川下で遊び、川上で遊ぶ。

沼津市西浦河内を流れる西浦河内川。(十二田橋より)

6月4日午前11時すぎ、河内公民館前にて気温を測る。

29。5℃。暑い・・・。

日なたに居るのが辛い。渓畔林があるところに行こうと、公民館裏に避難を決める。

今日は公民館裏で歌うのか?

いや・・・。今日は釣りをしに来た。それはもう先月のことであるが、西浦河内川沿いで気になる看板を見つけたのだ。
「西浦河内川における魚介類採捕の制限について」

看板の内容は川の漁期を示している。アマゴ釣りは3月1日~、アユ釣りは6月1日~、うけ禁止。投網、コロガシ禁止。入漁券の記述が無い事から、入川自体については自由に出来るようだ。

看板はずいぶん以前からあったようだが気がつかなかった。

一台のトラック

公民館裏にて入渓の準備をする。普段砂防ダム行脚に使用しているウエーダーを履き、そのほか準備を整える。暑いのにウエーダーなんて履くか?と言われそうだが、大小の川石はツルツルの藻でびっしりで、その上をサンダル履きで歩き回るのはどう考えたって賢明で無い。

ここは公民館の真裏。公民館の隣には民家。滑って、転んでバシャーン!では迷惑が掛かってしまう。
道楽モノは静かに遊んでいたいのだ。

ふと見れば、公民館の駐車場に一台のトラックが入ってきた。そして駐車場のド真ん中に車を停め、サイドブレーキを引く音。えっ、漁協の人?

いやいや、車から降りてきたのはゴミ出しに来た農家風の女性。あたまには大きなリボンの麦わら帽子を被り、長袖、長ズボンに長靴、口にはマスクをしている。まさに農家の女性のデフォルトスタイル。
ここでは“農家”じゃ足りないか?“ミカン農家”の女性が正しい。

大変な土地に嫁ぎましたな。ミカン栽培は農薬が大変でしょう?

公民館裏のゴミ捨て場

入水!

女性はゴミを出し終えると、すぐさま出て行ってしまった。もう昼も近かったから農作業の合間の時間であったか?こんなに暑いのに大変だなと思いつつ、自分は今日ここでケガせぬようにと集中する。

川に入るには2メートル程度の段差を降りる必要があるため、公民館裏の護岸に打ち込んであるハシゴを利用する。今日はバケツやら、エサのミミズやら釣竿やらで道具が多い。それらを何回かに分けて運ぶとようやく川の中に降りることが出来た。

そして、まずやったこと。
入水!
ウエーダーの気密性から来る風通しの悪さ、それに伴う暑さからはようやく解放された。数分ぐらいはただただそれが嬉しくて、意味も無く水中をバシャバシャしていた。そうしていると今度は、適温ぐらいになってくれてむしろ気持ちよくなってきた。

測ってみれば水温は19.5℃。これは涼しい。上から垂れ下がる渓畔林のおかげもあると思う。来て良かった!


釣りの仕掛けをセットする。竿というよりロッドはバス用の1.8メートル。ベイトキャスティングリールを付けて、糸の先には大きめの袖針をセットする。ハリスは1号。針の上10センチほどのところにガン玉を一つ付けてとりあえずはミミズがちゃんと沈んでくれるようにする。

・・・、
どう考えてもアマゴにはたどり着けないであろう太仕掛け&ショートロッド。竿は家にあった適当なものを持ってきた。リールも同様。
港町の男は適当な釣り具で魚捕りをするのだ!という訳の分からない持論を呟きつつ釣りを開始する。

大きな川石の下のえぐれたところに狙いを定め、ミミズを落としてゆく。何も反応が無ければ次の川石の下、また次、その次とテンポ良く探ってゆく。

上から垂れ下がる木の下、涼しく快適な環境の中で水中生物たちと遊んだ。

釣果の程は、バス用ミディアムライトアクションのロッドが小物どものアタリを見事に弾き弾きで苦戦を強いられる中、なんとか3匹のテナガエビと1匹のオオヨシノボリを引っこ抜いて完結。納竿となった。

河内公民館前にて気温を測る。
川石の下を探る。
このあと川にお還りいただいた。

「市民の森」

午後3時すぎ、車に戻り、いったん内浦三津のコンビニに立ち寄ったあと、再び西浦河内を登り始める。向かう先は沼津市市民の森駐車場。ミカン畑を抜け、集落を抜け、そしてまたミカン畑、さらにミカン畑を抜けるとようやく広葉樹の森が広がり、それも抜けて市民の森駐車場にたどり着く事が出来た。

駐車場に車を停め、早速おりる。暑さもだいぶ和らいだ。気温は20℃。

まずは虫除けスプレーを肌が露出しているところに噴きかけ、しっかりすりこむ。これをやっておくことで害虫から身を守る事ができる。(一応、ここの“注意喚起”に準じて対策施したつもり。)

それからウエーダーを履き、フローティングベスト、帽子といつも通り準備する。もう夕方になってくれたおかげもあって、ウエーダースタイルでも暑く無い。さて、今から向かう先は市民の森入り口の橋から上流100メートルほどにある堰堤である。

おあつらえ沢に降りられそうなところを見つけ入渓すると、すぐに堰堤にたどり着く事が出来た。
堤高は5メートルほど。堤体の横幅を示す堤長も土に隠れて正確には分からないが、10メートルちょっとといった程度であろう。さほど大きな堰堤でも無い。

堤体の水裏(手前側の壁面)には正方形断面、長方形断面で出来たジグソーパズルのような模様が入っており、その断面の四角形に水がまとわりつくようにしながら落水をしている。

「市民の森仕様」いかにも。

設計会社、建設会社による景観配慮型デザインは渾身の力作であろうか?

さて、歌のほうであるが堤体左右を取り巻く渓畔林は幹の細い広葉樹中心に構成されており、音がそれらに絡みつくようにしてから(イメージだが、)抜けてくれる。特にジグソーパズルのような水裏はその壁にぶつかった音を横方向にも縦方向にもかなり放出するようで、一つの堤体前空間としてはかなり良く響く。

音響的には申し分ない。そして歌い手の立場として言ってもこの場所は大変に歌いやすい。

これは常々のことだが、歌というものは上手であれ、下手であれ、「歌」という一つの文化を取り扱っていると思っている。その文化の活動の支えとなる公共施設の存在は大変にありがたい。これまでキャンプファイアーなり各種ミーティングなりで多くの人々の「声」を受けてきた森に、今日は自分の歌声を受けてもらっている。


なんだかベテラン教師に自分の歌声を聞いてもらっているような安心感と、しかもそれが学校のような教育施設でやっているオフィシャル感があるところ、それがいつもの堤体と違う。たまにはこんな場所での歌もある。

リラックスしつつ、音楽を楽しむことができた。

ちなみにここは西浦河内川の上流域にあたるところ。同じ川で遊んでいた。
川下で遊び、川上で遊ぶ。そんな一日だった。

市民の森へは公式ルートで。
一帯はミカン畑ばかり
公式ルートでも見通し悪い所が多数。安全運転を。
タニウツギ
ヒメコウゾ
ガクウツギ
ミツバウツギ
エゴノキ
モリアオガエルの卵が、
べちょべちょ
堤体全景。

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