水源かん養保安林

河津町の国道414号線沿いに立つ看板

上の画像をご覧いただきたい。これは当ブログでもおなじみ賀茂郡河津町での一枚だ。撮影は前回、河津町で鍋失の砂防ダムを行脚したときに行ったものである。「水源かん養保安林」とある。

水源かん養保安林とは何かが今回のテーマ

水源かん養保安林とは何か?以下は引用である。
〔水源かん養保安林 水源のかん養の目的で指定された保安林。流域保全上重要な地域にある森林の河川流量調節機能を高度に保ち、その他の森林の機能とあいまって、洪水、渇水を防止し、または各種用水を確保する。重要な河川その他水害頻度の高い河川の上流水源地帯において、地形、地質、気象等を考慮して指定される。2002年度末現在の指定面積は約666万haで、全保有林の7割を占める。国有林と農林水産大臣が定める重要流域の民有林は農林水産大臣、その他の民有林は都道府県知事が指定等を行う。五関一博〕山海堂刊改訂砂防用語集より。

砂防ダム行脚をしているとあちこちで見かける。

改訂砂防用語集を読む

ここからは改訂砂防用語集を読んでいきたい。まずは、〔水源のかん養の目的で指定された保安林〕とある冒頭部分。かん養というおそらく聞き慣れない言葉が使われているが、かん養とは〔【涵養】(涵はうるおすの意)自然に水がしみこむように徐々に養い育てること。「徳を-する」「水源-林」〕岩波書店刊第六版広辞苑より。とある。また保安林については〔森林法第25条および第25条の2の規定により、農林水産大臣または都道府県知事が、水源の涵養などの目的を達成するため指定した森林。2002年度末現在の保安林に指定されている森林の面積は約920万haである。保安林においては、原則として、都道府県知事の許可を受けなければ立木の伐採や土地の形質を変更する行為などをしてはならず、立木の伐採をした場合には植栽をしなければならない。保安林の指定の目的は、水源のかん養のほか、土砂の流出・崩壊の防備、飛砂の防備、風害・水害・潮害・干害・雪害・霧害の防備、なだれ・落石の危険防止、火災の防備、魚つき、航行の目標の保存、公衆の保健、名所または旧跡の風致の保存がある。五関一博〕山海堂刊改訂砂防用語集より。とある。

冒頭部分から解ること

冒頭部分から解ることは、農林水産大臣または都道府県知事が法律上の規定により、国土保全上または国民経済上特に重要な流域にあると判断した森林について、その所有者の意思に関係なく定めた範囲内にあるものを水源かん養保安林と呼ぶ。といったところであろう。
続いて〔流域保全上重要な地域にある森林の河川流量調節機能を高度に保ち、その他の森林の機能とあいまって、〕の範囲について。この部分については前半部分と後半部分に分けて解釈を進めていこうと思う。まず前半部分についてだが、これは森林の土壌について言っていると思う。森林を構成する木々のその下にある土壌がどれだけ雨水を貯えられるか、ということについて言っていて、土壌中に貯えたもの、貯えなかったものに二分する。二分したうちの後者、貯えなかったものに関して言えば、雨水がその時そのまま川の水となり流れていることによる河川流量であると思うし、その、その時そのままの水が枯渇してくると前者の土壌中に貯えたものから補填しての河川流量となる。このようにして、河川流量というのは土壌の作用によって雨水の安定供給を受け、一度に“清算”されることなくいわば“分割払い”のようにしてさらに断続的に、しかもそれが一切の人的介入無き山の中で自然現象として行われているわけであるから、調節機能が高度であると敬意の意も含めて表現している。
後半部分の〔その他の森林の機能とあいまって、〕についてだが、これは森林を構成する木々本体の葉や枝や幹など、土壌よりも上の部分についてであると解釈した。木々の葉や枝や幹の表面に付着する雨水を言っていると思う。機能とあるので※雨水付着機能とでも言おうか?

※雨水付着機能は本文内の造語のため注意。

洪水、渇水を防止し・・・

さて、森林を構成する木々のその下にある土壌、また森林を構成する木々本体の存在それらによって何が起きるかがそのあとの〔洪水、渇水を防止し、または各種用水を確保する。〕に続く。土壌には雨水を貯える機能があり、木々本体には雨水が付着する機能がある。雨水について、仮に森林という場に大雨が降ったとしてもそれら土壌や木々本体には一時的に雨水が貯えられたり付着したりする性質があるためその全体が河川に流れ込むということは出来ない。雨水を森林内に一時的に留めているということが言え、結果、洪水の防止に役立っている。またこのことは、そのあとに続く渇水の防止や各種用水の確保ということにもつながる。土壌や木々本体に一時的に留まった雨水はその時そのまま川に流れ込んだ水に遅れてあとから続くことになる。事象として川は水が途切れることなく張っていて、流れ続けているということが起こる。前述の表現を繰り返せば、一度に“清算”が起ること無く“分割払い” がなされるわけでその言わば“水の恵み”によって人々の日々の暮らしは守られている。

水の恵み

“水の恵み”と書いたが、なかなか普段の生活でそういったことを感じる機会というのは少ない。川なんてあって当たり前、水なんてあって当たり前ということで日々過ごしている人がほとんどであると思う。水というのは日常生活には無くてはならないものであるのに、それが山々の木々からもたらされるなんて到底イメージが出来ない。これもまたほとんどであると思う。私自身においてはどうか?台風一過の今日、何事も無くよくぞ頑張ったのだと山への感謝を込めながら、コップに注がれた一杯の水をゴクリといったつもりである。

今回、記事の作成にあたり山海堂刊改訂砂防用語集砂防学会編と岩波書店刊第六版広辞苑から引用を行った。私の事前の予備知識により、説明が端折られている部分もあるがご了承いただきたい。また、水源かん養保安林の〔重要な河川その他・・・〕以降の読みについて、ここからは指定者やその面積の説明になり、保安林そのものの自然現象の事とは異なるため省略した。

こちらは伊豆森林管理署設置の看板。
持越川。雨の少ない冬期でも水は途切れない。2017年2月撮影。

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