退勤後のゲーム2023

この見慣れた風景ともいったん区切りをつけることに

ホームアシストの皆様へ

大変お世話になりました。日々の業務において皆様のお力添えがあったからこそここまでやってくることが出来ました。今後は、この場で身につけたことを忘れず、砂防ダム音楽家という仕事を大成させられるよう全力を尽くす所存です。誠にありがとうございました。森山



2023年5月。人生の節目。

在籍期間5年1ヵ月という期間をもって、駿東郡清水町のホームセンター「エンチョーホームアシスト」を離れる事になった。

これまで同店舗では園芸用品担当ということで関わってきたが、今般、退職というかたちで職場を離れ、独立して生計を立てていくことに決めた。

心配する声も多くの方から受けたが、チャレンジしたいという気持ちの方が強い。

そもそもの発端は植物を勉強したいという、自分自身の身勝手な希望を受け入れてもらう形で実現したホームセンターでの仕事。

砂防ダムの音楽をより楽しむ上で、植物のことを知ることが欠かせない。
植物を学びたいという志望動機を出し、面接を受け、縁あってこの場で働かせてもらうことになったのがおよそ5年前のこと。

川を取り囲むようにして生える木々「渓畔林」は響きの反響板として機能したり、空間に暗がりを作って歌い手のメンタルに作用する働きがある。また、とくに落葉樹の木々は季節による変化があり、夏の非常に旺盛な期間、それを過ぎて秋の紅葉シーズン、冬期の落葉状態の中で感じられる生命感など、その魅力が尽きない。

同様のことは足元を飾る「草本(くさ)」にも言えることで、山行・渓行というものをただの堤体までの移動行為だけにさせず、時には観察の楽しみを与えてくれたり、時にはヤブという形で、行く者の冒険心をくすぐったりしてくれる。

砂防ダム音楽家として遊びを紹介しているわけだが、遊びを研究するというプロセスにおいて、圧倒的に欠かすことのできない植物に関してはこれまでも、そしてこれからも学びを続けていくことになるだろう。

清水町総合運動公園はみどり豊かな公園だ。

引き返すことはしない

つまり今回、恒久的な意味での“退勤”となった。

ゲームのことを書こう。

5月27日、午後5時前、開始は駿東郡清水町のエンチョーホームアシスト。まずは、その正面駐車場に出入りする道路挟んで反対側の清水町総合運動公園に立った。

この日は土曜日。土曜日なのだけれども、いつものごとく賑やかな運動公園。ここは静岡県東部地区最大クラスのショッピングセンター「サントムーン柿田川」至近の公園とあって、いつも賑やかだ。

公園ではたいていサッカーを楽しむ子ども~大人の姿が見られ、また最も多いのが公園をぐるっと一周、ウォーキング・ランニングする人たちの姿だ。

一方、こちらは山登り前の風観測。

公園の北東側にあるトイレの前に立ち、風速計をかざすと風速は最大で3.1メートルほど。およそ1分ほどの計測でこの値であるが、感想としてはもう少し粘って立ち続けることで、さらに数値が上がるのではないかというのが肌感覚だ。

風は西から吹いていて、地面から高く伸びるケヤキやユリノキの樹冠をときおり激しく揺らしている。

平地ではこの風であるが山はどうなのか?

安心することはできない。平地と山で風が異なるなんてことはしょっちゅうで、むしろ正直なところ縁起が悪いくらいだ。お互いが異なっていた。という経験が過去に多いから安心することができない。

しかし行くことはもうとっくに決めている。

決めているのだから、引き返すことはしない。想像を裏切る良き展開に期待し、車に乗り込んだ。

清水町総合運動公園での観測のようす

夕暮れのさわやかさ

午後5時、まずは車で国道1号線まで出て、箱根方面に向かう。

空にはまだ太陽があり、ロードサイドの店の看板を金色に照らしている。

ほぼ毎日のように利用している国道1号線は今日も多くの車で溢れている。土曜日ということもあって、明らかにレジャー目的のバイクツーリングの一団なども見受けられるが、この時間から午後6時~7時にかけては労働者の帰宅ラッシュの時間帯である。

そして眼前に見る夕暮れのさわやかさに反して知るのは様々な思い。

ハンドルを握る人たちの感情は決してポジィティブなものばかりでは無いはずだ。心には喜び、怒り、悲しみなど様々な感情が含まれていて、それが何百、何千、何万とごちゃ混ぜになる舞台、労働者たちの道路、それが国道1号線だ。

仕事をすることは決して容易では無いよなという気持ちが頭をよぎる。

・・・。

ところで我は何なのかと、ふと考える。

これは、退勤後の移動であってすなわち帰宅の動きとも言えるし、これから山に登って堤体に向かってゲームをしてくるという遊びのための動きでもある。

なんとも言えない類いの移動になってしまっているが、逆に幸せなのかなと思う。平穏な心で走り抜けていくことが出来る人間関係、環境に今日一日置かれていたというわけだ。とは言っても・・・、

こんな日ばかりじゃ無いはずだ。

単に運が良かったために手に入れられた平穏と言うこともできる。

怒りや悲しみに苛まれるときがある。

解決方法が求められるときがある。

音楽の力に頼るときがある。

行くところはやはりあの場所・・・。

先を急いだ。

箱根峠

忘れ物に注意する

しばらく山を登り続け、午後5時半に箱根峠を通過。標高846メートルの頂上を過ぎると、今度は車を箱根新道に向け、坂を下り始める。

そして箱根峠からおよそ4キロの道のりで黒岩橋。黒岩橋すぎて直後に現れる下り車線側には見慣れた駐車スペース。

駐車スペースには午後5時40分に到着した。

車から降りて、準備を始める。

急ぐ。

今日このシチュエーションにおいていつもと違うのは、時間的余裕があまり無いことだ。かつては4年ほど前に今回同様、退勤後にこの場所を訪れたことがあったが、その際は“水”を忘れてしまった。同地に来ることばかりに気を取られ、焦って、飲み水の確保を忘れてしまっていたのだ。

もちろんこの周辺には自動販売機などが無い。

その日は結局“川水を飲む”ことで喉の渇きを潤すという対処をした。

もうこんな極めてマヌケなミスはするまい。とは思ったのだが・・・。

なんとその後、またしてもやらかした!のだ。しかも同地で。それでも、その日は昼間だったので、いったん下ってきた坂を再び登り直して芦ノ湖湖畔、元箱根まで行き、自動販売機にて用事を済ませた。

ほかの場所に入るときはこんな事は無いのに。

同地はほとんど信号の無い(周辺では箱根峠の一基のみ。)スイスイ道路にて来ることができる。しかしながら、運転中の考え事のしすぎはどうやらほどほどにしておいたほうが良さそうである。

見慣れた駐車スペース

果たして・・・、

さて、今日はペットボトルに入った水をしっかりドリンクホルダーに差し込み、準備が整った。

肝心要の風は下(駿東郡清水町)よりも弱いようであるが、あまり気にはならない。こうなることは前述のようにある程度予想していたことであるし、なにより日没前のわずかな時間帯に歌えるというワクワク感が勝っていて、むしろどうでもいいぐらいの心緒になっていた。駐車スペースから下へ続く坂を下りる。

堤体前には午後6時に到着。現場は櫛状に落水する須雲川の水と、非常に旺盛な渓畔林のみどりでなんとも美しい。いつの間にか没してしまった太陽の余光はそれらを照らし、まるでみどりのトンネルの中にでもいるようだ。

早速、風速計を取り出して計測すると風は向かい風で1.2メートルほど。これも単なる風では無くて、鞍掛山、大観山といった頂から吹き下ろす冷涼な風だ。

さっそくメガホンをセットし声を入れてみる。

鳴る。

しかもめちゃくちゃ心地よく鳴る!

黒岩橋下流の堤体

予想のつかない場面

流れている水の音と声のボリュームのバランスが良いような気がする。

ここのところの砂防ダム行脚では自作メガホンの改良に重きを置いて堤体を選定していたため、比較的水量の多い、ドカンドカンと水が落ちるようなタイプのところによく出掛けていた。

そういった響かせづらい堤体を敢えて選ぶことで、仮に歌い手が響きづくりにおいて困難なシチュエーションに遭遇した時でも、道具によってその障害をクリアすることが出来るよう、プロトを鍛えるという意味で難所ばかりを選んでいた。

では、今日はなぜここを選んだのか?

今日この堤体を選んだのは単純に移動時間が少なくて済むからという理由からである。退勤後の日没前、わずかな時間のなかで楽しむ場所として、とにかく近場を選んだ。ただし、今日この川がどのような状態であるかといったことは全く予想をしてなくて、歌い手の声量と川のノイズのパワーバランスが極めて理想的な状態にあったのは全くの偶然。まぐれのことだ。

これは退渓後談になるが、自宅に帰って過去の画像と比較してみたところ、昨年の元日にこの場所に来たとき比較で、ほぼ水量に変わりが無いことがわかった。
ちなみに正月の渓と5月下旬の渓で水量がほぼ変わらないというのであれば、現在(5月下旬)の状態が減水気味だという可能性は非常に高い。

こういった全く予想のつかない場面に遭遇することもまたこの音楽の楽しみでもある。

結局、午後7時頃までのたった1時間ほどであったが、日が暮れるまでのあいだ堤体前で歌を楽しんだのだった。

追記

こういった遊びには、日没前のわずかな時間に音楽を楽しむという希少性のほか、前述の解決方法といった機能が(人によっては!)伴うということを付け加えておく。

平穏な心が手に入れられないとき。怒りや悲しみに苛まれるとき。それらの解決方法として、ゲームを利用していくという手がある。憶えのある方はぜひ試されてみてはいかがだろうか?何時でも怒り、悲しみといった感情はその日のうちに忘れ、翌日にはきれいさっぱり、新たな心で仕事が出来るよう準備したいものである。

退勤後のゲームによって多くの方が心身ともに健康になり、仕事で大きく活躍されることを祈っている。

渓畔林はフサザクラ、イロハモミジ、ケヤキ、コナラなど
右岸側のようす
穴からは適度に光が差し込む
昨年の元日の同所
若干、今回の方が多いか?
こちらも昨年元日に取得したデータ
当日の風
堤体までの距離
気持ちのいいゲームであった。

河原小屋沢

まずはテルメいづみ園前からスタート

今回は伊豆市南西部、猫越川支流河原小屋沢でのエピソードを書いてみようと思う。

5月18日、快晴の午前8時。まずは伊豆市湯ヶ島「テルメいづみ園」前にて、猫越川のようすをうかがう。
水量は5月らしくたっぷりと流れているのがわかる。夏モードの渓といったところだ。

川幅は冬の頃より広く、わずかばかりになった左岸のボサには二人ほどの釣り人が見える。振る竿は長く、さてはアマゴをエサで狙っているに違いない。
ゴロゴロと転がる大きな石の下流側には、水の落ち込みによってできた深い淵があり、そんなところにアマゴは着いているのであろう。

身を隠すのはアマゴに同じく人間の側もという関係性で、厚い層の水を隔ててなるべく気配を悟られぬように静かに釣りをしているのがわかる。

そう、静かに・・・、

無風。

今日もまた風が吹いてないではないか!

いづみ園前の二百枚橋は、桁から水面まで10メートルほどはあろうかというちょっと背の高い橋なのであるが、この高い橋の見晴し台の上に立っていて、吹き抜けていく風の存在がまったくといって感じることができない。

目立っておもて側に立ててあるわけでもないが、いづみ園のなんたるかを示した「日帰り温泉」ののぼりも揺れず靡かず。ピタリと止まったままで、まだまだこの時間は開店前ですよとでも言わんばかりの有様だ。

期待して家を出てきたはずであったが、風が吹いていないようであれば状態が良くない。
もう5月も中盤を過ぎて、いよいよ夏シーズンの幕開けに入った。今日はただの平凡な一日にあらず、スタートダッシュを成功させなければならない大切な日である。

なにがなんでも良い印象で終えたい。

ふたたび車に乗り込み上流を目指した。

猫越川。二百枚橋から。
二百枚橋
テルメいづみ園

二百枚橋から

二百枚橋から西へ400メートル。水抜橋を渡って丁字路を左折。それから道なりに2.5キロほど進んで猫越集落最南端の民家を過ぎると、道路はそのまま林間へ。林間入ってすぐのところに通行止めの看板が現れるので、車はその通行止め看板の手前、道幅の広くなったところに駐車した。

車を降りて入渓の準備をする。ウエーダーを履き、上半身にはフローティングベスト、自作メガホンを背負って、手には登山用のポールを握った。

車を駐車したすぐ下の谷には猫越川が流れている。本日入渓したいのは、この猫越川ではなく支流となる河原小屋沢だ。猫越川と河原小屋沢の合流点は現在地よりも下ったところにあるので、まずはいままで車で走ってきた道を戻るようにして進み、150メートルほど行ったところで右に折れる。

折れたすぐ先には「猫越川橋」を見ることが出来るので橋に向かって進む。

堤体までの道順

イロハモミジ

午前9時、猫越川橋をわたる。

相変わらず風が吹いていない。

橋の下からは何本もの木がニョキッと生えていて、それらの木の枝はちょうど橋の欄干の高さまで伸びて、手に取るようにして何の枝かと見て確かめることが出来る。

イロハモミジ、ヤマグワ、ヤマザクラ。橋の上に立つと位置的にはちょっと低くなるイロハモミジの数百の葉は、橋桁にベタベタ絡みつくようにして伸びている。

窮屈そうにに絡みつくその姿はじつに収まりが悪い。今この場所に風でも吹いてくれようものなら、この状況から解放されてユラユラ揺れたり身動きが取れるのであろうが、この無風ではそうもいかない。

次の風が来るまで辛抱だ。

橋を渡りきると道はS字カーブになる。このS字カーブを抜けるといよいよ河原小屋沢の谷の林道となる。林道にはちゃんと名前が付いていて「猫越支線林道」の看板を見つけることが出来る。

しばらく歩き、猫越川橋を渡ってからちょうど15分後の9時15分。目的の堤体に到着した。

猫越川橋その1
猫越川橋その2
猫越川橋その3
S字カーブ付近
猫越支線林道
空は快晴。
猫越支線林道から見た落水

とりあえず歌ってみる

本日入る堤体の名は「洞川No.9玉石コンクリート堰堤」。銘板によれば昭和40年に作られた堤体だという。まずは堆積地に乗って風を計測する。

無念にも風速計が示した値は0.0m/s。

堆積地を離れ、今度は堤体前に向かって慎重に降りる。堤体が美しい。
水は右岸側、左岸側ほぼ均等に湛水で落ちていて、池状になった落下地点には白泡を立てながらきれいに着水している。

さらに堤体前の空間は非常に旺盛な渓畔林に囲まれ、木々の葉が所狭しと付いて太陽の光を受けている。その割合は、上方見上げたときにほぼ全天という評価で、ゲームを行うのには最高の暗がりを形成している。

まぁ、とりあえず・・・。

とりあえずということでメガホンをセットし、声を入れてみる。

洞川NO.9玉石コンクリート堰堤

データ

声を入れてみる。つまり声を「入力」してみる。

声を入力しているという事実に間違いは無い。しかし、不満が残る。問題がある。なにが問題なのか?

問題は「入力」の結果がきちんと帰ってくることも無くどこかで消されてしまっているということだ。
こちらは酔っ払っているわけでは無い。気絶しているわけでも無い。しっかりとした意識の中で確実に声というデータを入力し続けているはず。であるが・・・。

どうやらその入力したデータは、消されに消されて相手に影響を与えることはおろか、ただのそのまま返送さえもしてもらえないという状態になっているのである。

これでは何をしに来ているのかわからないではないか!

過去に経験した甘い思い出が蘇る。甘い思いをしたその日というのは、入力したデータというのがきちんと帰ってきていた。

ドカンドカンと絶え間なく落ち続ける落水相手でも、キリキリになりながら、それでもちゃんと帰ってくるものがあって自分の耳に届いていた。そして、そんな日というものは風速計を取り出して堤体に平行にかざすと、本体の羽根が勢いよくグルグル回っていたような記憶がある。

それではと風速計を取り出す。

・・・、

羽根はピタリと止まったままだ。

羽根はピタリと止まったまま。

出した答えは二つ

結局、正午前までのおよそ2時間、堤体前に立ち続けたが風の到来は無かった。

いったん退渓し、車に戻る。昼食を摂ったあと、考えにふける。一体どのようになれば堤体前で歌ったときに声を響かせられるのかと。
出した答えは二つ。

①風が吹くようになること。

②風が吹かないというコンディションのなかでもきちんと響かせられるメソッドを手に入れること。

①については、過去の甘い思い出からそのように変化することを期待したのだが、ただ、これについては自分自身の力ではどうすることも出来ない。風が吹くかどうかということについては自然が決めることなので、運に身を任せるほかない。

②が問題になってくる。②については考えればどうにか成りそうな気がしてくる。ここでいいアイデアが生まれて来さえすれば、それを使って円満解決で全てハッピーだ。風の無い日だってもう完全に困らなくて済むのである!

・・・。

深く考え込むが・・・。だめだ。

いろいろ考えたら疲れてきた。意識が遠のいていく・・・。

オニグルミ(猫越支線林道にて。)

Im Haine

午睡から覚めた。腕時計を見ると午後の1時40分。ふたたび準備をして猫越川橋に向かう。

!!!

風が吹いているのがわかる。猫越川の谷は間違いなく風が吹いている。

再び猫越川橋をわたる。再びS字カーブを抜けると河原小屋沢の谷へ。ここでも風が感じられた。

午後2時15分、堤体に到着。午後もまた、堆積地で風速を測ってから堤体前に降りる。太陽はもうすでにかなり左岸側に片寄ってしまっていたが、快晴であることは午前中と変わらない。

メガホンをセットし声を入れてみる。

目の前に対峙する堤体の落水は午前中のそれと比べてもほぼ変わっていないことが見てとれる。しかし、連続するノイズ音のなかにあって、わずかに自分自身の声が響いているのがわかる。

歌った曲は、シューベルトのIm Haine D.738。
この曲は、

Sonnestrahlenとか、

Durch die Tannenとか、

フレーズごとに―nenと、韻を踏むところに特徴があるが、まさにこの韻の部分を響きとして聞き取ることが出来る。
フレーズの後半部分が目立って聞き取れるというわけだが、逆に、

Durch dieとか、

Wie sieといったフレーズの前半部分については、午前中同様、うまく聞き取ることが出来ない。

詩の全ての部分を響きとして聞き取ることが出来ないのであるが、そんなことは私は気にしない。落水がドカンドカンと攻めてくるような音環境の中で、音楽をかろうじて形成させるこの遊びが堪らなく好きだ。

例えるなら、ネコとネズミのけんかぐらい違う。

ネズミは自分の体の何倍もあるネコから引っ掻かれ、噛みつかれ、パンチされで一方的な展開の戦いになっているが、そんななかでも自らの誇りと自信にかけて相手に飛びかかり、渾身のひと噛み!反撃に出るのだ。

一つの生命体として、精一杯やる生きざまを見せることに価値がある。

戦っているという感覚で挑めばよい。ドカンドカンと轟き続ける落水ノイズを受けながらも自分自身を表現することに、この音楽の醍醐味はある。

午前、午後くらいでは水量に変化は無い。

退渓

結局、午後4時ごろまでおよそ2時間弱ゲームして退渓することにした。まだまだ日没まで遊べる時間があったが、午後の状況変化の好転という感動体験により、たった2時間でお腹いっぱいになってしまった。

午前と午後、風が吹くか吹かないかで大げさに言えば天国と地獄を味わったわけだが、そんな風に自然の気まぐれでプレーヤーの活動を掻き乱されるのもまた、この音楽の楽しさなのである。

満足感とともに帰路に就いた。

風速計。堆積地にて。
風速計。堤体前にて。
方位は210度。
立ち位置からの距離
渓畔林のようす
全天を覆い尽くすほど葉の割合が高い。
右岸側のヒノキ林。これが響きの手助けとなる。
立ち位置の目印となるリョウブの木
リョウブの葉
立ち位置は堤体に対して直角に交わる位置がよい。

専門用語が無くて困っている。

水量豊富な水が、

専門用語が無くて困っている。

日々、砂防ダムに行ったことを当ブログであったりSNSに記しているが、ときどき自分が見てきたものを伝えるというプロセスにおいて、良い言い回しが無いのかと困ってしまうことがある。

とくに最近困っているのが、とりわけ水量の多い砂防ダムを形容するような言葉について。

水量豊富な水が・・・、とか、

大量の水が・・・、とか、

大水が落ちている・・・、とか。

一応、その状態を言い表すことは出来なくも無いが、もっとサラッと一語で言い表せる専門用語が無いのか?と困ってしまっている。

文節?と言ったか・・・、文章を書くときにその内容を細かく区切っていくと「文」よりは短く、「単語」よりは長い、言葉の区切りがあると中学で習ったような記憶がある。

目の前に見た光景をサラッと言い表したい。

できればそれも文節(しかも上記の3例は文節がそれぞれ2個づつになってしまっている。)より単語であることが望ましい。
とにかく短くシンプルに言い表して簡潔に伝えたいのだ。

「滑沢渓谷」バス停

「滑沢渓谷」バス停

砂防ダム行脚のことを書こう。

4月24日は伊豆市南部の狩野川上流域へ。

スタート地点としたのは東海バス「滑沢渓谷」バス停。バス停は国道414号線下田街道沿いに設置されている。自家用車にて行く場合はバス停すぐのところから横に折れる道があるのでそちらへ。

折れてすぐの地点は広場のようになっており、車を駐車した。

車から降りると渓行の準備をする。ウエーダーにフローティングベスト、手には登山用ポール、自作メガホンを携えてスタートした。

本日入る「本谷第2砂防ダム」であるが、現在地よりも北側にある。狩野川(本谷川)はちょうど現在地の広場とそれより北側にある「道の駅天城越え」に沿うような形で流れているが、本谷第2砂防ダムはちょうど両者の中間ほどの地点にある。

南側、つまり上流側から入って堆積地を歩き、堤体横を降りて下流側に立つというのが今回の順路だ。

広場のようす。車は向かって左側に停めた。
右側に停めないのは、突然作業が始まってしまっては大変だからだ。
バス停のあたりからスタートし、いったん南下する。

堆積地を歩く

午前9時、まずは観光客向けの車道でもある滑沢林道に沿っていったん南下し、入沢橋を渡る。渡って正面に現れる井上靖文学碑まえの丁字路を右に折れて、北上をはじめる。

ほどなくして現れる「滑沢橋」を渡り、直後「太郎杉」方向に向かうヘアピンカーブがあるので、そちらを逸れて狩野川に降りるスロープより入渓する。

スロープを完全に降りきると川はすでに堆積地の様相になる。石はせいぜい野球ボールからサッカーボールほどの大きさしか無く、ある程度そろっているのは通常の渓流区間とは異なるものだ。

こういった堆積地は長いところでは100メートル以上にもなるので、堤体探しをしている時のヒントになる。グーグルマップの航空写真では堆積地を先に見つけることで堤体があるかどうかの可能性を知ることが出来るからだ。

今回歩くことになった本谷第2砂防ダムの堆積地も南北に直線的で縦幅、横幅ともに広い。(伊豆半島の他河川比較。)さらに川の両サイドは入渓点にするには不都合なほどに切り立っていて、長く続いている。

角型の雨どい状に・・・、というより男性諸君であれば、「ミニ四駆のコースみたいだ。」といえばおわかりいただけるであろうか?

このミニ四駆のコースのようになった区間を風が吹き抜ける。川が蛇行したり、大きな石や木々が空間を遮るような渓と違って、ここはきわめて抵抗フリーに風が吹き抜ける。また、そんな日であることが理想的だ。

もちろん理由としては、吹き抜けた風が堤体下流側に立った時、音楽に好影響を及ぼすからである。

入沢橋
入沢橋から上流方向を臨む。
狩野川に降りるスロープ(坂)
下流側に向かって歩く。
直線的な堆積地
堆積地のサイドは崖状になっている。

冒頭の件

午前10時20分、堤体前(堤体下流側)に到着。

・・・。

話はここで冒頭の件に移る。水がドカンドカンと大量に落ちているのだがこれをうまく形容する単語が無い。

目の前に見た光景をサラッと言い表したいのだが・・・。

水量豊富な水が落ちている。。。

専門用語が無いことから生じる煩わしさ反面、初心者と経験者のあいだに無意味な隔たりを生みださないことは好意的とも・・・、

とれなくも無い?!

立ち位置を決め、赤外線距離計を使って堤体との距離をはかる。

71.6ヤード。

近すぎず、遠すぎず、これくらいがよいであろう。

堤体前に到着。
銘板
距離計が示す値は71.6ヤード。
持っている風速計では0.1メートルほどの微風は計測不能。
196度。南南西だ。
右岸側。微風を受けフサザクラがユラユラゆれている。
立ち位置後方には岩山がひとつ。
エゴノキの大木

1階フロアだけ

自作メガホンを組み立て、声を入れてみる。

予想通りの鳴りの悪さ・・・。

音が鳴りにくい環境であることはある程度予想していた。堤体前を吹き抜ける風が弱いことが気になる。
まったくの無風ではないものの、風速計で測ることの出来る数値の下限限界を超えるような微風であることが惜しい。

そしてこの微風については、どうやら発生源は堤体を落ちる水にあるようで、ならば非常に狭い範囲で吹いている風だ。

堤体横を降りてくる前に堆積地で風速を測ってきたが、そのときは無風であった。現在もきっと無風であろう。
こちらを建物の1階、堆積地を2階とすれば2階は無風。1階フロアだけ弱い弱い微風が吹いているような状況だ。

堆積地での風観測。
石の温度を測る。(堆積地にて)
水温を測る。(堆積地にて)
吹いている風のイメージ

今日は曇天

さらに、気になることがもう一つ。今日は曇天だ。

コンパスによる計測で水表側が南南西となる本谷第2砂防ダムはほぼ正午ころに歌い手、堤体、太陽が一直線上になる。
そのため、この日の砂防ダム行脚も堤体前に立つのが正午前後になるように計画し、実行した。

時間に気を使って予定を立てたつもりでいたが、結局はお目当ての太陽が出ておらず、全くもって無意味になってしまっている。

太陽光とその光を受けて輝く放水路天端。反して影で暗くなる堤体水裏と渓畔林の下。両者のメリハリついた明滅差が恋しい。

結局、2時間ほど風を待ちつつ歌ってみたり休んでみたりしたが、風のことについても太陽のことについても状況が好転することは無かった。

午後12時半、いったん退渓をする。

昼過ぎは天城グリーンガーデンに立ち寄った。
アマギシャクナゲ
ツクシシャクナゲ(筑紫石楠花)
少しであるがアマギツツジも。
こちらはサツキのなかま?

日没前に再チャレンジ

午後4時、状況の変化に期待し再度、本谷第2砂防ダムを目指した。風は相変わらずほとんど吹いていない状況であるが、果たしてここからの好転はあるのか?

堤体前には午後5時前に到着。風は相変わらず弱い微風にとどまっている。

再び自作メガホンをセットし声を入れてみる。

状況変わらず・・・。

自身の口から放たれた声は空気に押してもらえることも、引っ張ってもらえることも無くただただ水量豊富な落水の中に飲み込まれていくのであった。

たしかに空気は動いている。しかしながら、その押しや引きの強さ、質においては理想的と言える状況には無いようで、音楽を楽しむには至らなかった。

結局、日没まで粘ってゲームセット。

恒常的にいい状態でやらせてもらえないのがこの遊びの特徴でもあるのだが、今日もまた運には恵まれなかったのであった。

重い足どりで堆積地を歩き、帰路に就いた。

状況の好転に期待したのだが・・・。



長野第6砂防ダム

長野川に入渓した。

3月20日。春分の日の前日となるこの日は伊豆市南部を流れる長野川へ。

午前10時、まずは長野第3砂防ダムよこの駐車スペースに車を停める。車から降りると第3砂防ダムの落水の音が聞こえる。静岡県東部地区は二日前に雨が降ったはずだが荒れている様子は無い。

すぐさまウエーダーとフローティングベストを纏い、第3砂防ダムの堆積地から入渓する。本日目指すのはこのさらに上流にある堤体「長野第6砂防ダム」だ。

入渓点付近の様子

水に恵まれた地域

気温は15度ほど。きびしい寒さももうすっかりどこかへ言ってしまい、春の陽気だ。

ところで長野川流域といえば下流部は稲作地帯、上流部はワサビ田地帯と農業の盛んな地域である。

今、歩いている第3砂防ダムと第6砂防ダムの区間はちょうどその境界区域といってもいい区間で、第3砂防ダムより下流は稲作地帯、第6砂防ダムより上流はワサビ田地帯といった使い分けが行われている。そして、いずれの作物も、長野川より引いた川水を利用して生産されている。

水に恵まれた地域。

第6砂防ダムより上流におけるワサビ生産が、長野川の大変豊かな水によってもたらされているということは、この区間を歩いてみれば明らかなことで、とくに同長野川第6砂防ダムの落水は圧巻だ。

冬場、同じ水系(狩野川水系)の本谷川、天城大橋より上流域の堤体が水量不足で伏流することがあって、そんなときでも第6砂防ダムはなんのその。常に大量の水を放水路天端から灌水で落としている。

年中豊富な水量で楽しめる堤体は頼もしい。

本日はそんな長野第6砂防ダムに挑む。

銘板

間に合った・・・、

堤体前には午前10時40分に到着した。水量は予想していたとおり、ドカンドカン落ちている。

相変わらずの豊富な水量に一安心。時間的に“間に合った”ことにももうひと安心。

間に合った・・・、とは太陽の位置のこと。

これは個人の好みの問題になるかもしれないが、私の好きな時間帯は堤体の方位と太陽の方位が一直線になるタイミングだ。
長野第6砂防ダムは堤体水表がほぼ真南を向いている。ゆえに、歌い手の立ち位置、堤体、太陽の三者が一直線上に並ぶのはいつも正午前後である。

太陽の光を真正面に見ることは眩しいことではあるが、それ以上に放水路天端上に出来る光の線の美しさに魅了されて、この時間帯を狙って砂防ダム行脚を繰り返している。

そして10時40分の太陽の位置はというとちょうど右岸側袖天端上の空間にあるような状態。これが時間の経過とともにどんどん右上のほうに向かって動いていくはずだ。それを待つあいだ、メガホンを組み立てたり、カメラの三脚を用意すればよい。

運も味方につけた。今日は雲の干渉も無さそうだ。その時を待つ。

待つことおよそ1時間の11時40分、太陽が放水路天端上の真上に来た。放水路天端上を越流する水で出来た線が太陽の光を受けてキラキラと輝いている。

やはりこれが一番美しい。

長野第6砂防ダム。午前10時40分撮影。

新たな発見

さらにこの日は新たな発見があった。

新たな発見とは、この日3月20日の太陽高度であると、立ち位置の選択によっては渓畔林を利用した木陰でのゲームが展開できるということだ。

当日、立ち位置として選んだのは画像にある通り堤体の主堤から70ヤードほどの距離。この位置の頭上には樹高約10メートルほどのウラジロガシの木が生えている。

ウラジロガシといえば常緑のドングリの木であるが、その常緑の葉っぱがうまい具合に太陽光を遮断してくれている。

なるべく暗いところに立つ方がいい(集中力を上げる方法)ということは毎回のように書いているが、それを実現させるのに太陽の位置と一本のウラジロガシの木が絶妙にマッチしているということだ。

堤体本体からドカンドカンと押し寄せる大量の水にメンタルがやられてしまいそうになるかもしれないが、ここはどうにか一本のウラジロガシの木を味方につけて、少しでも深く歌に入り込むように展開できれば、この場所を最大限たのしめるのではないか?

歌う時の集中力を上げる方法はやはりこれ。

最高の時間帯を探し出す

サウンドについては、ほぼ鳴らすことは出来ず。過去にも今日にもやはりここは水量豊富なドカン堤(水量豊富な堤体)にあって、どうにもこうにも対処することは出来なかった。

次回以降の課題を上げるとすれば二点で、

一つ目はとにかく僅かでもいいから鳴らす方法を見つけ出すこと。これから夏季にかけては間違いなく水量が上がるのでさらに厳しい展開になると思うが、それがようやく落ち着いてくる秋~冬、またこの場所に戻ってきてこの豊かな水の落水に勝負を挑んでみたい。

二つ目は「光の量」について。
自分の好きな時間帯は堤体の方位と太陽の方位が一直線になるタイミングだとは前述した通りだが、そういった好き嫌いという感情の面を越えて、最も歌い手として楽しめる時間帯をストレートに探し出す必要性を感じた。

明るいとか、青空だとか統計的にいえば決して間違ってはいない条件で当日は挑んでみたが、歌の持っている世界にしっかり入り込めたかということについてはまだまだ改善の余地があるのでは無いかと感じた。

法則にのっとって決められた無駄の無い入渓をするばかりで無く、そこから外れた実は不明な(ちゃんと試していないという意味で)時間帯についても積極的に入って、試していきたい。

MAX明るい時間帯もある。

MAX暗い時間帯(夜)もある。

両者は照度という数値でつながっている。

ならば、その変化の中で音楽表現に最も適した時間帯を探し出せばいいはずだ。
「最適化」の実現は自然環境が許してくれていないからでは無く、自分自身が探し出せていないから目の前に現れないというのが真実だ。

いつでも探究心を持って。

この場所最高の時間帯を探し出していきたい。

ウラジロガシの木の下に入る。午前11時40分撮影。
方位は185度。
風は微風で好条件。
堤体までの距離。
太陽の位置は時間によって変化する。
ウラジロガシの木の下に入る。別角度から。
これからの時期は渓畔林に恵まれそうだ。
検証のため、日没前にも再入渓してきた。

大好き河津町!vol.20

踊子歩道の丸太打ち階段

2月23日、午前7時。本日は宗太郎林道の駐車スペースからスタートする。
一般車両通行禁止のゲート前、普通乗用車2台ほどが停められるこの駐車スペースに到着したのは午前4時のこと。それから仮眠を取っていた。

車から降りる。

気温は10度ほどある。寒さはあるものの、さほどキツいものでは無い。

ウエーダーを履き、上半身にはフローティングベストを纏った。
中には吸湿発熱のインナーとフリースも着込んだ。

踊子歩道の丸太打ち階段を登る。

丸太打ち階段を上がってすぐのあたり
途中、落石注意箇所あり
橋は渉らずに潜る。

平滑の滝下に向かう。

本日入る現場は平滑の滝下と呼んでいるところだ。正式名は「河津本谷第2号コンクリートえん堤」という。同堤体より上流1キロも無いところに「平滑の滝(ひらなめのたき)」という滝があるため、このように勝手に呼んでいる。

銘板によれば昭和55年建の透過型コンクリート堰堤で、林野庁系の治山ダムである。林野庁系といえばこれがかなり山奥の方にあるかと捉えられそうな所であるが、この平滑の滝下より上流部、※河津川はまだまだ長い。

国道414号線、新天城トンネルを河津町側に抜けると、新寒天橋もしくは「二階滝」バス停付近で河津川を見ることが出来るが、同川はこの付近より北東方向にさらに長くのびており(伏流区間含め)、その発端は賀茂郡東伊豆町との自治体界にまでさかのぼる。

地理院地図によれば、その自治体界境にある山の頂「青スズ台」の標高が1236.1メートル、そこからだいぶ降りて平滑の滝下が約400メートルなので、その標高差はおよそ800メートルもあるということだ。
そしてさらに水源として加わるのが前述の国道414号線より東側に見上げる斜面。その山の頂は「登り尾」といい、こちらは1056.8メートル。

周囲の高い山々によって平滑の滝下は年中つねに水の安定供給を受けている。

※過去エピソード同様、伊豆市を流れる本谷川と区別する意味で河津川としています。正式には本谷川。

銘板

午前中のゲーム

平滑の滝下には丸太打ち階段から20分ほどの歩きで到着した。

水は堤体の表面を薄く覆う程度、白い泡を立てながら放水路天端ほぼ全面より綺麗に落ちている。
これから温かくなるにつれ、水量はさらに増えていく一方、放水路天端を通過する水量は左右で不均一になったり、角度が付いてななめ方向に落水したりすることが経験上わかっている。

このくらいが見ため的にも一番綺麗だ。

そして落水によって生じるノイズも静かすぎず、うるさすぎず。音楽をするにはちょうど良い塩梅である。

直感的に選んだ立ち位置は堤体からおよそ60ヤードの地点。いつもより長めに取った。

風は向かい風で時折3~4メートルほど吹いて、アベレージでは1メートル以下。

メガホンをセットし声を入れてみる。

堤体全景(午前8時撮影)

美しい見ために反して

・・・。響かせ方がわからない。
堤体周辺の美しい見ために反して音楽的に楽しめていない。というか・・・、

そんなのは今日に始まったことでは無い。

というのが事実。
この堤体には初めてきて一目惚れして、しかしうまく響かせられず、だが何度もここに通って来ては歌っている。

いままでは何となくここに来ることそのものに価値のようなものを見いだしてやって来たが、やはり響きのことに関して単独に評価した時、まだまだ真剣みが足りなかったということを自覚する。

さて、どうしたものか・・・?

悩む。

足が冷えてきた。石の上に立って歌っていたが、さきに水に浸かってしまったウエーダーの靴底フェルトが気化熱作用で足先を冷やしてきた。

いったん退渓しよう。

立ち位置より下流側を見る

カンヅメを決め込んで・・・、

午後12時、いったん駐車スペースまで戻って昼食を摂る。昼食は来る途中に笹原のファミリーマートで買ってきておいたものだ。

なんて言ったって今日は2月の下旬。しかも祝日である。
天皇誕生日。
国道414号に出るべきでは無い。出てもいいがこれは確実に・・・、ハマる。

渋滞。

今年の河津桜まつりの入客状況は近年稀に見る活況だ。どうやら感染症の危機意識が本格的に解放されるなか、不安を解消し、心に寄り添うものとして花を見るという行動に出た人が多いようである。

それも日本という国でトップの人気を誇るさくらの花。

さらに静岡県含め、全国の都道府県で行われている旅行支援が3月31日終了であることも大きい。クーポンの使用期限から逆算して旅行先を決めた時、河津桜まつりの(観光地間の)競争力が偶然にも上がったという感じがする。

今頃、田中や笹原では観光客とそれをもてなす河津町民、業者で大盛り上がりのことであろう。

・・・。

閑散とする宗太郎林道。

夕方に備えて寝ることにした。

カンヅメを決め込んで多めに用意。

午後のゲーム

午後3時に起きて再び平滑の滝下へ。

午前中に比べて風が弱くなっている。また、堤体の水裏(下流側)が太陽の直射を受けて光っている。太陽の熱で気流が発生したりすることは音を鳴らす上では好都合だが、見た目が良くない。

そして、堤体をただ眺めるだけならこれでもOKだが、演奏行為に関してより高い集中力を求めている関係上、さらに堤体前は暗く保たれているほうが有利だ。

直射が離れてくれるのをしばし待つ。

午後3時50分。いよいよ、水裏の直射が無くなったところを見計らい声を入れてみる。

午前中同様、鳴らない。

左岸側の崖が気になる。これを意識すれば簡単に事がうまくいきそうに思えるが、そうでも無い。
今度は対岸の右岸側を意識して声を入れてみる。

あぁ。

あの木はイロハモミジか?あぁ、あのイロハモミジの樹冠のもうちょっと下の方かな・・・?

鳴っているのがわかる!!

堤体全景(午後3時36分撮影)
堤体全景(午後3時49分撮影)

来て良かった。

以降、この日は日没まで歌を楽しんだ。というか、

やっとここで楽しむことが出来た・・・。

反省点を上げると、これまで意識していた左岸側はあまり響き作りには向いていないということ。固い固い崖で響きが作れるかな?なんて軽い気持ちで甘く考えていたが、どうやら正解はその対岸の右岸側にあったようである。

崖で響きがカンカン作れるような堤体は他にあるため、この場所もうまくいくかと思って同様に挑んでいたが、そのような先入観は逆に響き作りをダメにしていた。

どうすればうまく響かせられるのかを考える上で、作戦のようなものを立てることは多くの場合に必要なことであるが、それに執着して、深く思い込むほどまでに決めつけるのは音楽を良くない方向に導き、また、可能性を失うということがわかった。

そして、ようやく楽しめるようになって思ったのが、現場に対する評価を自分自身で勝手に低くしていたということ。

まだまだ自分が未熟であるということ。

良かった点があるとすれば、この日自分がこの場に立てたこと。生える木々のうち、落葉樹の葉がほぼ無いという条件下うまれた響きのポイント変更によって成功体験を得ることが出来た。これで同所に次回以降来る時、いいイメージで入ることが出来るし、この日と自然条件が異なるシチュエーションでまたその日その時の再評価が出来る。

来て良かった。これに尽きる。今日は・・・。

いろいろと発見の多い砂防ダム行脚となった。

午後は微風に変化した。
堤体までの距離
ほぼ真西の堤体は午前中がおすすめ
暗くなるまで挑んだ。
退渓後は桜まつりに寄ってみた
踊子温泉会館うら
舘橋
浜橋の近く
満開の河津桜だった。

梅雪

そば処ささや

2月14日は修善寺へ。時刻は正午過ぎ。まずは食事処へ。

ここへ入るのは初めてだ。今まで幾度と無く店の前を通り過ぎてきたが、なぜだかここを左に折れることは無かった。大きな看板を構えたそば屋だが、戸田峠に通じるこの県道上、団体向けかなんかの雰囲気があって個人客である自分には向いてないんじゃないかと思い遠慮があったからだ。

それに、道はこのさき数百メートル行ったところにある「修善寺虹の郷」前までの区間、わりと急な登り坂である。急な登り坂を前に車のアクセルペダルをさあ踏もうかという時に、ふわっ。と現れるものだからいつも通り過ぎていた。

入ったことの経験が無かったとして今後別に困ることは無いが、過去のエピソードではこの周辺にある修善寺もみじ林や修善寺虹の郷のことについて、ちょっと偉そうにあれやこれやと講釈を垂れたような記憶が無くも無い。

せっかくの機会だからと今日は立ち寄ってみることにした。

そば、うどんの他、わさび丼も食べられる。

テラス席へ

店はちょうどお昼時ということもあり混んでいた。それでも入り口に置かれた記名札には誰の名前も無いような上京ですぐに中に通された。
カウンター席はあるものの椅子が用意されていない。
推察であるが、感染症予防のために撤去したか、もともと用意が無かったのであろう。
「一人です。」と告げると、こちらにどうぞとテーブル席を案内された。

いやいや一人でテーブル席(しかも4人掛け)など申し訳ないと思い、代わりに外の屋根下のテラス席を提案してそちらに腰掛ける。

接待の方が持ってきてくれた湯呑みが温かい。気温は9.5度ほど。同地は修善寺温泉街よりもさらに標高の高い場所にあり寒い。まあ、寒いには寒いが逆に言えばそれが山らしくていい。山上のそば屋の屋外テラス席で、新鮮な空気ともども栄養分を補給できるなんてありがたい。

食事を済ませ代金を支払い、車をいったん別なところに置いて再度店の前へ。なにやら店のわきに更に上に通じる階段を見つけたからだ。

椎茸そばとてんぷらのセット
店のわきに見つけた階段

修善寺梅林

修善寺梅林が有名であることは以前から知っていた。しかし、ここのところ静岡県東部地区の観光客の入客増の要因になっている河津桜や、競合するさらに早咲きの土肥桜や熱海桜で頭の中は桜モードになってしまっていた。

桜と前後して開花する梅の花のことなどすっかりどこかに飛んでしまっていて、今日もどちらかといえば観光のホットスポットを避けて修善寺に来たつもりでいた。

そば屋からほど近い大型バス専用駐車場から団体の観光客が列になって歩いて来た。先頭を歩くバスガイド風の女性は何食わぬ顔をして店の横を通り過ぎて行き、観光客もそれに続く。

通行証はどうやら要らないようである・・・?!

観光客を追って階段を登った。

観光客は帰り道に何か買って帰ったのかも・・・。

つぎつぎに

梅林には階段の始点(画像)から7分ほどの歩きで到着。登り専門になるのは最初のコンクリート階段の1~2分ほどで、あとは平坦な砂利道を歩く。

梅林に実際到着したときは一瞬気がつかなかった。ここからが梅林だという看板が到着を教えてくれたが、その看板の近辺には梅の花が咲いていなかったからだ。で、よく見ると奥の方に白やピンクの色彩が確認できる。

梅林全体満開とはいかない状況・・・。

花が咲いている木がちらほらとあり、それより大多数は音沙汰ない。それでも咲いている木を見つけては近寄って鑑賞する。桜のような鋭さをともなった開花ではないが、こちらは丸くふんわりとしていて温かみがある。

白やピンクやその中間色の花を楽しむ。梅林内に無数に植えられた木はこのあと時間を追ってつぎつぎに開花をするであろうから楽しみだ。

まだほとんど咲いていなかった。
意図的に早咲きと遅咲きを混ぜてるのだな。きっと。
寒いのによく咲いてるものだ。

橋へ

梅林散策を終えていったん修禅寺に立ち寄ったのち(散策で手がキンキンに冷えてしまい、立ち寄った。修禅寺の手水は温泉で温かいのだ!)堤体に向かう。

堤体は修善寺川第一堰堤。冒頭立ち寄ったそば屋前から戸田峠方向へ6キロ行くと左手に「広域基幹林道達磨山線」の看板があるのでそちらに折れる。折れたところから1キロほど進めば「三ツ石橋」の登場だ。

朱く塗られたガードレールの欄干がついた橋で、橋の中央から西の方向を向くと修善寺川第一堰堤はある。

橋を架けた者が意図したこと、橋を朱く塗った者が意図したことはわからないが、橋と堤体両者は互いに遠すぎず近すぎずの距離にあり、視覚的に一つのセットとして楽しめるように設計されているのではないかと個人的には思っている。

両者の銘板によれば修善寺川第一堰堤が昭和42年。三ツ石橋が昭和50年。あとに出来たほうの三ツ石橋が修善寺川第一堰堤ににじり寄っていて、その橋台コンクリートは堰堤下流の側壁護岸として浸食防止の機能を兼ねている。

機能的なWin-Winが得られるこういった堰堤と橋のセットというのは日本全国各地に見られると思うが、ここ静岡修善寺の三ツ石橋は谷の方角や山の斜度、そして先人たちの植えていった針葉樹、広葉樹のおかげもあり非常にハイバランスで良い景観をもたらしている。

架けてみたら・・・、なのか?
架ける前から!
なのかは不明だが、橋の欄干を朱く塗ってくれた方には僭越ながら賛辞と感謝を贈りたい。

こんな素敵なところを作ってくれてありがとう。

三ツ石橋
三ツ石橋から修善寺川第一堰堤。
北又川

レインコート

雨が降っている。

車の中で待機した。

しばらく待っていると雨が雪に変わってきた。
ラッキー!
濡れるのと、積もるのでは気分が違う。雪の方がやりやすい。それに季節限定で特別な感じがする。

レインコートを上下に着込み、インナーには電子メトロノームをセットした。これは最近ハマっているゲームのやり方で、チクタクいうメトロノームの音を聞きながらアカペラで歌う楽しみ方だ。

車の中から抜け出し歌ってみる。

音は渓畔林というよりはさらにその外側にある針葉樹の林に当たって帰ってくる感じで響く。口先50センチで失速するか、スギ・ヒノキまで届いて帰ってくる感じ。その距離まで音が届くようにメガホンを使用していることは効果的であると思った。

コンディション的には無風で悪い状態にあるが、強制的に音を送り込んでやることである程度は響きが得られたと思う。
北又川の降水(雪)による増水はあまり気にはならなかった。橋の上から挑むことでノイズ発生源からの距離が長く確保されるからだ。

この日は空が暗くなってきたところでゲームセット。再度キンキンになった手をカーエアコンで温めながら帰路に就いた。

無風だとキツい。
堤体は西北西向き
三ツ石橋から修善寺川第一堰堤までの距離
三ツ石橋の橋上より歌う。


 

年が開けた。

白田川河口からの初日

年が開けた。
新年一発目に選んだのは、東伊豆町片瀬白田。まずは地元民とともに初日。白田川河口左岸より光を浴びた。

今年はどんな年にしようか?

年が変わるということともに新たなスタートを切る予定だ。

白田川河口
初日に染まるしらなみ橋
はりつけの松

白田川親水公園

初日をしっかりと目に焼きつけたあとは、一時間ほど周辺を散策した。グーグルマップで存在を知っておきながら訪れたことの無かった「白田川親水公園」を散策。

伊豆急行片瀬白田駅前のちょっとした庭園風の公園だが、割と大きな池があったり、さらに綺麗に管理されたトイレまであった。トイレをありがたく使わせてもらう。

トイレを出てふと池の前に立つと、コイが泳いでいて元気にこちらにすり寄ってきた。

・・・、強いな。

本来ならばもう冬眠でもよい頃であろう。しかし、矮性のヒバに覆われた池のコイたちはどこかのもっと深いプールに移してもらえることもなく、この浅い池で冬を越すよううだ。寒いのにみな元気である。

これは負けてはいられない。

堤体を目指すことにした。

白田川親水公園

小さな谷止工へ

向かった先は小さな谷止工。過去に何度も訪れている場所だ。先行者はおらず現場は貸し切り状態。近くの道幅の広くなったところに車を置き、しばらく堤体をながめる。冷たい風に堪らなくなり車に戻ってベンチコートを一枚はおる。

風速計で計測したところ風は最大で1.4メートルほど。

音を鳴らすには好条件だ。風は谷止工本体の方向から吹いている。さらに周辺には樹高20メートルを越えるスギの渓畔林。もう1月になってしまって落葉樹では遮光がキツいが、常緑樹の下なら困らない。

新年一発目ということでかなり手堅い場所を選んでみたが結果は大成功であった。

風速計の表示
コンパスの表示
距離計を覗いた様子
谷止工

大した予定では無い・・・。


歌は午前中で切り上げた。その後は再び白田川沿いを下って磯亭へ。二階窓から白田橋を行き交う車を眺めていた。

磯亭で昼食を摂ったあとは帰路に就く。もっと正月の白田川を満喫したかったのだが、このあとに予定が入っていたからだ。

大した予定では無い・・・。

ただ、そのためにこれから沼津に向かわなければならない。

後ろ髪を引かれる思いで帰路に就いた。

白田川(白田橋から)
白田橋と白田川(磯亭より)
磯亭での昼食
遠くには伊豆大島が見える。(しらなみ橋より)

一緒に遊んでくれる仲間を募集します。

一緒に遊んでくれる仲間を募集します。

一緒に砂防ダムで遊んでくれる仲間を募集します。

それが一体どんなことをするのかはこれまで当ブログに記してきた通りになるが、今回あらためてその内容について書き出してみた。
自身は砂防ダム音楽家なので「砂防ダム音楽家とはどんなものか」という解説になるが、これから専門職として目指したいと思っている人も、単純に遊びとして似たようなことをやってみたいと思っている人も読んでもらえればと思う。

非常に大まかにざっくりとした内容になるが、少しは参考になるかもしれない。

砂防ダム音楽家とはどんなものか

砂防ダム音楽家というのは音楽家だ。演奏場所は主に砂防ダムなどの堤体の近く。
まずは砂防ダムに行くことからその活動ははじまる。

砂防ダムがあるのは山間部だ。山間部で川の流れているところ。川の流れているところは地図で探し出す。地図の基本となるのは国土地理院発行の地形図で、縮尺は2万5千分の1。

まずは地形図を使って「せき」のマークを探す。せきのマークは地図の凡例にある通り二重線で示される。二重線は下流側が実線で上流側は破線で表されている。
二重線を見つけられたら、その場所へどのようにしていくのか考えよう。

車やバイクなどで行って堤体のすぐ横に横付けできるような林道至近のところもあれば長い区間、渓流を歩いて向かわなければならないところもある。目的地とする砂防ダムはその場所への行きやすさを基準に選んでも良いし、予想される経過要素(例えば渓流歩きそのものを楽しむとか)をもとに選べば良い。

地形図は2万5千分の1を用意しよう。

行こうとする砂防ダムが決まったら

行こうとする砂防ダムが決まったら、実行に移す。
まずは天気予報で行こうとする日の天気を確認する。天気は晴れている方が良い。くもりや雨など天候に応じて目的の砂防ダムを変更するという作戦もあるが、事故のリスクも考えとりあえずは晴れの日を予定日として選び出す。

持ち物は予定日の当日までに用意しておく。ウエーダー、フローティングベスト、ヘルメット、登山用ステッキ(またはノルデックウォーキング用のポール)の4点セットが基本。なかでもフローティングベストは釣り用のポケットが多いものがおすすめだ。

楽しい音楽活動の思い出にプラスされる要素として現場での各種データ測定があるが、その測定に必要な計器類を収納するのにポケットの多い釣り用のベストは好都合である。

風速計、温度計、湿度計、距離計、コンパス、照度計、騒音計などなどデータを大事にしようとすればするほどポケットは計器類でいっぱいになり、それらをすぐに取り出せるようにするためには、複数あるポケットのなかで収納場所を変えてやるのが便利だ。

風速計は右ポケットに、距離計は左ポケットに、と言った具合に。

また、データ測定というものに特に興味が無かったとしてもこれは優良な食料庫とでも思って着用しておくことをお勧めしておく。カントリーマアムとかキットカットとかチョコレート類、おかき、おにぎりとかパンとか。缶コーヒーなんかも入れておける。

現場で口にする食事のうまさは格別だ。渓行をより楽しいものにするために、また食糧を持ち歩くという行為から生まれる気持ちの“ゆとり”を持つためにも、ポケットには常に自分のお気に入りを忍ばせておきたい。

これも大事な遊び道具のひとつ

迎えた当日

スケジュールも持ち物も揃ったところでいよいよ当日を迎える。まずは車や公共交通機関を使って目指す砂防ダムの最寄り地点に降り立つ。車などで堤体のすぐ横に到着出来る場合を除いて、降り立った地点からは地図を見ながらの歩きがはじまる。

地図には山の高低差を示す等高線が描かれているほか、その土地の利用種別を示すマークが描かれている。針葉樹林や広葉樹林、果樹園、畑、荒地など。建物の存在を示す四角形が近くにあることもある。四角形は民家というよりは、作業小屋や植物などの栽培施設であったりすることが多い。

まずは慎重に入る。これから進入するエリアというのは、概して人気の少ない場所であるケースが多い。「作業小屋や植物などの栽培施設」ということのつまりは、民家があって人が見守ってくれている状態には無い地帯に入っていくということだ。

事故に遭うことが、街場でのそれと比べても本当に重大なことなのだということを自覚し、一歩一歩慎重に歩みを進めていきたい。判断に迷ったらよく考える。

人気の少ない山の中で、恥ずかしいという気持ちを捨てて歌うことが出来るというメリット反面、危険というデメリットが隠れている。山歩きも渓行も行き着いた先での音楽もすべてがいい思い出だったと言えるようにまずは安全第一で行動したい。

一歩一歩慎重に

スピーカーについて

いよいよ堤体に着いたら歌を歌う準備をする。スピーカーはじめ音の出るような設備を用意しよう。スピーカーは自分自身に身につけるようなタイプから据え置きして使うものまで様々だが、防水性能を備えた「アウトドア用」が最も適しているだろう。

Bluetoothなどの通信機能の付いたスピーカーが便利で手元の操作で再生、停止、選曲等すべて行える。音量は自分自身の耳との距離にもよるが、とにかく大音量に対応できるような機種が理想的だ。

無論これは砂防ダムの落水の音に対抗して、大音量を用意しなければならないケースが時としてあるからだ。再生ボタンを押して音が鳴っているはずなのに「アレッ?」と思うことがよくある。

前回に訪れた堤体でスピーカーを使用していて、今回もそのままの設定で再生ボタンを押したところ、全く音が聞こえないのだ。音量レベルをいくつも上げてようやくちゃんと音が出ていることが確認できた。などという現象が往々にして起こる。

電器屋さんやカタログでスペックが見られたら、ワット(W)数がより大きいものを選ぶのが良い。うるさすぎて困るということはまず起こりえない。静かすぎて困ってしまうということはあっても。

音も大は小を兼ねる。

いざ、歌ってみる

スピーカーに関して言えばこれくらい。ただ、個人的にはスピーカーによる伴奏機器というか伴奏設備の進化の歴史はここで止まって欲しくないと思っている。もっとこれ以上にさらにリアルな伴奏の音が得られるようになることが理想的だ。まるで今立っている谷底にグランドピアノをドカッと降ろしたような設備の登場に期待している。

そんな夢のようなことが実現される日は来るのだろうか?現在に生きる者の感覚として到底不可能な気もするが、そういったものを実現してきたのが人類である。あり得ないことを幾多起こしてきたのが人類である。大丈夫。いつの日かそんなことが実現される日を夢見て、それより早く野外での音楽活動の娯楽性を追求しておこう!

準備が整ったらあとはタイミングを見計らってスピーカーの起動ボタンをしてみる。そして歌ってみる。果たして・・・、

―ん???何?これ響いてんの?どうなの?―

その感覚・・・、がアタリ。

音が響かなかったその日の堤体は、その日の条件下の堤体でしかない。水量、天気、気温、渓畔林の状態など日を改めてチャレンジすることで成功体験が得られる場合もある。音が響かせられなかったということだけ持ち替えるのではなく、ではどういう状況だったらもっとうまくいったのかを考え、同じ現場をもう一度再訪する楽しさがこの音楽にはある。

考えつつ、悩みつつ、きょうもまた・・・。

退渓時は頭の中がいっぱいだ。

まずは歌ってみる。

次回、うまくやるために・・・、

うまくいかないことは宝だ。どうすればいいか試行錯誤して答えを探し出す楽しさがある。幸いにも砂防ダム音楽家という分野はまだまだ未知の世界が広い。一つ一つの堤体に堤長、堤高、方角、建設年数というデータがあってさらに水量、天気、気温、渓畔林の状態、堆積土砂の状態といった変化する要素が加わる。

一つとして同じ堤体はなく、また、堤体周辺環境の状態も恒久的で無い。その中で、同じ堤体に通い続けて答えを探ったり、あちこちの堤体に趣いて問題のヒントになるようなことを見つけ出すことが出来る。

また、音楽を「聞く」のは誰よりも自分自身で、その日の活動が良かったのかどうなのかということを判断するのも自分自身だ。落水による音がデカすぎてうまく声が響かせられないケースが多くを占めると思うが、逆に声が響きすぎてしまって面白みに欠ける体験をすることも少なくない。

自分自身によって今日の活動を振り返り、堤体選び(気象条件その他含め)の段階から成功だったかとか失敗だったかとかを評価できるという特性があるので、先生を呼んで善し悪しの判断を仰ぐレッスンと呼ばれる形式には、この音楽の楽しみ方は限定されないと思う。(大好きな先生を呼んで一緒に楽しむという、そういうやり方も決して否定しない。)

歌のプレーヤーとなって実践するのは自分自身で、目標も夢も自分で設定してそこに向かって進むことが出来るのが砂防ダムの音楽だ。秋の紅葉シーズンの中で歌う楽しさ、厳寒期の凍てつくような寒さの中で歌う楽しさ、春の落葉樹が芽吹く季節で歌う楽しさ、一面を覆い尽くす渓畔林の木陰の中で歌う楽しさ。
最も好きな季節は人それぞれ。

自分のお気に入りの堤体を見つけよう。そして歌おう。自分の好きな堤体のベストシーズンに訪れることが最高に楽しい。

砂防ダムで歌うということ。
たったそれだけのこと。
たったそれだけの遊び。

そんな遊びを一緒にやってくれる仲間を募集します!

山が、森が、水が、そして堤体が・・・、今日もここで待っている。

大好き河津町!vol.19

A

6月23日、

B

本日は露天風呂からスタート。

C

柵のすぐ下には、

D

海。

E

その反対側。(西側。)

F

今井浜が見える。

G

さあ、

H

出掛けよう。

I

あっ、(当日現場に居合わせた方、ありがとうございました。)

J

開幕前の、

K

今井浜へ。

L

って、

M

ちょっとより道。

N

風呂上がりの、

O

この一杯。

P

魔。

Q

魔だ。これは。

R

魔の美味さ。

S

水着とサンダル姿で食ったら、

T

もっと美味いに違いない。

U

この民宿街を歩いて・・・、

V

食べに行くのだ。

W

ああ、それと

X

海の家もあるから。ここは。(現在、準備中。)

Y

海の家も

Z

いいよなぁ。

A,露天風呂 B,河津町見高、下河津漁港 E,鬼ヶ崎、七子浦、今井浜 F,今井浜 G~I,更衣室 L~N,舟戸の番屋 O~P,わかめラーメン R,見高公民館 S~V,今井浜海岸通り X~Z,今井浜

a

それからそれから、

b

各種イベントも開催予定。

c

今年はどんな夏になるのだろうか?(これは一昨年8月に撮影したもの。)

d

青い海、

e

青い空、

f

熱い砂。

g

熱い思い。

h

今日は左へ。

i

橋から奥へちょうど1キロの道のり。

j

現代の車ならどれでも問題ないだろう。(若干悪路。)

k

駐車スペース着。

l

川へは慎重に下りる。

m

堤体前。

n

本日は見事な落水。

o

“本日は”と言うのは、

p

この堤体が一年の多くは伏流なのだということを意味する。

q

心地良いノイズとともに音楽が出来るのは期間限定。

r

山の空気が水分をたくさん含んでいる

s

梅雨~夏季のみ。

t

そしてここのさらに凄いところが、

u

渓畔林。

v

全天を覆うほどの充実ぶりはめずらしい。

w

樹種はご覧の通り。

x

充実の渓畔林もまた、

y

期間限定。(落葉樹を含むから。)

z

立ち位置は個々の能力に合わせて自由に選べばいい。

1

声量に自信があるならノイズ源に近いところに立つ。

2

そんな環境だ。

3

さあ、

4

逃すことなかれ。

5

この充実の渓畔林の下、

6

最高の暗がりで、

7

最高の集中力とともに、

8

最高の音楽を!

e,今井浜海岸通り f,国道135号線 g,国道414号線(本梨本バス停付近) h,丁字路(g,を右折し、ひたすら2.6キロほど分岐も曲がらず直進するとh,へ。) i,橋(橋脚名不明) j,林道(煉瓦の洞遺跡前) q~s,小川No.1コンクリート堰堤 t,銘板 w,(左から)ヤシャブシ、イロハモミジ、ヤマザクラ、ウラジロガシ z,ニコン クールショットプロスタビライズド 1,シルバ レンジャーNO.3 2,風速計 4,小川(荻ノ入川支流)

退勤後のゲーム

A

退勤後のゲーム。

B

まずは峠。

C

峠までのぼってから、

D

坂を下りてゆく。

E

分岐は、

F

地味な方へ。

G

スピードは

H

出しすぎ厳禁。

I

はやる気持ちがあろうとも、

J

谷間に突っこむ

K

鉄くずになってはならない。

L

停車。

M

車から降りると、

N

おっ、

O

風が木々を揺らしていた。

P

期待しつつ、

Q

明かり。

R

明かりを気にしつつ、

S

まもなく・・・。

T

よし。

U

状況は良さそうだ。

V

河原に降りて、

W

歩をすすめる。

X

堤体前。

Y

あるもの、

Z

日没前の堤体。

A~C,「箱根峠」信号 D~G,国道1号線 H~J,箱根新道 K,箱根新道(黒岩橋) N,風速計 T,床固工(堤体名不明) U~Y,須雲川

a

無いもの、

b

ノンビリ出来る時間。

c

こちらがお相手。

d

いちおうこっちも測っておく。

e

風は微風。

f

ん~

g

鳴らないねぇ

h

この風じゃあ・・・、

i

だが、

j

気持ちは入れこみやすい。

k

この、一日の終わり。

l

昼と夜のすきま。

m

わずかな狭いすきまに

n

きょう一日さまざまな思い出が交錯する。

o

気持ちの面では

p

多くのことで

q

溢れていた。

r

退渓しよう。

s

さて、その後は

t

公園にて

u

虫と遊んでもらったり、

v

あとは、

w

池で、

x

鳥に遊んでもらったり。

y

ダイヤルは、

z

右に回してみた。

1

お~速い速い

2

ドォ~ン!とダイブ。

3

びっくりした・・・。

4

退勤後のゲーム、

5

追加の思い出とともに完了。

c~d,ニコン クールショットプロスタビライズド e,風速計 h,フサザクラ i,イロハモミジ m,イタヤカエデ n~p,フサザクラ q,ウエーダー r,側壁護岸 s,箱根新道 t,あじさい橋 u,ゲンジボタル v,天成園 w~x,カルガモ、アヒル z,アヒル・鯉・マスのエサ 3~5,天成園

T,床固工(堤体名不明)の方位≓211度

撮影日:6月17日、6月20日