2024年1月1日、午前6時45分。河津バガテル公園。
整った直線やカーブに区切られた散策路の上を歩いて、海が見える丘へ向かう。
もう周囲はすっかり明るくなっていて、視界は確保されている。
あまりゆっくり歩いていられるほどの時間も無く、視線の先にいる人たちの列をなるべく早くにと目指しているのであるが、それでも気になるのが庭園内に植えられたバラの株の数々。
もう、赤とかピンクとか白とかはっきりと色がわかるほどに明るいのだ。
花が・・・。と思いつつも、あと数分で昇りはじめるであろう初日のことが気になって、足を止めることが出来ない。
人々の列を目指して歩くその気持ちが、自身で蹴っている地面の砂利の音からも分かる。
少しあせっている。
ようやく到着。
海が見える丘にたどり着くと、ほどなくして初日はあらわれた。
すると、あっという間に昇った初日。
その丸が完全に現れたことを確認したのち、オランジェリーに向かった。地面の砂利を再び蹴りながら、花をつけたバラのことを気にしながら、立ち止まることもなく淡々と歩む。
オランジェリーにたどり着くと、白い外壁が初日に染まっていたのでカメラに収めた。また、館内でも数枚、写真を撮った。
初日に踊らされているようだった。
平滑の滝下に向かう。
午前7時05分。河津バガテル公園駐車場。
本日の予定は午前中のゲーム。堤体は平滑の滝下。
バガテル公園駐車場を出車し、まずは河津町の右岸道路まで坂を降りる。
「元祖天城そば美よし」の看板を見たら左折。峰温泉の旅館街を抜け、そのままエネオス、コメリまえを通過。峰大橋もわたって河津町下佐ヶ野へ。
下佐ヶ野ではセブンイレブンに立ち寄って、水、パン、菓子類などを買った。
午前7時25分、セブンイレブンの駐車場を出発。国道414号線を走る。
湯ヶ野温泉、慈眼院まえ、奥原入り口、ループ橋などを通過し、天城七滝遊歩道上入口バス停まえ(ループ橋から1.3キロほど)にて右折。林道に入る。
(以降、グーグルマップに記載ない区間。)林道に入ってからは道なりに北上し、鋼鉄製のゲートまですすむ。ゲート前には車2台ほどの駐車スペース。
駐車スペースに車を置いた。
午前7時50分、車から降り、入渓の準備。
足元はウエーダー、上半身には風を通さないレインジャケット、レインジャケットの上にフローティングベスト。頭にはヘルメットをかぶり、メガホンの入ったバッグを背負った。そのほか、手にはネオプレーン製の手袋をはめ、片手には登山用のポールを1本にぎる。
午前7時55分、河津川の右岸に延びるハイキングコースに沿うため、丸太階段から歩きをスタート。
ものの5分ほど歩けば、谷に架かる赤い橋が現れる。この赤い橋、上を渡るのではなく山側より谷側に向かってくぐり抜ける。くぐり抜けたら、そのまま河津川に向かって斜面を降りる。
斜面を降りきったあたりで河津川の上流を見る。すると平滑の滝下(河津本谷第2号コンクリートえん堤)を確認することが出来る。
追い求める価値
午前8時05分、平滑の滝下。
水は暴れすぎるで無く、少なすぎるで無く、ちょうど良い感じで落ちている。
実は、前日の大晦日に、静岡県は雨が降った。年の瀬の晴天続きに、伊豆半島各河川の水量はどこも減水気味であったが、これはまさに恵みの雨となった。
これが無かったら、かなり厳しかったと思う。
水が減れば、響き作りはイージーなものとなる。しかし、ゲームを楽しむためにはイージーすぎる展開はかえって不利益だ。
自然界が発するノイズに対して、人間の声で挑戦している感じがしていないのはいけない。
風を味方につけながら、渓畔林を味方につけながら、道具に頼りながら、音で溢れかえった堤体前において響き作りを行うことに楽しさがあると思うし、響き作りがうまくいかないとき、つまり、堤体の発するノイズに負けるとき。が、あることに価値を感じている。
いっしょうけんめい声を出しているのに全く響かないでは楽しくないから、そうはならないようにこの遊びを研究しているところ。であるがしかし、もっと攻略しやすい環境を相手に置き換えるなどして、意図的に駆け引き上の「勝ち」を獲りにいくことも間違っていると思う。
現時は望んでもいない晴天続き&少雨に見舞われている中なので、意図的であるとは言わないが。
常にノイズに対して負けるか勝つか、のところで遊んでいきたい。
つまりのところ、前日の雨降りについては大歓迎であった。ゲームができるだけの範囲の中で、相手が相当強くなる分には全く問題はないのだ。
興味深いこと
午前8時15分、自作メガホンをセットし声を入れてみる。
声は非常によく響いている。
堤体より上流向こうから、ひんやりとした冷気が降りてきていて、つまり空気が動いていることがわかる。声を出しているシチュエーションにあって空気が動いている中では、歌い手にたいして対極的に押し迫ってくる動きの中でも、逆に同極的に歌い手から離れていく動きの中でも、声は不思議とよく響くようになる。
同極的に歌い手から離れていく空気の動き(追い風)はなんとなくわかるとして、対極的に歌い手に押し迫ってくる空気の動き(向かい風)が、響き作りに効果的なことは非常に興味深いことだ。
これは日常生活でもわかるような物理的感覚であろう。声が空気によって押し戻されているのにも関わらず、響いているというのだから面白い。
この日は時間の経過とともに、はじめのころは冷気程度であった風が、のちにはっきりと風速計で計測できるくらいの風に変わり、さらに条件が良くなっていった。
堤体前で過ごしたのは正午ちょっと過ぎまで。
その内、歌っていたのは午前10時頃まで。あとの2時間は堤体前に生えている樹木の観察を行ったり、落ち葉を見て回ったり、川の流れる水をぼんやりと見て過ごした。
前日の雨によって戻った落水とのパワーバランスに関しては、まだちょっともの足りないくらい・・・。なんて思ったのだけれども、これは当日しっかりと堤体前に風が吹いていたという条件つき。
風がピタリと止まっていたら、そうはいかない。苦しんでいたことだろう。水量とか風とか渓畔林とか、いろんなことが複合的に絡み合う中でゲームをしているので、やっていることは単純ではない。
もっともっと、この遊びについて研究を深めていくことが出来そうだ。
さて、今年も健康な体であちこちの堤体に出掛けたい。
皆様におかれましても健康で。それは体のことだけでなく心の面においても。
心身ともに健康でお過ごしください。心がヤバくなったら一度、川に聞いてみるのもいいかもしれません。
今年も一年、健康に。ますますのご活躍をお祈り申し上げます。国を盛り上げていきましょう!