。

散策路入り口のゲートを越えたあたり
途中からは非除雪路に。
ヌク沢に向かって斜面を降りる。
ヌク沢。そのまま沢に立ち込み、下流側へ。

川の中を歩く

正午、ヌク沢、笛吹川の出合に到着。

立ち込みを続ける。

カラリと透き通った水の底に敷き詰められた川石。足を乗せてもいいものか、よく確認しながら歩を進める。

下の状態が一目瞭然で把握できるのは、川の中を歩いているとき。川の流路が蛇行しているような場所では川岸を横断し、最短ルートを踏むのが早いが、なにせ下がどうなっているのかわからない。

雪に埋もれたその下にある川石が安定しているのか、安定していないのか?

水の中も同様に、安定しているのかどうか?完全に掌握することは出来ないものの、石がどういう風に置かれているかとか、どのくらいの大きさの石であるとか、雪の積もった川岸よりもはるか多くのことを目で情報収集することができる。

源頭は2000メートルを超える山々からの豊富な雪代(雪解け水)。その分厚い流れに逆らって歩くのは気怠いことではあるが、今できる最も安全な渓行の方法はコレだと判断し川の中を歩いた。

午後12時半、東沢と西沢の合流点へ。西沢を選択し、直後に目的の堤体前にたどり着くことができた。

ヌク沢、笛吹川の出合
出合から笛吹川の上流側
雪の下がどうなっているのかがわからない。
鶏冠山
目的の堤体に到着。

瀬のノイズが強く

水は前回来たときよりも幾分減じている。

落水の幅も2割程度細くなったように感じる。スリムになった分、縦に長くなったように感じられるのがおもしろい。(もちろんこれは目の錯覚である。)

堤体より下流部の流れが左岸側に偏っているのは前回来たときと同じ。大小の石が混じって形成された段差が何段にも連なって瀬を形成している。そしてこの瀬がかなり騒がしい。

瀬が形成されている左岸側に対し、右岸側は雪の積もった川岸。

タテ、ヨコともに広い川岸に立ち入ることで、瀬の発するノイズからある程度逃れることは可能。しかし、やはりこの川岸地帯にはあまり立ち入りたくない。

騒がしい瀬の中から、少しでも静かなところを見つけて立ち位置とすることにした。

風速計
方位(再掲)
銘板
距離は55ヤード。

リベンジの結果は・・・、

堤体から55ヤード。瀬のノイズは弱めで、ちょうどバッコヤナギの木が倒れかかるように生えていたのでその下に入った。

葉の散った落葉樹であるが、なにも無いよりはマシであろう。ヤマブドウのつるが絡んでいて、枝の密度が濃い。少しでも暗いところに立ちたいので、このようなところは好都合だ。

自作メガホンをセットし声を入れてみる。

鳴らない。

銘板によれば、堤長は65メートル。目の錯覚でスリムに見えている堤体も、現実はかなり横幅が広い。

右岸の斜面が遠い・・・。

右岸の斜面が遠くて、渓畔林も遠くて、そこまで声を持って行くことが出来ていない。

そして右岸に声が届いていないからか?左岸側まで鳴っていないように感じる。

横幅広い空間のなかで、堤体のノイズが元気に鳴っているような状況。そこに何のあてもなくフラフラと声を入れていっても、全てが飲み込まれてしまう。響かせるためには、木でも土カベでもコンクリート壁でも、とにかく何でもいいから物理的に引っかかるモノの存在がほしいところだ。

何度も、声を入れることを試みる。

堤体前は無風という点からもタフコンディションであることがわかる。

過酷な環境下、頭上を覆った木々のおかげもあってか?歌には集中できていた。(持ってきたサングラスは試してみたけど、あまり好まなかったのですぐに外した。)

やはり「寒い」ということは、歌うという行為にとってプラスに働いている。

しかし。

足が冷えてしまった。

測ってみれば水温は1.2度。

貼るカイロの効果もあって、ここまで頑張ってこられたが、急激に足まわりが冷えてきた。さらに快晴だった空も曇りがちになってきた。腕時計の時刻を見れば午後3時。無念であるが、ここで歌をやめて引き返すことにした。

西沢リベンジは、

失敗。

メガホンをバッグに収納し、背中に背負う。

依然として鳴り続けている西沢の堤体に見送られながら堤体前をあとにした。

やはり立ち入らず。
瀬はノイズが強く。
バッコヤナギの木の下へ。
立ち位置から見た堤体
銘板の数字を見て、堤長の長さを実感した。
鳴らない。
水の冷たさにも敵わなかった。
負けたけど、いい戦いができた。

赤に包まれて歌う

道の駅伊豆月ヶ瀬の芝生広場

土肥で桜が咲いた。その一報を受けたのは、昨年末の大晦日のこと。

年も明け、さらにおよそ3週間経って日付は1月20日。いよいよ土肥桜まつりが開幕となった。

開幕初日となる20日(土曜日)翌21日(日曜日)は残念ながら雨天となってしまったが、その翌週となる27日、28日は両日ともに好天に恵まれるという。

そういえば、しばらくご無沙汰であった土地。伊豆市土肥。

せっかくの機会を逃すべからずということで、急遽土肥ゆきを決定した次第である。

道の駅伊豆月ヶ瀬へ

1月28日、午前9時。場所は伊豆市月ヶ瀬。

本日のゲームプランは、土肥山川の本流に入る。設定した時間帯は夕方。時間はまだまだたっぷり余裕がある。

とりあえずは、うまい朝食にありつこうということで「道の駅伊豆月ヶ瀬」へ。オープンと同時に入った建物内。しかし、入ることが許されたのは2階の土産物売り場のスペースだけ。

それより階下おりたところにある、リバーサイドレストラン「月ヶ瀬テラスキッチン」へは、午前10時にならないと入店することが出来ないという。

仕方なく、建物の南側にある芝生広場にて待つこととした。

自販機コーナー横にある屋外階段から下へ降り、芝生広場へ。地図上俯瞰してみれば、伊豆縦貫道、矢熊大橋に覆われているあたりは橋桁の下とそのまわりにテニスコート2面分くらいの広場があり、芝生が張られている。

ベンチを発見!

腰掛けてみた。

おっと。

あまりよく確認してから座らなかったが、これは屋外据え付けのベンチ。

自爆無し。

こういったものに座るときは、ちゃんと雨水や夜露で濡れていないか、確認してから座らなければならない。

心配した・・・。のはそれもそのはず。空はどんよりしている。やや重苦しい雲は、いかにも湿り気を帯びている。予報では今日は晴れときどき曇りとのことだ。

水滴がピシャリピシャリと降ってきた・・・。だが、これはすぐに止んだ。

かすかな不安。

屋外でやるのが砂防ダムの音楽だ。空のご機嫌によって、遊びの内容に変化が生じる不安は常につきまとう。狙い通りの天候に恵まれて、いい思いをするときもあれば、うまくいかなくて下唇を嚙み続け、帰ることもある。

天気に一喜一憂させられる。それが常だ。

今日は、白じゃなくて青がいい。青空の下で歌いたい。

土産物コーナーのようす。
温州ミカン
文旦
さつまいも
アレッタ

いよいよレストランへ

午前10時、テラスキッチンの開店時刻。さきほど降りてきた屋外階段をふたたび登ってから正面玄関に入り、建物内へ。野菜、果物はじめ土産物各種が置いてあるこのフロアが2階。つまり、2階フロアに玄関があるということだ。そして、フロアのおよそ南側、横幅の広い階段をおりると、1階にあるリバーサイドレストラン「月ヶ瀬テラスキッチン」に行くことができる。

ここは狩野川のほとりにほど近い、屋外ウッドデッキに通じるドアもあって外に出ることができる。しかし、いまは冬。川側の側面、ほぼ全面ガラスに覆われた、まるで外とつながっているような広い空間は、全ドアがすべてしっかり閉じられており、風の吹き込む余地はない。完全なる室内は暖房で暖かい。

心地よい河原の風に吹かれるのは、春以降の季節に期待したい。

オーダーは券売機の食券にて。食券購入後、ほどなくして出来上がったのが「しいたけカツカレー」。

カレーがうまい。しいたけもうまい!

午前10時50分、食事を終えると2階の土産物コーナーへ。

お目当ては清森堂の小麦まんじゅう。透明なプラケースに入れられた、こがね色したまん丸団子は3個入り。蓋が開いてしまったら大変だから、テープで縛って持って行く。わざわざテープで縛る手間をもってしてまで行く先はもちろん堤体前。渓行に携えるのはお気に入りの菓子だ。

ほか、昼メシ用に下山養魚場のあまご蒲焼弁当なども購入。食べ物をしっかりと用意することができた。これで安心して船原トンネルを越えることが出来るだろう。

階段を降りて「月ヶ瀬テラスキッチン」へ。
しいたけカツカレー
清森堂の小麦まんじゅうほか
あまご蒲焼弁当ほか
いい買い物ができた。

2つのプラン

午前11時40分、道の駅伊豆月ヶ瀬を出発。

国道136号線、下船原トンネルをくぐり抜け、ニコニコ顔の赤鬼に見送られながら伊豆極楽苑前を通過。さらに高根神社、セブンイレブン、船原館前などを通過。

さて、ここからの行程で用意したのが2パターン。

1つは、船原温泉の日帰り温泉施設「湯治場ほたる」に立ち寄り、温泉入浴と昼食の弁当ほか菓子類をいただくというプラン。日帰り温泉施設に食べ物を持ち込んでいいのか?という疑問には、

なにか食べたいものがあれば必ず持ち込んでください。と、お答えしよう。

ここは、食堂の無い施設。食べ物の持ち込みは公式にOK。お湯を沸かせるポットや電子レンジの備え付けもある。比較的、長い時間滞在する予定があるならば事前にいろいろ買い込んでから入館するようにしたい。

そしてもう1つのプランは、天城ふるさと広場駐車場。

こちらは、湯治場ほたるよりさらに1.5キロ船原トンネル方面に走ったところにある。

なんでもない、ただのちょっと小高い丘の上に作られた、いわゆる「スポーツ公園」のたぐいの施設であるが、広い駐車場があったり、きれいに整美されたトイレや、芝生広場があったりする気持ちのいいところだ。

冬なので車内で過ごすことになるが、人目を気にせず、まったりとした時間を過ごすことが出来るとあって、こちらもかなり魅力的だ。

まぁ、暖かいので・・・、

天城ふるさと広場にしよう。

正午、天城ふるさと広場駐車場へ。

運転席のシートをリクライニングにし、ダラ~ンと腰掛ける。

駐車場のすぐとなりはテニスコート。テニスコートの向こうは野球場。テニスコートは本日一般開放のようで、テニスを楽しむ数名の集まりが1組。

野球場はリトルリーグの試合が行われているようだ。

小中学生の歓声と金属バットの快音を聞きながら微睡みにふける。弁当はちゃんと用意していたけれど、ついさきほど食べたばかりのカレーがまだ胃袋の中で元気なので、遠慮することとした。

車窓のガラス越しに見える空色を気にしながらウトウトする。

天城ふるさと広場駐車場
クスノキの並木道
芝生広場とケヤキ並木
トイレ
トイレットペーパーには野球チームのメッセージが!
空色を気にしながらウトウトした。

土肥山川第3堰堤へ

午後1時15分、ウトウトから起きる。車のエンジンをかけ、天城ふるさと広場駐車場を出発。

小高い丘の坂を下ってふたたび国道136号線に戻り、船原トンネル方面へ曲がる。曲がったところからは、ほとんど上り坂の道を4.9キロほど走って船原トンネルへ。そのまま船原トンネルを抜けると、道はいよいよ伊豆市土肥エリアに入る。

船原トンネルを抜けてからは、およそ5.6キロほどの下り坂。急なところではスピードの出し過ぎに注意しながら進んだ。

午後1時50分、旧国道136号線に移るため右折にて進入。さらに300メートルほど走って昭和橋。昭和橋はわたらずに土肥山川左岸に沿う林道に逸れる。林道に入ってから200メートルで猿橋。猿橋をわたりきり、600メートルすすむと右手側に橋があらわれる。橋の名は萩尾橋。

この萩尾橋が入渓点となるため、車から降りて準備をととのえる。

午後2時50分、土肥山川に入渓。

入渓後は、水苔気味の渓に足を滑らせないようにしながら慎重に遡行。途中、植物を見たり、写真を撮ったりしながら遡行し、通常スピードの倍くらいの時間をかけて歩いた。

午後3時20分、目的の堤体「土肥山川第3堰堤」に到着した。

国道136号線を走っている途中、ワサビ田を発見。
ワサビは花を付けていた。
船原トンネル
昭和橋
猿橋
萩尾橋

見た目から予想すること

水は左右バランス良く湛水している。放水路天端に堆積物があるようで、その区間には水が少ない。代わって堆積物が無いところに避けられた水が集まっていて、それが数本、堤体水裏全体としては湛水する水が縞模様を描くように落ちている。

もしも水の落ち方が右に偏ったり、左に偏ったりすればかなり醜悪な見た目になるところであるが、そういった事態は奇跡的に回避されている。落ちる水は均整がとれていて、集中していない。機能的には、堤体より上流部にある水を数本の筋に分散させて落下しているので、局所的に大きいノイズが発生することを防いでいる。

堤体前の立ち位置は、およそ80ヤードまで設定可能。ここより下流には倒木の根があるため立つことが出来ない。また、大小入り交じりの石が転がる当地は、80ヤード以内の範囲にあっても足場とするには不向きな、立つのには困難な転石がある。立ち位置については一定程度の不便さが有り。

右岸側は上り下り不能な急崖。左岸側は作業道一本隔ててヒノキ林。両岸の不均一さがきわめて顕著であるため、音は左右で異なって響くことが見た目より予想される。

以下、入渓時以降のようす。こちらは入渓点付近。
橋をくぐる
巨石に掴まりながら歩く。
あと少し・・・。
堤体前着。(午後3時20分頃。)

土肥山川第3堰堤(響き編)

午後3時半、堤体水裏を太陽が直接照らしている状態がクリアされたため、メガホンをセットし声を入れてみる。

声は響いている。

しかし、無風という条件であるせいか、堤体の堤高が高すぎるせいか、音の響いている範囲があまり広く感じられない。

左右両岸に展開する樹木の反響板効果は「いかにも。」といった感じであるが、その樹木で構成される林の中には、音が深く入り込んでいくような感覚が得られない。

まるで巨大な段ボールの箱に囲われて、その底面から一生懸命、箱の内側壁面に向かって声を入れているかのようだ。

たしかに響きは得られていることがわかる。しかしながら、その質においてはイマイチ物足りない気がする。

銘板
風は無風。
北東方向。
堤高が高めなのでやや離れた。

土肥山川第3堰堤(視覚編)

視覚の面においては、かなり魅力的な堤体であった。

当日、午後3時半に歌い始めてすぐに空が青を失った。(当日、午後3時半に歌い始めてすぐに空が“青色を”失った。)

青に変わって空に現れたのは白。

雲の影響である。天候面で朝から心配していた雲だ。

雲によって上から白く照らされることで、歌に入り込む集中力を失ってしまうのでは?というネガティブな思考が一瞬脳裏をよぎる。しかし、その思いはすぐに非現実であるということを知る。

河床に転がる大小の川石たち。

目の前に転がる川石は、どれもが赤錆びを乗せていて、その赤錆びの赤は堤体前の景色を一変させている。

夕刻、青色を失った空は白色に落ちたが、その白い光が河床に転がる赤錆びの乗った川石に降り注ぐ。降り注いだ光は白から赤へとって代わり、たちまち堤体前の空間を赤く染め上げてしまった。

唖然とするまでに見事に赤く染まり上がった堤体前。

さらに、冬季であるがゆえに草本類や落葉樹は緑色を無くしている。堤体前の赤に対してこれらは色彩面で反発しない。むしろ、枯れたススキの穂や、樹木の幹枝の肌色は赤色に対して加勢しており、赤に合わさってこちらも視覚に訴えてくる。

数多の赤に包まれる。

これはかつて無い体験。

また、かつて無い体験とともに得られたのは歌うことに対する集中力。

この場所に来る前には、悲観的な予想を持っていた。頭上に広く開けた空間から差し込む光。(特に白く、突き刺すような光。)その光によって、歌に対する集中力を大きく失ってしまうのではないかという予想。

しかし悲観的な予想を見事に裏切ったのは、他ならぬ土肥山川が持っている自然環境そのものであった。

結局、この日は午後5時過ぎ、宵を迎えるまで、堤体前の「赤」が確認できなくなる頃まで過ごした。

突如としてあらわれた、フィールドでの新たな発見。

環境に助けられて今日もいいゲームができた。

来てよかった!

1月28日、土肥山川にて。赤に包まれて歌う。

空が青を失った。
だが、
この日、
見事に赤く染まり上がった堤体前。
そして新たな発見。
集中力。
全ては赤錆びの乗った川石によってもたらされた。








おまけ。

土肥桜のライトアップ①
土肥桜のライトアップ②
土肥桜のライトアップ③
土肥桜のライトアップ④
土肥桜のライトアップ⑤

大好き河津町!vol.21

河津バガテル公園

2024年1月1日、午前6時45分。河津バガテル公園。

整った直線やカーブに区切られた散策路の上を歩いて、海が見える丘へ向かう。

もう周囲はすっかり明るくなっていて、視界は確保されている。

あまりゆっくり歩いていられるほどの時間も無く、視線の先にいる人たちの列をなるべく早くにと目指しているのであるが、それでも気になるのが庭園内に植えられたバラの株の数々。

もう、赤とかピンクとか白とかはっきりと色がわかるほどに明るいのだ。

花が・・・。と思いつつも、あと数分で昇りはじめるであろう初日のことが気になって、足を止めることが出来ない。

人々の列を目指して歩くその気持ちが、自身で蹴っている地面の砂利の音からも分かる。

少しあせっている。

ようやく到着。

海が見える丘にたどり着くと、ほどなくして初日はあらわれた。

すると、あっという間に昇った初日。

その丸が完全に現れたことを確認したのち、オランジェリーに向かった。地面の砂利を再び蹴りながら、花をつけたバラのことを気にしながら、立ち止まることもなく淡々と歩む。

オランジェリーにたどり着くと、白い外壁が初日に染まっていたのでカメラに収めた。また、館内でも数枚、写真を撮った。

初日に踊らされているようだった。

オランジェリー内
初日に染まるオランジェリー
窓から。
海が見える丘から。

平滑の滝下に向かう。

午前7時05分。河津バガテル公園駐車場。

本日の予定は午前中のゲーム。堤体は平滑の滝下。

バガテル公園駐車場を出車し、まずは河津町の右岸道路まで坂を降りる。

「元祖天城そば美よし」の看板を見たら左折。峰温泉の旅館街を抜け、そのままエネオス、コメリまえを通過。峰大橋もわたって河津町下佐ヶ野へ。

下佐ヶ野ではセブンイレブンに立ち寄って、水、パン、菓子類などを買った。

午前7時25分、セブンイレブンの駐車場を出発。国道414号線を走る。

湯ヶ野温泉、慈眼院まえ、奥原入り口、ループ橋などを通過し、天城七滝遊歩道上入口バス停まえ(ループ橋から1.3キロほど)にて右折。林道に入る。

(以降、グーグルマップに記載ない区間。)林道に入ってからは道なりに北上し、鋼鉄製のゲートまですすむ。ゲート前には車2台ほどの駐車スペース。

駐車スペースに車を置いた。

午前7時50分、車から降り、入渓の準備。

足元はウエーダー、上半身には風を通さないレインジャケット、レインジャケットの上にフローティングベスト。頭にはヘルメットをかぶり、メガホンの入ったバッグを背負った。そのほか、手にはネオプレーン製の手袋をはめ、片手には登山用のポールを1本にぎる。

午前7時55分、河津川の右岸に延びるハイキングコースに沿うため、丸太階段から歩きをスタート。

ものの5分ほど歩けば、谷に架かる赤い橋が現れる。この赤い橋、上を渡るのではなく山側より谷側に向かってくぐり抜ける。くぐり抜けたら、そのまま河津川に向かって斜面を降りる。

斜面を降りきったあたりで河津川の上流を見る。すると平滑の滝下(河津本谷第2号コンクリートえん堤)を確認することが出来る。

丸太階段からスタート。
赤い橋。
赤い橋をくぐる。
河津川に向かって降りる。
堤体発見!気持ちが高ぶる。

追い求める価値

午前8時05分、平滑の滝下。

水は暴れすぎるで無く、少なすぎるで無く、ちょうど良い感じで落ちている。

実は、前日の大晦日に、静岡県は雨が降った。年の瀬の晴天続きに、伊豆半島各河川の水量はどこも減水気味であったが、これはまさに恵みの雨となった。

これが無かったら、かなり厳しかったと思う。

水が減れば、響き作りはイージーなものとなる。しかし、ゲームを楽しむためにはイージーすぎる展開はかえって不利益だ。

自然界が発するノイズに対して、人間の声で挑戦している感じがしていないのはいけない。

風を味方につけながら、渓畔林を味方につけながら、道具に頼りながら、音で溢れかえった堤体前において響き作りを行うことに楽しさがあると思うし、響き作りがうまくいかないとき、つまり、堤体の発するノイズに負けるとき。が、あることに価値を感じている。

いっしょうけんめい声を出しているのに全く響かないでは楽しくないから、そうはならないようにこの遊びを研究しているところ。であるがしかし、もっと攻略しやすい環境を相手に置き換えるなどして、意図的に駆け引き上の「勝ち」を獲りにいくことも間違っていると思う。

現時は望んでもいない晴天続き&少雨に見舞われている中なので、意図的であるとは言わないが。

常にノイズに対して負けるか勝つか、のところで遊んでいきたい。

つまりのところ、前日の雨降りについては大歓迎であった。ゲームができるだけの範囲の中で、相手が相当強くなる分には全く問題はないのだ。

当日の落水のようす。
堤体は98度。
風は時間の経過とともに、よく吹くように。
遠目からやり始めて、徐々に近づくパターンも。

興味深いこと

午前8時15分、自作メガホンをセットし声を入れてみる。

声は非常によく響いている。

堤体より上流向こうから、ひんやりとした冷気が降りてきていて、つまり空気が動いていることがわかる。声を出しているシチュエーションにあって空気が動いている中では、歌い手にたいして対極的に押し迫ってくる動きの中でも、逆に同極的に歌い手から離れていく動きの中でも、声は不思議とよく響くようになる。

同極的に歌い手から離れていく空気の動き(追い風)はなんとなくわかるとして、対極的に歌い手に押し迫ってくる空気の動き(向かい風)が、響き作りに効果的なことは非常に興味深いことだ。

これは日常生活でもわかるような物理的感覚であろう。声が空気によって押し戻されているのにも関わらず、響いているというのだから面白い。

この日は時間の経過とともに、はじめのころは冷気程度であった風が、のちにはっきりと風速計で計測できるくらいの風に変わり、さらに条件が良くなっていった。

堤体前で過ごしたのは正午ちょっと過ぎまで。

その内、歌っていたのは午前10時頃まで。あとの2時間は堤体前に生えている樹木の観察を行ったり、落ち葉を見て回ったり、川の流れる水をぼんやりと見て過ごした。

前日の雨によって戻った落水とのパワーバランスに関しては、まだちょっともの足りないくらい・・・。なんて思ったのだけれども、これは当日しっかりと堤体前に風が吹いていたという条件つき。

風がピタリと止まっていたら、そうはいかない。苦しんでいたことだろう。水量とか風とか渓畔林とか、いろんなことが複合的に絡み合う中でゲームをしているので、やっていることは単純ではない。

もっともっと、この遊びについて研究を深めていくことが出来そうだ。

さて、今年も健康な体であちこちの堤体に出掛けたい。

皆様におかれましても健康で。それは体のことだけでなく心の面においても。

心身ともに健康でお過ごしください。心がヤバくなったら一度、川に聞いてみるのもいいかもしれません。

今年も一年、健康に。ますますのご活躍をお祈り申し上げます。国を盛り上げていきましょう!

2024年初日。風吹く幸運とともに。
午後は再びバガテル公園へ。
フランス広場
運良く残っていたのは秋バラたち。
ジャンメルモ
ゴールドケレ
アリッサム。
ビオラ。
ビオラの黄色。
午後はゆったりとした時間を過ごした。

2023年最後のゲーム

修善寺梅林

2023年、12月29日。歌い納めの地として選んだのは修善寺。

修善寺温泉街、五葉館まえの坂道を上がっていき修善寺梅林駐車場についたのは午前10時のこと。

駐車場から歩いて梅林に向かう。

百花の魁。

ウメは一番最初に咲く花らしい。

一番最初に咲くと聞いては、縁起がよい。

本格的な遊宴は、まだ2ヶ月も先のことだが、果たして?伊豆半島は冬の季節にも異常に緩む日があるのだから期待が持てる。そして、競合のサクラに関してはすでに半島のあちこちから発見の報が届いている。こちらにもきっとチャンスはあるだろう。

年明け前の初花探し。

暖かさにいち早く反応した木を見つけ出して、楽しませてもらおう。一年の締めくくりとして。

梅林内にある四阿

静かな場所

午前10時すぎ、梅林駐車場より500メートルの移動にて梅林に到着。

すでに日は高い。枝だけ裸になったウメの木々を太陽の直射が照らしている。

さっそく花を探す。と、難無く見つけることに成功したのはウメのつぼみ。視界に溢れるウメの枝の混雑のなかに、紅や白の玉が散乱している。

ゴツゴツとしたウメの枝とは対照的なつぼみの玉。花といういちばん華やかな姿にはならないが、色という地点にはもうすでに行きついていて、十分に存在感を示している。

今この瞬間に見られるつぼみの色の美しさと、これから迎える絶頂への期待感。これはある意味、無敵ですらある。

人間に例えれば、明るい未来を抱えた学生くらいの頃か?

自分自身もそうでありたいと思う。今年も来年も。

ふと、上を見上げた。

先ほどから、鳥が鳴いている。したがって、無音では無い。

無音では無いけれども、ここは本当に静かだ。

そういえばたしか、あれはコゲラという鳥だ。

コゲラが鳴くだけ。あとは時折、上空のもの凄く高くを飛行機が走る音がする。

師走の空は地上に同じく忙しいのだろうか?

ここに来るのだったら、対照的に静かだ。目に見るもの、耳で聞くもの。肌感覚的にも今日は暖かい。

腹が減ってきた。温泉街まで降りよう。

つぼみ。紅色の玉。
つぼみ。白色の玉。
本命もあるにはあったが、あっち向いてホイ状態であった。
コゲラ
梅林はトイレ併設で安心。
ベンチもある。
静かな空間で過ごすことが出来る。

隠れる

午前11時半、修善寺梅林のうち東側にあたる東梅林より温泉街に歩いて向かう。スギの木立の下に引かれた、温泉街へとつづく道を下ってゆく。

およそ15分ほどの歩きで安達氏の墓。さらに静岡県道18号線のガードをくぐってから民家地帯の坂道を下っていき、10分ほどで温泉街へ。温泉街の道に出たら東に少し歩いて、場所は新井旅館の向かい、甘泉楼。

甘泉楼の「伊豆十三夜」にて十三夜焼きを四つ購入。二つはたった今、昼ご飯がわりに食べる用で、もう二つは入渓時に携えるためのものだ。

店で商品を受け取ったのち、店の横をチョロチョロ流れている「猿の手湯」へ。ここでしっかり手を洗う。手を洗い終えたら、とりあえずまた来た道をもどる。

そして、おあつらえ向きな路地を見つけたら、隠れる。

しっかり隠れられたことを確認したのち、十三夜焼きの入った袋を開ける。

隠れて食べる。十三夜焼きは。隠れて食べなきゃいけないのは、食べ方がちょっと特殊だから。普通に食べるなら店先にあるベンチで食べれば良い。

と、いうわけでおすすめのちょい足しをご紹介。画像は小倉でやっているのだけれど、アップルジャムカスタード入りでやったのはさらに美味かった。

スギの林間を抜け、温泉街に向かう。
転ばぬよう注意。
甘泉楼
おすすめのちょい足しをご紹介。
コレを家から持って行く。
隠れて食べる。決して見つかってはいけない。

水系を同じにする川

午後1時、梅林駐車場に戻ってきたのち、車に乗り込む。

本日、入渓するのは湯舟川。道は単純で戸田峠に向かって西進してから、広域基幹林道達磨山線を南進するルート。

戸田峠に向かう道では、「修善寺虹の郷」・「伊豆国際カントリークラブ」前を通過。梅林駐車場より4.9キロ走って「広域基幹林道達磨山線」入り口。ここから、南進してちょうど1キロ、三ツ石橋にて車を停車した。

車から降りて、三ツ石橋より北又川の様子をうかがう。北又川は、本日入渓する湯舟川とは下流にて合流する、つまり水系を同じにする川だ。

源頭の違いこそあるが、地理的にも近い本川の水量を参考にしたい。いずれの川についても、ここのところの晴天続きによる極端な減水が心配だ。

三ツ石橋から修善寺川第一堰堤を確認すると、かろうじて湛水している。三本の筋を作って水は極めて静かに落ちている。率直な感想を言えばゲームをするのにこれではノイズが弱すぎる。これぐらいだと、響き作りが簡単に行えてしまい、堤体前で歌う楽しさに物足りなさが生じてくる。

一抹の不安。

再び車に乗り込む。三ツ石橋からさらに3.1キロほど走って湯舟川にかかる「牧場橋」。牧場橋手前の左折路から東へ進入。湯舟川の流れを追いかけるように林道を2.3キロ下ると、入渓点のある「湯舟川ふれあい公園」に到着した。

三ツ石橋にて停車。
川の様子をたしかめる。
当日の修善寺川第一堰堤のようす。
ふれあい公園近くで行われていたシイタケのほだ木取り。

入渓する。

午後2時半、準備をととのえ、湯舟川第6床固工(湯舟川ふれあい公園内)上流のススキの切れ目から入渓する。

入渓点を見るかぎり、水が著しく減水している様子は無い。第6床固工の上流すぐにあるスコリアっぽいナメは、今日も元気に水が流れている。

川の転石は大小入り混じり。堰堤公園が出来るより昔、湯舟川がどんな渓相の川であったのかが知りたくなる。

不思議に思えること。それは当地が、水源である達磨山の山頂から4.0キロと離れない直線距離にあるにもかかわらず、上流域とは思えないほどの川幅を持ってしまっているということだ。

もともとはもっとスリムで、深いエゴを伴うような荒々しい渓であったのでは無いかと想像できる。

これは修善寺という一流温泉地との古くからの関わりのなかで、相当な歳月にかかる河川改修工事が行われてきたのでは?という予想からでもある。

手を入れるならば、最終的には遊べる川になってほしいというのが願いだ。広く一般市民が訪れ、楽しい休日を過ごせるような川であることが望ましい。その場所が大切な遊び場として認識されたときこそ、人は最大の思考と最大の体力をもって真剣に川と接することができるようになると思う。

ススキの切れ目から入渓する。
入渓点から。
堤体着。
修善寺は夕焼けの美しい地域。夕方ゲームを是非!

立ち位置の決め方

午後2時40分、堤体前に到着。堤体名は湯舟川第二堰堤。

水は堤体水裏に薄く、左右バランス良く落ちている。心配された減水も無事クリアしており、ホッと胸をなでおろす。

川は堤体下流およそ40~50ヤードで左岸側に向かってカーブしている。それ以上の遠い距離から声を入れていくのは「ななめ撃ち」であり、響き作りには良くない。

しっかりその範囲内を立ち位置に決め、自作メガホンにて声を入れてみる。

音はかなりしっかり良く鳴っている。

左右両岸は葉を落とした落葉樹の渓畔林。右岸側はそのさらにもう一枚外側にスギ林。堤体本体周辺はイロハモミジが多い。

堤体は副堤一番低いところから主堤の放水路天端まで7~8メートルほど。この高さは前回エピソードにある戸田大川の堤体と同一であるが、今回の湯舟川のほうが断然、音が逃げていく環境にある。(①~④は比較する点。)

①川幅の広さは副堤の着水地点よりさらに広くなっていること。

②①より外側の部分。左右両岸の、かつてワサビ農家の作業スペースとして使われていた部分について渓畔林が刈られていること。

③川幅直近に音を囲い込むような崖が無いこと。(左右両岸側)

④音を囲い込むような崖が無いこと。(堤体本体より上流側)

①~④について、特にこの場所を難所にしているのが①~③に掲げた部分。渓畔林を構成する樹木が左右両岸に見られるものの、それらは川幅直近では無くて一段階スペースを空けて外側に立っている。

堤体前の空間が横にダダ広く、歌い手からの直線距離としても渓畔林が遠くなる。反響板効果を得たいのだから、出来れば渓畔林は左右で近く、コンパクトにあってほしい。

湯舟川第二堰堤の過去のエピソードを見れば、2022年の5月に来ている。そのときは雨後の増水という条件下で歌って、堤体前が鳴らないことをがっかり嘆いていることが読み取れる。

再掲。茶色部分にスペースがある。
こちらも再掲。2022年5月2日撮影。
2023年12月29日撮影。
薄くまとわりつくような湛水が美しい。

なぜ、今日は鳴っているのか?

なぜ、今日は鳴っているのか?と考えれば水量が関連しているのでは。というのが予想。

ここのところの、晴天続きによる減水によってノイズの大きさや数(発生箇所)がかなり少なくなっている。これは堤体本体もそうであるし、それより下流の転石が転がる区間においても同様だ。

ひとつの転石を境にして上流側と下流側で激しく水位が変化するのは、断続的に上流側から水が供給されているとき。

上流側から押し迫って来る水が多ければ水位変化は激しい。逆にそれが無ければ水位変化は乏しい。水位変化に乏しい、つまり水の落下に疎い渓ではノイズは少なめ。水は転石の接地面近くを静かに撫でるように通過するだけだ。

昨年5月のリベンジを達成した。良い意味では。

弱いノイズ相手に圧勝してしまっている。悪い意味では。

難所である。という元々の判断があるので、今回は素直にリベンジを達成した良い日として捉えたい。

夕焼けの美しいフィナーレを待つことも考えたが、今日はこれくらいにしておこうということで早めに退渓することに。

午後4時、下流に向けて歩き始めた。2023年最後のゲームは良い日となった。

ノイズ源。うるさいけれどゲーム性を高める重要要素。
立ち位置はこれくらいが最大。
達磨山から吹き下ろす冷涼な風。
右岸側の針葉樹。歌い手に暗がりをもたらす。
左岸側。奥、クヌギ。手前、コゴメヤナギ。
豊かな渓畔林に音が反響する。
低めの堤体だけれど、高いところを意識して声を入れてゆく。

深海魚を食いに行った話

戸田湾

12月16日、沼津市戸田。

午前10時、食堂のオープンを待つ。

久々の戸田グルメである。期待感に体が前のめりになる。

躯を支えるのは港町の潮風にてやや風化している手すり。風化とはいっても表面がザラついているくらいで、脚はしっかりしている。

しっかりした脚で支えられつつ、静かに待つ。

海も空も穏やかだ。

海についてはこの地が戸田湾という湾内であるというところから。空については、気温の変化に乏しい空・・・。

曇天の。

寒さはあまり感じられない。気温は21.2度もある。
今日は、なのか?今日も、なのか?

まだ冬の季節を迎えるには早いようで、遠く対岸に控える山々の落葉樹は、未だに葉っぱを残してきれいに色付いている。

まさか、この時期に・・・。

砂防ダムを相手に遊びをやっている手前、屋外で過ごす機会に恵まれて、そのなかで想像だにしていなかった自然の変化に遭遇することは間々ある。

肯定的なことも。否定的なことも。

自身の場合は肯定的な場面に遭遇することが多いような気がする。
けっして悪いことばかりでは無いのだから、フィールドに出掛けることがやめられない。12月下旬に紅葉が見られるなんて思ってもみなかった幸運。

このあとに控える厳寒期。しかし、今日は晩秋のゲームが出来そうだ。

暑すぎず。寒すぎず。胃袋も絶好調。

そろそろのれんが掛かる頃だと、店に向けて車を走らせた。

潮風に鍛えられた手すり。
立っているのがしんどい人はコレ。
う~ん。(カメラに罪はない。)
こんどはよく撮れた。
ヤマグワの黄葉

魚重食堂

やってきたのは魚重食堂。

前からいちど来てみたいと思っていた店である。

沼津市戸田は戸田湾、さらに広くは駿河湾、太平洋に接している地域とあって、様々な食に接することが出来る。

飲食店の営業が盛んな地域で、それぞれの店が得意分野を持っている。カニ(タカアシガニ)が得意な店、生の魚が得意な店、揚げ物の魚が得意な店、深海魚が得意な店、加工食品の入った小鉢をたくさん出してくれる店、食べるばかりで無く抜群の眺望が用意されている店。

海産物が苦手だという人も、ステーキやハンバーグを用意してくれる店があるし、中華料理屋もある。

そう考えれば何でもある。

ちなみに、本日たずねる魚重食堂は深海魚料理を得意としている店だ。

時刻は午前11時05分。若干の緊張とともに店ののれんをくぐる。

意外にも先客はおらず、静かな店内に通してもらった。
ほとんど迷うことなく注文したのはゲホウ天丼と銀ザメの刺身。

店の姐さんから水、お茶はセルフだと教えられ、入り口すぐ横にある給茶機より、ちょっとぬるくした煎茶をいれて席にもどる。

席にもどる動線に続くのは後続の客。

店内が賑やかになってきた。次々に埋まってゆく座席を横目に見つつ、料理の出来上がりを待つ。

「ちょっと時間がかかる。」とあらかじめ伝えられたゲホウ天丼を待つあいだ、先に銀ザメの刺身が到着し、続いて後続の客らの料理が先に配膳された。

こちらはさっそく銀ザメの刺身(←これが食べられるのは割とラッキーらしい。)に先に箸をつける。
銀ザメの濃い味に感動しつつ、ゲホウ天丼の出来上がりを待つ。

ようやく、盆に乗った高く掲げられた椀が運ばれてきた。

後続の客らからは、冷やかし半分の喚声が上がるほどに高く掲げられたゲホウ天丼。

早速、頭の部分からいただいてみる。

頭は根魚系の素揚げにほぼ等しい。ほぼ、という程度の違いは根魚のそれよりも骨がだいぶ柔らかいことだ。たとえば同等サイズでカサゴだったら、噛み砕くのに相当な力が必要だと思うが、それよりはかなり容易いと思う。

そして身のほうはというと、淡泊な白身。他魚種との比較は無かったが、臭みも無く食べやすい。

味がしっかりしているあたりは、漁獲から調理されるまでにかかった時間がそれほど長くない証であろう。身焼けなどとは無縁の、新鮮な魚を口にすることが出来てよかった。

ゲホウ天丼
銀ザメの刺身
ミックスフライ定食。(ゲホウ、ギンザメ、オカボッチ)
出す魚は漁獲次第で変わるという。

アカメガシワ

正午。魚重食堂を出て入渓点に向かう。

まずは「戸田三叉路」。戸田三叉路という名の十字路???より東進。道は静岡県道18号線。この静岡県道18号線を3.2キロほど進むと戸田大川に架かる達磨橋。達磨橋はわたらずに戸田大川左岸側の林道に入る。

林道はいってすぐにはシキミ畑。さらに100メートルほどで戸田大川には堤高5メートルほどの堤体。

堤体があるものの、戸田大川の河床より林道のほうがかなり高い位置を走るのため走行に支障はない。但し、堤体の堆積地以降は高木層の木々の樹冠位置が高くなる影響で、道が若干暗くなる。

ツブラジイ、クスノキ、スギといった木々の樹冠が天面を覆うために形成される暗がりに見舞われていたところであったが、ここで新たな発見があった。

暗がりの下で黄色に輝く黄葉。アカメガシワだ。

アカメガシワといえば、荒れ地に生える先駆樹種(パイオニアツリー)の代表格。

この戸田大川の改修工事、もしくは大雨による撹乱によって当地に芽を吹いた一株は、今や大木となり、常緑樹の樹冠の下の暗がりで漏れるように降ってくる天からの光を受け黄色に輝いている。

こちらからは、下から見上げるようにして見ているのでは無く、上から見下ろすようにして見ている。立木相手であろうとも、林道のほうが少し高い位置にあるからだ。

葉裏側のちょっと控えめな黄色では無く、葉表側の鮮烈な黄色。

この一年、港町の潮風に、猛暑に耐え続けた一枚一枚の葉の逞しさ。力強い黄色は平凡ではない環境の中から生み出された賜物か?

想像だにしていなかった美しき自然の変化がまた、ここにあり。

林道を走る。
アカメガシワの黄葉。
しかし幼木は雑草として扱われるから驚きだ。
鮮烈な黄色に目を奪われた。
こちらはイロハモミジ。
晩秋であることは確かだ。

看板が目印

午後12時半、場所は達磨橋から約300メートルほど林道はいったところ。

林道に三叉路があり、近くの道幅広くなったところに車を駐車した。
装備を纏い、入渓へ。入渓は「落石注意」の看板が目印。看板の裏の竹藪から戸田大川に向かって降りていく。

ほどなくして、川に降りることが出来た。

堤体は川に降りてすぐ上流に見ることが出来る。

堤体名は不明。副堤付きの堤体で、その副堤一番低いところから主堤の放水路天端までの高さが7~8メートルほど。袖天端はプラスで2メートル程度。さらに高いところにあるのが林道で、袖天端よりプラス1メートル程度。

したがって、堤体水裏側の河床から林道までの高低差はおよそ10~11メートルほどある。

当日の水量であるが、かなりの減水状態。かろうじて湛水できているほどしか水が流れていない。しかし、前日に雨が降っていることを考えると、これでもラッキーだったのかと思えてくる。

そして水について気になるのが左岸側の水抜き1カ所からの落水。

堤体水表側の堆積地に、水抜きを末端とする流路が出来ており、流れる水の多くが集まってしまっている。

集まった水は堤体水裏側においては下向きに、しかし棒状放水。副堤の水叩きに落水し、特に目立ってノイズを発生させている。

目印となる看板。
堤体全景。
前日には雨が降ったはずだが・・・。
ここだけ存在感が大きい。
荒れるときはそれなりに荒れるらしい。

抱いたイメージ

午後1時、まずは試しに声を入れてみる。

問題は無く。極めてよく響いている。

堤体左岸側の棒状放水の水も特に気にはならない。

ここの堤体前は、音が溜まるような感覚をとくに得られる。

①河床が洗掘作用によってよく掘られていること。

②①に伴って、左右両岸垂直に近い角度で壁状になっていること。

③左岸はとくに高低差が大きく、林道までで10~11メートル。さらに、落石注意の崖上まで含めると河床からの高低差は20メートル以上。

④渓畔林においては高木の常緑樹が目立ち、樹高が20メートルほど。

①~④をまとめれば、下がる(掘られている)ところはとことん下がっているし、高いところにあるものは高いところにあるもので留まっている。

堤体前の縦方向に大きく変化する地形のなかで、その底辺部分から出した声については簡単には失われることがない。音は壁状に囲われた空間の中から逃げていくことが出来ず、徐々に解き放たれていくようなイメージ。

良いイメージを抱きながら遊ぶことが出来た。

久しぶりに来てみた場所であったけれど、なかなかどうして鳴ってくれる堤体前。気温の面でも暑すぎず。寒すぎず。過ごしやすくて午後5時前、夜の帳が下りる寸前まで遊んでから帰ったのであった。

右岸側。(饗の里公園側)
左岸側。(林道側)
林道。左下にあるのが堤体。
壁となる法枠工。中央はハゼノキのなかま。
高木の常緑樹はツブラジイ。
時折いい風が吹いた。
堤体は137度。南東。
立ち位置の自由度は高いので参考までに。
よく鳴ってくれる堤体前だった。

秋のドライブゲーム

伊東マリンタウン

11月19日、午前5時。まだ夜も明けない駐車場から向かうのは、道の駅内にある温泉施設。

伊東マリンタウン朝日の湯。

朝風呂営業も行う同施設は、すでに開店をしているはずだ。

伊東マリンタウンは横長の建物。よく見れば、そのいちばん南側の一角だけはかすかに明かりが点いているのがわかる。

気温は11.2度。

温められた車内から抜け出してきた身には寒いとしか言いようがない。
ただでさえこんな感覚なのにさらに寒さ倍増なのが、風を切り裂いてすすむ早歩き。しかし、この冷たい空気から逃れるためには一刻も早く建物の中に入りたい。

足早に・・・。

ようやく玄関から建物内に入り、下駄箱、券売機、受付へとすすむ。チケットと引き換えに手渡されたのは、借りもののバスタオル。使用後の管理が省略できるとあって、ドライブゲームにはありがたい。

階段を登り、ようやく男性浴場へ。

塩化物・硫酸塩泉の温泉で体の芯から温まる。

湯上がりには食堂のテーブルでモーニング。テーブルのすぐわきには開き戸があり、そこからテラスに出られる。
水平線の遠く向こうに赤く出現したのは、今日のゲームでお世話になる太陽だ。

朝日の湯
朝日の湯(食堂側)
バスタオルはレンタルできる。(画像はプレゼントのタオル。)
テラスからの日の出。
日の出に照らされる伊東マリンタウン。

朝のウォーキング

午前6時40分、駐車場に戻って車に乗り込んだ。

本日、向かうのは伊豆市の菅引川。その菅引川の入渓予定時刻にはまだ早いので、伊東市内を散策することに。

伊東マリンタウンを出て、国道135号線を南進。渚橋てまえの信号交差点を右折する。

午前6時50分、「キネマ通り」アーケード入り口近くのコインパーキングに車を停め、散策をスタート。

東海館、木下杢太郎記念館、ラヴィエ川良、暖香園、ダンコーエンボウル、伊東市中央会館、音無神社、松川遊歩道などを見て回った。

朝の7時台ということもあり、ホテル以外の建物は営業開始前という状態であるが、その外観だけでも見て回る朝のウォーキングが心地よい。太陽はまだ低く、建つ家やビルによって出来た日のあたらないところを歩いていると、ひんやりとした空気が襲ってくる。

うっかり湯冷めして、調子を悪くしてはいけないので、そんなところはちょっと足早に通過し、日なたになった所へ逃げ込む。

歩道の整美された比較的道幅の広くなったところを選んで歩き、コインパーキングへと戻った。

東海館
木下杢太郎記念館
ラヴィエ川良
ダンコーエンボウル
シコンノボタン(音無神社にて。)

ここに来るなら・・・、

午前8時15分、コインパーキングから出庫。いったん国道135号線に出てから「伊東駅入口」信号交差点より静岡県道50号線へ。
JR・伊豆急行伊東駅をチラリと見たのち、「いちょう通り」から静岡県道12号線へ。

伊東市市街地を南下してしばらく走ると「中伊豆BP入口」信号交差点。ここで右折をすれば伊豆市方面であるが、まだ時間に余裕があるため左折し、10分ほど車を走らせて「一碧湖」南東部、観光橋横の駐車場に車を停めた。

車から降りて一碧湖に向かう。
ここは大昔に火山活動(マール)で出来た湖だという。

伊東市の大室山・小室山、両者の中間には(伊東市)吉田という地名があるが、この湖は古くは吉田の大池と呼ばれていたらしい。当地に残る「大池の赤牛」という伝説には、かつてこの湖に住んでいた赤牛によって村人らは幾度にもわたって漕ぐ船にいたずらをされたり、時には襲われたのだという。

・・・。

静まりかえる湖畔。

まぁ、ここに来るなら焼肉屋とか牛丼屋のあとは控えたほうがよいだろう。

一碧湖
ベンチに座って満喫できる。
紅葉にはまだ早かった。
こちらは隣の(水路でつながっている)沼池。
観光橋横の駐車場はトイレもあって安心。

いよいよ伊豆市へ

午前9時15分、観光橋横の駐車場にて車に乗り込み、直後に出発。

来た道を戻るようにして進み、「中伊豆BP入口」信号交差点にて今度は伊豆市方面へ。そして道なりにしばらく走り、現れるのが「冷川トンネル」。この冷川トンネルを抜けたところから北進(静岡県道12号線)→西進(静岡県道12号線)→「八幡東」信号丁字路→南進(静岡県道59号線)の順にすすむ。

静岡県道59号線を南進してゆくと、場所は伊豆市原保(わらぼ)。伊豆市原保にて左手側に現れる「若菜園」という造園店を過ぎて200メートルほど走ると、信号機のない十字路。この十字路を左折し直後にあらわれる「灘隈戸橋」を渡らずに右折。菅引川に沿って道を南進する。

菅引川沿いの風景は、前半が水田地帯を見る農道。後半が林道。ちょうど宿泊施設の「てづか村」を過ぎたあたりで林道の様相を呈す。さらに、てづか村より1.2キロほど進んだあたりが入渓点。いちど離れていた川がふたたび林道に寄り添っていることと、低めの堤体があって堆積地ができて、降り立ちやすいことが入渓点である理由だ。

いよいよ伊豆市へ。
菅引川(灘隈戸橋から)
林道が暗いのは、
こんなにガッツリ落葉樹の葉が残っているから。(ハリギリ)
ムラサキシキブ

強い意志

午前10時半、車から降りて入渓の準備。ウエーダー、フローティングベスト、ヘルメット、手には登山用のポールを1本にぎった。

登山用ポールについては、購入時においては2本セットである。2本セットのうち、1本だけを使用するということだ。

川は今回入渓する菅引川に限らず、どこも大小の石がゴロゴロしている。これが言うまでも無く、固い。
やはり、あってはならないのが渓行中における転倒事故だ。
渓を歩くことに際して、事故を起こさないために気持ちを切らさないようにしたい。

「絶対に転んでなるものか!」という強い気持ち。

強い意志。

精神的なもの。

と・・・、同時に。

万一、転んでしまった時のことを考えておかないといけない。

とっさに手が出せる状態にあるかどうかということ。良くない例としては、両手に何かを持っていて、着地の準備が遅れてしまうことだ。

仮に”絶対に転ぶ”ということが保証されていたとすれば、両手には何も持っていない状態が理想的である。

意図するのは、立位の保持能力を高めるために握った片手だけの登山用ポールと、万一、転んでしまった時のための何も持っていない片手だ。なにも持っていない方の片手は、大きな石や安定した樹木につかまる際にも大変に役に立つ。

菅引川(入渓点にて。)

フライング

午前10時50分、菅引川第二堰堤に到着。
水は目立って増水とも減水とも言えない量で落ちている。
太陽はまだだいぶ右岸側にあり、これから時間が経つにつれ、左岸側に移ってゆくだろう。

堤体に向かって真正面に立ったとき、歌い手、堤体、太陽の三者が一直線のならびになる時をベストタイムとしている自身にとっては、まだ少し時間が早い。しかしながら、まずは試しに・・・、とばかりにメガホンをセットし声を入れてみる。

鳴っているのがよくわかる。

水が主堤の放水路天端より水褥池に向かって落ちている。水褥池より溢れ出た水は副堤の放水路天端を伝って堤体下流側へ落ちている。落ちる水の粒を受けるのは面状になった水のかたまりであり、受ける衝撃によってノイズが発生している。

ノイズは断続的に攻めてきている。

菅引第二堰堤(昭和36年11月竣功)
距離は60.8ヤード。
風は微風。
ほぼ真南だが、若干西向き。
午前11時7分撮影。

堤体を正面に見て

堤体を正面に見て歌い手が立ったとき、その者がノイズを耳に受けるということは不可避であるが、決してその中にあって響き作りが出来ないわけでは無い。

堤体前を吹く風に助けられて、音が遠く離れたり、逆に近づいてきたりする動きの結果を響きとして聞くことが出来る。

実力でいえば歌い手自身の能力100パーセントというわけではない中で、運良く自然環境を味方に付けながら遊びを展開してゆく。
聞くことにも集中しながら、ノイズに紛れて返ってくる自分自身の声を楽しむ遊びだ。

また、ノイズに対して戦っているという感覚を持つことも楽しい。響き作りを邪魔する者がいるなかで、それを克服してゆく。(打ちのめすということだ!)

体を使うだけでなく、頭も使って。敵に対して効果的な戦い方ができた時には、ゲームに対する充実度がさらに増すであろう。

やがて時は過ぎ、堤体に向かって真正面に立ったとき、歌い手、堤体、太陽の三者が一直線のならびになる時刻。この日は午後の12時半のことであった。

さらに30分ほど歌を楽しんで午後1時に退渓。

退渓後は伊豆市のラーメン屋「あまからや」に向かった。

楽しい秋のドライブゲームであった。

以下、5枚の画像は午後12時から午後1時のようす。
日差しの強い日だった。
落葉、常緑ふくめて全体的に葉が多い。
光の明滅差が素晴らしい。
ノイズは永遠と攻めてくる。
退渓後はラーメン屋へ。
「あまからや」のあっさり塩らーめん。

山のタコ焼き屋

堤体は方角に応じ時間設定をして入るとよい。

秋めいてきた。
自宅のある沼津市も最高気温25度以下の日が多くなり、日中でも過ごしやすい日が増えてきた。
今回は日中のゲームを紹介しようと思う。

こちらは夕方、日没前に遊ぶのとは違い、太陽の向きを気にしながらのゲームとなる。真東方向から南向きの方角を経て真西向きまでの堤体で楽しむことが出来るタイプの遊びだ。

この方角ならば午前中とかこの方角ならば午後とか、入るべき時間が限定されているところに面倒臭さのようなものを感じるかもしれないが、太陽の光がどちらから当たるかをしっかりとマネジメントすることで、歌に対する集中力をグッと上げることが出来る。

より魅力的な時間の堤体に接するためにも、最も理想的な立ち位置に立つためにも、堤体の方角に応じて現場に入る時間を設定していきたい。

では、今回入った堤体の方位は262度。西南西向きの堤体であったのだが果たして・・・?!

広瀬ダム

広瀬ダムへ

10月17日、午前9時。山梨市三富川浦、広瀬ダム。
ロックフィルダムの頂上に設けられた管理用道路を歩く。気温は18.7度。
日の光を遮るものが何もない管理道路上は、日なたとはいえ長袖を着ていないと寒い。

さらに風も多少吹いていたので、風よけにとレインジャケットを着こんでから芝生広場に向かう。
ローラーゲートの塔、管理事務所の前を通りすぎ芝生広場へ。

芝生はきれいな緑色。垂直にそびえ立つケヤキの色はまあまあ黄色。イロハモミジは緑から赤へと移行期間中。サクラ、シラカバは完全な色彩変化を前にしてパラパラと落葉を始めている。クリ、トチノキ、フサザクラはピクリともせずきれいに緑色。色鮮やかに見頃を迎えているのはリョウブ、ニシキギ、ドウダンツツジ・・・。

結論。今が見頃かどうかと聞かれれば・・・、

「樹種によります。」ということになる。

前半戦。

前半戦と言うのが適切ではないかと思う。
紅葉シーズン前半戦のダムサイトを歩いた。

広瀬湖
四阿
紅葉はまだ前半戦。
芝生広場を上から。

道の駅みとみ

午前10時半、車を走らせてやってきたのは「道の駅みとみ」。
建物はアーチ型のダイナミックな屋根に覆われた比較的大型の道の駅だ。
そのダイナミックな屋根の上はるか向こうには、木賊山(とくさやま標高2468メートル)と鶏冠山(とさかやま標高2115メートル)が見える。

車を降りて建物に向かう観光客はその美しき山体に目を奪われ、みな一様にスマートフォンを取り出しては写真を撮る。
自身もご多分に漏れず、やはりスマートフォンを山に向けて、道の駅の建物ともども写真に収めた。

そしてトイレを利用させてもらったのち、入渓前の腹ごしらえ。
建物の店先にある看板からメニューを選んでいると、あっちの看板とこっちの看板で書かれているメニューの内容に違いがあることに気がついた。

なんと!この道の駅には2軒の食堂があるようだ。今だかつてこのような道の駅は記憶にないと思う。
2軒分の豊富なメニューの中から吟味させてもらって選んだのは「富士桜ポークカツ定食」。

食味はカツ本体、もちろんこの上なく美味かったのだが、嬉しいことに青ぶどうが付いてきた。皮までまるごと食べられたこの青ぶどうはいわゆるシャインマスカットなのではないかと思われるところ、その美味さには感動した。

果物王国、山梨県にて偶然にもたらされたラッキー。さい先がよい。

道の駅みとみ
富士桜ポークカツ定食
道の駅内
ジャンボかぼちゃが並んでいた。
さすがは果物王国。

西沢渓谷・市営駐車場へ

食後は道の駅の食堂以外の部分、観光情報コーナーや土産物店などを散策。
そして正午に道の駅を出発。

車を走らせて5分とかからない距離で、西沢渓谷・市営駐車場に到着。

本日はこの西沢渓谷・市営駐車場より歩きをスタートし、まずは散策路にしたがって行く予定。入渓は途中にあらわれる笛吹川支流の「ヌク沢」から。そしてヌク沢から笛吹川合流点に移ったのち、笛吹川を北西方向に遡行。西沢と東沢の出合にて西沢側に進路をとり、直後にあらわれる堤体に入るというのが予定のコースだ。

堤体の方位については前述の通り、西南西。午前中より入渓せず午後まで待ったのはこのため。

また、ヌク沢到着までの散策路の歩行については、距離が比較的長いためスニーカーを使用する。ウエーダーの着用についてはヌク沢からとなるため、現地までは背負子にウエーダーを搭載し、持ち運ぶこととした。

西沢渓谷・市営駐車場

堤体前へ

午後12時30分、西沢渓谷・市営駐車場を出発。
ドライブイン不動小屋の前を通過し、国道140号線西沢大橋の巨大な鉄橋をくぐり抜ける。
鉄橋の下を過ぎてもなお日陰気味でまあまあ暗いのは、散策路を覆いこむようにして生える樹木類のおかげ。

イヌブナやホソエカエデ、サワグルミなどは寒さに強いから当たり前に思えるが、静岡県でも見慣れているヤマハンノキやトチノキなどもまだぜんぜん青々としている。

暑すぎず、寒すぎず。

これだけ樹木の葉がしっかりと残っていて、暗がりを作れるポテンシャルを持っているのならば、堤体前は演奏施設として最高の環境であるはずだ。また、それだけにとどまらず、緑に覆われた散策路をこうして歩き、堤体前まで向かうこのひとときもまた、じつに心地良い。

散策路のみどころの一つである「なれいの滝」を眺望する「なれい沢橋」も過ぎると大嶽山那賀都神社まえの分岐。立派な公衆トイレも設置されているこの分岐を直進すれば、ようやくヌク沢に到着することが出来る。

散策路の隅っこに背負子を降ろし、くくり付けていたウエーダーを外して、スニーカーから履き替える。
逆にいままで履いていたスニーカーを今度は背負子にくくり付け、ふたたび担ぎなおす。

いよいよヌク沢に向かって降りる。高低差はおよそ20メートルといったところか?
沢に向かって高度を下げる踏み跡がしっかり付いているのは、ヌク沢にある2基の谷止工のためとおもわれる。見るため、あるいは写真撮影のため沢へ降りる人がいるらしく、はっきりとした踏み跡が付いている。

踏み跡にしたがったおかげもあり、たやすくヌク沢まで降りることが出来た。やはり谷止工を写真撮影したのち、笛吹川との合流点に向かう。笛吹川の合流点へは目と鼻の先の距離ほどしかないため、こちらもすぐに降り立つことができた。

笛吹川に出てからは、川の流路形状にしたがっておおよそ北西方向にすすむ。平均して大玉スイカくらいの石がゴロゴロしている中を転ばないように注意しながら進み、東沢、西沢の出合にて西沢を選択。そして出合より100メートルもないくらいの距離を進むとようやく目的の堤体前に出ることができた。

樹木の下を歩いて行くのが気持ちいい。
サワグルミ
イヌブナ
ヌク沢の谷止工
こちらは東沢の堤体と二俣吊橋。
笛吹川。(ヌク沢との出合付近。)
思わず立ち止まる。木はナナカマド。
目的の堤体へ(堤体名不明。)

記憶に思っていたそれより・・・、

腕時計に目をやると時刻は午後の2時。予定では市営駐車場より30~40分の行程にて堤体前着で、1時ちょうどから1時10分ころにはこの場に立っている算段であった。
しかしながら行程途中の道くさ(多くは植物の観察。)に時間を費やしてしまい、到着が遅れてしまった。

本日えらんだのは、おおよそ真西方向を向く堤体であるから、通常午後の2時くらいでもぜんぜん遅すぎることは無いはずである。しかしながら、記憶に思っていたそれよりも全然違う景色が目の前には広がっており、堤体の上、遠く向こうの山の山体は右岸側に向かって大きくせり出している。

北半球に位置する日本という国では、通常(通常という言い方も変かもしれないが?)、太陽は左から右に向かって放物線を描くように移動する。そのことを理解した上でいよいよ落ち着き持っていられなくなっているのは、放物線が正午を過ぎているため下降の動きに入っていて、今にもせり出した山の山体に吸い込まれてしまいそうな状態だからだ。

太陽の直射日光が失われてしまってはもはや粗鹵迂遠。

いや、例えるならばもうすっかり冷めてしまったタコ焼きを売る屋台の惰性的営業に近い。
声を掛ければそれなりにお客を楽しませてくれるかもしれないが、扱っている商品の品質から見れば、やはりそこは“それなり”のものを受けて終止する。店主のせっかくの楽しいトークも商品によるマイナスが大きく、全体的には残念ながら評価が下がってしまうということになる。

急いでメガホンをセットし声を入れてみる。

鳴らない。

立ち位置の選択性が高く、前にうしろに声を出す場所を変更することが出来る。うしろに下がれば、堤体まで声が届きにくくなる。逆に前に出れば、声のはね返るスピードに耳が追いつかず響きとして声を聞くことが出来なくなる。

うしろに下がったり、前に出てみたり・・・。立ち位置を変えてみては声を入れていくも、芳しい結果が得られない。

時間が無い。(午後2時撮影。)
冬至をおよそ2ヵ月後に控え、太陽の高度が下がり気味なのも要因。(日没が早い。)
放水路天端
もはや吸い込まれる寸前。(午後2時50分撮影。)

堤体の持つ生命感

その後も立ち位置の変更、メガホンパーツの変更、メガホンの持つ向きの変更などいろいろやってみたが、これといってはっきりとした響きを得られることは出来なかった。

仮説にしかならないが、もう少し水が落ち着いてくれれば落水のノイズと声とのバランスが良くなり、歌い手自身、負けず劣らずの感覚のなかで声を発していくことが出来るのではないかと思う。

あとは堤体前における風。この日はほぼ無風という条件の中でやったが、これが前から後ろからもっとビュービュー吹いて、堤体本体、またその向こうの景色の奥先まで声を送り届けてくれたなら、もっと違う結果があったのではないかと思う。

逆に良かった点を上げるならば、山の山体に太陽が吸い込まれるまでの間、堤体を湛水する水に太陽の光があたって光る様子を見て楽しむことが出来た。

太陽の光があたるところ。

逆に影になって暗いところ。

両者の明暗の差を歌い手がひとつの視野の中に取り込むことで、堤体の持つ生命感のようなものを感じとることが出来た。(おいしい思いは出来なかったが、タコ焼き屋のイイ香りを嗅ぐくらいまでだったらなんとか出来たと思う。)

山の山体に太陽が吸い込まれていったのは午後2時55分頃のこと。それまでは響かないながらも声を入れていくという行為を試みて、以降1時間ほどはメガホンを置き、堤体周辺の渓畔林の様子を見てまわった。堤体前をあとにしたのは午後4時前のことであった。

~90ヤードで、河床もほぼフラット。立ち位置の選択性が高い。
午後2時12分撮影。
午後2時52分撮影。
退渓時に撮影。リベンジを誓ったのは言うまでも無い。

福井県小浜市・大飯郡おおい町

今回は福井県小浜市・大飯郡おおい町でのエピソード

9月2日午前10時半、まずは小浜港川崎の岸壁へ。

遊覧船の乗船券はさきほど購入したばかりだ。午前9時半の始発便はすでに出港済みということで第2便の11時発の船を待つあいだ船の写真を撮ったり、岸壁で釣り糸を垂れる人の様子をうかがうことにした。

木で出来た自作であろう竿掛けに乗る長さ5メートルほどの磯竿と大型のスピニングリール。道具は随分と年季がが入ったものだ。そこから深い緑色の海に向かって垂直に消えていく釣り糸。何を狙っているのであろうか?

となりの人と談笑しながら竿先を見つめる釣り人。

Tシャツにサンダルという出立ちで、その人のものかは不明だが背後には1台のママチャリが置かれている。

岸壁は遊覧船乗り場の桟橋近く。

船への乗船を待つ観光客。釣り人。1台のママチャリ。

ともに一つの港の風景として同居する。

ふと、桟橋のほうを見ると乗客が船に乗り始めていた。鞄から乗船券を出し、入り口ゲートにて提示する。

桟橋を経て船に乗り込んだ。

いざ、出港!

ビュービュー

遊覧船は定刻通り午前11時に出港した。

船は座席数42席。総トン数19トン。航海速力は24ノット(時速約44キロ)。高速船だ。

船酔いはしない自信があったが、ブリッジからの立ち見を選択。揺れは座席室よりも大きくなるが、風をさえぎる遮蔽物が無いため船酔いしやすいかどうかということに関して言えばこちらはデメリットばかりでない。

なんて思っていられたのは出航前でのこと。

風が強すぎた。

船が航走することによって生じる風に、とてつもない風圧を受ける。おそらくは小さな子どもや年寄りなどは立っていられないほどの強い風だ。軽くて小さな持ち物(スマートフォン)などはとくに注意が必要。誤ってその手を離れた折りには、ブリッジ上には残っておらず海に向かってダイブするであろう。

船は小浜湾北部に突き出た岬に向かって航走。

というより爆走!(感覚的には。)

ビュービューと風を受けながら、船が切り裂く海水の曳き波を見ながら、たしかにこれは非日常のアトラクションだと思いながら、手すりに掴まりつつ耐え続けた。

小一時間。船はようやく岩場付近に到着し、ドリフト(漂泊)をはじめた。

景色は断崖絶壁の岩壁。波の浸食作用によって出来たというその岩壁は雄大で、のみならずその上を彩る風衝樹形の木々も見事である。

断崖絶壁の岩壁と風衝樹形の木々をセットで楽しむ。

ややあって、船は再び前進をはじめる。そして次の名所が近づくと再びドリフトに切り替え,、鑑賞する間が与えられる。

船は航行とドリフトをくり返しながら進んだ。

途中、「蘇洞門」では近くの桟橋に着岸。乗客全員が桟橋に降り、おもいおもい写真撮影などに興じた。

その後は再び乗客を収容し、桟橋を出発。正午に小浜港へと戻った。

小浜市内。画像左寄りのグレーの建物が小浜市役所。
これも小浜市内。こうのとり大橋が見える。
巨大な岩壁を多数見ることが出来る。
蘇洞門近くでは桟橋より上陸させてもらえる。

南川を上流部へ

小浜港に帰港してからは周辺を散策。昼食は遊覧船乗り場反対側にある市場の食堂で摂った。昼食後は本日入渓する予定の河川をチェックするため「大手橋」へ移動。

大手橋から南川の様子をうかがう。

異常なし。

その後は、小浜郵便局、雲城水(名水百選)、台場浜公園などを散策したのち車に乗り込んだ。

午後2時、国道162号線に乗って南川上流部を目指す。途中、「名田庄大橋」にて自治体名は大飯郡おおい町へ。なおも南川に沿って進み続けると、午後3時に「道の駅名田庄」に到着。

五右衛門は「若狭小浜お魚センター」内にある。
五右衛門の刺身定食
大手橋と南川。大手橋は工事中であった。
小浜郵便局(名水百選の雲城水はこの建物のすぐ横にある。)
道の駅名田庄
へへっ。

湖畔好きには・・・、

道の駅名田庄ではトイレと休憩を挟んだのち午後4時に再出発。

ここから先は南川第1堰堤、野鹿谷堰堤、野鹿の滝、頭巾山登山口とつづく。

まずは10分ほど走って南川第1堰堤。この堤体は水通しの穴が無く、水をかなり貯めている。当日は放水路天端ギリギリの高さまで水が貯まっていて、その不思議をネットで調べたら小水力発電装置併設ということであった。

実質的に貯水ダムとして機能する堰堤を境に上流部は見わたす限り水面で、深さに関しても午前中に小浜港の岸壁から見たそれと全く変わらないほどの深い緑。何といっても貯水池独特の静まりかえった雰囲気が秀逸であった。

堤体本体より林道を奥に200メートルほど進めば、駐車場が設けられているため静かな湖畔の雰囲気を楽しみたい人はこのあたりで過ごすのが良いであろう。

道の駅名田庄からは県道771号線を使う。
南川第1堰堤(画像左端、白く突き出たコンクリート中に水力発電の配管が走る。)
南川第1堰堤。水表側。

渓流好きには

もっとガラガラに鳴る、渓流区間に触れたいならば林道をさらに進む。南川第1堰堤より1キロほど進んだ先にある分岐を左折。

野鹿谷に沿って10分ほど走れば野鹿の滝入り口看板前。それより5分手前には今回の目的地である野鹿谷堰堤を見ることが出来る。

入渓点は堤体本体より林道をさらに200メートルほど下がったあたり。ちょうど林道が野鹿谷に向かって大きく突き出たあたりで、カーブミラーが1本立っている。

車はそのカーブミラー付近の道幅の広くなったところに置いた。

時刻は午後5時15分。入渓の準備を済ませ、川に立ち入る。

林道をさらに奥へ。
野鹿の滝
入渓点となるカーブミラー

川の水量、渓畔林、渓相などは事前に林道から確認済みである。川石やデコボコしたナメに苔が乗っているのは、この渓が比較的洪水時でも安定している証拠であろう。涵養機能の高い山からの水ということだ。

入渓点からものの5分程度歩いて、堤体本体を確認。さらに5分ほど歩いて堤体前に到着。

堤体は、主堤、副堤の二段構え。

渓畔林はケヤキを中心に、イタヤカエデ類、チドリノキ、シラキ、イロハモミジなど。堤体により近いところのケヤキにはフジがよく絡んでいて、左岸側、右岸側の隔たりを繋げるようにしてビロ~ンと蔓を伸ばしている。

入渓点近くにて。
堤体が見えた!(画像右上。)
堤体が見えてからも焦らず進む。
堤体前に到着。

空白地帯

堤体前の立ち位置は左岸側に立った。ただし、その左岸側。とはいっても、正面目の前にはかなり右岸側寄りになった堤体本体の姿がある。

川が幾分カーブしているため、必然的に限定された立ち位置であるが、幸いにも堤長の直線より直角の交点延長線上には立てている。

距離的にはおよそ41ヤードほどの位置に立つことが出来た。

早速、自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

立ち位置のすぐ左岸側には壁状と言うまでに切り立った斜面がある。ここは無理をせず、正面、またそれより右岸側に向かって声を入れていく。

右岸側の視界の先にはスギの高い木が数本、堤体完成後に自然に生えてきたであろうケヤキ、ゴロゴロと無造作に放置された捨て石、その捨て石には何十年分ものあいだスギの枯れ葉が降り積もり、その隙間をぬってシダがガシャガシャと生えている。

ゴミの投棄などは無く(ナイス!)、しかしながら美しく整備されたとは言い難いこの右岸側のちょっと高くなったところに声を入れていくとよく響いていることがわかる。

空気の動きで言えば、ほぼ無風という条件下、なぜこれほどまでに良い結果が得られているかと疑問を呈せば、その答えは堤体前に広がるノイズの空白地帯にあるような気がする。

主堤より水叩きに向かって落ちる水。水叩きより副堤の天端上を通過し、天然の石組みに向かって落ちる水。

なんとこの堤体前周辺で聞くノイズの発生源はこの2ヵ所に絞られている。そこから下流を見れば、ちょっと深めの淵があり、それが徐々に浅くなって細いヒラキになる。

この淵+ヒラキの区間がおよそ35ヤード。重要なのはその区間に大きな石などが入って段差が出来ていないこと。段差が出来ればその場所に落水が発生し、たちまちノイズの発生源となってしまう。

上方より水中を見渡せば、渓魚の好きそうな水のヨレは確認できるが、それはそれは大層静か~にヨレている。

歌い手としては前述の2ヵ所のノイズを敵として戦えばよい状況にあり、渓畔林のもたらす反響板効果を使えば、水量豊富な落水相手でもしっかりと響きを作り出すことが出来る。

南西向きの堤体は午後型。
当日、風はほとんど吹かなかった。
距離は41.4ヤード。
遮られながらもチラリと見えるのがまた良い。
左岸側
右岸側。見ためは悪くも響きは良い。
この空白地帯が効いた!

退渓

結局この日は午後6時半まで夕方ゲームということで歌を楽しんだ。

水量豊富な落水相手のゲームであったが、当地に偶然もたらされた自然環境の中で、偶然にも良い形で響き作りをさせてもらえ、大満足の結果となった。

歌える堤体さがしをしていく中でノイズの大小はあまり気にするべきでは無いということを再確認した旅であった。

どんな堤体でもまずは歌ってみるという基本を忘れず、また次の堤体に挑んでいきたい。

ノイズの大小はあまり気にするべきでは無い。

シェアサイクルを発見した話

今回は山梨県南巨摩郡南部町でのエピソード

日々、砂防ダムはじめ堤体類にでかけ歌うことをライフワークとしているが、この行為のメリットとして電気も水道も使わないということが上げられるとおもう。

登山やキャンプといった他のアウトドアレジャーがそうであるように、砂防ダムの音楽というはかなり環境に対する負荷が少ない遊びであると言えるのではないか?

山、森林、渓流といった再生可能エネルギーに囲まれる環境の中で遊ぶことによって失われるものはほとんど無い。ゆいいつ問題があるとすれば「堤体前」と呼んでいる演奏場所までの道のりにおいて、なんらかの内燃機関を利用していることだ。

内燃機関を利用する。つまり、自動車をはじめとした移動手段を用いることによって枯渇性のエネルギーを使ってしまっている。

堤体前に立って歌うことそのものには環境負荷が認められないのに、そこにたどり着くまでの行程において、環境負荷の生じるようなことを行ってしまっているということだ。

より完璧に近いものを考える時、そういった部分まで排除できればさらに理想型なのではないか?

今回は、そんな環境負荷の理想型を求めるプレイヤーのための可能性として、山梨県南巨摩(みなみこま)郡南部町でのエピソードを紹介しようとおもう。

JR身延線内船駅

辛抱たまらず

スタート地点はJR身延線内船(うつぶな)駅まえ。

8月5日、時刻は午後2時。

非常によく晴れている。

夏の直射日光がチリチリ照り付けていて、どうしようもない暑さだ。と、

鳴きまくるセミ。
暑さにさらに追い打ちをかける。

内船駅の駅舎とは反対側、東のほうにはすぐ山が控えていて見事なみどりを見せる山体もセミの鳴き声がすごい。

多くはミンミンゼミとアブラゼミ。

肌に照りつける太陽光線のみならず、耳から射してくる聴覚刺激に辛抱たまらず駅舎に逃げ込んだ。

内船駅駅舎内

無人駅にて

駅は無人駅だ。一日の利用客数は129人ほどだという。(2018年データ。乗車人員のみ。Wikipediaより。)

切符も買わずに避暑目的でウロつくのも気が悪く、待合室内の自動販売機にてスポーツドリンクを買い、堪らず一気に流し込む。

クーラー・・・、など付いているはずもない小さな待合室のおかげで強い日差しからは逃れることが出来たが、依然として暑い。
換気用に開放された待合室の窓からはこれまたセミの鳴き声が襲ってきていて、窓辺にて絶賛監視作業中の女郎蜘蛛にあいつらをなんとかしてくれと懇願する。

本日は南俣川に夕方ゲームで入る予定で到着したが、ちょっと早すぎたか?

時刻はまだ午後2時すぎ。

近くを流れる富士川土手まで行き、河原を流れる風に当たりに行くことにした。

内船駅のホーム

ほぼ駅前

内船駅駅舎を出て5分ほど歩く。すると富士川の土手に到着。同時には土手に隣り合うかたちで建つ温泉施設を発見した。
施設の名は「森のなかの温泉 なんぶの湯」という。どうやら日帰り温泉施設のようだ。

これはこれは災い転じて何とやら。本日の退渓後のお楽しみはここにすることにしよう。

調べてみると、営業は午後9時まで行っている様子。地元民の利用も考え(地元民は地元民料金で。)結構おそくまでやっているようである。

ほほう。

と、ここで不意に駐車場内に設置された駐輪場に目がいった。普通の駐輪場とは異なった、ちょっと変わった雰囲気に気づいてすかさず歩み寄る。

水色のストレートハンドルの付いた24インチほどの自転車が3台。さらに同径クラスでママチャリが1台。全て電動アシスト式の自転車だ。

これらのすぐ横に設置された看板によれば、置いてあるのはシェアサイクル用に用意された自転車で、ネットで申し込みをすれば24時間いつでも利用可能ということである。

おぉ。

こちらは砂防ダム訪問きっかけでこの場所に来た。本日ここから入る南俣川の入渓点までは、距離的に10キロとかからないはずである。(計測した結果、5.5キロだった。)駅から徒歩で5分程度、つまりほぼ駅前という立地条件にて自転車が借りられるとなれば、これは完全に自家用車不使用というかたちでゲーム展開することも可能なのではないか?!

今回、図らずもほぼ駅前出発のシェアサイクルを発見することが出来た。

どうしようか?

考えた。

今日ここから、このシェアサイクルに乗って入渓点まで行き、ゲームを楽しんできてまたこの場所に帰ってくる。

もしくは、

事前に計画していたとおり、自家用車にて移動を全てやってしまうというやり方。

う~ん・・・。

後者。

目の前には森のなかの温泉とやらがある。建物の入り口には「なんぶの湯」と書かれたのれん。のれんは「おいでよ!おいでよ!」と風に靡きながらこちらに囁いている。

どうしようか?

のれんが言うなら・・・、仕方ない。

午後9時の閉館時刻に間に合わなくなってしまってはのれんに申し訳が立たないため、ここはひとつ自家用車での移動を選択することとした。

のれんよ!また後で会うこととしよう。

森のなかの温泉なんぶの湯 駐車場

西俣川堰堤

というわけで、のれんがしゃべるなどということがあろうはずも無く、正直いって温泉の魅力に負けた。

自転車利用での完全自家用車不使用におけるゲームは、また日を改めてレポートすることとしたい。

この後はなんぶの湯の駐車場を出て富士川の土手、南部橋などを散策。戸栗川(今回入渓する南俣川の下流部の呼称)は富士川との合流点よりチェック。さらに今月15日に行われるという「南部の火祭り」の準備の様子を見たあと車に乗り込んだ。時刻は午後4時。まずは再びなんぶの湯まえの駐車場へ。

自家用車のトリップメーターを0にして出発。前述の通り、5.5キロほど走って、午後4時半に入渓点より少し上流にある鍋島橋に到着。

鍋島橋に来たのは、この周辺道幅の広くなったところが駐車スペースであるということと、鍋島橋の橋上から※西俣川堰堤をのぞむことが出来るからである。

ちなみにこの日は土曜日。

西俣川堰堤下流の堆積地にはリクライニングチェアーを広げた夕涼みの一団が陣取っていた。
じつはこの西俣川堰堤と鍋島橋、ここからわずか500メートル圏内には「十枚荘温泉」「山下荘」の二軒の宿泊施設がある。

察するに、夕涼みをしていたのはその宿泊施設のお客のようで、夕食時間か?午後5時前になるときれいさっぱりリクライニングチェアーを畳み、そそくさと撤収していった。

ふぅ。

こちらはようやくといった感じで、その西俣川堰堤にレンズを向けたく退去するのを待っていた。

無事、歴史的河川構造物と言っても過言では無い巨体をデジカメで収録。それではと、入渓の準備に取りかかる。

※西俣川堰堤について、
(堰堤高17.0メートル、堰堤長41.04メートル、堰堤型式アーチ式、天端処理工法 張石工、工事年月日 昭和26年7月~昭和29年3月 山海堂刊 砂防ダム大鑑より。)

富士川土手から南部橋をのぞむ。
富士川と戸栗川の合流点
8月15日は南部の火祭り
西俣川堰堤。鍋島橋から。
西俣川堰堤。別角度から。
アーチ式の堰堤だ。
入渓点。画像右端(鍋島橋)から下が西俣川、中央左寄りが南俣川

浸かる。

入渓点は鍋島橋下流の西俣川と南俣川の出合。時刻は午後5時15分。入渓する。

依然として暑い。

上着には接触冷感タイプの長袖を着ているが、それでも蒸すような暑さがまとわりつく。
入渓して間もなく、ちょっと深くなった淵を見つけて膝上まで浸かる。
ウエーダー越しに川水による冷却をする。

このとき測って気温は26度ほど。だいぶ下がってきている。しかしながら、渓に転がる石の上を歩いて遡行していると、再び暑さに襲われてしまい、都度タイミングを図ってはちょっと深めの淵に逃げ込む。

いやいや、きびしいな。

歌うときの環境として暑さは大敵である。避暑目的で夕方ゲームを計画したところ、まだまだ暑いというのであればこれでも設定時刻が早いのか?疑問が湧いてくる。

う~ん・・・。

ふと、上を意識して聞いてみる。

ヒグラシだ。アブラゼミも鳴いている。

鳴くセミの変化に少しホッとする。肌に感じる暑さにはまだまだ苦しめられたが、聴覚的には確実に“下降”を伝える温度センサーの知らせがあった。

勇気づけられ遡行をつづける。

堤体前には午後5時半に到着。

暑さがまとわりつくなか遡行する。
吊橋をくぐって進む。
熱が溜まってきたら川水に浸かって冷やす。
堤体(堤体名不明)に到着。

まとわりつきながら

水はきれいに降りていた。

放水路天端全体からとはいかないものの、左岸側に片寄るかたちで堤体水裏にまとわりつきながらサラサラと水叩きに向かって降りている。

ここ1~2週間ぐらいは静岡県はほとんど目立って雨の降る日が無かった晴天つづき。こちら山梨県はどうであったか?でもやはりこの様子から察するに、あまりこちらも降らなかったのではないかという推察。

降りる水はもちろん自然の厳しさを含んでいるが、この荒々しさのほとんど無い甘い柔和な水叩きへのダイブは音楽の演奏環境としてかなり理想的だ。

堤体水裏を湛水で降りる水は泡をまとっていてそれらが光を反射する。夕刻という時間も合ってそれらの光の反射は強すぎることがない。適度というレベルの範囲だ。

そして光に対して影の部分。堤体本体は経年により黒ずみ、両岸には針葉樹主体のそり立つ渓畔林。堤体本体の向こうにも高い斜壁の針葉樹林が見える。全体的にはサイド方向にも向こう側にも針葉樹の森が控えることによって、歌い手の立ち位置を取り囲むようにして影の部分が形成されている。

さらに影の部分からは、ノイズが供給される。堤体本体を降りる水から供給。そこから今度は水平方向には石を叩く水の音。渓畔林にはヒグラシがいて、アブラゼミがいて、こちらもノイズを供給。

ノイズ環境のど真ん中に置かれた歌い手はこれらの音を聞き、圧迫を受け、歌をうたおうというやる気をくすぐられる。

堤体前には長いヒラキがある。
そのため立ち位置はこのぐらいまで設定可能。
当日は60ヤード付近に立った。
セミの鳴く渓畔林。

危うく別世界に・・・、

結局この日は夕刻の時間、午後7時まで堤体前で歌を楽しんだ。

堤体前を取り囲む影の部分によってできる「黒」に、空色もそれに反射する川の水色もみんな時間の経過とともに徐々に近づいていき、やがてはその境目がわからなくなるほどまでに暗くなった。

それでも依然としてノイズを供給しつづける水の音、セミたちの声。
まだまだ歌は楽しめそうだ。
しかし、今日はこれから温泉が待っている。

ふと我に返った。

危ない危ない、あまりにも理想的な堤体前環境に心酔してしまい、帰れなくなるところだった。

最後に一曲、本当に本当に短い曲を歌ってから撤収の準備をはじめる。

この頃になると、あんなにも肌に服にまとわりついていた夏の暑さはいつの間にか無くなっていた。あるのは、夕刻の涼しさ、最後うたいきった充実感、依然として我の気持ちを誘惑し続ける堤体前空間のノイズ。

気持ちを強く持って帰るという決心。下流に向かって歩みはじめた。

退渓の歩きでは淵に浸かったりすることもなく帰ってくることが出来た。

天端が割れたりすること無くカドがきれいなこともポイント高し。
南東向きの堤体は本来ならば午前型。
しかし頭上がこれでは(真夏の)午前中には入れない。
実際に声を出しながら立ち位置を決めていく。
風は無くとも響きは良かった。
よーし、今日はあの枯木に向かって歌おう!
危うく別世界に連れていかれるところだった?!

尾鷲の空〈2日目〉

熊野古道関連のパンフレット

2日目は前日に見つけていた堤体に入ることに。
場所は真砂川にかかる「真砂大橋」より上流にある堤体だ。

まずは、いきなり現地に入る前にちょっと寄り道。
前日の夜に行った「みえ尾鷲海洋深層水のお風呂・夢古堂の湯」にて、たまたま手にしたパンフレットに「熊野古道」のことが書かれており、その熊野古道が真砂川に比較的近いルートをたどっていることが分かったため、一部をすこし覘いてみることにした。

午前8時20分、熊野古道巡礼者用の目印として建立されたという石碑の前からスタート。

尾鷲三田火力発電所の石油タンク跡を横目に見つつ、山道を進む。

500メートルほど進んで車を降りる。そして、見つけた石碑。

こちらは熊野古道遭難者の供養碑だという。

供養碑の前からは山道(車両では入っていくことが出来ない。)が始まっておりハイカー向けの案内板が設置されている。

案内板には先ほどのスタート地点から八鬼山峠(627メートル)を越えて、三木里湾沿岸道路に至るまでを「八鬼山道」として紹介。また、この八鬼山道について西国第一の難所として紹介しているあたりは昨日手にしたパンフレットとの共通項で、山越えにかかる所要時間を総合計すれば4時間20分にもなるという。

眼前にあるものは決して簡単なレジャーフィールドでは無いということを説明する案内板。
その精神は自身がこれから行う渓行にも徹底させる必要があると感じた。
観光インフラに近いところで不穏な伝説を作ってしまうことは絶対にあってはならない。

安全渓行祈願の意で合掌し、ふたたび車に乗り込んだ。

供養碑まえのようす
熊野古道の一部「八鬼山道」
真砂川に沿ってすすむ。(画像左端)
クサギの良い香りが漂っていた。
八鬼山トンネル

もうひとつの堤体

入渓点へ向かう。入渓点となる真砂大橋付近に行くためには供養碑の前から道なりに進めばよい。

8時50分、入渓点近くに到着。車を降りて入渓の準備を済ませる。

午前9時、真砂大橋南詰めの八鬼山トンネル入り口前より真砂川に入渓する。するとこの入渓点がいきなりの堤体前。
昨日の時点でも、そして先ほどまでの時点でも、あまりよく把握できていなかった深い藪のすぐ先には、目的とする堤体が目と鼻の先の距離にあったのだ。

堤高はおよそ4~5メートルほど。昨日見たとおり湛水していて、放水路天端より横一列いっせいに落ちている。水量的には多すぎず少なすぎずといったところで、堤体水裏に水が張り付いていられる程度、白泡をコロコロ転がしながらややゆったりとしたスピードにて落水している。

この一基に決めてしまってもよい。

しかし、ひとつ気になったことがある。(後述。)

ここはひとまずキープということにして、もう一つ上流側の堤体も見てみることにした。もう一つ上流側の堤体については、グーグルマップの航空写真にて確認済みであった。

上空からの写真で捉えられるほど渓畔林に乏しい堤体ではあるが、とにもかくにもまずは見てみようということで下流側の堤体を巻き、上流側の堤体前に。

下流側の堤体

どちらにするか迷う

午前9時半、上流側の堤体前へ。堤高は下流側の堤体とほぼ同規模。方位は169度で全く同じとした。二基の堤体は平行になるように設計されたようだ。

湛水する水の量はややこちらの方が少なめで、下流側の堤体にあったコロコロと転がるような白泡が見られない。流下する水の何割かは堤体基礎部分よりさらに低いところから伏流して抜けているのだろう。

ほか、演奏施設としての評価はつぎの通り。

①鳥瞰図上、放水路天端長さ中央より直角線上に立ち位置が確保できる。

②堤体前にキンボール大の転石が転がっており、水はその間を縫って流下している。またそれらを流下していく時に小さな落ち込みが出来、その一つ一つよりノイズが発生している。

③立ち位置、またその付近頭上には覆いかぶさるような渓畔林の枝葉を見ることは出来ない。したがって、ガラ空きになった川の中央付近の上空は(ゲームの設定時間である)午前11時頃になれば、ほぼ真上から直射日光を浴びることが予想される。

①はポジティブな内容。②③はネガティブな内容。

ひざ上程度の深さの淵に浸かり、暑さをしのぎながらしばし考えた。

上流側、下流側、どちらの堤体に入るか?

午前10時半、下流側の堤体前に戻ることに決め移動。足元に注意しながら進み、下流側の堤体前に戻ってくることが出来た。

上流側の堤体。日除けになるものが何も無い。
しかし堤体との距離はしっかり確保できる。
堤体水裏をごく薄く覆う程度の湛水
淵に浸かって暑さをしのぐ。

ななめ方向から

午前10時50分、自作メガホンをセットし声を入れてみる。

予想通りの響きの悪さ。前項の①に示した「鳥瞰図上、放水路天端長さ中央より直角線上に立ち位置が確保できる。」が出来ていないのが原因と思われる。

端的に言えば、堤体に対してななめ方向から声を入れているということ。経験上これが本当に響かない立ち位置の設定方法。

逆に堤体に対して真正面に立つことを必須とするなら、およそ30ヤードという距離にてじつはこれを実践することが出来る。しかし今度は真正面に立てているものの、堤体との距離が近すぎて、歌い手自身の耳で響きをうまく聞き取ることが出来なくなってしまう。

前述のひとつ気になったこと。とはこのこと。

残念ながら、このような立地条件において響き作りをすることはかなり困難なことなのである。

数値的には良いのだけれど残念!斜め方向から計測した値。
真正面から計るとこれくらいが限界。
上流側の堤体、下流側の堤体それぞれの鳥瞰図
立ち位置が護岸工によって制限されてしまった。

感謝!

堤体前で午後1時頃まで過ごした。

その間ゆいいつ良かったことといえば、堤体前にて渓畔林の木陰の下に入り、真夏の太陽の下でも快適に過ごせたことであろう。

今日の尾鷲の空は、前日と打って変わって見事な快晴となった。その中で、渓畔林の木陰の下に入り、まずは快適に過ごすことが出来たということについて一定程度評価することはできると思う。

日々、歌える堤体探しのようなことをやっているが、まず意識するのはとにかくプレーヤー自身が気持ちよく歌える環境を見つけ出すことである。

歌い手を真夏に直射日光が照らすような堤体前をどう評価するのか?

たとえ響き作りに有利な環境であったとしても、やはり音楽そのものを楽しめないようであっては演奏施設として本末転倒であると思う。

プレーヤーが心から歌にのめり込むような堤体前。

そんな場所を見つけたくて、次の堤体探しにまた出掛けるだろう。

2日間にわたり私に学びを与えてくれた三重県尾鷲市の自然に感謝し、本エピソードの結びとしたい。

風速計
2日目は一転して快晴に。
ウツギにクズ。だけれど立派な木陰。
立ち位置から堤体の見え方
まずは、歌ってみる。
1日目、2日目、堤体の位置図