最近、植物図鑑を購入した。
タイトルは「山渓ハンディ図鑑14 増補改訂樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類 林将之著」
出版は山と渓谷社で、この増補改訂版の出版が2020年1月。まだ2ヵ月ほどしか経っていない新書だ。それより以前は同タイトルの初版本が同じく林将之著で出ている。こちらは、掲載種が1100とのことなので今回の増補改訂で200種が追加されたことになる。
今回の増補改訂を良い機会に、ということで購入した。ちなみに私はこれの初版は持っていない。しかし、この林将之を著者とする植物図鑑はすでに数冊目となっており、その林本(はやしぼん)の最新刊ということで、かなり期待に胸を膨らませて購入ボタンをポチさせてもらった。
やはり、掲載種1300というのはダテではない。今、手元に同書があり実寸計ってみたが、その厚さは3センチほどもある。同定しようとしている目の前の植物に対して、焦りながらページをバラバラさせてもこの図鑑の場合はなかなか該当の種までたどりつけない。同書の冒頭部にある「本書の使い方」の項目には〔調べたい葉の科や属が分からない場合は、p.13の総検索表から、葉の形態4項目、すなわち「葉形」「葉序」「葉縁」「落葉・常緑」を調べることで、候補種を検索出来ます。〕とある。
せっかちに挑むのではなく、その葉の特徴をまずはしっかり確認するところから同定を始めていきたい。
例えばこんなふうに
例えばこんなふうに、植物を見つけた時に葉を見る。葉はギザギザのない全縁。今の時期にこれだけの活力を見せていることから判断すればこの植物は常緑樹である。
実際には同書はほかに分裂葉(もみじのような切れ込みがある?)であるかどうか、対生か互生(葉が枝やつるに対して交互についているかどうか?)かということも含めて探せるようになっている。さらに言えばその植物がつる性(ほかの植物などに巻きついたりするかどうか?)であるかどうかも親切に問うてくれているので、手順を追ってじっくりと時間を掛けてていねいに探せば、かなり高確率で目的の掲載ページにたどり着けることと思う。
「樹木の葉」を用いた同定の結果、上記の画像の植物は「オニシバリ」であることがわかった。
オニシバリ
このオニシバリという植物、じつは私のなかでかなり長い間不明の植物であった。
山中で谷を吹き抜ける風にビュービュー吹かれながら、その中で図鑑を片手にページを前に後ろにバラバラめくり続けるも、どうしても見つけることが出来ない。ヤマモモじゃないし、なんだこれ?寒いし、こちとら堤体目指して歩いているんだから、もう!という感じでかなり困っていた。
この植物自体は伊豆半島(御殿場地方でも)のあちこちでよく見かけていたので、決して珍しい種ではないと思っていたのだが、くだんの「樹木の葉」によれば、〔東北南部~九州の主に暖温帯に自生。丘陵~山地の乾いた落葉樹林内や岩場にやや稀。関東南部~東海東部に多い。〕とある。
やや稀。そして東海東部には多いか・・・。
私としては伊豆半島ばかりに出掛け、あちこちで当たり前のように見かけていたため、この植物に対しては当然のことながら“やや稀”という感覚がなかった。他の地方では珍しかったか?
そんな「?マーク」が確信と言えば良いのか、認定された、と言えば良いのか、再度よくよく自分が砂防ダム行脚に持ち込んでいた図鑑を確認してみたら、なんと“掲載されていなかった。”ということが発覚した。
家に置いておく
掲載されていなかったことが偶然なのか、必然なのかは、図鑑という一工業製品の消費者である私には分からない。自分が山に持ち込んでいる図鑑もかなり同類製品のなかでは有力と言われているもので、これまで多くの植物を同定することでお世話になってきている。今回、不本意にも自分がこれまで頼りにしてきた図鑑に掲載もれがあることが発覚してしまったわけだが、これからどうしていくのか?
「樹木の葉」に切り替えるか?
いやいや、そんなことはない。こちらは探しやすさに長けた作りになっていて、自分自身気に入って使わせてもらっている。「樹木の葉」に比べれば、内容がややライトであることは(○○○種を掲載!というその数字を見ればそんなことは)すでに明らかであるが、それはそれでメリットでもある。
砂防ダム行脚という自然活動のなかでの携帯性を考えれば、重さの面でも、厚さの面でも「軽い」ということは有利にはたらくといえる。製品としての特徴、使い慣れた事による「探しやすさ」があって、そのことと内容面での厚すぎない程度、ちょうど良さがバランス良く共存しているところに使い勝手の良さを感じている。
単純に掲載量が多ければ良いというのではないというのが、今のところの図鑑に関する考え方。もちろん、情報量が少ないとなると上記に書いた件同様、目の前にある植物が、掲載もれのせいで何なのか分からずじまいに。という事態にも繋がりかねない。
現地でその時その場所ですぐに行うのが同定の然るべきやり方だと思っているが、それが出来ないのであれば「樹木の葉」のようなスーパー図鑑を一冊家に置いておき、あとで調べるのも手なのかな?と思った。帰ってきてから,あのとき見たのは何という植物だったかと、ゆっくり確認作業するのもなかなか楽しいやり方かもしれない。