ノーキャスト、ノーバイト

宇久須港

5月11日、朝5時を迎えた。場所は賀茂郡西伊豆町宇久須。

暁の海。海面を撫でるように吹く風とさざ波。

ノーキャスト、ノーバイト。訳せば、

竿は振らなかった。魚は食いつかなかった。

といったところか?

夜明け前、ここまで来ていながら釣りをしなかったのは海の状況がさほど芳しくなかったため。

ちょっと荒れ気味なくらいがよく釣れる。

釣り人であった頃からの経験則は、にわかを引っ込み思案にさせた。

余計な考えだったかもしれない。

やってみればよかったかもしれない。釣れなくてもいいから。あの玉の鉄のゴロゴロいうプラスチックの塊を思い切り海に投げ入れてみれば、それだけで充分気持ちがスッキリしたかもしれない・・・。

エサ代は掛からないはずだ。なにも失うものは無い。だが、どうしてもこの日はルアーを投じる気にはなれなかった。

べた凪の海を眺めつつコンビニのコーヒーをすする。

階段をトボトボ、
公園へ。
ここは浜海浜公園。
時計を見にいく
静かな朝。

赤川との合流点へ

海がダメとも川があろうと気持ちを切り替える。

午前5時半、交通量もまばらな国道136号線を歩き、新宇久須橋より宇久須川を見に行く。

異常なし。川底は白く。

午前6時、浜海浜公園駐車場にもどり車にのりこむ。駐車場を出て、宇久須南信号交差点より静岡県道410号線を東へ。

午前6時10分、宇久須川にかかる清水橋ちかくにて停車。再度、川のチェックを行う。

異常なし。川底は白く。

ここは、伊豆半島の隠れジオスポット。清水橋ともう一つ上流側には神田(じんでん)橋。川底が白くなっているのは宇久須川と支流である赤川の水が合流したあたりから。

宇久須川の微かに濁った水に、川石・護岸ともに赤錆びだらけの赤川の水が加わると、その地点から下流側は川底が白く変色している。

見えているのは水酸化アルミニウムの沈殿物。

最も顕著に色付いているのは合流点付近で、以降下流方向は帯状に白い。帯は合流点よりおよそ2.5キロにわたって最後、宇久須川の河口へ至るまでの区間およんでいる。

宇久須川の支流、赤川の上流にはかつて珪石を採掘する鉱山があった。おもに第二次大戦終戦後には国産板ガラスの原料として、昭和40年以降は軽量気泡コンクリート(ALC)の骨材原料として産地の珪石は利用されてきた。

国家の発展に大きく寄与してきた険阻の地下資源採掘である。結果、ここでは酸性水の流出という現象が起きた。(もちろんこれは採掘前より先天的な現象として、すでに存在していたということも考えられる。)では、それがどのように環境に作用したのか?といったことについては今後、経過観察を続けていかなければならない。

最終的に宇久須川の流れ出る西伊豆沿岸地域は魚類のほかイセエビ、アワビ、トコブシ、サザエ、テングサ等の漁が古より行われてきた。これは時系列にすれば珪石鉱山が開業する以前から開業して以降、そして現在にいたるまでのことであり、さらに広く海域を見わたせば最深部2500メートルを誇る駿河湾の海では深海魚漁が、やはり今も昔も行われている。

狭い水域であるほど影響力は大きいであろう。前者の西伊豆沿岸地域とは沼津市戸田から賀茂郡松崎町あたりまでの範囲について。

これまでの堤体さがしにおいては赤川同様、微酸性~弱酸性の川・沢は伊豆半島内で他にも多数見てきており、やはり川底が赤や白に変色している場所もこの目で確認している。

焦点として捉えるべきは宇久須川だけではなくさらに多い。

植生などは川の近く、渓畔林を構成する樹木において異常現象が見られたという記憶はない。シカも相手にしないアセビ、ヒサカキ、ヤブツバキなどは一年中いつでも良い樹勢を見せてくれ、こういった植物は特殊な水のなかに含まれる微量元素を補給しながらむしろ元気にやっているのだと感じるほどである。

釣りの分野では渓流師は悪水として嫌う人が多いが、自身含めた海釣り師はむしろこういった川の近辺でいい思いをすることが多い。どういうわけか降雨時に河口より大水が出たタイミングにおいて、よく釣れるというケースに出くわすのだ。

伊豆半島全体として赤川のような特殊な川が多いため、それがあらゆる生物にどのように影響を与えているのか?ということについては今後も注視し続けていかなければならないだろう。

隠れジオスポットへ
清水橋より。
右の太い川が宇久須川。中央、細い川が赤川。
両者の流れが混じると川底が白くなる。

入渓点へ

午前6時35分、ふたたび車に乗り込み発車。宇久須川に沿うかたちで静岡県道410号線を東進する。

午前6時40分、竜神峡ます釣り場まえを通過。

午前6時45分、静岡県道410号線上、入渓点至近地点に到着。道幅の広くなったところに車を駐車し、入渓の準備。

午前6時55分、準備完了。まずは入渓点の目印となる看板の撮影に向かう。

二級河川宇久須川起点静岡県。

看板を画像に収める。この看板のすぐ横に堤高6メートルほどの堤体があり、その上流堆積地より入渓する。

午前7時、遡行を開始。ソフトボール~バレーボール大の石が敷かれた渓をのぼってゆく。ところどころには幼稚園児でも座れそうな石椅子が。ちょっと一休み出来そうだ。

堆積地をこえれば渓畔林の多い区間へ。スダジイの高木にフジ、テイカカズラが絡む暗い渓畔林の下ではしっかりと水が流れている。水深にしてくるぶし上程度の水を蹴りながら遡行をつづけた。

午前7時25分、目的の堤体に到着。(堤体名不明。)

入渓点の目印。
入渓点よりすこし上流地点
アカメガシワ
渓畔林に隠れながら遡行する。
あと少し・・・。
堤体前へ。

春の堤体

水はしっかりと流れ、いかにも春の堤体といった感じである。放水路天端上を流れる水はしっかりした厚みを持っており、その厚みある水を朝の太陽が照らす。

主堤より湛水する水は水褥池へ落ち、水褥池につづいて副堤から落ちた先の護床工区間は小池のようになる。さらに大型重機タイヤサイズの石で構成された荒瀬へと流れはつづき、荒瀬から推定1メートル以上はあろうかという深く掘られた淵に向かって水はダイブしている。

好感触の気持ちを抱くのは、堤体前におけるノイズの質について。普段、接する機会が多いのは、川石に水が衝突することによって発生するタイプのノイズ。

今まさに接しているこの堤体前のノイズも落ちこみによる縦方向への衝突が見られるが、異なっているのはその音ひとつひとつの小粒感。細かさ。

細かなノイズに集約された堤体前は声を入れるという行為を試みる前段階から、すでにこれから楽しいゲームが待っているということを予感させてくれる。

堤体は84度。東北東。
風は微風。
距離は75.6ヤード。
頭上は覆う渓畔林

声を入れてみる

自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

期待していたとおり声が良い感じで響いている。堤体前を支配するノイズがきめ細かく、そのきめ細かく迫ってくるノイズに対して声が混じり合う感覚が非常に心地よい。

水が落下したときに発生するノイズに対して、人間の声をかき混ぜていくという行為がこれほどまでに心地よいのは、その混じり合う音同士の攪拌が非常にスムーズに行われているからであろう。

豊富な落水に起因する空気の動きも感じられ、微風は声をよく運んでくれている。渓畔林の葉によって形成された影の下に入り、歌い手自身が音に集中できていることも大きい。

自然体にしていながら音を聞こうとする体勢になることが出来、結果、響きに対する感度が上がるという好循環に陥っていた。

ハゼノキ
コナラ
高いところにあるヤブニッケイは見上げる。
右岸側
左岸側
ノイズがきめ細かい。

つくられた空間の中で

結局、この日は午前11まで堤体前で過ごした。

経験則・・・、であろうか?堤体前の環境は砂防ダム音楽家に歌う行為そのものを誘った。

その質の良さ。まだ一日の半分も過ごしていない者を歌へと駆り立てる良質な堤体前のノイズ。

正直、堤体前に到達した段階で歌おうとする気がどれほどあったのか?ということについては記憶が無いが、結果的に声を入れるという行為が出来たというについて、また、その最中に感じられた非常に心地よい、力まなくてもいいという感覚は、自然界からの誘いをうまく受け取ることが出来た結果なのではないかと考えている。

他動的につくられた空間の中で自分自身がやったことといえば、ノイズに対してただただ声を合わせにいったということだけ。

歌うことが出来て、歌い手自身の心の中に沈んでいるものを外に放出することが出来、非常に心地よい感覚に包まれながら遊べた。

最高の朝を満喫することができた。

良質なノイズに声を合わせていく。

急きょ変更!

富士川クラフトパーク

5月2日午前6時。場所は山梨県南巨摩郡身延町「富士川クラフトパーク」。

長いゆるやかな階段を下りてネモフィラ畑に向かう。

階段の中央には下の噴水へとつづく水路。水は流れていない。

夜間は噴水を回すモーターを止めているようである。夜が明けた現在も稼働にはまだ時間が早いようで、御影石の並べられた水路は薄く表面が濡れているだけだ。

そういえば昨日は雨が降ったなぁ・・・。

本日は雨後のゲームである。川の状態が心配だ。本日入る予定の下部川は富士川を挟んで対岸側にある。

目の前にある噴水のモーターも、川の水量も自らの手でコントロールすることはできない。さらにいえば堤体の方角も、太陽の位置も。歌い手である人間にとって出来ることといえば、その時期、その時間を狙って入渓することで、太陽をある程度思い通りの方向に構えたり、渓畔林の生育具合がある程度予測できたりするくらいだ。

自分が何かを変えるんじゃなくて、相手が変わるからそれに合わせて自分が動くということ。

便利な世の中にあって、敢えて不便なやり方を選んでいる。常に受け身の立場で動くその一連の行動は一見、不幸で無駄の多いことのように思えるかもしれないが、成るようにしか成らないという“結果”に応じてリアクションしているのは結局のところ疲れない。

受動的であるということは楽なのである。

演奏施設である堤体前についてなにか作るという思考はない。作るということはエネルギーを使うこと。

土木職人がたまたまそこに置いた石があり、流れてきて自然に置かれた石がそこにあり、たまたまその場所に散布されて根付いた植物が生えていたり、その植物に誘われてどこからかやってきた動物が息付いている。

偶然その場所に出来たものを見に行く遊びをしている。

そう考えると、現場で起きていることをあまりにも考えすぎるのは良くないことなのかもしれない。

肩の力が抜けてきた。よし、今日も行ってみよう。

水の流れていない水路。
メタセコイアの葉
触ってみる。
ツツジのなかま
ひとけの無い静かな朝の公園
ネモフィラ畑

毛無山登山口駐車場へ

午前8時半、富士川クラフトパーク駐車場を出発。「上沢」信号にて国道52号線を横切って東進。富士川にかかる富山橋をわたり直後にあらわれる波高島トンネルをくぐる。

午前8時40分、波高島トンネルを抜けて800メートルほど走ると右手側に橋。橋の名称は「いで湯橋」。このいで湯橋をわたると道は下部温泉郷に入った。直進し、JR身延線と交差する下部踏切をわたってすぐ左にある下部温泉駅に立ち寄る。

駅前駐車場に車を停め、駅舎の離れにあるトイレへ。トイレを出ると下部川のチェックに向かう。

午前8時50分、下部温泉駅近くの「ふれあい橋」より下部川をのぞき込む。前日の雨による増水は・・・?

どうやら大丈夫そう。水はいたってクリアーで、しかも荒れている様子も無い。ホッと胸をなでおろす。ふれあい橋を完全にわたりきり、下部リバーサイドパークと湯之奥金山博物館の足湯をすこし見てから早足で下部温泉駅前にもどった。

ふたたび車に乗り込み出発。

道なりに東進し、神泉橋、善隣橋をわたりながら下部温泉街を抜けきる。

午前9時半に身延町湯之奥「門西家住宅」付近を通過。湯之奥集落の最終民家も越え、さらに奥へ奥へと車を走らせ午前10時05分、毛無山登山口駐車場に到着した。

下部踏切と下部温泉駅
ふれあい橋からの下部川
下部温泉街をぬける。
イチハツの花
冬季閉鎖のゲートを越える。
奥へ奥へとすすむ。
毛無山登山口駐車場

スタート直後は寒い?!

午前10時05分、毛無山登山口駐車場のすぐわきを流れている下部川の様子を再度チェック。さきほど確認した下流部同様、やはり荒れている様子は無い。入渓の準備に取りかかる。

上半身はTシャツの上にレインジャケット。その上にフローティングベスト。下半身はスラックスを履いたまま上にウエストハイウエーダー。

5月上旬、標高900メートルという条件下、本日はこのシステムで臨む。気温は15.5度ほどあるものの、ときおり冷たい風がピューッと吹くタイミングにおいては寒い。

入渓前の準備段階で寒さに不快感を覚えたところであるが、いったん歩きはじめれば丁度よくなることであろう。スタート直後からは渓行にてダラダラ登りほどの傾斜を上がり続けていく行程が待っている。堤体前で過ごすときに着る長袖シャツやフリースはバッグの中に収納した。

午前10時半、毛無山登山口駐車場のガードレールの切れ目から下部川の河原に降りる。ここが本日の入渓点。入渓点直後には4~5メートルクラスの堰堤を確認。右岸側から堰堤を巻いて堆積地に上がる。

さらに100メートルほど遡行してまた堰堤。今度はバットレスタイプの鋼製堰堤で高さは4~5メートルほど。これも巻いてさらに100メートルでまたしてもバットレスタイプの堰堤。

以降、バットレスタイプ・重力コンクリートの堰堤が入れ替わり立ち替わり出現し、そのたびに右岸側・左岸側いずれか巻きやすそうな方向を選んで一つ一つ越えていった。

堰堤は全部で9基越えた。ようやくの目的地は10基目の堤体。到着時刻に腕時計は正午を示していた。

入渓点より。いきなりの堰堤越え。
堆積地を歩く。
数えて8基目の重力コンクリート堰堤。
スッポンダケのなかま。
目的の堤体に着いた。

ミスが発覚・・・。

堤体にたどり着いて、まず真っ先に探したもの・・・。

太陽。

まずは太陽がどこにあるかと確認に入る。上を見上げ、分厚い雲が払われるそのときを待つ。

自分自身が犯してしまった大いなるミスに気がつくのに、さほど時間は掛からなかった。

分厚い雲が薄くなってきて、強く光る一点がぼやけながらも徐々に把握できるようになってきたときのことだった。

ん?

なんと太陽が現れたのは、堤体に向かって正対したときで右斜め後方。程度としては完全に背中側とまではいかないが、右手を水平方向に伸ばしてそのいちばん後ろに下げられるくらいの角度で後方にある。

ガーン!!!

原因は過去にこの場所に訪れたときのデータの読み間違え。148度、南南東の堤体を間違えて南南西であると誤認。南南東の堤体でベストタイムということを考えれば、この堤体はまぎれもなく午前型の堤体である。

もうとっくに左岸側に移ってしまった太陽を見ながら、言葉では言い表せない気持ちになった。

冒頭の話しではないが、太陽も堤体本体も移動式のセットであれば自分自身の好きなように動かして、光の位置関係を調整することができる。しかし、現実にそんなことは出来ないわけで、今このシチュエーションにおいて自身がやれることといえば、太陽を背負った向きのまま歌うことだ。

太陽が堤体の水裏に反射して出来た非常に明るい空間の中で、多大なる違和感とともに歌えということか。

う~ん。

夕方・・・、夕方の暗がりを待とう・・・。

正午過ぎに再計測。コンパスが太陽光により輝いてしまっている。
太陽光が反射体にあたると空間が明るくなる。
堤体水裏の斜面、落水が反射体となる。
銘板

急きょ変更!夕方ゲームへ

かくしてゲームは夕方、日没前のその時間まで持ち越されることとなった。

長丁場を堤体前で過ごすことが決定・・・。になったわけであるが、その待ち時間については何ら億劫であるとか面倒だという気持ちは湧いてこなかった。

むしろ大好きな堤体前で長く過ごせることに喜びを感じていた。

自慢じゃないが「砂防ダム音楽家」として活動してきていて、やっぱり砂防ダム等堤体類(この日は治山ダムであった。)そのものが好きなのである。

嫌いだったらこんな山奥に行っていない。これがあって、これで何度も何度も遊ばせてもらって今日まで生きてくることができた。

決して響きのいい、見た目のよい堤体に出会うばかりでないことはもちろんだが、それも一つの堤体の個性として勉強させてもらってきていて、ときには響くかどうかの勝負をして遊んでいる。

堤体前にいるだけで楽しい。もちろん歌えばもっと楽しい。どんな堤体でも・・・、とまでは言わないけれど。

砂防ダムというものは環境破壊の悪だ。という向きもあるけれど、それは過去のことである。これからはこれをレジャー施設として、レクリエーション施設として利用していくことが新世代には求められる。悩める21世紀人類の心の支えになってくれる友はとてもやさしい。友はこうしている今この瞬間においてもガラガラと音を立てながら、山の奥で歌い手が遊びに来てくれることを待っていてくれている。

それはどんなタイミング、いつでも。

こんなにも偉大なものを悪と決めつけて拒絶しつづけるのは本当にもったいないことだと思う。

堤体に遊びにでかけよう!

木々の枝葉の下で過ごす。
サワグルミ
オノエヤナギ
ホソエカエデ
こちらは隠し持って行った最中。非常食に変わった。
最中は駅前で密かに買っていたものだった。

大きなプレゼント

この日、堤体前をあとにしたのは午後5時15分のこと。

結局、太陽の光のあたりかた、見えかたが良くない状態だとも言いながらも好奇心が勝ったりして、ときおり歌ったりしながら5時間以上の時間を堤体前で過ごした。

なかでもとくに印象的だったのが、太陽が山の稜線の中に完全にかくれた午後4時半以降の時間。

夜の帳が下りようかという緊張状態のなか、ピーンと張り詰めた空気の中で明らかに自分自身が歌に対して集中できているということがわかった。

風の無い、空気のほとんど動かないシチュエーションに対して瀬のノイズは大きく、響き作りは困難を極めたが、高い集中力のなかで何度も声を入れることにトライできて楽しかった。

自分自身で意図的にメンタルをコントロールするのではなく、環境に身をまかせながら自然に集中力をあげてもらえたのは大きなプレゼントであった。

肩の力を抜いて、受動的に目の前の景色にのぞむことが出来たと思う。

充実感をもって堤体前をあとにした。

段差が多く賑やかな溪だ。
太陽が山の稜線にかくれたのは午後4時半頃のこと。
風は無風。
細い木がたくさん生えている。
響きの面においては厳しかった。

木賊堰堤

釈迦堂パーキングエリア上り

4月7日。本日は高速道路にあるパーキングエリアからスタートする。

山梨県甲州市勝沼町「釈迦堂パーキングエリア上り」。時刻は午前6時半。

まだ土産物を扱う店舗も食堂もオープン前の状態。

あたりを見回す。

ちょっと遠くの景色が気になる。

方向は建物の反対側。距離にして200メートルほど。

視線の先には「釈迦堂パーキングエリア下り」。そのパーキングエリアから一段高くなったあたりの景色が非常に賑やかなのである。

上り線パーキングエリアを出て博物館に向かう。

釈迦堂遺跡博物館

パーキングエリアの通用口から出て、東京方面に少し歩いてから高速道路にかかる高架橋をわたる。

そして東京方面に動いた分を取り戻すように今度は甲府方面に歩くと、ひときわ大きな建物の前に出ることができた。

釈迦堂遺跡博物館。

朝の7時前でやはりこちらも開館前のようであるが、それに反して多くの車が駐車場に詰めかけている。

何故?などという疑問はまったくもって必要なく、その明らさまな答えは自身の目に否応なしに飛び込んでくる。

桃の桃色。白色。さくらも咲いている。さらには「臨時駐車場」という看板。

桃祭りなのか?さくら祭りなのか?

スマートフォンで調べるもとくにタイトルは見つからず。

目の前には博物館の植栽の花桃。建物のすぐとなりでは「駒沢農園」の桃畑。眼下に山梨県峡東地方の平野がこれまた桃の花色で染まっている。近くに遠くにそれらを一枚一枚丁寧に写真に収めていくのが現地に出向いた人々の仕事。

自身もせっせとそのタイトル無し、撮影義務なしという仕事に加わり、カメラにたくさんの写真を収めた。

写真を撮っていくなかで面白いのは、博物館の無機質な感じと桃の花の温かさという相反する両者を一枚の画に収めるという作業。

これは普段自身が行っている堤体と渓畔林を一枚の画に収めるという行為にとてもよく似ている。

砂防ダム等堤体。渓畔林。

両者はそれぞれ個別に撮影することにもちろん価値があるわけだが、さらにお互いがミックスされることによってその魅力が何倍にも増す。

渓畔林は美しき見た目のみならず。

とくに音楽目的で何基もの砂防ダム等堤体類を歩いたことがある人にとっては、樹木・渓畔林から得られる響きというものが、歌うことの成功・失敗に大きく影響するということはすでに周知の事実であることと思う。

堤体前の木が生えたところは、そうでないところに比べて圧倒的に響きが良い。自身は「反響板効果」なんて呼んでいるわけだが、木の密度とか、木で構成された渓畔林の奥行きであるとか、木が生えている斜面の感じなどでその影響力もまた異なる。

したがって、実際に響きが良いのかどうかは現地に行って歌って確認しないといけない。

予想どおり良く響いたか?

予想に反して響きは悪かったか?

予想に反してめちゃくちゃ豊かな響きが得られたか?

事実を確認する行動を取らないといけない。事実を確認して、そのまま遊べるなら遊べば良いし、何かしらの対処が必要ならばその方法を考えて後日、再訪ということになる。

まずは現地に出向くこと。そこから全てが始まる。

今回、釈迦堂遺跡博物館を訪問したのは事前に得ていた当地の観光情報から。観光情報をもとに実際行ってみれば、うわさに違わぬ景色をしっかりと自身の目で確かめることができた。

情報の発信者には感謝申し上げたい。

釈迦堂遺跡博物館前。
釈迦堂遺跡博物館
駒沢農園の入口
駒沢農園内。ユキヤナギ、菜の花、スイセンなども咲く。
レンギョウもこの咲きよう。(駒沢農園内)
平野のピンクがかった部分はすべて桃の花。

釈迦堂パーキングエリアを出発

午前8時、釈迦堂パーキングエリアに戻り、建物内にあるイートインスペースにて朝食。朝食後は、同じく建物内の土産物店で桔梗屋のどら焼きを買ったのち、車に乗り込んだ。

午前8時半、釈迦堂パーキングエリアを出発し東京方面へ。

午前8時40分、勝沼インターチェンジより中央自動車道を降り、国道20号線にてやはり東京方面へ。

午前9時、いったん車をおりて国道20号線「立会橋」の橋上より本日入渓する「日川」の様子をチェック。

異常なし。

午前9時5分、再び車に乗り込みさらに東へすすむ。

午前9時15分、国道20号線「景徳院入口」信号より左折し、山梨県道218号線に入る。

午前9時25分、市営景徳院駐車場にて停車。駐車場内にある公衆トイレに立ち寄ったあと再出発。

山梨県道218号線にしたがって進み、砥草庵、日川渓谷レジャーセンター、天目トンネルなどを通過。

午前9時35分、やまと天目山温泉の日帰り入浴施設入り口にある「天目橋」のさらにもう一本上流側「六本杉橋」をわたり、700メートルほど坂を登ってゆく。

午前9時40分、甲州市大和町木賊「天目山駐車場」に到着。

釈迦堂エビ塩ラーメン
弁当コーナーも充実していた。
勝沼インターチェンジ
国道20号線を東京方面へ。
国道20号線に架かる「立会橋」
立会橋から日川をチェックする。
国道20号線「景徳院入口」信号
甲州市市営景徳院駐車場
天目山駐車場

待機スペースに

午前9時40分、天目山駐車場にある消防用の水栓とホースの格納庫前を避けて車を駐車する。

さて、本日入渓する日川であるが、目的とする堤体は「木賊堰堤」。事前の調査によれば堤体の方位は250度で西南西。

予想されるベストタイムとしては午後2時から3時頃までの間。歌い手、堤体、太陽の3者が一直線に並ぶ時間である。放水路天端上を流れる水が強く光り輝く現象が見られる時間がこのとき。理想を言えば、木賊堰堤の堤体前に何らかの「影」に関する要素が用意されているとなお良い。

強く輝く光と、暗がりとして存在する影。両者の明滅の差を一つの視野の中に取り込んで、聴覚的にだけでなく視覚的にも堤体前を楽しみたい。

重要な設定時刻内にしっかり遊ぶための準備。頭にあるのは、事をはじめる前に待機スペースにてしっかり体を休ませるということ。

車を降りて、天目山駐車場のすぐ東側にある階段を登ってゆく。階段を登りきれば「栖雲寺」という寺。その栖雲寺の境内にあるのが「天目山石庭会館」。入口の前にある箱に志納金300円を投函したのち、建物の中に入る。

引き戸を開けてすぐに見られる部屋が「富士之間」。たたみ17畳ほどの部屋は南向きにて日当たり良好。さらに廊下を歩いて奥には「石之間」という25畳の部屋もあるところ、本日は富士之間で待機することとした。

部屋の隅に置かれている座敷用長机の折りたたみ脚を立て、ひっくり返して据え置く。その長机に携えてきた袋をやおら乗せ、取り出した箱もあけて手にしたのは先ほど釈迦堂パーキングエリアで買ってきた桔梗屋のどら焼き。いっしょに用意した桔梗屋オリジナルのペットボトル茶とともにいただく。

本日、エアコン等空調設備なしの日本間は、室温が20.5度。暑くはない、寒くもない快適な温度だ。

完食後。

甘~い粒あんのどら焼きで上がる血糖と、室内の快適温度と時間的余裕もあればやることは大体決まってきてしまう。

暁をおぼえず・・・。

ほどひどくならない程度に。

春眠をむさぼった。

天目山石庭会館
「石之間」はたたみ25畳という広さ。
石之間から禅庭をのぞむ。
引き戸を開けてすぐの「富士之間」
桔梗屋のどら焼き、緑茶と駒沢農園の桃(桃は瓶が開かなかった・・・。)
さんすいにせいおんあり!
階下にはきれいなトイレがある。

時は来た

昼もまわって午後1時、天目山石庭会館を出て天目山駐車場にもどる。

駐車してある自家用車にて入渓の準備。

足もとはウエーダーで固め、上半身は長袖シャツとフローティングベスト。背中には自作メガホンの入ったバッグを背負い、頭にはヘルメット、片手には登山用のポールを1本にぎる。

午後1時半、天目山駐車場に接する道路隔てて反対側の民宿「さいぐさ荘」前の坂を下ってゆく。この坂は竜門峡遊歩道という整備された道で、降りはじめはコンクリート階段敷設のエントリーしやすい趣き。

さらに降りていって日川により近いところではスギ林の林間を抜ける道。間々の大雨によって手すりの基礎が壊れてしまっている箇所も見られるが、渓谷沿いの遊歩道にしては比較的安定している。

木賊堰堤は遊歩道を降りてゆく途中に確認。木々の葉のあいだから覗かせる白泡の光と音による圧倒的な存在感は、その地に向かってすすむ歌い手に方向感覚をガッチリと握らせ迷わせない。

やがてスギの林間にて遊歩道を外れ、日川に移る。

午後2時に堤体前着。

さいぐさ荘まえ竜門峡遊歩道。
コブシが咲き始めていた。
春の陽気のなか堤体に向かう。
遊歩道はやがてスギの林間に。
堤体前着。

べらぼうに高い

水はガラガラ勢いよく流れている。

およそ2ヶ月前に当地を新規開拓して見つけた堤体は、当時よりも若干水量アップして勢いよく流れている。ちなみにその新規開拓当日の天気はくもり。

晴れた日の堤体前は、本日が初となる。

方位は前述のとおり250度。堤体本体のスペックは高30.0m長75.0m立積29354.35㎥(銘板より)。

30.0mは副堤の基礎部分から主堤の袖天端までの長さを示す値であろうが、べらぼうに高いということは言うまでもない。とくに主堤は放水路天端より溢れた水が、主堤の水裏斜面を転がり落ちるあいだををはっきりと目で追いかけられるほど縦は長い。

上流より途切れることなく供給される水が、次々と底を切って空気中に飛び出る。

音を伴い生命感に溢れる白泡。

そして一瞬、放水路天端上を通過するときの水は強く光り輝く。光のもととなるのは太陽。

太陽光の当たらない水裏斜面を転がりおちる水(影)、反して放水路天端上を一瞬通過する水(反射体)には直射日光が降り注ぐ。(画像A)

水裏斜面に光が当たらないようにすることで、堤体前の空間が無駄に明るくなることを防いでいる。反して放水路天端上はいちばん明るく。いちばん明るい部分があることによって、そのすぐ下にある影の部分はよりいっそう暗いものとして捉えることができる。

方位は250度。
銘板
距離は100~115ヤード付近。
渓からのノイズも申しぶんない。
画像A。堤体の水裏は向かって左側の斜面。水表は向かって右側の斜面。

より良い環境を求めて

午後2時、自作メガホンをセットし声を入れてみる。

鳴ったり。

鳴らなかったり。

響きが安定しない展開。堤体前の空気が風で揺すられているあいだは鳴っている感覚を得られるが、その風がピタリと止まった瞬間、声が失速する。

風が吹くのを待って声を入れてみるも、すぐにまた止まってしまうのでフレーズが続かない。

歌い心地はきわめて悪い。

午後2時20分、ベストタイムを迎えた。歌い手、堤体、太陽の3者が一直線に並ぶ時間である。

光の明滅差は?

影が弱い。

堤体前の空間が白んでいて、これでは歌い手が救われない。もっともっと堤体前に暗がりが供給されていて、空間が色づいてきたり、影が全体的に覆ってくれさえすれば歌に対して楽に入り込めるようになるはず。

現在の状況ではまだまだ空間が明るすぎるので、歌い手は歌に集中しようと相当意識的にならないといけない。

もっと自然体で歌うために暗がりが欲しい。暗がりの供給元となるのは堤体前に生える樹木で構成される渓畔林。

渓畔林が葉に覆われ、影が生成されるようになればもっと楽に歌えるようになるはずである。

この日は結局、退渓時刻となるなる午後4時まで堤体前で過ごした。決して良いとは言えない状況ながらもときおり思い出したように歌ってみたり、周辺の木々を観察したりしながら、巨大堰堤に見守られる揺籃になって河原を這いまわった。

今日得られなかったことはまた次回。事実の確認をするためにまたこの地を訪れることとしたい。

次回はもっと良い状況で歌えることを期待して。

1.5メートルの向かい風。長続きせず少しずつ吹く。
ベストタイムは午後2時20分頃。
渓畔林。枝が葉を付ける今後に期待。
落ち葉。左からイチイガシ、ケヤキ、クマシデ、アカメガシワ、フジ。
キブシの花穂
フサザクラの花
バッコヤナギの花穂
午後4時まで遊んだ。

ワニの背中

ワニの背中(イリエワニ)

今回は、雨が降ったので雨の日対応ということでお送りする。

演奏施設となる堤体前。その堤体前に出かける折りに、毎回調べるのが当日の天気。

晴れ予報の日。くもり予報の日。雨予報の日。

行き先を決める判断基準のひとつとして、天気予報のデータを参考にしている。

―この日は晴れるから、○時頃にこっち向きの堤体に入りたい。―

とか、

―この日はくもりだから、午前中~午後早い時間は周辺環境の観光地で過ごして、日没前に夕方ゲームで堤体前に立ちたい。―

とか。

あらかじめ空の状況を予測して、その通りうまくいったときの喜び。これ以上のものは無いであろう。

では、そのように行く日の天気のことを完璧に知った上で、思ったような状況の堤体前にいつも立たせてもらえるかというと、これがなかなか難しい。

まず、渓行の計画はどれくらい前からという点。直近では1週間前。長いところでは1~2カ月以上も前から、どこの堤体に行くかと決める。

問題となるのはやはり天気予報なわけで、1週間以上も前から当日の正確な天気を知るということがなかなか難しい。

宿泊先の予約もリュックサックもおやつもバッチリ済ませて、いざ当日~

雨。

なんてことは、誰しも学生時代の修学旅行から経験してきたことではないだろうか?

雨が降ったら雨の日対応で活動を行う。

雨が降ったら中止にするのも一つの選択肢。

重要と思われるのは、歌い手自身が納得するかたちで当日をおさめるということ。

雨の降りしきる中で楽しくゲームができた。

雨が降って堤体に向かわなかったから、事故から免れることができた。

そう考えると、行くのか?行かないのか?もはや、その判断を行う地点からこの遊びは始まっているとも思えてきた。

熱川バナナワニ園

熱川バナナワニ園

2月23日、午前9時。

雨予報ということで向かったのは賀茂郡東伊豆町「熱川バナナワニ園」。

まずは当施設に留まりながら、雨の様子をうかがうことに。

入場チケットは本園ワニ園にて購入。

今回で3度目の訪問となったバナナワニ園。

本園ワニ園と植物園、国道135号線隔てて反対側にある分園。計3園あるうちまず向かったのは植物園。

バナナワニ園3園のうち最も展示が多く、経路も長い。よって、ややもすると。人によっては。体力勝負になりかねない?!植物園から見学をスタートすることとした。

先ほど購入したばかりの入場チケットを入り口にて提示し、温室内へ進む。

1号から8号まである温室内には所狭しと植物が展示されている。各温室にある引き戸の出入り口は、室内の温められた空気を逃がさないようにするための工夫だ。

温室のガラス越しに、屋外の雨を見ながら通路を進んでいく。

湿気を帯びている。

空気は。

それも、においを伴っている。

これは、甘いにおい。とか、美味しそうなにおい。とか、そういった類いのものでは無く、本当に生きた植物たちの呼吸するにおいだ。

「植物園」の看板を掲げているが、「テーマパーク」としての機能も併せ持つ。

所狭しと植えられた植物により、通路は圧迫され歩きにくい。レジャー施設の中にいるはずなのに、自らの鼻は草木の呼吸のにおいに詰められ、視界は熱帯性植物に遮られて妙にドキドキしてしまう。

居心地としては絶対というまでに良い感じはしない。しかしながら、逆にこんなにもドキドキさせてくれるあたりはむしろテーマパークとして優れているかな?と。

1号温室のブーゲンビレア
インコは温室間の屋外通路に展示。
ネペンテス
カラテア・マコヤナの葉

ワニ園へ移動

午後12時10分、植物園からワニ園へ移動。

こちらもやはり植物園同様、屋根付きの施設。ワニ池のある大型ドームは植物園の各温室とは打って変わって明るい雰囲気。

ワニ池に使われている温泉(加水調整済み)は伊豆のスタンダード、ナトリウム―塩化物泉で匂いは少なめ。

数多の猛獣が棲んでいるこちらの棟のほうが、植物園よりドキドキのかけらも無くあっけらかんとしている。

人々はみなリラックスムードで写真撮影などに興じている。

冒頭画像のイリエワニ
表面はいかにも固そうだ。
クチヒロカイマン
ホウシャガメ

雨の影響か・・・?

午後12時50分、いったん昼食を摂るためバナナワニ園至近の食堂に入ることに。昼どきということもあって店はウエイティングボード対応。名前を書いてしばし待つことになった。

ほどなくして、店の中へ通してもらった。通す前の段階で、「お時間かかりますが、大丈夫ですか?」との事だったが、二つ返事でかえす。雨の日のゲームでは太陽の位置を気にしなくていいのだ。

満席に埋まる店内。ここに入る前、向かいの「ますみ食堂」もちょっと覗いてみたけれど、やはりかなり混んでいる様子であった。

雨の影響か・・・?

伊豆半島各所、様々な観光スポットがあるが、雨の日でも楽しめるというところは意外と少ない。

殊に東伊豆町というところでいえば、ここ以外にはほとんど思いつかない。あとは、イチゴ狩りのハウスか土産物の物販スペースくらい。屋外で温暖な気候を堪能できる場所が多いという点で、雨が降ってしまうと逆に都合が悪くなってしまったりするのは難しいところだ。

ほとんど傘をささなくてよい、雨をしのげる場所としてバナナワニ園の存在は大きい。

入渓前に立ち寄らせてもらった、貴重な待機スペースであった。

うめや食堂
アジのつみれだんご汁定食
今回の訪問で多くの時間を費やした8号温室。
オオオニバスの浮く池
カランテ
パフィオペディルム・ルヴィガテム
カトレア・グアテマレンシス
オンシジューム・スプレンディウム
パフィオペディルム・スピセリアヌム
コルクに着生したランのなかま。

堤体に向かう

午後1時40分にうめや食堂を退店。

午後1時50分、依然として止まぬ雨の中、バナナワニ園の駐車場を出発。堤体に向かう。(今回、分園は時間の都合でスルーすることに。)

本日入る沢は熊明川。

バナナワニ園の駐車場を出て、奈良本の丘陵地帯を登っていく。ところどころに現れる源泉井のやぐらは当地域ならではの光景だ。

ストロベリーファーム太田農園、自性院、間当橋などを越えて、奈良本分譲地の最終民家を越えると道は林道の様相を呈す。

熱川ウインドファームの風車群を見ながら林道を登り続け、「林道大川小溝線」の看板にて右折。右折したあとは3.7キロの行程。坂を下るようにして進み、※ブルドーザー道のバリケードを見つけたら近くの道幅広くなったところに車を駐車する。

※バリケードには午後3時に到着。計算上、1時間10分の行程となるが、これは写真撮影等の時間も含む。バナナワニ園~バリケード間の距離は16.2キロであるため、通常は1時間未満の行程で到着することができる。

町内のいたるところに源泉井が。
間当橋
熱川ウインドファームの風車
「林道大川小溝線」の看板

雨で増水すると・・・、

午後3時、車から降りて入渓の準備。レインバイザーを装着し、雨の中でもしっかり目が開けられるようにする。

ほか、ウエーダー、レインジャケットなどはいつも通り。

午後3時10分、バリケードのわきを通って熊明川に沿うブルドーザー道に入る。

本日入りたいのは、熊明川の7基ある谷止工群のうち下から5基目。7基の下流側にある堤体ほど建造年数が古く、上流側ほど若い。バリケード通過直後に現れる1基目、昭和61年造の谷止工周辺は渓畔林が濃く、ブルドーザー道からの視界がはっきりしない。

谷底の熊明川をはっきり目視で確認することが出来ない。しかしながら、明らかにこの川が増水しているということをその轟音から判断することができる。

普段は本当にチョロチョロとしか流れていない川。源頭となる箒木山の頂上からは1~2キロと距離が離れていない最上流部の谷止工群は、雨で幾らか増水すると良い案配になる。

ブルドーザー道にしたがって歩き、2基目から4基目の谷止工もクリア。

午後3時半、目的の谷止工に到着。

バリケードのわきを通ってすすむ。
ブルドーザー道
下から2基目の谷止工
目的の谷止工に到着。

ワニの背中

水は降雨のおかげもあってよく流れている。

あらかじめ決めていた立ち位置は、ブルドーザー道の終点のようなところで一段高くなっており、増水した強い流れから逃れることができる。

立ち位置から堤体までの距離は62ヤード。高低差は目視可能な堤体基部まで推定10メートルほどあり、大型ダンプのタイヤサイズくらいの石で構成される段差渓。

流路は谷止工下流部よりほぼ直線的に下っており、段差渓でノイズを発生。堤体前はかなり騒がしい。

メガホンをセットし声を入れてみる。

鳴らない。

やはり、目の前に広がる段差渓のノイズが、堤体前の音環境を支配してしまっている。

ひとつひとつの段差から生まれるノイズの強さ。プラスしてその範囲もタテおよそ50ヤード(約45メートル)×ヨコ約10メートルほど。

単純計算で約450平方メートル。ワニの背中よろしい段差渓から発生するノイズはあまりにも音を響かせるのに難しすぎる。

背中の凸面に立つなどして立ち位置の変更もしてみたが、これはむしろノイズ発生源との距離を近め、さらに暗澹とした。

渓畔林はしっかり生えているものの離れすぎている。音を響かせるのに有利なのは、左右両岸ともにもっと川の中央に切れ込んでいてお互いが狭まった状態。横方向に空間がポッカリ空いていて、何の引っかかりも無く、音は外の空間へと逃げていってしまう。

矢印部分を立ち位置とした。
段差渓はワニの背中のごとく。
騒がしい中でも意識は堤体本体に。
銘板

退渓へ

午後4時半、退渓することに。

音が響かないながらも、この場に来て歌えたことはよかった。

まずは堤体前に立てたこと。

これは運が無ければ成し得なかったことである。雨が降っているというなかで、過去に拾ったデータから現場の今日の状態を予測して、実際にこの場に来てとりあえずは声が入れられたこと。

雨がもっと大降りであった。風がもっと強かった。中止にせざるをえない状況に陥った。ということにならなかったのは、運が良かったことに他ならない。

今日の状況では音が鳴らせなかった。しかしながら、今日のこの雨はやがて止み、川の水量は間違いなく減少に転ずるであろう。

では、そのとき歌ってみたらどうなるのか?

今日の結果は今日の結果でしかない。落ちこむことも無い。

鳴らせるチャンスはきっとあるはずだ。

距離は62ヤード。
ほぼ真西向きの方角。
追い風で微風。
運に恵まれて立つことが出来た。
堤体前。上流側から見たようす。
今日の結果は今日の結果でしかない。

西沢リベンジ

彩甲斐公園

山梨市三富川浦、笛吹川上流西沢の堤体にチャレンジしたのはおよそ4ヶ月前のこと。(山のタコ焼き屋

当日は堤体を湛水する水が太陽光によって照らされるという、視覚上の特長に触れながら日没前ゲームをおこなった。

堤体の方角と時間ごとの太陽。両者の位置関係を考えながら、計画的に歩いて現場に立つことが出来たことにより、魅力的な状態にある堤体に接することができた。

堤体の見た目。ということに関しては、少ない時間ではあったが満喫できたと思う。

では今回は、さらに響きの面について楽しむことが出来るよう挑んでみたい。

前回上手くいかなかったことについてのリベンジ砂防ダム行脚となる。

彩甲斐公園の四阿
トチノキ
トチノキの冬芽
肉眼ではうっすらと富士山が。(画像では×だった。)

彩甲斐公園

2月10日、午前8時45分。山梨市牧丘町、彩甲斐公園。

長い階段を登りきり、丘の上にある四阿へ。四阿からは、うっすらと富士山が見える。

雪。

今週月曜日となる2月5日から翌6日にかけて山梨県内では全域で雪が降った。ここはだいぶ日当たりが良いようであるが、ところどころ公園の芝生の上に雪が残っている。

本日入渓する笛吹川上流の西沢は、現在地よりもさらに500メートル以上も標高が高い地点。

雪はさらに深くなるに違いない。

雪見のゲームになることは確かだ。

準備はしてきたつもり。

果たして・・・、どうなるか?

午前9時20分、階段を降りて下にある道の駅「花かげの郷まきおか」へ。

花かげの郷まきおかにて朝食を摂る。さらに昼食用にとパンを購入した。

道の駅「花かげの郷まきおか」
朝食に摂った「山菜そば」
こちらは豚の角煮が入ったちまき
昼食用にパンも購入。

国道140号線

午前10時、トイレを借りたのち車に乗り込む。花かげの郷まきおかを出発し、国道140号線を雁坂トンネル方面へ。

笛吹川の流れに平行する道をひたすら登り続ける。

空は快晴だ。歌うには好都合と言えそうな青空が広がっていて心地よい。空からの光は山の斜面の雪に反射し、山村の風景を照らしている。

除雪されきった、剥き出しになって乾いたアスファルト面をスタッドレスタイヤで吸いつくように登りつづけた。

午前10時半、広瀬ダム・広瀬湖に到着。湖面はやはり数日前に降ったと思われる雪でほぼ全面隙間無く覆われている。

午前11時に西沢渓谷市営駐車場に到着した。

広瀬ダム・広瀬湖
しっかり除雪された道を行く。
「道の駅みとみ」前もこのとおり。
日かげは雪が溶けにくい。油断せず。

2つのアイテム

午前11時、車から降りて入渓の準備。

本日は、雪の日仕様ということで2つのアイテムを用意した。

まず、1つ目は貼るカイロ。貼るカイロの使用箇所は足の甲。足の甲側から足を温めるため、これを靴下に貼り付けた。

2つ目は、サングラス。

眩しさを軽減するアイテムである。

歌うという行為について、集中力をもって取り組みたいというのは毎回の願いだ。過去の経験からすれば、集中力を失うことの最大要因は明るい場所に立つこと。

屋外という環境下、しかし案外暗いところというのは見つかるもので、日常的にはそういった場所を立ち位置にしながら歌うことに取り組んでいる。

しかし、今回の場合は季節が冬で、落葉樹の葉がすべて散って失われてしまっていること。また、地面や堤体本体に降り積もった雪の影響で、堤体前がかなり明るくなってしまっていることが予想される。問題の解決策として、歌い手側から直接、視覚上の刺激を軽減させてしまおうということでサングラスを用意した。

ほか、ウエーダー、レインジャケット、フローティングベスト、ヘルメットなどの装備はいつも通り。

スタート時の気温は9度ほど。とりあえずは堤体前で歌うときの装いで。取りも直さず静止状態と同じ格好で歩き始めることとした。もし、途中で暑くなってしまったら歩くことを一旦ストップして、レインジャケットの中に着ている長袖シャツやフリースを脱ぐようにしたい。せっかく苦労して堤体前にたどり着いた折、大汗で濡れた着衣によって直ちに撤収ということになれば全てが水の泡だ。

快晴の空の下スタート。
貼るカイロの使用例。
これで雪からの冷えも怖くない。
サングラス

歩きをスタート

午前11時15分、西沢渓谷市営駐車場から歩きをスタート。

不動小屋前の道路は除雪されていた。さて、これはどうしたものかと疑問に思いつつ雪が除けられている道を歩いていると、西沢渓谷散策路入り口のゲート手前にて工事看板を発見。

工事看板の内容を見れば、散策路の奥にある橋を工事中だという。

業者の車両出入りがあるがゆえの、除雪であることを解した。また、本日これから歩くルートに工事中の橋が関与していないことも確認。ホッと胸をなでおろす。

散策路入り口のゲートを越え、なおも除雪された道を歩く。

午前11時55分に前回と同じ入渓点「ヌク沢」に到着。

およそ20メートルほどの高低差を降りてゆく。斜面の吹き溜まりに積もった雪は深さ30センチほど。うち上から20センチくらいは歩を進めるごとに足が潜って固定される。

登山用ポールの補助も得ながら、一歩一歩確実に足を潜らせながら斜面を降りきった。

ヌク沢に降りるとそのまま沢に立ち込み、下流側へ。

散策路入り口のゲートを越えたあたり
途中からは非除雪路に。
ヌク沢に向かって斜面を降りる。
ヌク沢。そのまま沢に立ち込み、下流側へ。

川の中を歩く

正午、ヌク沢、笛吹川の出合に到着。

立ち込みを続ける。

カラリと透き通った水の底に敷き詰められた川石。足を乗せてもいいものか、よく確認しながら歩を進める。

下の状態が一目瞭然で把握できるのは、川の中を歩いているとき。川の流路が蛇行しているような場所では川岸を横断し、最短ルートを踏むのが早いが、なにせ下がどうなっているのかわからない。

雪に埋もれたその下にある川石が安定しているのか、安定していないのか?

水の中も同様に、安定しているのかどうか?完全に掌握することは出来ないものの、石がどういう風に置かれているかとか、どのくらいの大きさの石であるとか、雪の積もった川岸よりもはるか多くのことを目で情報収集することができる。

源頭は2000メートルを超える山々からの豊富な雪代(雪解け水)。その分厚い流れに逆らって歩くのは気怠いことではあるが、今できる最も安全な渓行の方法はコレだと判断し川の中を歩いた。

午後12時半、東沢と西沢の合流点へ。西沢を選択し、直後に目的の堤体前にたどり着くことができた。

ヌク沢、笛吹川の出合
出合から笛吹川の上流側
雪の下がどうなっているのかがわからない。
鶏冠山
目的の堤体に到着。

瀬のノイズが強く

水は前回来たときよりも幾分減じている。

落水の幅も2割程度細くなったように感じる。スリムになった分、縦に長くなったように感じられるのがおもしろい。(もちろんこれは目の錯覚である。)

堤体より下流部の流れが左岸側に偏っているのは前回来たときと同じ。大小の石が混じって形成された段差が何段にも連なって瀬を形成している。そしてこの瀬がかなり騒がしい。

瀬が形成されている左岸側に対し、右岸側は雪の積もった川岸。

タテ、ヨコともに広い川岸に立ち入ることで、瀬の発するノイズからある程度逃れることは可能。しかし、やはりこの川岸地帯にはあまり立ち入りたくない。

騒がしい瀬の中から、少しでも静かなところを見つけて立ち位置とすることにした。

風速計
方位(再掲)
銘板
距離は55ヤード。

リベンジの結果は・・・、

堤体から55ヤード。瀬のノイズは弱めで、ちょうどバッコヤナギの木が倒れかかるように生えていたのでその下に入った。

葉の散った落葉樹であるが、なにも無いよりはマシであろう。ヤマブドウのつるが絡んでいて、枝の密度が濃い。少しでも暗いところに立ちたいので、このようなところは好都合だ。

自作メガホンをセットし声を入れてみる。

鳴らない。

銘板によれば、堤長は65メートル。目の錯覚でスリムに見えている堤体も、現実はかなり横幅が広い。

右岸の斜面が遠い・・・。

右岸の斜面が遠くて、渓畔林も遠くて、そこまで声を持って行くことが出来ていない。

そして右岸に声が届いていないからか?左岸側まで鳴っていないように感じる。

横幅広い空間のなかで、堤体のノイズが元気に鳴っているような状況。そこに何のあてもなくフラフラと声を入れていっても、全てが飲み込まれてしまう。響かせるためには、木でも土カベでもコンクリート壁でも、とにかく何でもいいから物理的に引っかかるモノの存在がほしいところだ。

何度も、声を入れることを試みる。

堤体前は無風という点からもタフコンディションであることがわかる。

過酷な環境下、頭上を覆った木々のおかげもあってか?歌には集中できていた。(持ってきたサングラスは試してみたけど、あまり好まなかったのですぐに外した。)

やはり「寒い」ということは、歌うという行為にとってプラスに働いている。

しかし。

足が冷えてしまった。

測ってみれば水温は1.2度。

貼るカイロの効果もあって、ここまで頑張ってこられたが、急激に足まわりが冷えてきた。さらに快晴だった空も曇りがちになってきた。腕時計の時刻を見れば午後3時。無念であるが、ここで歌をやめて引き返すことにした。

西沢リベンジは、

失敗。

メガホンをバッグに収納し、背中に背負う。

依然として鳴り続けている西沢の堤体に見送られながら堤体前をあとにした。

やはり立ち入らず。
瀬はノイズが強く。
バッコヤナギの木の下へ。
立ち位置から見た堤体
銘板の数字を見て、堤長の長さを実感した。
鳴らない。
水の冷たさにも敵わなかった。
負けたけど、いい戦いができた。

赤に包まれて歌う

道の駅伊豆月ヶ瀬の芝生広場

土肥で桜が咲いた。その一報を受けたのは、昨年末の大晦日のこと。

年も明け、さらにおよそ3週間経って日付は1月20日。いよいよ土肥桜まつりが開幕となった。

開幕初日となる20日(土曜日)翌21日(日曜日)は残念ながら雨天となってしまったが、その翌週となる27日、28日は両日ともに好天に恵まれるという。

そういえば、しばらくご無沙汰であった土地。伊豆市土肥。

せっかくの機会を逃すべからずということで、急遽土肥ゆきを決定した次第である。

道の駅伊豆月ヶ瀬へ

1月28日、午前9時。場所は伊豆市月ヶ瀬。

本日のゲームプランは、土肥山川の本流に入る。設定した時間帯は夕方。時間はまだまだたっぷり余裕がある。

とりあえずは、うまい朝食にありつこうということで「道の駅伊豆月ヶ瀬」へ。オープンと同時に入った建物内。しかし、入ることが許されたのは2階の土産物売り場のスペースだけ。

それより階下おりたところにある、リバーサイドレストラン「月ヶ瀬テラスキッチン」へは、午前10時にならないと入店することが出来ないという。

仕方なく、建物の南側にある芝生広場にて待つこととした。

自販機コーナー横にある屋外階段から下へ降り、芝生広場へ。地図上俯瞰してみれば、伊豆縦貫道、矢熊大橋に覆われているあたりは橋桁の下とそのまわりにテニスコート2面分くらいの広場があり、芝生が張られている。

ベンチを発見!

腰掛けてみた。

おっと。

あまりよく確認してから座らなかったが、これは屋外据え付けのベンチ。

自爆無し。

こういったものに座るときは、ちゃんと雨水や夜露で濡れていないか、確認してから座らなければならない。

心配した・・・。のはそれもそのはず。空はどんよりしている。やや重苦しい雲は、いかにも湿り気を帯びている。予報では今日は晴れときどき曇りとのことだ。

水滴がピシャリピシャリと降ってきた・・・。だが、これはすぐに止んだ。

かすかな不安。

屋外でやるのが砂防ダムの音楽だ。空のご機嫌によって、遊びの内容に変化が生じる不安は常につきまとう。狙い通りの天候に恵まれて、いい思いをするときもあれば、うまくいかなくて下唇を嚙み続け、帰ることもある。

天気に一喜一憂させられる。それが常だ。

今日は、白じゃなくて青がいい。青空の下で歌いたい。

土産物コーナーのようす。
温州ミカン
文旦
さつまいも
アレッタ

いよいよレストランへ

午前10時、テラスキッチンの開店時刻。さきほど降りてきた屋外階段をふたたび登ってから正面玄関に入り、建物内へ。野菜、果物はじめ土産物各種が置いてあるこのフロアが2階。つまり、2階フロアに玄関があるということだ。そして、フロアのおよそ南側、横幅の広い階段をおりると、1階にあるリバーサイドレストラン「月ヶ瀬テラスキッチン」に行くことができる。

ここは狩野川のほとりにほど近い、屋外ウッドデッキに通じるドアもあって外に出ることができる。しかし、いまは冬。川側の側面、ほぼ全面ガラスに覆われた、まるで外とつながっているような広い空間は、全ドアがすべてしっかり閉じられており、風の吹き込む余地はない。完全なる室内は暖房で暖かい。

心地よい河原の風に吹かれるのは、春以降の季節に期待したい。

オーダーは券売機の食券にて。食券購入後、ほどなくして出来上がったのが「しいたけカツカレー」。

カレーがうまい。しいたけもうまい!

午前10時50分、食事を終えると2階の土産物コーナーへ。

お目当ては清森堂の小麦まんじゅう。透明なプラケースに入れられた、こがね色したまん丸団子は3個入り。蓋が開いてしまったら大変だから、テープで縛って持って行く。わざわざテープで縛る手間をもってしてまで行く先はもちろん堤体前。渓行に携えるのはお気に入りの菓子だ。

ほか、昼メシ用に下山養魚場のあまご蒲焼弁当なども購入。食べ物をしっかりと用意することができた。これで安心して船原トンネルを越えることが出来るだろう。

階段を降りて「月ヶ瀬テラスキッチン」へ。
しいたけカツカレー
清森堂の小麦まんじゅうほか
あまご蒲焼弁当ほか
いい買い物ができた。

2つのプラン

午前11時40分、道の駅伊豆月ヶ瀬を出発。

国道136号線、下船原トンネルをくぐり抜け、ニコニコ顔の赤鬼に見送られながら伊豆極楽苑前を通過。さらに高根神社、セブンイレブン、船原館前などを通過。

さて、ここからの行程で用意したのが2パターン。

1つは、船原温泉の日帰り温泉施設「湯治場ほたる」に立ち寄り、温泉入浴と昼食の弁当ほか菓子類をいただくというプラン。日帰り温泉施設に食べ物を持ち込んでいいのか?という疑問には、

なにか食べたいものがあれば必ず持ち込んでください。と、お答えしよう。

ここは、食堂の無い施設。食べ物の持ち込みは公式にOK。お湯を沸かせるポットや電子レンジの備え付けもある。比較的、長い時間滞在する予定があるならば事前にいろいろ買い込んでから入館するようにしたい。

そしてもう1つのプランは、天城ふるさと広場駐車場。

こちらは、湯治場ほたるよりさらに1.5キロ船原トンネル方面に走ったところにある。

なんでもない、ただのちょっと小高い丘の上に作られた、いわゆる「スポーツ公園」のたぐいの施設であるが、広い駐車場があったり、きれいに整美されたトイレや、芝生広場があったりする気持ちのいいところだ。

冬なので車内で過ごすことになるが、人目を気にせず、まったりとした時間を過ごすことが出来るとあって、こちらもかなり魅力的だ。

まぁ、暖かいので・・・、

天城ふるさと広場にしよう。

正午、天城ふるさと広場駐車場へ。

運転席のシートをリクライニングにし、ダラ~ンと腰掛ける。

駐車場のすぐとなりはテニスコート。テニスコートの向こうは野球場。テニスコートは本日一般開放のようで、テニスを楽しむ数名の集まりが1組。

野球場はリトルリーグの試合が行われているようだ。

小中学生の歓声と金属バットの快音を聞きながら微睡みにふける。弁当はちゃんと用意していたけれど、ついさきほど食べたばかりのカレーがまだ胃袋の中で元気なので、遠慮することとした。

車窓のガラス越しに見える空色を気にしながらウトウトする。

天城ふるさと広場駐車場
クスノキの並木道
芝生広場とケヤキ並木
トイレ
トイレットペーパーには野球チームのメッセージが!
空色を気にしながらウトウトした。

土肥山川第3堰堤へ

午後1時15分、ウトウトから起きる。車のエンジンをかけ、天城ふるさと広場駐車場を出発。

小高い丘の坂を下ってふたたび国道136号線に戻り、船原トンネル方面へ曲がる。曲がったところからは、ほとんど上り坂の道を4.9キロほど走って船原トンネルへ。そのまま船原トンネルを抜けると、道はいよいよ伊豆市土肥エリアに入る。

船原トンネルを抜けてからは、およそ5.6キロほどの下り坂。急なところではスピードの出し過ぎに注意しながら進んだ。

午後1時50分、旧国道136号線に移るため右折にて進入。さらに300メートルほど走って昭和橋。昭和橋はわたらずに土肥山川左岸に沿う林道に逸れる。林道に入ってから200メートルで猿橋。猿橋をわたりきり、600メートルすすむと右手側に橋があらわれる。橋の名は萩尾橋。

この萩尾橋が入渓点となるため、車から降りて準備をととのえる。

午後2時50分、土肥山川に入渓。

入渓後は、水苔気味の渓に足を滑らせないようにしながら慎重に遡行。途中、植物を見たり、写真を撮ったりしながら遡行し、通常スピードの倍くらいの時間をかけて歩いた。

午後3時20分、目的の堤体「土肥山川第3堰堤」に到着した。

国道136号線を走っている途中、ワサビ田を発見。
ワサビは花を付けていた。
船原トンネル
昭和橋
猿橋
萩尾橋

見た目から予想すること

水は左右バランス良く湛水している。放水路天端に堆積物があるようで、その区間には水が少ない。代わって堆積物が無いところに避けられた水が集まっていて、それが数本、堤体水裏全体としては湛水する水が縞模様を描くように落ちている。

もしも水の落ち方が右に偏ったり、左に偏ったりすればかなり醜悪な見た目になるところであるが、そういった事態は奇跡的に回避されている。落ちる水は均整がとれていて、集中していない。機能的には、堤体より上流部にある水を数本の筋に分散させて落下しているので、局所的に大きいノイズが発生することを防いでいる。

堤体前の立ち位置は、およそ80ヤードまで設定可能。ここより下流には倒木の根があるため立つことが出来ない。また、大小入り交じりの石が転がる当地は、80ヤード以内の範囲にあっても足場とするには不向きな、立つのには困難な転石がある。立ち位置については一定程度の不便さが有り。

右岸側は上り下り不能な急崖。左岸側は作業道一本隔ててヒノキ林。両岸の不均一さがきわめて顕著であるため、音は左右で異なって響くことが見た目より予想される。

以下、入渓時以降のようす。こちらは入渓点付近。
橋をくぐる
巨石に掴まりながら歩く。
あと少し・・・。
堤体前着。(午後3時20分頃。)

土肥山川第3堰堤(響き編)

午後3時半、堤体水裏を太陽が直接照らしている状態がクリアされたため、メガホンをセットし声を入れてみる。

声は響いている。

しかし、無風という条件であるせいか、堤体の堤高が高すぎるせいか、音の響いている範囲があまり広く感じられない。

左右両岸に展開する樹木の反響板効果は「いかにも。」といった感じであるが、その樹木で構成される林の中には、音が深く入り込んでいくような感覚が得られない。

まるで巨大な段ボールの箱に囲われて、その底面から一生懸命、箱の内側壁面に向かって声を入れているかのようだ。

たしかに響きは得られていることがわかる。しかしながら、その質においてはイマイチ物足りない気がする。

銘板
風は無風。
北東方向。
堤高が高めなのでやや離れた。

土肥山川第3堰堤(視覚編)

視覚の面においては、かなり魅力的な堤体であった。

当日、午後3時半に歌い始めてすぐに空が青を失った。(当日、午後3時半に歌い始めてすぐに空が“青色を”失った。)

青に変わって空に現れたのは白。

雲の影響である。天候面で朝から心配していた雲だ。

雲によって上から白く照らされることで、歌に入り込む集中力を失ってしまうのでは?というネガティブな思考が一瞬脳裏をよぎる。しかし、その思いはすぐに非現実であるということを知る。

河床に転がる大小の川石たち。

目の前に転がる川石は、どれもが赤錆びを乗せていて、その赤錆びの赤は堤体前の景色を一変させている。

夕刻、青色を失った空は白色に落ちたが、その白い光が河床に転がる赤錆びの乗った川石に降り注ぐ。降り注いだ光は白から赤へとって代わり、たちまち堤体前の空間を赤く染め上げてしまった。

唖然とするまでに見事に赤く染まり上がった堤体前。

さらに、冬季であるがゆえに草本類や落葉樹は緑色を無くしている。堤体前の赤に対してこれらは色彩面で反発しない。むしろ、枯れたススキの穂や、樹木の幹枝の肌色は赤色に対して加勢しており、赤に合わさってこちらも視覚に訴えてくる。

数多の赤に包まれる。

これはかつて無い体験。

また、かつて無い体験とともに得られたのは歌うことに対する集中力。

この場所に来る前には、悲観的な予想を持っていた。頭上に広く開けた空間から差し込む光。(特に白く、突き刺すような光。)その光によって、歌に対する集中力を大きく失ってしまうのではないかという予想。

しかし悲観的な予想を見事に裏切ったのは、他ならぬ土肥山川が持っている自然環境そのものであった。

結局、この日は午後5時過ぎ、宵を迎えるまで、堤体前の「赤」が確認できなくなる頃まで過ごした。

突如としてあらわれた、フィールドでの新たな発見。

環境に助けられて今日もいいゲームができた。

来てよかった!

1月28日、土肥山川にて。赤に包まれて歌う。

空が青を失った。
だが、
この日、
見事に赤く染まり上がった堤体前。
そして新たな発見。
集中力。
全ては赤錆びの乗った川石によってもたらされた。








おまけ。

土肥桜のライトアップ①
土肥桜のライトアップ②
土肥桜のライトアップ③
土肥桜のライトアップ④
土肥桜のライトアップ⑤

大好き河津町!vol.21

河津バガテル公園

2024年1月1日、午前6時45分。河津バガテル公園。

整った直線やカーブに区切られた散策路の上を歩いて、海が見える丘へ向かう。

もう周囲はすっかり明るくなっていて、視界は確保されている。

あまりゆっくり歩いていられるほどの時間も無く、視線の先にいる人たちの列をなるべく早くにと目指しているのであるが、それでも気になるのが庭園内に植えられたバラの株の数々。

もう、赤とかピンクとか白とかはっきりと色がわかるほどに明るいのだ。

花が・・・。と思いつつも、あと数分で昇りはじめるであろう初日のことが気になって、足を止めることが出来ない。

人々の列を目指して歩くその気持ちが、自身で蹴っている地面の砂利の音からも分かる。

少しあせっている。

ようやく到着。

海が見える丘にたどり着くと、ほどなくして初日はあらわれた。

すると、あっという間に昇った初日。

その丸が完全に現れたことを確認したのち、オランジェリーに向かった。地面の砂利を再び蹴りながら、花をつけたバラのことを気にしながら、立ち止まることもなく淡々と歩む。

オランジェリーにたどり着くと、白い外壁が初日に染まっていたのでカメラに収めた。また、館内でも数枚、写真を撮った。

初日に踊らされているようだった。

オランジェリー内
初日に染まるオランジェリー
窓から。
海が見える丘から。

平滑の滝下に向かう。

午前7時05分。河津バガテル公園駐車場。

本日の予定は午前中のゲーム。堤体は平滑の滝下。

バガテル公園駐車場を出車し、まずは河津町の右岸道路まで坂を降りる。

「元祖天城そば美よし」の看板を見たら左折。峰温泉の旅館街を抜け、そのままエネオス、コメリまえを通過。峰大橋もわたって河津町下佐ヶ野へ。

下佐ヶ野ではセブンイレブンに立ち寄って、水、パン、菓子類などを買った。

午前7時25分、セブンイレブンの駐車場を出発。国道414号線を走る。

湯ヶ野温泉、慈眼院まえ、奥原入り口、ループ橋などを通過し、天城七滝遊歩道上入口バス停まえ(ループ橋から1.3キロほど)にて右折。林道に入る。

(以降、グーグルマップに記載ない区間。)林道に入ってからは道なりに北上し、鋼鉄製のゲートまですすむ。ゲート前には車2台ほどの駐車スペース。

駐車スペースに車を置いた。

午前7時50分、車から降り、入渓の準備。

足元はウエーダー、上半身には風を通さないレインジャケット、レインジャケットの上にフローティングベスト。頭にはヘルメットをかぶり、メガホンの入ったバッグを背負った。そのほか、手にはネオプレーン製の手袋をはめ、片手には登山用のポールを1本にぎる。

午前7時55分、河津川の右岸に延びるハイキングコースに沿うため、丸太階段から歩きをスタート。

ものの5分ほど歩けば、谷に架かる赤い橋が現れる。この赤い橋、上を渡るのではなく山側より谷側に向かってくぐり抜ける。くぐり抜けたら、そのまま河津川に向かって斜面を降りる。

斜面を降りきったあたりで河津川の上流を見る。すると平滑の滝下(河津本谷第2号コンクリートえん堤)を確認することが出来る。

丸太階段からスタート。
赤い橋。
赤い橋をくぐる。
河津川に向かって降りる。
堤体発見!気持ちが高ぶる。

追い求める価値

午前8時05分、平滑の滝下。

水は暴れすぎるで無く、少なすぎるで無く、ちょうど良い感じで落ちている。

実は、前日の大晦日に、静岡県は雨が降った。年の瀬の晴天続きに、伊豆半島各河川の水量はどこも減水気味であったが、これはまさに恵みの雨となった。

これが無かったら、かなり厳しかったと思う。

水が減れば、響き作りはイージーなものとなる。しかし、ゲームを楽しむためにはイージーすぎる展開はかえって不利益だ。

自然界が発するノイズに対して、人間の声で挑戦している感じがしていないのはいけない。

風を味方につけながら、渓畔林を味方につけながら、道具に頼りながら、音で溢れかえった堤体前において響き作りを行うことに楽しさがあると思うし、響き作りがうまくいかないとき、つまり、堤体の発するノイズに負けるとき。が、あることに価値を感じている。

いっしょうけんめい声を出しているのに全く響かないでは楽しくないから、そうはならないようにこの遊びを研究しているところ。であるがしかし、もっと攻略しやすい環境を相手に置き換えるなどして、意図的に駆け引き上の「勝ち」を獲りにいくことも間違っていると思う。

現時は望んでもいない晴天続き&少雨に見舞われている中なので、意図的であるとは言わないが。

常にノイズに対して負けるか勝つか、のところで遊んでいきたい。

つまりのところ、前日の雨降りについては大歓迎であった。ゲームができるだけの範囲の中で、相手が相当強くなる分には全く問題はないのだ。

当日の落水のようす。
堤体は98度。
風は時間の経過とともに、よく吹くように。
遠目からやり始めて、徐々に近づくパターンも。

興味深いこと

午前8時15分、自作メガホンをセットし声を入れてみる。

声は非常によく響いている。

堤体より上流向こうから、ひんやりとした冷気が降りてきていて、つまり空気が動いていることがわかる。声を出しているシチュエーションにあって空気が動いている中では、歌い手にたいして対極的に押し迫ってくる動きの中でも、逆に同極的に歌い手から離れていく動きの中でも、声は不思議とよく響くようになる。

同極的に歌い手から離れていく空気の動き(追い風)はなんとなくわかるとして、対極的に歌い手に押し迫ってくる空気の動き(向かい風)が、響き作りに効果的なことは非常に興味深いことだ。

これは日常生活でもわかるような物理的感覚であろう。声が空気によって押し戻されているのにも関わらず、響いているというのだから面白い。

この日は時間の経過とともに、はじめのころは冷気程度であった風が、のちにはっきりと風速計で計測できるくらいの風に変わり、さらに条件が良くなっていった。

堤体前で過ごしたのは正午ちょっと過ぎまで。

その内、歌っていたのは午前10時頃まで。あとの2時間は堤体前に生えている樹木の観察を行ったり、落ち葉を見て回ったり、川の流れる水をぼんやりと見て過ごした。

前日の雨によって戻った落水とのパワーバランスに関しては、まだちょっともの足りないくらい・・・。なんて思ったのだけれども、これは当日しっかりと堤体前に風が吹いていたという条件つき。

風がピタリと止まっていたら、そうはいかない。苦しんでいたことだろう。水量とか風とか渓畔林とか、いろんなことが複合的に絡み合う中でゲームをしているので、やっていることは単純ではない。

もっともっと、この遊びについて研究を深めていくことが出来そうだ。

さて、今年も健康な体であちこちの堤体に出掛けたい。

皆様におかれましても健康で。それは体のことだけでなく心の面においても。

心身ともに健康でお過ごしください。心がヤバくなったら一度、川に聞いてみるのもいいかもしれません。

今年も一年、健康に。ますますのご活躍をお祈り申し上げます。国を盛り上げていきましょう!

2024年初日。風吹く幸運とともに。
午後は再びバガテル公園へ。
フランス広場
運良く残っていたのは秋バラたち。
ジャンメルモ
ゴールドケレ
アリッサム。
ビオラ。
ビオラの黄色。
午後はゆったりとした時間を過ごした。

2023年最後のゲーム

修善寺梅林

2023年、12月29日。歌い納めの地として選んだのは修善寺。

修善寺温泉街、五葉館まえの坂道を上がっていき修善寺梅林駐車場についたのは午前10時のこと。

駐車場から歩いて梅林に向かう。

百花の魁。

ウメは一番最初に咲く花らしい。

一番最初に咲くと聞いては、縁起がよい。

本格的な遊宴は、まだ2ヶ月も先のことだが、果たして?伊豆半島は冬の季節にも異常に緩む日があるのだから期待が持てる。そして、競合のサクラに関してはすでに半島のあちこちから発見の報が届いている。こちらにもきっとチャンスはあるだろう。

年明け前の初花探し。

暖かさにいち早く反応した木を見つけ出して、楽しませてもらおう。一年の締めくくりとして。

梅林内にある四阿

静かな場所

午前10時すぎ、梅林駐車場より500メートルの移動にて梅林に到着。

すでに日は高い。枝だけ裸になったウメの木々を太陽の直射が照らしている。

さっそく花を探す。と、難無く見つけることに成功したのはウメのつぼみ。視界に溢れるウメの枝の混雑のなかに、紅や白の玉が散乱している。

ゴツゴツとしたウメの枝とは対照的なつぼみの玉。花といういちばん華やかな姿にはならないが、色という地点にはもうすでに行きついていて、十分に存在感を示している。

今この瞬間に見られるつぼみの色の美しさと、これから迎える絶頂への期待感。これはある意味、無敵ですらある。

人間に例えれば、明るい未来を抱えた学生くらいの頃か?

自分自身もそうでありたいと思う。今年も来年も。

ふと、上を見上げた。

先ほどから、鳥が鳴いている。したがって、無音では無い。

無音では無いけれども、ここは本当に静かだ。

そういえばたしか、あれはコゲラという鳥だ。

コゲラが鳴くだけ。あとは時折、上空のもの凄く高くを飛行機が走る音がする。

師走の空は地上に同じく忙しいのだろうか?

ここに来るのだったら、対照的に静かだ。目に見るもの、耳で聞くもの。肌感覚的にも今日は暖かい。

腹が減ってきた。温泉街まで降りよう。

つぼみ。紅色の玉。
つぼみ。白色の玉。
本命もあるにはあったが、あっち向いてホイ状態であった。
コゲラ
梅林はトイレ併設で安心。
ベンチもある。
静かな空間で過ごすことが出来る。

隠れる

午前11時半、修善寺梅林のうち東側にあたる東梅林より温泉街に歩いて向かう。スギの木立の下に引かれた、温泉街へとつづく道を下ってゆく。

およそ15分ほどの歩きで安達氏の墓。さらに静岡県道18号線のガードをくぐってから民家地帯の坂道を下っていき、10分ほどで温泉街へ。温泉街の道に出たら東に少し歩いて、場所は新井旅館の向かい、甘泉楼。

甘泉楼の「伊豆十三夜」にて十三夜焼きを四つ購入。二つはたった今、昼ご飯がわりに食べる用で、もう二つは入渓時に携えるためのものだ。

店で商品を受け取ったのち、店の横をチョロチョロ流れている「猿の手湯」へ。ここでしっかり手を洗う。手を洗い終えたら、とりあえずまた来た道をもどる。

そして、おあつらえ向きな路地を見つけたら、隠れる。

しっかり隠れられたことを確認したのち、十三夜焼きの入った袋を開ける。

隠れて食べる。十三夜焼きは。隠れて食べなきゃいけないのは、食べ方がちょっと特殊だから。普通に食べるなら店先にあるベンチで食べれば良い。

と、いうわけでおすすめのちょい足しをご紹介。画像は小倉でやっているのだけれど、アップルジャムカスタード入りでやったのはさらに美味かった。

スギの林間を抜け、温泉街に向かう。
転ばぬよう注意。
甘泉楼
おすすめのちょい足しをご紹介。
コレを家から持って行く。
隠れて食べる。決して見つかってはいけない。

水系を同じにする川

午後1時、梅林駐車場に戻ってきたのち、車に乗り込む。

本日、入渓するのは湯舟川。道は単純で戸田峠に向かって西進してから、広域基幹林道達磨山線を南進するルート。

戸田峠に向かう道では、「修善寺虹の郷」・「伊豆国際カントリークラブ」前を通過。梅林駐車場より4.9キロ走って「広域基幹林道達磨山線」入り口。ここから、南進してちょうど1キロ、三ツ石橋にて車を停車した。

車から降りて、三ツ石橋より北又川の様子をうかがう。北又川は、本日入渓する湯舟川とは下流にて合流する、つまり水系を同じにする川だ。

源頭の違いこそあるが、地理的にも近い本川の水量を参考にしたい。いずれの川についても、ここのところの晴天続きによる極端な減水が心配だ。

三ツ石橋から修善寺川第一堰堤を確認すると、かろうじて湛水している。三本の筋を作って水は極めて静かに落ちている。率直な感想を言えばゲームをするのにこれではノイズが弱すぎる。これぐらいだと、響き作りが簡単に行えてしまい、堤体前で歌う楽しさに物足りなさが生じてくる。

一抹の不安。

再び車に乗り込む。三ツ石橋からさらに3.1キロほど走って湯舟川にかかる「牧場橋」。牧場橋手前の左折路から東へ進入。湯舟川の流れを追いかけるように林道を2.3キロ下ると、入渓点のある「湯舟川ふれあい公園」に到着した。

三ツ石橋にて停車。
川の様子をたしかめる。
当日の修善寺川第一堰堤のようす。
ふれあい公園近くで行われていたシイタケのほだ木取り。

入渓する。

午後2時半、準備をととのえ、湯舟川第6床固工(湯舟川ふれあい公園内)上流のススキの切れ目から入渓する。

入渓点を見るかぎり、水が著しく減水している様子は無い。第6床固工の上流すぐにあるスコリアっぽいナメは、今日も元気に水が流れている。

川の転石は大小入り混じり。堰堤公園が出来るより昔、湯舟川がどんな渓相の川であったのかが知りたくなる。

不思議に思えること。それは当地が、水源である達磨山の山頂から4.0キロと離れない直線距離にあるにもかかわらず、上流域とは思えないほどの川幅を持ってしまっているということだ。

もともとはもっとスリムで、深いエゴを伴うような荒々しい渓であったのでは無いかと想像できる。

これは修善寺という一流温泉地との古くからの関わりのなかで、相当な歳月にかかる河川改修工事が行われてきたのでは?という予想からでもある。

手を入れるならば、最終的には遊べる川になってほしいというのが願いだ。広く一般市民が訪れ、楽しい休日を過ごせるような川であることが望ましい。その場所が大切な遊び場として認識されたときこそ、人は最大の思考と最大の体力をもって真剣に川と接することができるようになると思う。

ススキの切れ目から入渓する。
入渓点から。
堤体着。
修善寺は夕焼けの美しい地域。夕方ゲームを是非!

立ち位置の決め方

午後2時40分、堤体前に到着。堤体名は湯舟川第二堰堤。

水は堤体水裏に薄く、左右バランス良く落ちている。心配された減水も無事クリアしており、ホッと胸をなでおろす。

川は堤体下流およそ40~50ヤードで左岸側に向かってカーブしている。それ以上の遠い距離から声を入れていくのは「ななめ撃ち」であり、響き作りには良くない。

しっかりその範囲内を立ち位置に決め、自作メガホンにて声を入れてみる。

音はかなりしっかり良く鳴っている。

左右両岸は葉を落とした落葉樹の渓畔林。右岸側はそのさらにもう一枚外側にスギ林。堤体本体周辺はイロハモミジが多い。

堤体は副堤一番低いところから主堤の放水路天端まで7~8メートルほど。この高さは前回エピソードにある戸田大川の堤体と同一であるが、今回の湯舟川のほうが断然、音が逃げていく環境にある。(①~④は比較する点。)

①川幅の広さは副堤の着水地点よりさらに広くなっていること。

②①より外側の部分。左右両岸の、かつてワサビ農家の作業スペースとして使われていた部分について渓畔林が刈られていること。

③川幅直近に音を囲い込むような崖が無いこと。(左右両岸側)

④音を囲い込むような崖が無いこと。(堤体本体より上流側)

①~④について、特にこの場所を難所にしているのが①~③に掲げた部分。渓畔林を構成する樹木が左右両岸に見られるものの、それらは川幅直近では無くて一段階スペースを空けて外側に立っている。

堤体前の空間が横にダダ広く、歌い手からの直線距離としても渓畔林が遠くなる。反響板効果を得たいのだから、出来れば渓畔林は左右で近く、コンパクトにあってほしい。

湯舟川第二堰堤の過去のエピソードを見れば、2022年の5月に来ている。そのときは雨後の増水という条件下で歌って、堤体前が鳴らないことをがっかり嘆いていることが読み取れる。

再掲。茶色部分にスペースがある。
こちらも再掲。2022年5月2日撮影。
2023年12月29日撮影。
薄くまとわりつくような湛水が美しい。

なぜ、今日は鳴っているのか?

なぜ、今日は鳴っているのか?と考えれば水量が関連しているのでは。というのが予想。

ここのところの、晴天続きによる減水によってノイズの大きさや数(発生箇所)がかなり少なくなっている。これは堤体本体もそうであるし、それより下流の転石が転がる区間においても同様だ。

ひとつの転石を境にして上流側と下流側で激しく水位が変化するのは、断続的に上流側から水が供給されているとき。

上流側から押し迫って来る水が多ければ水位変化は激しい。逆にそれが無ければ水位変化は乏しい。水位変化に乏しい、つまり水の落下に疎い渓ではノイズは少なめ。水は転石の接地面近くを静かに撫でるように通過するだけだ。

昨年5月のリベンジを達成した。良い意味では。

弱いノイズ相手に圧勝してしまっている。悪い意味では。

難所である。という元々の判断があるので、今回は素直にリベンジを達成した良い日として捉えたい。

夕焼けの美しいフィナーレを待つことも考えたが、今日はこれくらいにしておこうということで早めに退渓することに。

午後4時、下流に向けて歩き始めた。2023年最後のゲームは良い日となった。

ノイズ源。うるさいけれどゲーム性を高める重要要素。
立ち位置はこれくらいが最大。
達磨山から吹き下ろす冷涼な風。
右岸側の針葉樹。歌い手に暗がりをもたらす。
左岸側。奥、クヌギ。手前、コゴメヤナギ。
豊かな渓畔林に音が反響する。
低めの堤体だけれど、高いところを意識して声を入れてゆく。

深海魚を食いに行った話

戸田湾

12月16日、沼津市戸田。

午前10時、食堂のオープンを待つ。

久々の戸田グルメである。期待感に体が前のめりになる。

躯を支えるのは港町の潮風にてやや風化している手すり。風化とはいっても表面がザラついているくらいで、脚はしっかりしている。

しっかりした脚で支えられつつ、静かに待つ。

海も空も穏やかだ。

海についてはこの地が戸田湾という湾内であるというところから。空については、気温の変化に乏しい空・・・。

曇天の。

寒さはあまり感じられない。気温は21.2度もある。
今日は、なのか?今日も、なのか?

まだ冬の季節を迎えるには早いようで、遠く対岸に控える山々の落葉樹は、未だに葉っぱを残してきれいに色付いている。

まさか、この時期に・・・。

砂防ダムを相手に遊びをやっている手前、屋外で過ごす機会に恵まれて、そのなかで想像だにしていなかった自然の変化に遭遇することは間々ある。

肯定的なことも。否定的なことも。

自身の場合は肯定的な場面に遭遇することが多いような気がする。
けっして悪いことばかりでは無いのだから、フィールドに出掛けることがやめられない。12月下旬に紅葉が見られるなんて思ってもみなかった幸運。

このあとに控える厳寒期。しかし、今日は晩秋のゲームが出来そうだ。

暑すぎず。寒すぎず。胃袋も絶好調。

そろそろのれんが掛かる頃だと、店に向けて車を走らせた。

潮風に鍛えられた手すり。
立っているのがしんどい人はコレ。
う~ん。(カメラに罪はない。)
こんどはよく撮れた。
ヤマグワの黄葉

魚重食堂

やってきたのは魚重食堂。

前からいちど来てみたいと思っていた店である。

沼津市戸田は戸田湾、さらに広くは駿河湾、太平洋に接している地域とあって、様々な食に接することが出来る。

飲食店の営業が盛んな地域で、それぞれの店が得意分野を持っている。カニ(タカアシガニ)が得意な店、生の魚が得意な店、揚げ物の魚が得意な店、深海魚が得意な店、加工食品の入った小鉢をたくさん出してくれる店、食べるばかりで無く抜群の眺望が用意されている店。

海産物が苦手だという人も、ステーキやハンバーグを用意してくれる店があるし、中華料理屋もある。

そう考えれば何でもある。

ちなみに、本日たずねる魚重食堂は深海魚料理を得意としている店だ。

時刻は午前11時05分。若干の緊張とともに店ののれんをくぐる。

意外にも先客はおらず、静かな店内に通してもらった。
ほとんど迷うことなく注文したのはゲホウ天丼と銀ザメの刺身。

店の姐さんから水、お茶はセルフだと教えられ、入り口すぐ横にある給茶機より、ちょっとぬるくした煎茶をいれて席にもどる。

席にもどる動線に続くのは後続の客。

店内が賑やかになってきた。次々に埋まってゆく座席を横目に見つつ、料理の出来上がりを待つ。

「ちょっと時間がかかる。」とあらかじめ伝えられたゲホウ天丼を待つあいだ、先に銀ザメの刺身が到着し、続いて後続の客らの料理が先に配膳された。

こちらはさっそく銀ザメの刺身(←これが食べられるのは割とラッキーらしい。)に先に箸をつける。
銀ザメの濃い味に感動しつつ、ゲホウ天丼の出来上がりを待つ。

ようやく、盆に乗った高く掲げられた椀が運ばれてきた。

後続の客らからは、冷やかし半分の喚声が上がるほどに高く掲げられたゲホウ天丼。

早速、頭の部分からいただいてみる。

頭は根魚系の素揚げにほぼ等しい。ほぼ、という程度の違いは根魚のそれよりも骨がだいぶ柔らかいことだ。たとえば同等サイズでカサゴだったら、噛み砕くのに相当な力が必要だと思うが、それよりはかなり容易いと思う。

そして身のほうはというと、淡泊な白身。他魚種との比較は無かったが、臭みも無く食べやすい。

味がしっかりしているあたりは、漁獲から調理されるまでにかかった時間がそれほど長くない証であろう。身焼けなどとは無縁の、新鮮な魚を口にすることが出来てよかった。

ゲホウ天丼
銀ザメの刺身
ミックスフライ定食。(ゲホウ、ギンザメ、オカボッチ)
出す魚は漁獲次第で変わるという。

アカメガシワ

正午。魚重食堂を出て入渓点に向かう。

まずは「戸田三叉路」。戸田三叉路という名の十字路???より東進。道は静岡県道18号線。この静岡県道18号線を3.2キロほど進むと戸田大川に架かる達磨橋。達磨橋はわたらずに戸田大川左岸側の林道に入る。

林道はいってすぐにはシキミ畑。さらに100メートルほどで戸田大川には堤高5メートルほどの堤体。

堤体があるものの、戸田大川の河床より林道のほうがかなり高い位置を走るのため走行に支障はない。但し、堤体の堆積地以降は高木層の木々の樹冠位置が高くなる影響で、道が若干暗くなる。

ツブラジイ、クスノキ、スギといった木々の樹冠が天面を覆うために形成される暗がりに見舞われていたところであったが、ここで新たな発見があった。

暗がりの下で黄色に輝く黄葉。アカメガシワだ。

アカメガシワといえば、荒れ地に生える先駆樹種(パイオニアツリー)の代表格。

この戸田大川の改修工事、もしくは大雨による撹乱によって当地に芽を吹いた一株は、今や大木となり、常緑樹の樹冠の下の暗がりで漏れるように降ってくる天からの光を受け黄色に輝いている。

こちらからは、下から見上げるようにして見ているのでは無く、上から見下ろすようにして見ている。立木相手であろうとも、林道のほうが少し高い位置にあるからだ。

葉裏側のちょっと控えめな黄色では無く、葉表側の鮮烈な黄色。

この一年、港町の潮風に、猛暑に耐え続けた一枚一枚の葉の逞しさ。力強い黄色は平凡ではない環境の中から生み出された賜物か?

想像だにしていなかった美しき自然の変化がまた、ここにあり。

林道を走る。
アカメガシワの黄葉。
しかし幼木は雑草として扱われるから驚きだ。
鮮烈な黄色に目を奪われた。
こちらはイロハモミジ。
晩秋であることは確かだ。

看板が目印

午後12時半、場所は達磨橋から約300メートルほど林道はいったところ。

林道に三叉路があり、近くの道幅広くなったところに車を駐車した。
装備を纏い、入渓へ。入渓は「落石注意」の看板が目印。看板の裏の竹藪から戸田大川に向かって降りていく。

ほどなくして、川に降りることが出来た。

堤体は川に降りてすぐ上流に見ることが出来る。

堤体名は不明。副堤付きの堤体で、その副堤一番低いところから主堤の放水路天端までの高さが7~8メートルほど。袖天端はプラスで2メートル程度。さらに高いところにあるのが林道で、袖天端よりプラス1メートル程度。

したがって、堤体水裏側の河床から林道までの高低差はおよそ10~11メートルほどある。

当日の水量であるが、かなりの減水状態。かろうじて湛水できているほどしか水が流れていない。しかし、前日に雨が降っていることを考えると、これでもラッキーだったのかと思えてくる。

そして水について気になるのが左岸側の水抜き1カ所からの落水。

堤体水表側の堆積地に、水抜きを末端とする流路が出来ており、流れる水の多くが集まってしまっている。

集まった水は堤体水裏側においては下向きに、しかし棒状放水。副堤の水叩きに落水し、特に目立ってノイズを発生させている。

目印となる看板。
堤体全景。
前日には雨が降ったはずだが・・・。
ここだけ存在感が大きい。
荒れるときはそれなりに荒れるらしい。

抱いたイメージ

午後1時、まずは試しに声を入れてみる。

問題は無く。極めてよく響いている。

堤体左岸側の棒状放水の水も特に気にはならない。

ここの堤体前は、音が溜まるような感覚をとくに得られる。

①河床が洗掘作用によってよく掘られていること。

②①に伴って、左右両岸垂直に近い角度で壁状になっていること。

③左岸はとくに高低差が大きく、林道までで10~11メートル。さらに、落石注意の崖上まで含めると河床からの高低差は20メートル以上。

④渓畔林においては高木の常緑樹が目立ち、樹高が20メートルほど。

①~④をまとめれば、下がる(掘られている)ところはとことん下がっているし、高いところにあるものは高いところにあるもので留まっている。

堤体前の縦方向に大きく変化する地形のなかで、その底辺部分から出した声については簡単には失われることがない。音は壁状に囲われた空間の中から逃げていくことが出来ず、徐々に解き放たれていくようなイメージ。

良いイメージを抱きながら遊ぶことが出来た。

久しぶりに来てみた場所であったけれど、なかなかどうして鳴ってくれる堤体前。気温の面でも暑すぎず。寒すぎず。過ごしやすくて午後5時前、夜の帳が下りる寸前まで遊んでから帰ったのであった。

右岸側。(饗の里公園側)
左岸側。(林道側)
林道。左下にあるのが堤体。
壁となる法枠工。中央はハゼノキのなかま。
高木の常緑樹はツブラジイ。
時折いい風が吹いた。
堤体は137度。南東。
立ち位置の自由度は高いので参考までに。
よく鳴ってくれる堤体前だった。

秋のドライブゲーム

伊東マリンタウン

11月19日、午前5時。まだ夜も明けない駐車場から向かうのは、道の駅内にある温泉施設。

伊東マリンタウン朝日の湯。

朝風呂営業も行う同施設は、すでに開店をしているはずだ。

伊東マリンタウンは横長の建物。よく見れば、そのいちばん南側の一角だけはかすかに明かりが点いているのがわかる。

気温は11.2度。

温められた車内から抜け出してきた身には寒いとしか言いようがない。
ただでさえこんな感覚なのにさらに寒さ倍増なのが、風を切り裂いてすすむ早歩き。しかし、この冷たい空気から逃れるためには一刻も早く建物の中に入りたい。

足早に・・・。

ようやく玄関から建物内に入り、下駄箱、券売機、受付へとすすむ。チケットと引き換えに手渡されたのは、借りもののバスタオル。使用後の管理が省略できるとあって、ドライブゲームにはありがたい。

階段を登り、ようやく男性浴場へ。

塩化物・硫酸塩泉の温泉で体の芯から温まる。

湯上がりには食堂のテーブルでモーニング。テーブルのすぐわきには開き戸があり、そこからテラスに出られる。
水平線の遠く向こうに赤く出現したのは、今日のゲームでお世話になる太陽だ。

朝日の湯
朝日の湯(食堂側)
バスタオルはレンタルできる。(画像はプレゼントのタオル。)
テラスからの日の出。
日の出に照らされる伊東マリンタウン。

朝のウォーキング

午前6時40分、駐車場に戻って車に乗り込んだ。

本日、向かうのは伊豆市の菅引川。その菅引川の入渓予定時刻にはまだ早いので、伊東市内を散策することに。

伊東マリンタウンを出て、国道135号線を南進。渚橋てまえの信号交差点を右折する。

午前6時50分、「キネマ通り」アーケード入り口近くのコインパーキングに車を停め、散策をスタート。

東海館、木下杢太郎記念館、ラヴィエ川良、暖香園、ダンコーエンボウル、伊東市中央会館、音無神社、松川遊歩道などを見て回った。

朝の7時台ということもあり、ホテル以外の建物は営業開始前という状態であるが、その外観だけでも見て回る朝のウォーキングが心地よい。太陽はまだ低く、建つ家やビルによって出来た日のあたらないところを歩いていると、ひんやりとした空気が襲ってくる。

うっかり湯冷めして、調子を悪くしてはいけないので、そんなところはちょっと足早に通過し、日なたになった所へ逃げ込む。

歩道の整美された比較的道幅の広くなったところを選んで歩き、コインパーキングへと戻った。

東海館
木下杢太郎記念館
ラヴィエ川良
ダンコーエンボウル
シコンノボタン(音無神社にて。)

ここに来るなら・・・、

午前8時15分、コインパーキングから出庫。いったん国道135号線に出てから「伊東駅入口」信号交差点より静岡県道50号線へ。
JR・伊豆急行伊東駅をチラリと見たのち、「いちょう通り」から静岡県道12号線へ。

伊東市市街地を南下してしばらく走ると「中伊豆BP入口」信号交差点。ここで右折をすれば伊豆市方面であるが、まだ時間に余裕があるため左折し、10分ほど車を走らせて「一碧湖」南東部、観光橋横の駐車場に車を停めた。

車から降りて一碧湖に向かう。
ここは大昔に火山活動(マール)で出来た湖だという。

伊東市の大室山・小室山、両者の中間には(伊東市)吉田という地名があるが、この湖は古くは吉田の大池と呼ばれていたらしい。当地に残る「大池の赤牛」という伝説には、かつてこの湖に住んでいた赤牛によって村人らは幾度にもわたって漕ぐ船にいたずらをされたり、時には襲われたのだという。

・・・。

静まりかえる湖畔。

まぁ、ここに来るなら焼肉屋とか牛丼屋のあとは控えたほうがよいだろう。

一碧湖
ベンチに座って満喫できる。
紅葉にはまだ早かった。
こちらは隣の(水路でつながっている)沼池。
観光橋横の駐車場はトイレもあって安心。

いよいよ伊豆市へ

午前9時15分、観光橋横の駐車場にて車に乗り込み、直後に出発。

来た道を戻るようにして進み、「中伊豆BP入口」信号交差点にて今度は伊豆市方面へ。そして道なりにしばらく走り、現れるのが「冷川トンネル」。この冷川トンネルを抜けたところから北進(静岡県道12号線)→西進(静岡県道12号線)→「八幡東」信号丁字路→南進(静岡県道59号線)の順にすすむ。

静岡県道59号線を南進してゆくと、場所は伊豆市原保(わらぼ)。伊豆市原保にて左手側に現れる「若菜園」という造園店を過ぎて200メートルほど走ると、信号機のない十字路。この十字路を左折し直後にあらわれる「灘隈戸橋」を渡らずに右折。菅引川に沿って道を南進する。

菅引川沿いの風景は、前半が水田地帯を見る農道。後半が林道。ちょうど宿泊施設の「てづか村」を過ぎたあたりで林道の様相を呈す。さらに、てづか村より1.2キロほど進んだあたりが入渓点。いちど離れていた川がふたたび林道に寄り添っていることと、低めの堤体があって堆積地ができて、降り立ちやすいことが入渓点である理由だ。

いよいよ伊豆市へ。
菅引川(灘隈戸橋から)
林道が暗いのは、
こんなにガッツリ落葉樹の葉が残っているから。(ハリギリ)
ムラサキシキブ

強い意志

午前10時半、車から降りて入渓の準備。ウエーダー、フローティングベスト、ヘルメット、手には登山用のポールを1本にぎった。

登山用ポールについては、購入時においては2本セットである。2本セットのうち、1本だけを使用するということだ。

川は今回入渓する菅引川に限らず、どこも大小の石がゴロゴロしている。これが言うまでも無く、固い。
やはり、あってはならないのが渓行中における転倒事故だ。
渓を歩くことに際して、事故を起こさないために気持ちを切らさないようにしたい。

「絶対に転んでなるものか!」という強い気持ち。

強い意志。

精神的なもの。

と・・・、同時に。

万一、転んでしまった時のことを考えておかないといけない。

とっさに手が出せる状態にあるかどうかということ。良くない例としては、両手に何かを持っていて、着地の準備が遅れてしまうことだ。

仮に”絶対に転ぶ”ということが保証されていたとすれば、両手には何も持っていない状態が理想的である。

意図するのは、立位の保持能力を高めるために握った片手だけの登山用ポールと、万一、転んでしまった時のための何も持っていない片手だ。なにも持っていない方の片手は、大きな石や安定した樹木につかまる際にも大変に役に立つ。

菅引川(入渓点にて。)

フライング

午前10時50分、菅引川第二堰堤に到着。
水は目立って増水とも減水とも言えない量で落ちている。
太陽はまだだいぶ右岸側にあり、これから時間が経つにつれ、左岸側に移ってゆくだろう。

堤体に向かって真正面に立ったとき、歌い手、堤体、太陽の三者が一直線のならびになる時をベストタイムとしている自身にとっては、まだ少し時間が早い。しかしながら、まずは試しに・・・、とばかりにメガホンをセットし声を入れてみる。

鳴っているのがよくわかる。

水が主堤の放水路天端より水褥池に向かって落ちている。水褥池より溢れ出た水は副堤の放水路天端を伝って堤体下流側へ落ちている。落ちる水の粒を受けるのは面状になった水のかたまりであり、受ける衝撃によってノイズが発生している。

ノイズは断続的に攻めてきている。

菅引第二堰堤(昭和36年11月竣功)
距離は60.8ヤード。
風は微風。
ほぼ真南だが、若干西向き。
午前11時7分撮影。

堤体を正面に見て

堤体を正面に見て歌い手が立ったとき、その者がノイズを耳に受けるということは不可避であるが、決してその中にあって響き作りが出来ないわけでは無い。

堤体前を吹く風に助けられて、音が遠く離れたり、逆に近づいてきたりする動きの結果を響きとして聞くことが出来る。

実力でいえば歌い手自身の能力100パーセントというわけではない中で、運良く自然環境を味方に付けながら遊びを展開してゆく。
聞くことにも集中しながら、ノイズに紛れて返ってくる自分自身の声を楽しむ遊びだ。

また、ノイズに対して戦っているという感覚を持つことも楽しい。響き作りを邪魔する者がいるなかで、それを克服してゆく。(打ちのめすということだ!)

体を使うだけでなく、頭も使って。敵に対して効果的な戦い方ができた時には、ゲームに対する充実度がさらに増すであろう。

やがて時は過ぎ、堤体に向かって真正面に立ったとき、歌い手、堤体、太陽の三者が一直線のならびになる時刻。この日は午後の12時半のことであった。

さらに30分ほど歌を楽しんで午後1時に退渓。

退渓後は伊豆市のラーメン屋「あまからや」に向かった。

楽しい秋のドライブゲームであった。

以下、5枚の画像は午後12時から午後1時のようす。
日差しの強い日だった。
落葉、常緑ふくめて全体的に葉が多い。
光の明滅差が素晴らしい。
ノイズは永遠と攻めてくる。
退渓後はラーメン屋へ。
「あまからや」のあっさり塩らーめん。