三園橋から狩野川を見る

三園橋から上流方向を見る。

画像は沼津市の中心部を流れる一級河川「狩野川」の三園橋からの眺望である。

6月27日、この日は沼津市役所に所用があったため午前中は沼津市内で過ごすこととした。本日の予定であるが、前回、神奈川県足柄下郡箱根町を流れる須雲川上流域の大沢で、夕方に入渓して“いい思い”をしていたため、今日も夕方に入って日没前の暗がりの中、音楽を楽しんでやろうと考えた。ただ気になるのは本日の天気が雨予報であるということ。場所の選定にあたっては過去の履歴から活動が可能な場所を選んだつもりであったが、その場に立ってとどまっているのがためらわれるような土砂降りの雨になってしまえば、選定も何も無い。せっかく現場まで足を運んで何も出来なかったでは時間もお金も無駄になるため、市役所からほど近い、三園橋へ様子をうかがいに行ったのだ。
―市役所前の歩道橋階段を下り、狩野川の堤防に向かう。おそるおそる川の様子をうかがう。川の様子は?いや、何ともない。夏場の標準的な水量で何事も無く流れている。―
本日向かう猫越川はこの狩野川上流部の伊豆市湯ヶ島で合流する支流河川のため、この川の様子をうかがうことが上流部の状態を把握するヒントになると考えたゆえの様子見であるが、この沼津市内、市役所近くの三園橋より見た狩野川の様子からは濁流となっていることも無く安定して流れているようである。

狩野川の様子を途中、旭日橋(伊豆市大平)でもうかがう

猫越川

本日目指す猫越川であるが前述の通り、伊豆市湯ヶ島にて狩野川に合流する狩野川水系の川だ。アクセスとしては伊豆市、国道414号下田街道をひたすら南下し、嵯峨沢橋、市山交差点を通り過ぎ、その直後にある右方向への分岐を折れる。分岐手前側には東京ラスク伊豆ファクトリー(旧天城湯ヶ島町役場)の看板があり、分岐の奥側には「あまご茶屋」の看板があるのでそれらを右折の目印にすると良い。そのまま道なりに進むと湯ヶ島温泉の温泉街に出られ、そこを通過し左手側に橋を挟んで「いずみ園」(日帰り温泉施設)を見る。その「いずみ園」からさらに500メートルほど進むと「水抜橋」というガードレール製欄干の橋があるので渡り、直後のT字を左に折れる。折れたのち2.3キロほど車を走らせるとY字状の分岐が現れる。(本日入りたい)堰堤へはこのY字分岐を左へ行くのだが駐車スペースが無いため、ここはいったんY字分岐の右側を選択し100メートル以上登る。100メートル以上登ることで民家が途切れ、林道となるためそこより先、道幅の広くなったところに通行の邪魔にならないように車を置く。

これまた途中の持越第2床固。ここでも異常は見られない。

一般車両等通行止め

6月27日午後3時30分、準備を済ませY字分岐に向かって坂を下りる。車に乗っていた間はなんとか持ちこたえていたのだが、車を降りたとたん、雨がパラつき始めた。予報通りの雨天という感じで、むしろこの時間まで降らずによく持ったなという印象である。Y字分岐を左方向に入り、「猫越川橋」という橋を渡る。この橋の入り口には、画像にあるようなゲートが設置され、一般車両は中に入ることが出来ない。ここから猫越川の支流河川である河原小屋沢に入る場合はこの一般車両等通行止めの規制は少し不便な感じもするが、本日入る猫越川の砂防堰堤は橋を渡ってすぐのところにあるのでさほど気にならない。橋を渡り終え、林道を右側に外れるとすぐに砂防堰堤を見ることが出来る。

猫越川橋とゲート
猫越川橋の上から猫越川を覗き込む

基本は中止すること

今回この場所を選んだ理由というのは雨予報が大きく影響している。どこへいってもそうなのであるが砂防ダムの音楽というのは通常、川の中に立ち入って行うものなのである。今その時間まで、今そのとき、そして今はまだであるけれどこれからの時間、そのいずれかの時に自分と自然環境の間に雨が介在するようであれば、それは危険回避のために中止するのが本来なのである。もし、そのような場合でも活動をしたいというのであれば、橋の上からであったり、川の水面からの高さが十分に確保された場所を選ぶことになる。本日入った猫越川橋上流の砂防堰堤はその後者にあたるような場所で、雨が降っているようなときでも比較的安定して楽しむことが出来る場所である。川の水が堰堤を落ちてすぐ、向かって右方向に大きくカーブしそこから猫越川橋の橋下に吸い込まれるようにして流れている。川の大きくカーブした内側には、上流部より流されてきたのであろうか?大きな石がゴロゴロしていて、そのゴロゴロした石に根が絡みつくようにして樹木が生えている。そんな大石、樹木、土で形成された陸続きの洲の上で本日は音楽を楽しんだ。洲の高さは川の水面よりもだいぶ高いため、恐らくここ数年、その大きな石たちは川の濁流を被ることなくそれぞれの場所に安定した形で保たれているようで、全体的に苔むしており、さながら庭園のような雰囲気を持った場所である。天気が晴れていれば、もう少し楽しさがアップしたのでは無いだろうか?そのことだけが少し残念であったが、それでも雨予報が出ているなかで砂防堰堤に来て歌うことが出来たこと、これに関しては良かったと思うし、この場所も前回来たとき同様変わることなく(異常なく)存在していて、それをこの目で確認できたということについても収穫であった。帰りには―秋の紅葉シーズンにまた来ようか?―と思った次第である。

堰堤全景
この撮影地点辺りから歌う

暑すぎない毎日が続いている

ん?タイムカードは・・・?まぁ、いいか・・・。

2019年、静岡県を含む東海地方は6月7日が梅雨入りとなった。今年の梅雨は例年に比べると、「おや?」と思うような天気が毎日続いている。6月の第3週は9日と15日土曜日が雨となったものの、その他は顕著に雨が降るということが無く、第4週に至ってはほとんど雨が降るという事が無かった。報道によれば、九州の北部などでは今年は梅雨入りが遅れ、深刻な水不足が懸念されるなどしているらしい。九州北部から遠く離れたここ静岡県東部地区に住む自分からしても、日本のどこかにそんな地域があってもおかしくは無いであろう。と思えてしまうほど変わった天気の今年の梅雨である。

そんな空梅雨の天気が続く毎日であるが、ありがたいことに気温に関しては真夏日になること無く推移していて、ある程度の暑さは感じられるものの、比較的快適な気分で毎日過ごすことが出来ている。特に音楽家である自分自身にとっては、真夏日のような猛烈な暑さは、多くの曲のイメージに合致しないということが起きるばかりで無く、活動そのものの妨げになるため、今のこの暑すぎない毎日からは大きな恩恵を受けている。

冬寄りな答え

冬のめちゃくちゃ寒いときなどは意外とその寒さに負けてたまるかと頑張って現場まで歩くし、一生懸命歌うし、まだ行ったことが無い知らないところがあれば、積極的にいってみようと果敢にチャレンジ出来ているような気がする。恒温動物である人間にとって冬の寒さというのは、それだけで「生きる」ということの行為の妨げとなる受難なのであるが、一方ではその受難が日常生活のうちの芸術活動に勤しむ時間において、その表現意欲の源(みなもと)となってその活動の支えとなってくれているという気がしてならない。寒いという事に生命を脅かされている状態にあって、ただぼんやりとしていることは当然出来ない。気を張って凍え死なないようにとしているその冬の期間というのは慢性ストレス状態にあると言え、そのストレス解放の手段として芸術活動内外、様々なことが考案され歴史を作ってきたのではないだろうか?歌うという行為がそういったストレス解放の手段の一つに数えられ、であるがゆえに、先人たちによって積極的に作曲されたり、作曲されたものが発達したりと、進化を遂げてきたのだと思う。これらの動機は当然「寒さ」だけでは無いのだが、ではそれを歌ったのが夏と冬ではどちらでしたか?と尋ねれば冬もしくはもっと温かい時期だったとしても「冬の心を持った夏」のような“冬寄りな答え”になるのではないか?と思っている。このように考えるのは私だけのことなのかもしれないが、とにかくそんな“冬寄りな答え”に常に結びつくような環境こそ理想的な音楽表現の条件と考えているがゆえ、もはやその最大対義語とでも言ってよい真夏日というような環境を避けたいと思っているのである。

仕事帰りに

駐車スペース目印

2019年、6月22日、二十四節気の夏至である。副業先のホームセンターの仕事を終えた私は箱根峠を越えていた。峠にある温度計が示す温度は17℃。これから向かう大沢は神奈川県足柄下郡箱根町を流れる、須雲川のさらに上流部の区間である。その大沢に架かる黒岩橋下流約500メートルの地点にある床固工群が今日の目的地だ。当地は箱根峠から国道1号線箱根新道を小田原市方向約5キロメートル下った地点にあるため、峠よりは標高が下がるものの、谷を吹き抜ける風の影響があるため体感としては変わらない。午後6時まえ車を駐車スペースに停め、そこから歩いて床固工に向かう。このとき気がついたのだが、普段持ち歩いている500ミリリットルのボトルを今日は忘れてしまった。買いに行こうにも時間が無い。夏至とは言え、あと1時間と少しもすれば午後7時のタイムアップを迎える。そのまま床固工に向かうことに決め、ボトル以外、いつも通り準備を整え、まずはステンレス製の車止めを超える。そこから坂を横幅に長いS字状に下りるとほどなくして目的の床固工にでることが出来た。ここは私が確認した上では、7基の不透過型堰堤と1基の鋼鉄製透過型堰堤からなる床固工群で、今日入るのは最もエントリーしやすい上から数えて3基目と4基目の間の床固工区間だ。

床固工全景。

2019年、夏至に

午後6時、床固工の護岸北側の石の積まれたところから川に入る。ここは川の両岸が約2メートルほどの高さで護岸されており、その両者間幅およそ10メートルをほぼ余すこと無く水面が覆っている。護岸をしている割には両脇の渓畔林が残されていて美しい緑が反射しているということ、また川の中においてはその場所に長くとどまった石が苔むしてこれまた緑色に反射しているということ、そしてこの今日の日が6月中旬であるというにもかかわらず、たいへん涼しいという気温感、それらの好条件によるおかげでさわやかな心地よい雰囲気のなか音楽を楽しむことが出来た。ボトルを忘れたことによる飲み水確保は川の水を手ですくって喉を濡らすという形でしのいだ。水質的にもそんなことが出来てしまう程で申し分ない。午後7時のタイムアップまで大いに音楽を楽しむことが出来た。

ホームセンターの仕事帰りのわずかな時間、気候に恵まれたこともあって、たいへんに楽しめた、そんな2019年の夏至であった。

仕事帰りにこれは贅沢すぎる!
今日は暗くなるまで遊んだ。

渓流歩きのお供

渓流歩きのお供たち

各地の砂防ダムを目指して渓流を歩く自分自身にとってウェーダーは無くてはならない必須アイテムだ。春夏秋冬、季節を問わずウェーダーは大活躍で、その最大の機能とも言うべき水濡れ防止ということのみならず、フェルト底による転倒防止機能、汚れ防止、害虫被害防止機能、保温機能などウェーダーの着用によってもたらされるメリットは数多い。それゆえ橋や舗装路といった、いくら何でもそこは必要ないでしょう。と言われるような場所以外、常にウェーダーは“渓流歩きのお供”として、自分自身に同行される力強い味方となっている。

言い訳

私の場合、そんな渓流歩きのお供のウェーダーは常時、自家用車に乗用中である。もともとズボラな性格ゆえ、いちいち積み下ろしたりするのが面倒くさいから、というのが最大の理由であるような気がするが、最近やり始めた“朝一番の歌”のように朝パッと用意して、砂防ダムへ出勤前に出かけるというような、俊敏性、軽快性が求められるようなシーンではその都度、自宅内から敷居をまたいでこれを持ち出すという事をするよりも、車内に積みっぱなしという方が些細な差ではあるが時間的にも、精神的にも有利なのである。ここで言う精神的とは、つまりのところ気分的に楽だということ。私自身砂防ダム行脚をする際に持ち出すデジカメや手帳のほか、その他必要な専用アイテムなど絶対に忘れてはならないものに“だけ”気を張って、確実にこなしていきたいと考えているため、車内保管できる物はなるべく車内に留めておくのが有利。と考えているのである。ただしこの事は私のレベル範疇での成せる業であって、いわゆる世の中のマメな人は、都度、自宅から車内への移動を行うものなのであると思う。その人が砂防ダム音楽家であれ、渓流歩きの専門家であれ、自然観察愛好家であれ、釣り人その他アウトドアマンであれ、常にウェーダーが車に載っていなければならないという決まりは無いのである。出来ている人には出来ていることであると思う。繰り返すようであるが私の場合、―ウェーダー以外に絶対に忘れてはならないものがあるからそのようにしているのだ!―と言い訳させていただきたい。

6月14日、田沢川に入渓す

わが愛木も緑豊かになっていた

6月14日の早朝であるが田沢川の「田沢第3砂防ダム」へ行ってきた。同月7日に梅雨入りしてからというもの連日、降雨によって伊豆半島内の各地の川は芳しくない状況になってしまったのであるが6月13日、どうにか空がまる一日快晴に覆われ、それによって水量がいくらか安定したであろうとの予測が立ち、翌6月14日の夜勤明けに急遽、現地へ行くことで計画し、実行した次第である。当日は、その夜勤明けの状態で車の運転をすることが必要となったため、出発の前に砂糖のたっぷり入ったコーヒーを飲用したのであるが、そのコーヒーが作用しすぎてしまい途中、コンビニ駐車場で仮眠を取ろうと(計画のうちにあったため)車のシートをリクライニングにしたのであるが、寝付くことが出来ず、そのまま田沢川に入渓することになった。早朝のさわやかな空気の中、シューベルトの「ガニュメートD554」でWie im morgenglanze!といきたかったのであるが、体が完全に朝状態ではなく、夜の延長戦状態といった感じになってしまい、やむなく別の歌をうたった。

コーヒー飲用の他にしたこと

24時間営業のドラッグストア。右上は伊豆縦貫道。

そんな今回の朝一番の歌であったのであるが、じつは伊豆方面に向かう前に、駿東郡長泉町の24時間営業のドラッグストアに立ち寄った。目的は、ウェーダーを保管する際に必要となる乾燥剤を買うためである。私はウェーダー保管において常に乾燥剤を片足に1個ずつ1セット入れている。こうすることで、ウェーダー内に発生するカビやにおいを防ぐことが出来るからだ。そして今のような梅雨時期以外の時でも、ウェーダーを現場で履き終えて最後片付ける際は乾燥剤を投入するということを年中欠かさずやっている。乾燥剤はくつ用として売られているものを用いれば良い。乾燥剤が粒状になっているうちは繰り返して使え、粒の形が無くなり、中身がゼリー状になった頃に交換することを繰り返せば常に乾燥機能がはたらいた状態での保管をキープできる。こうして管理されたウェーダーは足を入れたとき、サラッとした感触に毎回触れることが出来、においも抑えられる。交換どきの頃になった乾燥剤のそれなどはもはや匂いを吸着しきっていて、取り出したゼリー状物質から今度は逆ににおいがするほどの素晴らしいはたらきっぷりをいつもしてくれている。

渓流歩きをする際にはそのお供として「ウェーダー」と、そのウェーダーをさらに良いコンディションに保ってくれることうけあいな「くつ用乾燥剤」を招聘されることをおすすめしたい。

4枚入りなので残り2枚はジップロックで保管することに。
田沢川の砂防ダム

砂防ダム用品店

静岡県西伊豆釣り場クリーンプロジェクト

砂防ダムに行くにあたって、それなりの装備で臨んでいるということは、当ブログにて日々、書き綴っている通りである。音楽表現の舞台として砂防ダムという野外活動的な場を選んでいる以上、安全性の面から見ても、快適性の面から見ても、アウトドア用品を揃えて、現場に臨むということが必須になっている。砂防ダムに行き始めた頃もそうであるし、また、今現在のように砂防ダムに常態的に通い詰めるようになった今でも常々、安全性、快適性をよりいっそう高めるためにどうすれば良いかと、アウトドアショップへ行き、様々なアウトドアグッズに触れ、砂防ダムで使えそうなものをチョイスしては、それを現場に持ち込んで試してみるという事を繰り返しているのである。

釣り具のイシグロ沼津店

5月某日、例によってアウトドアショップに出かけた。見出しのとおり釣り道具店である。普段そういった店には行かない方のために言うと釣り道具店というのはいわゆるアウトドア用品というものを取り扱っている。釣りに出かけるという行為に際して、海や川といった場所がそのフィールドとなるため、そういったフィールドに行って必要となるあらゆる道具を置いているのが釣り道具店なのである。魚を釣るための道具だけでは無いということが言え、郊外の大型釣り道具店などはキャンプ用品などの取り扱いも多い。私自身、砂防ダム音楽家として、そういったアウトドア用品について、一般的に普及しているものを買い求めることはもちろん、最新のアウトドア用品の発信基地でもある釣り道具店においてこれは前述の通り、砂防ダム行脚に使えそうな物、生かせそうな物を見つけ、取り入れていくことが大事だと思っているため、定期的に足を運んでいる次第である。

見つけた一枚のパンフレット

そこで見つけたのが、標題すぐ下の画像にあるパンフレットである。「静岡県西伊豆釣り場クリーンプロジェクト」とある。企画の概要としては釣りの合間に10分程度のゴミ拾いをすると、中古のルアーか温泉入浴割引券がもらえるというものである。参加費無料で、プロジェクトの開催期間内(終了は未定のもよう)に釣り場(なんと、どこでも良い!)でゴミ拾いをし、最後その拾ったゴミを西伊豆町観光協会の事務所に持ち込むと、「中古ルアー引換券」か「温泉割引券」の特典チケットと交換してもらえるというものなのである。注意点としては、ゴミ拾いに際して西伊豆町観光協会が用意した「西伊豆町ボランティア専用ゴミ袋」を使用しなければならないという事と、観光協会の受け付け時間内にゴミの入った袋を持ち込まなければいけないといったことなどがある。また、中古ルアーに関しては、観光協会の事務所では入手することが出来ず、渡された引換券を持って、町内の「釣り具のたかやなぎ」まで赴く必要がある。

西伊豆町観光協会の事務所

西伊豆町観光協会の企画につき

当ブログに過去書いてきたとおり、私自身は釣り人である。釣りを楽しんだ上、その合間に少しの時間ゴミ拾いをしただけで釣り道具が貰えるなんて、なんと素晴らしいことなのであろうかと西伊豆町行きを決定した。梅雨入り前の6月6日、賀茂郡西伊豆町、宇久須を流れる宇久須川支流の砂防ダムに入った。宇久須川水系とでも言おうか?この宇久須川本流、支流各河川を含めた宇久須川水系は、単一町村を流れる川としては、伊豆半島内で最も砂防ダムなど堰堤類の多い川である。したがって、今後この川の砂防ダムについて記述することは当然あるであろうと思うし、ゆえに今回は詳細に関しては割愛させていただく。今回は、砂防ダム行脚を行った後、宇久須川の最後ながれ出る河口域海岸線に場所を移して、「西伊豆町釣り場クリーンプロジェクト」の趣旨に従いゴミ拾いをしたことについて報告させていただくこととする。

宇久須川河口北岸の砂浜にて釣りとゴミ拾い
宇久須川河口

以下報告書、

今回、釣り具のイシグロ沼津店でたまたま見つけたパンフレットに端を発して、西伊豆町の宇久須川、またその河口域海岸線を訪れることとなった。その中で2点ほど“勉強になった”事があるため、ここに報告することとする。1つめは宇久須川河口域、またその周辺海岸線が見られたということ。普段、砂防ダム行脚を行っていて、川ばかりを見ているのであるが、その川が最終的に行き着く先、海をみる機会というのが最近少なかった。“海”を見て、もっとより深く“川”を知ることが今回、出来たと思ったのと、このことを今後必要に応じて定期的に行い、継続していくことが必要であると思った。勉強になったことの2つめは「釣り具のたかやなぎ」のお店にいらっしゃる淑女が大変な美人であるということ。ここの店主の奥様なのであろうか?まさか釣り道具店でこのようなたいへん素敵な方とお会い出来るとは思ってもみなかった。西伊豆町釣り場クリーンプロジェクトの特典は3個用意されているのである。「中古ルアー引換券」「温泉割引券」「美人」の3つだ。

袋は20分ほどで一杯に
こちらは中古ルアー引換券
アングラーズリパブリック社のギグをゲット!
本業では宇久須川支流に

大好き河津町!vol.2

河津川に架かる「浜橋」

5月23日午後12時。この日私は賀茂郡河津町大鍋川上流の砂防ダムにいた。この日は午前中早い時間に私用があったためスタートが遅くなった。今日は晴れていて日はすでに高い。砂防ダム上の渓畔林の切れ目から青空が見える。

もう5月も下旬である。これだけ遅い時間での開始になってしまうと、もっと汗だくの暑い中での展開も考えられたが、この大鍋川の深い谷底を吹き抜ける風の影響であろうか?意外にも涼しい。今回はこのさわやかな5月の風を感じながらの賀茂郡河津町、大鍋川での砂防ダム行脚についてリポートしたい。

大鍋川へのアクセス

大鍋川上流砂防ダムへのアクセスであるが、東伊豆ルートを行く場合は国道135号線をひたすら南下し河津川を渡ったすぐのところを右折する。地名的な順番としては同じく河津町の「今井浜」の次となるので今井浜の文字を見かけたらいよいよと思っていただければ良い。(どれが河津川なのかわからないという方のために念のため・・・。)そこから県道14号、国道414号と河津川を平行にするようにして道を進む。道はセブンイレブンを過ぎた辺りから上り坂となりやがて左手に学校の校舎(河津町立西小学校)が見える。そこよりさらに約300メートルほど登ったところに左方向への分岐があるのでそちらへ折れる。その後は道なりに進めば良いのだが、この分岐の直後に大規模な工事が行われているため注意をしたい。この地は今「伊豆縦貫道河津下田道路」の建設の真っ最中で、工事関係車両の行き来が多いのである。昼間は交通誘導員が立っていて親切に案内してくれるが、早朝や夜間はそれが無いためスピードを落として通行すると良い。その大工事地帯を過ぎ、大鍋地区の集落を経由したのち道はやがて林道となる。

建設中の伊豆縦貫道河津下田道路(2019年5月27日撮影。)

337

林道に入って目指す地点はおなじみ「地理院地図」の標高337と書かれているあたり。実際の平面上の目印としては、林道が大きく右方向に向かって折れ曲がっており、その逆方向、つまり左手側にオレンジ色のカーブミラーがポツンと一本地面に突き刺さっているだけである。今回はこのカーブミラーの内側少し広くなったところに車を置き、そこから大鍋川本体に向かう。大鍋川は今いる林道から見て谷の下にあるため、今からそちらを目指して急坂を降りることとなる。
午前11時、いつものようにウェーダー、フローティングベスト、ヘルメットに身を包み早速、斜面を降り始める。ここの斜面はガレ場となっており幾分歩きにくいため慎重に歩を進める。

大鍋川の谷に思うこと

この大鍋川の谷についてだが、今回使用した林道のある北側斜面は急激な傾斜地となっていて、岩盤剥き出しのところも多い。その剥き出しの岩盤はときに「崩落」という形で上方向から下方向への移動を行っている。この崩落という現象によって、落石、落石の激突、ガレの発生といった現象が不定期的に行われているため、ここは決して安全な場所とは言い難い。特に、あらゆる業種にとっての作業道となる林道にしてみれば、落石は交通の妨げとなるため仮にも直撃しなければ良いという問題だけではないのだ。そういった問題を半強制的に抑制する建設技術がある昨今において、あえてそこに乗り出さず自然ありのままの姿をできる限り残していること、これは素晴らしいことである思う。私は伊豆半島のみならず各地の山に出向くのだがいわゆるこのような崩落危険箇所、落石危険箇所というのは法覆工で固めきられてしまった場所が多く、景観を損なっている。コンクリートで塗り固められてしまった崖というのは白く無骨で、無残なことこの上ない。そこまでして、自然の姿を醜くしておきながらさらに最後のだめ押しとばかりに「落石注意」などという看板により心理的圧迫感に満ちた言葉を放ったとすれば、その地を訪れた者はその気持ち悪さに、ヒェー!!と足早、その場を通り過ぎ去るであろう。

この大鍋川の林道では、奥地にあるワサビ農家さんとよく車ですれ違うが、その人らはどのような考えで、この林道を将来に向かって受け継いでいこうとお考えなのであろうか?毎日のようにこの危険地帯を通り過ぎ、ワサビ田に向かうのだ。自然の景観としては美しいことこの上ないこの大鍋川の谷に幸せを感じながら毎日作業に向かうのであろうか?

私自身においては毎回ここを幸せな気持ちで利用させてもらっている。

大鍋林道

美しい自然景観を残すために

そんなことを考えながらガレ場を降りきると渓畔林に覆われた平坦地帯に出る。左手方向に見える大鍋川の清冽な流れをさかのぼるようにして少し歩くと堤体本体にたどり着くことが出来る。堤高は10メートル程度とこの大鍋川の深い谷に対比すれば決して高くは無いのだが、渓畔林の樹冠の高さと比べたときにそのことが放水路天端の見やすさに一役買っていて相対的なバランスとしては良い。堤体左前方には小さなゴロ石畑が広がっていて、それらが上方の渓畔林の切れ目からの日の光を浴びて、まるで生き物のようにコケの冠をかぶったその顔でこちらに語りかけてくる。
とても美しいところであり、多くの方に同地への訪問をおすすめしたいのだが、道中に前述したとおりの危険箇所を含んだ行程となっている。そのことに納得していただいた上でご自身にとっても他人にとっても迷惑とならないよう徹底した安全管理のもと楽しんでいただくのが理想だ。私自身においては絶対にここでは事故を起こしてはならないと肝に銘じている。当たり前である。こんなにも美しい自然景観がコンクリートで塗り固められる日などとうてい受け入れられないことなのだ。

大鍋川上流砂防ダム


駐車場に苦慮

山では常に“無料”な反面、注意が必要。

前回の記事では沼津市戸田の観光スポットとして雉ヶ尾滝や戸田しんでん梅林公園を紹介させていただいた。いずれの観光スポットも目指した砂防ダムに隣接する形でそこにあったため紹介することになった。特に戸田しんでん梅林公園に関してはトイレや駐車場を備えているという事もあって、現地で野外活動をしてみようと思っている人にとって有益な情報を発信できたと思う。日頃から伊豆半島各地の砂防ダムを訪問している私自身にとって、そこにたどり着くための “足”は常に自家用車であり、電車やバスと違って時間に縛られることなく自由気ままにどこへでも行ける反面、最終的に車を停めるところ、つまり駐車場に苦慮するケースが多い。

適正な駐車場所への駐車

どこの山に行ってもそうなのであるがその土地の所有者、管理者、地域住民のところへ足を踏み入れるよそ者の自分自身としては、なるべくそのような方々とトラブルを起こさないように行動すべきであると思っているし、ではどうすれば良いかといえば、まずはその足を踏み入れる際の第一歩とも言うべき適正な駐車場所への駐車ということに関して、何が何でも正しいあり方を体現しなければならないと思っている。これは案外難しいことで、たとえば初めて行った土地で、―あぁ、あそこに車が停められる!―と判断したとする。しかしその場所は普段、その地域の林業者や農家の方が仕事をするにあたって作業用車両を置いておく専用駐車スペースであったりしたらどうであろうか?どうであろうと言ったってそんなことを初めて訪れたよそ者は知るよしも無いわけで、良かれと思って駐車する→じつはダメでもめ事になる。となるのだ。幸い私自身においては未だかつて砂防ダム行脚においてそのような経験はないのだが、各地の林道にそういった車を停めてもいいのか、ダメなのか?あやふやな場所は多数みられるし、そのような場所にはできれば車を置きたく無いわけで、であるからこそ公式的に「駐車場」として解放されている戸田しんでん梅林公園駐車場のようなところは大変にありがたいのである。

今回紹介する「戸田もてなしの里公園」

戸田もてなしの里公園

前回の記事に貼り付けた画像を見ていただければお解りの通りである。画像にある看板には「戸田もてなしの里公園」とあるが、今回はそちらを紹介しておこうと思う。交通アクセスは、看板に従って進む。これだけ。道形に数百メートル行くだけで公園に出ることが出来る。広い芝生はグランドゴルフ場を兼ね備えた芝生広場で当日(2019年5月20日)はセイヨウタンポポが咲き乱れていた。公園の設備としては戸田しんでん梅林公園同様トイレ、駐車場があり、そのほか公園の最も西側の一角にはタチバナ農園があり、なんとここは公園の利用者向けに農園が開放されているという点が珍しい。また、公園の南側には画像にある案内図の通り「四季の林木漏れ日スポット」というエリアが設けられ広葉樹の下を散歩することが出来る遊歩道様の道がある。その遊歩道を外れ、さらに南側に寄ると公園の敷地を区切る鉄製のフェンスがあってフェンスの下には戸田大川が流れている。戸田大川は公園から見て崖の下にあり公園から川の中へ立ち入って遊んだりすることは出来ないのだが、川のせせらぎの音を聞くことが出来る。

戸田もてなしの里公園
トイレの屋根の向こうに
セイヨウタンポポ

大好物

そして何を隠そう、そのせせらぎの音の一番“鳴っている方向”に目をやると見えるのである。そう。私の大好物の砂防ダムが。
堤高は副堤も合わせて約10メートルほどあり、なかなかの規模である。前述の通り崖の下という位置関係にあるため降りることは不可能であるが、いずれ何かの機会にアクセス方法を掲載しようと思う。とりあえず今回は3年前の11月頃に撮影した画像を貼っておく。
川のせせらぎが楽しめる公園。芝生広場やタチバナもある。戸田に行った際は是非訪れてみてはいかがであろうか?

砂防ダムの存在が辛うじて判る。
堤体全景。自分の立っている側の上に公園がある。

今年から始めてみようと思うこと

今年から始めてみようと思うこと

今年から始めてみようと思っていることがある。 “朝一番の歌”である。もちろん砂防ダム音楽家である自分自身においてはその“朝一番の歌”をたとえば自宅であるとかどこかのレッスン室で、というわけでは無くて無論、砂防ダムで、ということになる。当ブログをお読みになっている方々からは、朝一番?はぁ。どうぞお好きにやってください。という声が聞こえてきそうだが、この朝一番に歌うということには私自身の大きな決意があるのでどうか関係各位にはご理解いただきたく思う。

迷惑にならないように

関係各位とは勤務先のホームセンターの皆様のことをいっている。つまりはそういうこと。出勤前の砂防ダムである・・・。
5月も中旬となった。およそ1ヶ月後には日の出から日没までの時間が1年のうちで最も長くなる夏至を迎える。現況を言えば朝、日の出時刻はだいたい5時前。空が夜の暗闇から白み始めてくるのがそれより約1時間前の4時前後。(静岡県東部地域)その4時前後から5時くらいまでの間に砂防ダムのあるところに現地入りして、準備し、約1時間うたを楽しんだあと、6時ちょっと過ぎまでに確実に現地を出発することが出来れば、会社の始業時刻に間に合うのでは無いかと考えた次第である。

あめがパラつくなか

5月13日朝3時45分。自宅近くの24時間営業のガソリンスタンドに私はいた。今日これから目指す沼津市戸田に向けて、まずは車の給油作業を行う。実はこのとき、雨がパラつき始めていたため多少の不安があった。まぁ不安があったと言ってもそれは実際に渓流に立って歌がやれるかどうかということについてであって、今日、この朝の時間帯に砂防ダムを目指すということそのものに対してでは無い。今日の砂防ダム行脚というのは、出勤前のわずかな時間の中で、現場に何分でもいいから立って、その後全部後片付けをした後、会社の始業時刻までに戻って来られるのか?ということを検証する意味合いがほとんどなので、不安と言うよりも、それができるかどうかということでむしろワクワクしていた。

じつは戸田が近くなっていた

戸田が近くなっていた。といっても地殻変動が起きたわけでは当然、ない。―そんな道は地元民なら誰でも知っているぞ!-と言われてしまうかもしれないのだが、沼津から西浦経由で戸田を目指すとき、西浦古宇の「レストラン井里絵」前の分岐を左折したのち道形に行くと、道は真城峠を経由し県道18号線、戸田の下り坂道残り三分の一ほどのところに出られるのである。この事実を前回戸田に行ったときに知ったのだ。前回の記事は受け取りようによっては「戸田というのは、とても行きづらい土地なのですよ。」という印象を与えかねない内容になってしまったのでお詫びしたい。上記のルートを使えば、戸田行きはかなりイージーなものになる。大変失礼いたしました。
ショートカットルートを使って、しかしカーブ等危険箇所多数によっての控えめ運転により、自宅近くのガソリンスタンドから約1時間10分ほどで現地に到着することが出来た。

中央オレンジ色の斜め線がショートカットルート

雉ヶ尾滝下流の砂防ダム

現場は戸田の観光スポット「雉ヶ尾滝」の下流にある砂防ダムである。この雉ヶ尾滝近くにはそれと並んで、「戸田しんでん梅林公園」というものが観光スポットとして拓かれており、車はその※戸田しんでん梅林公園の駐車場に停車させる。
朝5時、駐車場に車を停めさっそくウェーダー、レインコート、フローティングベストと準備を済ませ砂防ダムへ向かう。辺りはすっかり夜が明け、明るいのだが、太陽は出ておらず暑くは無い。堤体近くまで歩道を歩き、やがて落水の音が聞こえるようになったところで歩道を右側へ外れ杉林に入る。そこから慎重に足元を見ながら堤体副堤方向に向かって土の勾配を降りる。土の勾配を降りきったら50メートルほど下流方向に歩き、足場を確実に確認できたところから沢へ入渓する。ここは、沢の直前が結構切り立っているため、副堤下流側すぐの地点からエントリーすることは危険である。必ずスロープ状になった足場が一歩一歩目視できるようなところをエントリー地点とし、浮石(沢沿い壁面に引っかかっただけの石)には絶対に足を掛けない。崩れた場合大変危険である。

この看板を左折
ここは直進
戸田しんでん梅林公園駐車場。トイレもある。

1時間ほど楽しんだ後

歌は入渓点よりすぐのところで楽しめる。当日はそこで約1時間程うたを楽しむことが出来た。やっていることはいつも通りなのだが、今日は出勤前という特別な条件付きであったため、とても新鮮な気持ちで楽しむことが出来た。現場を6時に上がり、車を駐車場から発進させたのが6時20分頃。それから帰り道、いや、通勤には行きと同じ1時間10分ほどの所要時間を掛け、会社には到着することが出来た。もちろんこれは始業時刻以前の到着である。万一交通渋滞が起きた場合の迂回路もあらかじめ何本か設定しておいたが、それらを使うこともなく順当に事が運んだことによっての大成功の“朝一番の歌”であった。

※戸田しんでん梅林公園周辺は果樹園、椎茸のほだ場等の農地です。同地を訪れた際はそれらには絶対に立ち入ることの無いようお願いいたします。また、車で走行する際は農家の方の邪魔にならないよう、すれ違いには農家様優先の走行をお願いいたします。

堤体全景。(別日に撮影。)
マナーを守って楽しむ方にはきちんと展望台が用意されている。この場所に来ることは基本的には歓迎されているのだ。

戸田峠越えて反対側は?

前々回、伊豆市修善寺にある桂大師とその上流部の砂防ダムについて書かせていただいた。現場は、水が堤体下部を伏流する形で流れており、自分の理想とする音楽環境とは異なる、残念賞の砂防ダムであった。理想的な砂防ダムというのは、重力コンクリート式の不透過式砂防ダムで、水がいくらかジャバジャバ流れ落ちているようなところである。その水がジャバジャバ流れ落ちている音の環境の中で、どれだけ芸術家曲を歌えるのか?響きの面でいかにマネジメントできるのか、といったところに砂防ダム音楽の楽しみというものがあるわけで、水の流れないしんと静まりかえる、当地の現場環境は不十分と言わざるを得なかった。やはり、砂防ダムを目指していて落水のあるところに行かなければその楽しさは味わえない。―となると、さて、今回はどうしよう―ということになった。いろいろな候補地があげられたが、その中で戸田大川というキーワードが出てきた。戸田に行くこと、それはつまり湯舟川や桂大師を構える伊豆市修善寺と戸田峠をはさんで反対側に入ることを意味する。なぜ、戸田大川に決めたのかと言えば、伏流に関する調査がしたかったからである。伏流という現象が起きることの原因は様々であるが、その中の一因として水量不足があげられる。付近の山のピークでは達磨山の982メートルがあるが、単純に数値的なものから言えば低すぎることは無い。私の経験上、標高の低すぎる山というのは得てして伏流している場合が多い。逆に標高の高い山ほど水を豊かにたたえる能力を持っているものなのである。戸田峠(達磨山)をはさんで東側では残念な結果に終わったが、では、西側ではどうなのか?その辺の調査も含めて今回、戸田大川に入ることを決めた。

藤の花(当日撮影。)

へだといえば

戸田と言えば御浜岬や戸田湾、またそこで水揚げされるタカアシガニ、戸田温泉などが有名である。とくに自然現象で作り上げられた戸田湾はパッと地図を広げてみたとき、起伏のあれこれ多い伊豆半島の海岸線の中でも特徴的で目を引く。釣り雑誌等のメディアでも頻繁に取り上げられるなどしていたため、私も戸田という地名もその漢字の読み方も魚釣りを通して知った。やはり戸田と言えば海なわけでその山間地域はなかなか注目されることは無い。ところが・・・。である。この戸田の地を西伊豆の海岸線を通って訪れた方にはわからないであろうが、修善寺側との往来に戸田峠、つまり県道18号線を使ったと言う人ならばおわかりいただけるであろう。地図上で見た感じ、いかにも山道でウネウネとした区間がチョロっとが描かれているのだが、これがびっくりするほどの急坂なのである。スポーツカーなど馬力のある車でサラッと超えてしまったという方は何も感じなかったかもしれないが、軽自動車等、それほどパワーの強くない車でのこの戸田峠越えという物はなかなかつらい物なのである。わたしは以前、軽ワンボックスカーに乗っていて、そのときに初めてこの坂を登ったのだが、はっきりいってもう二度と同じ車ではやるまいと思った。上がれど上がれどいつになっても峠が現れず本当に面食らってしまった。あまりにもこの坂で得た衝撃が強すぎて、次の車の買い換え時に「戸田峠を余裕を持って超えられる車」と意識したほどなのである。

今そこにある砂防ダムを楽しんでいるだけ

そんな急峻な山稜をもつ当地なだけに土砂災害に関するリスクも相当に大きい地域であるということがいえる。この地域の山間部に局地的に大雨が降ったとすれば、山の斜面が急勾配である当地においては、その雨水が一気に下流部の戸田集落に押し寄せる。その一気に押し寄せる雨水はその猛烈な勢いによって土砂のみならず大型の石や大木を動かすだけの能力を含んでしまうがゆえに、それに対処するインフラとして河川には三面護岸や砂防ダムを含む大小の堰堤が構えられている。自然形成された御浜岬など景観に関して格別な配慮をしている海側と比べて、大雨という自然物理に対して、なにがなんでもということで景観や水中生物に対して何の配慮も無い形で臨む山側のこのような姿勢は皮肉にも思えるが、住宅等市民(村民)の財産を守るというそれぞれの建設当時の「思い」を考えれば、致し方ないのか?と思うのである。私自身においては、そういったインフラに対して賛成だとか反対だとかいうものは全くなくて、ただ、いまそこにある、現実的に建造されている砂防ダムというもの、また、その周辺空間において純粋に音楽を楽しんでいこう。ということなのである。

画像左中央部辺りから入渓する。
戸田村とある。
入渓点入ってすぐの堰堤

5月6日、

5月6日、今回は戸田大川の最上流部の砂防ダムに新規開拓ということで入った。前述の県道18号線を戸田集落側から修善寺方面へ走ると県道が戸田大川から外れる地点があるが、そのまま戸田大川沿いを行ける林道に向かって直進しそのまま道形に一般車両が入れるところまで上がっていく。すると、最後「雉ヶ尾橋」という橋のところに出られるのでその雉ヶ尾橋の手前の道幅が広くなったところに車を置く。橋の手前側に丸太置き場がありその丸太置き場を入渓点としてそこから上を目指す。ここは、かつて村民用の簡易水道の取水施設があったところでその名残が散見される。沢沿いの道も区間全域ではないものの一部カラースプレーで矢印がマーキングされたり、道を示すように土嚢袋が連続で置かれたりしている。そんなものを見ながら約30分ほど登ると画像にあるような砂防ダムに着くことが出来る。幅、高さともに5メートルほどのあまり大きな堤体では無いが、見ての通り渓畔林に色濃く覆われたところにあるため音は響かせやすい。光の面から見ても暗くなっており、しかしながら堤体本体の水通し部分は日の光を浴びて輝いており、気分的な安らぎを感じながら音楽を楽しむことが出来る。

矢印のマーキング。
砂防ダム手前は渓畔林によって暗くなっている。

やはり適度な降水量が必要

戸田峠をはさんで反対側、桂大師上流の砂防ダムは伏流であったが、ここはかろうじて、わずかながら、水通しを越流し落水する形で水は流れている。この感じだと、雨が数日降らなかった場合では伏流も考えられるが、当日は運良くギリギリ水が流れ落ちる状態の堤体を見ることが出来た。今年のゴールデンウィークはよく雨が降ったということもあり、このような状態の堤体に巡り会えた。雨の少ない冬期よりもこれからの時期ますます面白くなってくる場所であろうと思う。当地を訪れる際はくれぐれも安全装備でけがの無いよう登っていただきたい。

さらにもう一つ上に一基あるがこちらは明るめ。
サワガニがシーズンイン。


副業先のホームセンターで

私は普段、副業先のホームセンターで砂防ダム音楽家であるといろいろな方に説明した上で働かせてもらっているのだが、ある日このような質問を受けた。
―なぜ、滝ではなく砂防ダムなのか?-
これは、私の年下上司であるヨシキ氏からの言葉である。当ブログをご覧になってくださっている方で同じような疑問を持っている方も、もしかすれば多いのかもしれないと思い、今回その点について解説しようと思う。砂防ダム行脚を含まない記事になってしまうが、お許しいただけるのであれば、どうかお付きあい願いたい。

中伊豆、萬城の滝

滝ではダメなのか?

まず、滝ではダメなのか?ということについてだが、こたえはNo!である。滝というものがその場所に存在するようになった背景は様々な要因があり、滝にも様々な種類がある。様々な種類とは、ここでは滝本体の周辺環境、周辺空間のことを言っていて、その現場の状態によっては、砂防ダム同様の“価値”が認められ、砂防ダム同様に音楽が楽しめるのである。このような言い方をすると多くの滝愛好家からお叱りの言葉を頂戴してしまうかもしれないが、音楽家の私自身にとっては、滝と砂防ダムでは、砂防ダムの方が価値が高く(これまでの経験上、素晴らしい砂防ダムに多く出会ってきたため。現在では。)、できればそちらを目指したいという意欲が勝っているのである。

萬城の滝より上流にある通称「カーテン滝」

砂防ダムの音楽を始めた頃のはなし

現在、自分自身としては滝よりも砂防ダムの価値が高い。としたが、砂防ダムで音楽をするようになったそのはじめの頃はどうであったかということを述べさせていただきたい。時は2016年の夏頃であったと思うが、人生で初の砂防ダム体験を経験した私は、その魅力にどっぷりとはまってしまい、砂防ダムという、水が直下に流れ落ちるというその景観、音響環境から、「滝」というシチュエーションの中でも同じように、楽しい音楽体験が出来るのではと、滝めぐりをしたのであった。ネット上のブログなどで滝に関する情報を得ては、その場所へ出向き、滝を見つけ、声を出したり、歌ったりして、ここで音楽が出来るものなのかどうか?ということを考えたものである。そう、いま思うと考えたり、悩んだりすることが多かったように思う。

滝めぐりをしてわかったこと

滝めぐりをしてみていろいろなことがわかった。まず、前述の通りインターネット上のブログなどの情報を頼りに、様々な滝を見てまわったのだが、そこは全て、インターネット上の“電子活字”で語られる“名前のある滝”であった。ゆえに滝本体が観光名所として開発された場所にあるものであったり、滝そのものが寺や神社などの伝説物やご神体として、崇拝の対象となっているものであったり、私の住む沼津市と隣町である長泉町境にある「鮎壺の滝」のように周辺が公園として整備された滝であったりと、とにかく多くの人が往来するような場所が多かった。そのせいもあって、滝というものに対して“公共の場”というイメージがついてしまった。私自身は前述の通り、いの一番が砂防ダムであったことから、砂防ダム行脚と平行して滝めぐりをしていたため、人がほとんどいなくて、好き放題、声を出して歌える砂防ダムへの比率が徐々に高まっていったと思う。砂防ダムを目指すことになった理由の一つに、人がいない、ということがあげられると思う。

砂防ダムに決めたわけ

そのようにして、滝に行ったり、砂防ダムに行ったりを繰り返していたのだが、あるときの砂防ダム行脚をきっかけにそれ以降砂防ダムばかりを目指すようになったのである。その日のことについて記したいが、細かいことについては記憶上曖昧な面もあるため、ご容赦いただきたい。時は2016年の秋頃の話しで、場所は伊豆半島、沼津市旧戸田村(へだむら)井田川での体験であった。時間帯としては夕暮れ~日没前後という条件であったと思う。県道17号線より、井田川を上流方向に入っていったところすぐに、堤高4メートルほどの小さな砂防ダムがあり、その堤体下流30メートルほどのところに私は降り立った。ここへ来た理由としては、以前この場所に一度来て堤体の写真撮影を済ませていた(なぜ、最初の訪問時に気がつけなかったのかは不明。)にもかかわらず、デジカメの操作ミスでメモリーを全削除してしまい、畜生と思って当地を再訪したのであるが、その日いちにちの終わり、一日の締めのつもりで声を出してみたのだと思う。滝やら砂防ダムやらをあちこち巡りまわり、それでもはっきり「これだ!」というものを見つけ出せず、自分のそのさき将来に不安を感じながら、そして今日も日が暮れて一日が終わりゆくのだ。とでも思いながら、人生、途方に暮れながら、の歌であったと思う。

驚きと発見

するとどうであろうか。自分の声がワァーと響くのである。砂防ダムという空間で音を響かせられるのか半信半疑であった当時であったと思うが、「間違いなく、ここは響くタイプの砂防ダムだ。」という確信を持った瞬間であった。現場は砂防ダムを取り囲むように広葉樹の渓畔林が押し寄せ、奥行きもあり、下草もうっそうと生い茂った夏の季節の出来事である。今となっては砂防ダムの音楽に、その左右を取り巻く崖や渓畔林の存在が必要不可欠であることが当たり前の事実となっているのだが、その当時は、そのことをよく理解していなかったため苦労したと思う。そして、「ここは、いままで行ってきた場所とは違う。山の木々が音を響かせているのだ。音を響かせるためには木々の生えたところに行かないと行けないんだ。」と気づいた瞬間でもあった。

“撮り直し”となった日の一枚。この日の経験から変わった。

そのような体験から

それ以降に関しては私はほとんど滝に行くことはなくなり砂防ダムばかりを目指すようになった。旧戸田村井田川での経験は自分にとって宝物になった。砂防ダムを見るときはその左右を取り巻く崖や渓畔林を重視するようになり、音がうまく響かせられないときにはまず堤体よりも山の斜面や木々のことを考えるようになった。滝というのがダメなのではなくて、滝の周辺環境、砂防ダムの周辺環境を比較していったときに川をせき止める形で造られた砂防ダムの方が結果的に優れた空間を多く作り出している。ということなのだ。ヨシキ氏の―なぜ、滝ではなく砂防ダムなのか?―という問いに対しては、―砂防ダムでも滝でも良いがどちらかと言えば砂防ダムで、それはなぜなら私が音楽空間の善し悪しを判断するときに、その滝本体、その砂防ダム堤体本体だけでなくその周辺環境全体として見て、判断して、砂防ダムの方が音響的に優れた場所が多かったから。―ということになる。

渓畔林がなくとも、崖から響きが作られることもある。静岡市興津川。

本日は前回の続き

桂大師までの道のり

前回、伊豆市修善寺にある湯舟川ふれあい公園への記事を書いたが、今回の砂防ダム行脚はその続きといってもよい内容になる。地理院地図によれば、湯舟川ふれあい公園の入り口より400メートルさらに上流に、支流の沢との合流点があり、その沢には点線で描かれた徒歩道が寄り添う形で伸びている。徒歩道は直線距離にして約750メートルほどの長さで途切れ、その先には“修禅寺のカツラ”との表記がある。どうやらその場所にはランドマークともいうべきカツラの木があって、そこに向かって道が延びているようなのである。そして、その修禅寺のカツラより約400メートル上流にうれしいうれしい二重線が見つけられたため、今回、砂防ダム行脚は計画された。当地へ訪れた日というのはそれぞれ異なっているが、前回、今回とお互い(スタート地点だけ見れば)場所が隣り合っているため、1日で両方行くことも可能であることから、この記事を見て現地へ行ってみたいと思った方は、前回分とワンセットにして参考にしていただければと思う。尚、今回分に関しては、未だかつて行ったことの無い場所であるため、砂防ダム行脚の新規開拓の記事になることをあらかじめお伝えしておきたい。

駐車スペースの看板

桂大師の看板が目印

4月18日午前6時湯舟川ふれあい公園、上流400メートルにある駐車スペースに車を停める。この駐車スペースの目印として「桂大師」と書かれた石碑と看板があるためスタート地点はすぐにわかる。今回はこの先の行程が未知であるのだが、修禅寺のカツラ(以下、現場の表記に従い、桂大師)まではハイキングコースとなっており、その山の等高線から判断できる高低差は130メートル以上あるためウェーダーはいきなり履かず、リュックサックに入れて背負うことにした。午前中まだ早い時間であったため、気温20度レベルの暑さにはならないだろうと考えたものの、それでも、スタート時に通気性のそれほど良くないナイロンウェーダーを履き、それだけの高低差を登行しようとすれば、ウェーダーの中は汗でグショグショになるのは目に見えてわかっていることのため、とりあえずは山靴を履き、水場等で行く手を阻まれた段階になったらウェーダーに履き替えるという作戦を敷いた。足元以外の準備も済ませ、まずは入り口にかけてある木の橋を渡る。

この橋がスタート地点となる。

ハイキングコースをひたすら登る

今回目指す砂防ダムの中継点ともいえる桂大師まではハイキングコースになっているだけあって、しっかりとした山道がついている。スタート地点に架かっていたような橋も途中何本か同じように整備されているし、看板も要所ごとに複数設置されていて迷わない。沢との高低差があるような崖沿いには転落防止のロープが張られたりもしている。このようなことから判断すると、これはやはり、この桂大師というものがそれなりに人気があるため、ここを訪れる人もそれなりに多いため、このようなしっかりとしたハイキングコースが整備されているのでは。と思った。しかしながら、では、目的地の桂大師まではお手軽楽々な山道なのか、というとそうでもなくて、山の傾斜はさほどきつくはないものの、とにかくダラダラと登り続けるようなタイプの道が続くので結構きつい。途中、緩斜面というかもっと平坦に近いところがインターバル形式で現れてくれればそうでも無いと思うのだがとにかく登り続けることを余儀なくされるため、休みが取れない。(止まって休めばいいのだが。)源流釣りマニアのような人物であればこのような沢沿いのほぼ直線的な山道であっても、そのワクワクの期待感から、登り進んでいくのは苦にならないと思うが、それ以外の方、沢などというものにはさほど興味が無い人にとってはこのような直線的な沢沿いルートはきついと思う。私自身においては息を上げながら約30分ほどの行程で桂大師に到着することが出来た。

桂大師の直前。画像中央下部の丸太橋を渡る。
桂大師
静岡県指定天然記念物とある

桂大師

さて、いよいよ桂大師を過ぎての沢登りとなる。無論、この先はハイキングコースなど整備されていないため自分自身で決めたコースで沢沿いを行くことになる。とりあえず川の状況としては渇水気味でウェーダーを履かなくても行けそうな雰囲気であったため、足元はそのままで続行することとした。川はキンボールサイズの石が中心となるなか、途中それよりも大きい石に行く手を阻まれた際は、脇の林間から巻いたりして(遠回りして)、クリアするなどして歩き続けること約30分で目的の砂防ダムにたどり着いた。砂防ダムについて、画像を見ておわかりいただけると思うが、残念。水が流れていない。いわゆる、伏流状態になっているのである。この砂防ダム堤体より上流部から堤体の直下、堤体下流部数十メートルにかけては川の水は地下水に姿を変え流れている。その最下流部は湧き水となって再び地上部に流れ出しており、まるで何事も無かったようにそこから下流へと続いているため、この事実はここに来ないとわからない。新規開拓につきものな残念賞の砂防ダムであった。
それにしても、ここは途中の感じからしても渓流大好き人種の釣り人さえも訪れたりするような沢では無いように思われ、多分、人の出入りは本当に少ない砂防ダムであろうと思う。人間によって造られたこの10メートル超の城壁はこれまで幾度もの大雨からその下流部の文明破壊を守ってきていながらも、こうして何者にも気づかれること無く静かに山のなかにひとり佇んで、今日もその与えられた生涯を全うしている、というその格好を見ていると、心には本当に愛すべき念のようなものが生まれてきて、ただ引き返す気にはなれず、感謝の意も含めてこの場所で大いに音楽を楽しんだ。春の鳥ウグイスが鳴いているほかは、そよ風で木々の葉がこすれる音がするぐらいの静かな空間の中、思いのほか楽しく活動をすることが出来た。砂防ダムの左右には豊かな樹冠が広がり音響が良く、また、このとても静かな空間の中で音を響かせることで改めて山の中で音楽をすることの素晴らしさを再認識することが出来た。このような水の流れていない砂防ダム空間でも案外、音楽を楽しめるのだということがわかった、大変、収穫の多い今回の砂防ダム行脚であった。

これを見た時点で、ん???
“城壁”全景