メガソーラー発電所

「森山君、コレ・・・」
と言って渡されたのはどんな用紙だったかまでは覚えていないのだが、自分の名前を記入したことは覚えている。

依頼主は私の敬愛するH女史。
「今度ねぇ、函南(かんなみ)町にメガソーラー発電所の建設が予定されていて・・・」

話しを始めたH女史の口から、突じょ市民活動的な内容がこぼれてきたことについては心底驚いたが、話しを聞き進めるうち、どうやら話しの出どころはH女史本人なのでは無く、H女史が普段やっているクラブ活動の師匠によるものだということが判明した。

話しは店の勤務が終わっての時間帯、ちょっと忙しい夕方でのこと。

それほど深い意味合いも考えず、H女史から手渡された署名用紙に急ぎで名前を記入し、そそくさとその場を立ち去ったものの、話しの中に出てきた「軽井沢」については悲しいかな、私の脳の中の“重要案件取り扱い欄”に完全にインプットされてしまった。

―いやいやH女史、余計なことを言わなさんな・・・。―

自分の中ではこのあとの展開が予測出来ていた。

―まあねぇ・・・、函南だったらそんなに遠くは無いけどなぁ。―

不惑に陥る、ちょうど一年前の私。その日の天気がどうだったかまでは覚えていない。

やっぱりこうなる・・・。

野次馬

変わって翌日、天気はくもり。一転して天気の確かな記憶があるのは当日に外出をしているから。外出先はもちろん、

田方郡函南町軽井沢。

地図をたよりに、スマートフォンをたよりに、メガソーラー発電所の建設予定地を目指した。

ちなみに当初、私の予想した現場というのは、
「建設、断固反対!」とか「メガソーラー発電所を作るな!」といった非常に物々しい横断幕が踊る建設予定地だったが、じっさい現場に行ってみると非常に静かな、何事もないただの山林が当地にはあった。(横断幕も無かった。)

唯一というか、特徴があるとすればジメジメとした梅雨時期ならではの山林。建設重機の動く音などすることも無く、ひっそりと静まりかえっている。時折耳に入ってくるのは鳥の鳴き声。

本当になにも無い薄暗い山の中の林を見たのだった。

さて、帰るか・・・、それにしても・・・、

この日、建設予定地のことよりも気になったのが現場に行くまでに使った道路。ファミリーマートのある「平井」の信号から左折し、熱海峠に向かうかたちで軽井沢を目指したのだが、アップダウンの激しい道でカーブはそこかしこに、という道のり。非常に見通しの悪い道を走るハメになった。

これじゃあ、いつ事故ってもおかしくないな・・・。

全くもって地元の慣れた人向けの道に踏み込んでしまったのだと後悔。なんと言っても、自分自身はメガソーラー発電所の建設予定地を見に来ただけの野次馬である。厄介な事を起こして地元住民に迷惑を掛けてはいけないと、帰りは熱函道路(静岡県道11号線熱海函南線のバイパス道路)をなるべく多く使用するルートを模索し、より安全なルートを確保したのち帰路に就いたのだった。

これは昨年、軽井沢で撮った画像。

梅雨のゲームプラン

早いものでそれから1年。

軽井沢のメガソーラー問題がいまだ解決にいたってないということは、報道各社の記事によってすでに把握しているが、実際の現地では何が起きているのか?ということが気になっていた。

自身のスケジュールを確認し、行けると踏んだ日付は7月13日。一年前、函南町軽井沢を訪れた、その前々日にあたる日である。

日付は決まった。あとは行くだけ。ゆいいつ心配なことと言えばやはり、

雨。

それではと今回はメガソーラー発電所建設予定地に入るより前に、「堤体に入ること」を条件とし、現地に入ることで調整。

いくら何でも、歌は外せないでしょ!

どうやら梅雨の時期は、空模様により気をつけながらゲームプランを立てなければいけないようである。

あの橋の奥に堤体がある。

周回道路

7月13日、午前8時すぎ。沼津市内の自宅を出発。まずは、国道1号線で三島市内まで向かい、南二日町ICにて国道136号線に切り替える。
南進し、大場川にかかる「大場川橋」を渡れば、ひとまずの函南町入り。

その直後に現れる「大場川南」信号より伊豆縦貫道のガード下に沿って走り、ショッピングセンターLUPIA入り口の直後に現れる交差点名は「大土肥」。その次が「熱函入口」(なんとストレートなネーミング!)。

ここを右折するかたちで県道11号線に切り替えると、あとはひたすら道なりに進む。

軽井沢への行き方であるが、ポイントとなるのは2軒のファミリーマート。手前側の店舗「函南平井店」側でバイパスを降りてしまうと、前回同様の失敗を経験するハメになる。

そのままバイパスを降りることなく我慢し、以降4キロほど先にある「函南丹那店」直前の丁字路にてようやくバイパスを降りる。
降りた先にはほどなくして一時停止の丁字路を迎えるが、その左右を形成する道は丹那盆地の周回道路(1周約3.3キロ)。

周回道路の内側にはほとんど田畑しか無くて、逆にその外側は山を背負うかたちで民家や当地の基幹産業、酪農牛舎などがある。

当日はまず堤体に入る予定だったため、周回道路を反時計回りに進んだ。

そして今回入渓した沢であるが「小谷之沢」という沢で、周回道路より画像Ⓐ→Ⓑ→Ⓒ→Ⓓの順路で進むと行くことが出来る。(画像は後日撮影したもの。)林道は特にあかみち等では無いが、地元民に出会ったら一声掛けて。当日も畑仕事をする方とすれ違ったため、いったん車を停止させ、堤体に行くことを告げてから再発進し、山に向かって登った。

林道を進み、小谷之沢橋の下に車を停め、歩いて堤体前に下りたのが午前11時のこと。

Ⓐため池の前で右折
Ⓑ左折し、橋を渡る。
Ⓒ石垣の切れ目を右折。
ⒹY字は右側に。
小谷之沢橋

アジサイの花

歌を楽しんだあと、退渓したのが午後1時半。これからメガソーラー発電所の建設予定地を目指して走る。

周回道路まで下り、今度は時計回りに進んだのち、酪農王国オラッチェ前、農協ガソリンスタンド前などを通り過ぎると、まもなくあらわれるY字分岐を左に逸れる。丹那盆地を離れるかたちで坂を登り、進んだ先に現れたのが軽井沢の集落。

メガソーラー発電所の建設予定地はこれよりさらに奥の山林地帯。止まること無く進む。

やがて進んだ先に現れた看板には「好評販売中 宝谷山南箱根墓苑」の文字。道路は東向きに大きくカーブし、そのカーブの途中、前方まっすぐを見ればスギの生える人工林。

ようやく現れた建設予定地。

昨年来た時と何か変わったところはあるかと確かめたが、特に変化は無い様子。

そこにあるのは昨年と変わらずジメジメとした梅雨時期ならではの山林。建設重機の動く音などもちろんすること無く、ひっそりと静まりかえっている。時折耳に入ってくるのは鳥の鳴き声。

それでもなにか無いものかと、さらに奥につづく薄暗い林の下の道路も抜け、熱海峠まで探ってみた。しかしながら、メガソーラー発電所の建設に関するものは一切見つけることが出来なかった。
見つけられることが出来たとすれば、

道ばたに横たわる一本の木に付いたアジサイの花。

そういえば・・・。

鮮やかな青

そういえば、去年もここにアジサイの花があった。(間違いない!)花は建設予定地となる林の道路挟んで反対側の道ばたに。

光るようなその青色がとても美しい。

強烈な色でその個性を主張してくれていたので、一年経った今の今まで覚えていることが出来た。
こんなにも人間を惹きつける絶大なアピール力。薄暗い林の下で鮮やかな青を発色させるその姿を見たのだった。

それにしてもこのアジサイは、

自らの生える道路を挟んだ反対側は今、こんな大変な事になっているということを知っているのか?

???

知らないのか?

ただこの場所で一生懸命花を咲かせているだけ。そして、

この場所で生きたい。と思っているだけ、

まぁ・・・、それだけであろう。

そしてこの地でこれからどんな事が起こるのかは、われわれ人間側もほとんど誰も予想する事が出来ない。だがしかし、そんな中でも忘れてはならないだろう。「現状を変える。」ということ、それはわれわれ人間だけに及ぶ問題ではないということを。

では以後、ここにあるものは何か?

今のようにひっそりと静まりかえる林か?建設重機の鳴り響く山か?はたまたそれ以外のトンデモナイ出来事か?

薄暗い林の下でアジサイは見ている・・・。ということ。それをお忘れ無く。

以下、小谷之沢の樹木たち。ネムノキ。
アカメガシワ
ヌルデ
エノキ
堤体全景。

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