大好き河津町!vol.2

河津川に架かる「浜橋」

5月23日午後12時。この日私は賀茂郡河津町大鍋川上流の砂防ダムにいた。この日は午前中早い時間に私用があったためスタートが遅くなった。今日は晴れていて日はすでに高い。砂防ダム上の渓畔林の切れ目から青空が見える。

もう5月も下旬である。これだけ遅い時間での開始になってしまうと、もっと汗だくの暑い中での展開も考えられたが、この大鍋川の深い谷底を吹き抜ける風の影響であろうか?意外にも涼しい。今回はこのさわやかな5月の風を感じながらの賀茂郡河津町、大鍋川での砂防ダム行脚についてリポートしたい。

大鍋川へのアクセス

大鍋川上流砂防ダムへのアクセスであるが、東伊豆ルートを行く場合は国道135号線をひたすら南下し河津川を渡ったすぐのところを右折する。地名的な順番としては同じく河津町の「今井浜」の次となるので今井浜の文字を見かけたらいよいよと思っていただければ良い。(どれが河津川なのかわからないという方のために念のため・・・。)そこから県道14号、国道414号と河津川を平行にするようにして道を進む。道はセブンイレブンを過ぎた辺りから上り坂となりやがて左手に学校の校舎(河津町立西小学校)が見える。そこよりさらに約300メートルほど登ったところに左方向への分岐があるのでそちらへ折れる。その後は道なりに進めば良いのだが、この分岐の直後に大規模な工事が行われているため注意をしたい。この地は今「伊豆縦貫道河津下田道路」の建設の真っ最中で、工事関係車両の行き来が多いのである。昼間は交通誘導員が立っていて親切に案内してくれるが、早朝や夜間はそれが無いためスピードを落として通行すると良い。その大工事地帯を過ぎ、大鍋地区の集落を経由したのち道はやがて林道となる。

建設中の伊豆縦貫道河津下田道路(2019年5月27日撮影。)

337

林道に入って目指す地点はおなじみ「地理院地図」の標高337と書かれているあたり。実際の平面上の目印としては、林道が大きく右方向に向かって折れ曲がっており、その逆方向、つまり左手側にオレンジ色のカーブミラーがポツンと一本地面に突き刺さっているだけである。今回はこのカーブミラーの内側少し広くなったところに車を置き、そこから大鍋川本体に向かう。大鍋川は今いる林道から見て谷の下にあるため、今からそちらを目指して急坂を降りることとなる。
午前11時、いつものようにウェーダー、フローティングベスト、ヘルメットに身を包み早速、斜面を降り始める。ここの斜面はガレ場となっており幾分歩きにくいため慎重に歩を進める。

大鍋川の谷に思うこと

この大鍋川の谷についてだが、今回使用した林道のある北側斜面は急激な傾斜地となっていて、岩盤剥き出しのところも多い。その剥き出しの岩盤はときに「崩落」という形で上方向から下方向への移動を行っている。この崩落という現象によって、落石、落石の激突、ガレの発生といった現象が不定期的に行われているため、ここは決して安全な場所とは言い難い。特に、あらゆる業種にとっての作業道となる林道にしてみれば、落石は交通の妨げとなるため仮にも直撃しなければ良いという問題だけではないのだ。そういった問題を半強制的に抑制する建設技術がある昨今において、あえてそこに乗り出さず自然ありのままの姿をできる限り残していること、これは素晴らしいことである思う。私は伊豆半島のみならず各地の山に出向くのだがいわゆるこのような崩落危険箇所、落石危険箇所というのは法覆工で固めきられてしまった場所が多く、景観を損なっている。コンクリートで塗り固められてしまった崖というのは白く無骨で、無残なことこの上ない。そこまでして、自然の姿を醜くしておきながらさらに最後のだめ押しとばかりに「落石注意」などという看板により心理的圧迫感に満ちた言葉を放ったとすれば、その地を訪れた者はその気持ち悪さに、ヒェー!!と足早、その場を通り過ぎ去るであろう。

この大鍋川の林道では、奥地にあるワサビ農家さんとよく車ですれ違うが、その人らはどのような考えで、この林道を将来に向かって受け継いでいこうとお考えなのであろうか?毎日のようにこの危険地帯を通り過ぎ、ワサビ田に向かうのだ。自然の景観としては美しいことこの上ないこの大鍋川の谷に幸せを感じながら毎日作業に向かうのであろうか?

私自身においては毎回ここを幸せな気持ちで利用させてもらっている。

大鍋林道

美しい自然景観を残すために

そんなことを考えながらガレ場を降りきると渓畔林に覆われた平坦地帯に出る。左手方向に見える大鍋川の清冽な流れをさかのぼるようにして少し歩くと堤体本体にたどり着くことが出来る。堤高は10メートル程度とこの大鍋川の深い谷に対比すれば決して高くは無いのだが、渓畔林の樹冠の高さと比べたときにそのことが放水路天端の見やすさに一役買っていて相対的なバランスとしては良い。堤体左前方には小さなゴロ石畑が広がっていて、それらが上方の渓畔林の切れ目からの日の光を浴びて、まるで生き物のようにコケの冠をかぶったその顔でこちらに語りかけてくる。
とても美しいところであり、多くの方に同地への訪問をおすすめしたいのだが、道中に前述したとおりの危険箇所を含んだ行程となっている。そのことに納得していただいた上でご自身にとっても他人にとっても迷惑とならないよう徹底した安全管理のもと楽しんでいただくのが理想だ。私自身においては絶対にここでは事故を起こしてはならないと肝に銘じている。当たり前である。こんなにも美しい自然景観がコンクリートで塗り固められる日などとうてい受け入れられないことなのだ。

大鍋川上流砂防ダム


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