大好き河津町!vol.22

こちらはKawaZooで買った土産。

歌える堤体さがしに出掛けること。

歌える堤体さがしに出掛けることは、山へ出掛けることと同義だ。

そして、山へ出掛けることは、そのさきで様々な生き物に出会うことを含んでいる。

林道を横切る動物。飛び立つ鳥。水中を走る魚。じっと構えている植物。

山で歌う音楽家は思ってもみず、様々な生き物に出会うことができる。

思ってもみず。

なかでも特に印象的なのがヤツとの遭遇である。

石が動いた!

体感型カエル館KawaZoo

KawaZooへ

6月22日、午前10時。まずは河津七滝温泉、河津町町営駐車場から歩いて3分、KawaZooへ。

看板には「体感型カエル館KawaZoo」とあるのでこちらが正式名称のようだ。

開館は午前10時。きょうは一番乗りで入館した。

ここは、カエルを専門にする博物館。展示は室内と室外に分かれている。

受付にて入館料を払い、まずは室内の展示スペースへ。

室内の展示スペースには小型の水槽が幾つも並んでおり、それぞれの水槽には種類ごとにカエルが展示されている。水槽の一つを覗いてみれば、中には砂が敷かれ、観葉植物が置かれ、流木が配置され・・・。さながら熱帯魚の飼育水槽のようであるが、中には水が張っておらずポッカリ空間があいている。

そして人間側の歩く通路は若干暗めで、対してカエルの棲んでいる各水槽は観察がしやすいようライトアップされている。

このライトアップという条件に対しては全体的に見ると様々で、あるカエルは水槽のガラスギリギリのところまで出てきて“大サービス”してくれたり、あるカエルは流木の奥向こうの死角に隠れてまったく出てきてくれなかったりする。

奥に籠もって出てきてくれないカエルばかりだったら全くカエル博物館の体を成さないところであるが、そこは大サービス勢の奮闘ガンバリもあって見応えのある施設になっている。

まぁ、籠もっていて出てこれないヤツらにもいろいろ事情があるのであろう。人生いろいろ。会社もいろいろ。カエル生もいろいろ。

常に明るく元気よく表舞台で生きられるとは限らない。いいときもあれば悪いときもある。

人間どもにスマートフォンで撮影され、もてあそばれることに対してプライドが許さないのかもしれない。あるいは施設が閉館したあとの夜遊びダンスパーティーで暴れまくって、昼間は眠たいのかもしれない。
はたまた夜は飼育員がいないのをいいことに格闘技大会とか相撲大会をしているのかもしれない。

カエル社会にもいろいろ事情があるであろう。そのなかでダメなやつはそっとしておいてやるのが優しさだ。くれぐれも水槽のガラスをバンバン叩いて起こしてやろうなんてことはやってはならない。

午前11時、かわって屋外の展示スペースへ。

四角く囲われた通路の中心には田圃と同様の環境が再現されている。ここは在来種のカエルが放たれていて、それらをすぐ間近で見ることができるというコーナーだ。

ここでは本日のお目当てであるアズマヒキガエルを探してみることに。

う~ん・・・。

石が動いた!

とはいかなかった。

とうのお目当て、アズマヒキガエルのことを見つけられなかったのだ。渓を歩いていれば比較的よく出会う馴染みあるカエルであっただけに少し残念であった。

屋内の展示スペース
マダラヤドクガエル
アイゾメヤドクガエル
ジュウジメドクアマガエル
マダガスカルキンイロガエル
ウーパールーパーにも会える

水量チェックに向かう

11時15分、KawaZooを出る。さて、本日向かう堤体は小川No.1コンクリート堰堤。KawaZooより北西方向に向かう道を4.5キロほど行ったところにある。

では、そちらに向かう前に河川のチェックということでKawaZooにほど近い出合滝の様子を見にいくことにした。

KawaZooから北西方向に100メートルほど歩けば初景橋。その初景橋の手前には出合滝に向かう階段がある。

階段を降りて行くとすぐに河原に到着することができた。河原といってもサンダルを脱いで水浴びができるような感じではなく、太い樹木調の手すりが据え付けられた観覧用の道が滝へとつづく。

もっともここは遊歩道であり、また河津本谷川の轟音を伴った激しい渓流区間のすぐ横を歩く。この激しい流れを見たら大抵の人はそれで満足するのではないか?

遊歩道沿いは低くも高くも生える植物によって小庭のような趣。これは大変に心地よい。

午前11時25分、出合滝に到着。

ここで河津本谷川、荻ノ入川ともに水量豊かなことを確認。小川については荻ノ入川に流れ込む支流で、ここ出合滝よりおよそ2.5キロ上流に合流点がある。

小川に対する印象は“湧き水の川”といったところで、河津町指定有形文化財である煉瓦の洞遺跡あたりが年中、水が流れている状態で見ることができる。

問題はそれよりもさらに上流部で、ある地点より先は年中ほとんど水が流れていない。

流れのもととなっているのはワサビ田最上流部に見られる湧き水で、そこから上流部が伏流区間だ。(年中ほとんど水が流れていない区間。)そして当の小川No.1コンクリート堰堤もその伏流区間のうちに存在している。

しかし本日のこの出合滝周辺の水量を見るかぎりはいい予感がする。いい予感とは水が多いこと。水が多いということは、伏流状態が打開されている可能性が高い。

伏流区間といえど、降雨によってもたらされた水が地下水として処理しきれなくなった場合には状況が一変する。地表水、つまり川となった姿でわれわれ人間の目で見ることができるようになるのだ。

ここ一週間のうちにだいぶ雨が降ったことが大きい。あとは実際に上流部に行って現実がどうなっているかである。

さきほど降りてきた階段をかけ上がり初景橋前の道路に戻った。そしてそのまま目と鼻の先にある出合茶屋へ。出合茶屋では入渓前の軽食を摂った。

遊歩道を歩いて出合滝に向かう。
出合滝
ムクロジを見つけた。
イシガケチョウ
出合茶屋
出合茶屋のクリームあんみつ

堤体に向かう

午後0時20分、出合茶屋を出て町営駐車場にもどり車に乗り込む。目指すは小川No.1コンクリート堰堤である。

エンジンをかけ出発。

初景橋、前之川橋、河津七滝オートキャンプ場まえを通過。道はオートキャンプ場を過ぎると林道の様相を呈す。さらに奥へすすみ、河津国際スポーツビレッジまえ、沼ノ川橋、煉瓦の洞遺跡看板前などを経由。

午後1時10分、小川No.1コンクリート堰堤近くの駐車スペースに到着した。(駐車は堤体よりも上流側へ。下流側はワサビ田の農家さんがワサビ田の管理に利用するため。)

車から降りて堤体を確認する。堤体は林道のすぐ真横、斜面を見下ろしたその先に見ることができる。案に違わず堤体上流部、下流部ともにしっかりと水が流れ、川が形成されていることが確認できた。

よし。

そして立ち位置となる堤体下流部は河床がかなり下がったところにあることも確認。林道から見た高低差では、おおよそ20メートル下といったところか。はるか先に見える川底は白っぽく苔も生えていない。

大きな石がゴロゴロと転がる川の流路形状は蜿蜒とし、落ち込みを伴いながら下流へと続いている。

水慣れしない川である印象が強いゆえなのか、渓に荒っぽさを感じる。もちろんそういった感覚はこちら側の勝手な解釈であり、実際は自然法則にのっとった水の物理的移動が起きているだけだ。

初景橋
煉瓦の洞遺跡の看板にしたがい左折する
林道を奥へ
林道下にはワサビ田を見ることができる。
林道、堤体横に到着。

上級者向け?

午後1時50分、堤体前に下りる。

やはり林道上で見た時と同様、全体的に荒っぽいという印象。

おそらくはこれより上流部、普段は伏流している区間が降水に対してかなり強いのではないかということが考えられる。雨が比較的大量に降っても大地がそれを伏流水として処理してしまうため、洪水といった現象がなかなか起きづらい。

小石や砂利の供給に乏しく、また大石は一度固定されてしまうとそのあと数年~数十年にわたって永遠その位置から動くことが無い。

渓には大きな石がゴロゴロと転がり、そのあいだを縫うように水は流れ、または落ち込みを作って下流へとつづく。視覚面においても音響面においても非常に騒がしい渓といった印象を受ける。

自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

鳴らない。

騒がしい渓であるからといった理由も考えられようが、音が響かない理由はそれだけではない気がする。

鳴ってくれる堤体前というのは、たとえ騒がしくてもその環境のなかで声が響いてくれる。大きなノイズに音を壊されながらも、しかし音が残ってくれるようなイメージだ。

そしてそんな場所こそ最も魅力的な堤体前と言えるのだが。

どうであろうか?今、頑張って鳴らそうとしているこの堤体前は声が残るというより、とにかく抜けていくイメージが強い。物体、たとえば石とか壁とか樹木とか声がモノにあたって返ってくるという感覚が全くといっていいほど得られない。

天に向かって長く伸びた樹木は、堤体前の空間をポッカリ拡げている。それを原因とするのかどうかはわからないものの、全体としてみれば下は荒れている河床、上は高すぎる樹冠の樹木類で、音を響かせようとする歌い手に寄り添ってくれるような要素に乏しい。

上級者向けの堤体なのか?

堤体前は荒っぽいという印象。
風が弱い。
荒れる渓では立ち位置の制約が多い。
ほぼ真西を向く堤体だ。
堤体前は56年の歴史をもつ。
樹冠位置が高い
頭上は全天を覆う渓畔林

あれこれ試したが・・・、

結局この日は午後4時半まであれこれ試しながら粘ったものの、堤体前を鳴らすことは出来なかった。季節限定で堤体を湛水する水が見られたこと。また、全天を覆う渓畔林の樹冠の下で歌えたことは大変に心地よかったが、歌い手として堤体前に来て響きを楽しむというところまでには至らなかった。

もちろん、こういったことはいつ来ても同じようになるかどうかはわからない。日を改めてチャレンジすればそのときには風も違う、温度(気温)も違う、湿度も違う、川の水量も違うというすべてが異なった環境下でのゲームとなる。

いいときに来ればもっと簡単に鳴ってくれる堤体前かもしれない。

しかし今日はダメであった。

ゲームは一旅人でもある歌い手に対して必ずしも良い条件を用意してくれるとは限らない。自身、そこに難しさがあると思うし、またそれが魅力なのでもあると思う。

しかし今日は運が無い日みたいであったから(お目当てのカエルが見られなかったことも。)次回来たときには運の良い日でいい思いをしたいものである。

堤体前の騒がしさを耳に残し、退渓した。

粘ったが解決の糸口は見つからなかった。
オオバヤシャブシ
スギ
ウラジロガシ
タブノキ

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