4月13日、雨が降った。しかも午前中は強烈な風を伴って。午後になると風は止んだものの、雨が降り続けていた。一日中家で過ごす事も考えたが、それといって代わりになるようなことも思いつかなかったため、思い切って外に出掛けることにした。
目指したのは沼津市宮本。宮本と言えば「あしたか太陽の丘」や「富士通」などがある丘陵地帯であるが、この日は雨が降っていたため、それを凌げる橋の下を目指した。沼津市足高の東部運転免許センター前の信号を西に折れ、そのまま直進を続ける。道はやがて丁字路に差し掛かるので右折し、直後のY字分岐を左に進む。それから道なりに進むとほどなくして、新東名の高架橋がドドーン!と目の前に現れる。目的地の橋だ。
ラーメン橋
橋の上を大型トラックが走っていることがわかる。乗用車も通過しているのであろうが、背が低いためこちらはうかがう事が出来ない。新東名高速御殿場ジャンクション-三ヶ日ジャンクション間の供用開始が2012年(平成24年)4月14日とのことなので、翌14日でちょうど(供用開始から数えれば)8周年目になるまだまだ新しい橋だ。
橋はおおよそ百メートル間隔おきに橋脚があるタイプの橋で、若干のアーチを描いている。専門的にはこのタイプの橋は「ラーメン橋」と言うそうであるが、ラーメンと聞くとやっぱり食べ物のラーメンを連想してしまう。私同様、あまり学歴に長けない方が何かのきっかけでネーミングしたのかと勝手に想像してしまったが、そういうわけでは無いらしく、ドイツ語の「der Rahmen(枠・窓枠・フレーム)」から来ているという。
冒頭の画像にもあるが、横幅はしっかり広くてこれならば雨をしのぐ事が出来る。今日はここで春のこの時期の植物観察をすることにした。もともとこの橋自体は、丘陵を東西に分断する高橋川の浸食によって出来た谷を道路が高度を下げることなく通過出来るようにという目的で出来ている。つまり橋の付け根部分は山の斜面であったところなので、多様な植物がそこには生息している。
面白いと感じるのは道路の上下線の間、数メートルの間隔に生えている植物。わずかに出来たすき間から差し込む太陽光を受けて成長している。よく見ればそのすき間よりあるていど橋の内側になった所だと、植物は生えることが出来ていない。これはどちらかと言えば太陽光と言うより「雨」の恵みを受け取る事が出来なかったゆえの結果なのであろう。
水が無ければ植物は生きていけないのだという、ごくごく基本的な事に今更ながら気づかされたのであった。
アーチ橋
翌4月14日は伊豆市内の田沢川に入った。その田沢川に入る前、せっかくだからとまたしても橋の下に入る事にした。橋の名は矢熊大橋。この橋は伊豆縦貫道で最も最近に完成した区間「天城北道路」の一部を担っており、とても新しい。天城北道路の開通が2019年(平成31年)1月26日なので(こちらも“開通”から数えて。)1年と2ヵ月ほどしか経っておらず、歴史はまだ浅い。
伊豆市矢熊と伊豆市月ヶ瀬を端支点とするアーチ橋で、全体が鉄筋コンクリートで出来ている。前日見たラーメン橋と比べると、桁より下の部分のカーブは更にダイナミックさがある。比較してしまえば迫力に優るということだが、ラーメン橋にしたってアーチ橋にしたっていずれも機能面のみならず、景観を伴った作りであるということは土木の専門家で無くとも理解が出来るところだ。
その見た目のことを言えば、伊豆市月ヶ瀬側の岸辺に「道の駅伊豆月ヶ瀬」があることから、橋そのものの眺望はそちらから楽しむ事となる。道の駅伊豆月ヶ瀬の屋外ウッドデッキや水際公園から橋の下を流れる狩野川ともども眺めたり、写真撮影するのがオーソドックスな楽しみ方になってくると思う。
どうであろうか?中伊豆ののどかな農村地帯に突如としてコンクリートのドデカい橋が現れることに対して難しい見方をする方も少なく無いかもしれない。しかし、この矢熊大橋があることによって良くも悪くも人々の視線は絶対的に狩野川に向かう事になるであろうし、そこから名産品のアユやモクズガニに連想を繋げていくという手もあると思う。
橋そのものは巨大なコンクリートで出来たグレーインフラなのであるが、それをきっかけとして川というもの、水生生物というものに関心を持ってもらえればと思う。自然というものに対し、無関心であることこそが一番恐ろしいと思っている自身にとって、橋でも護岸でもそして砂防ダムでも、人が興味を持って近づいて来てくれることから全てを始めていこうではないかと提案していきたい。
ひとつの河川構造物が自然と人との関わりの架け橋になってくれればと期待しているところだ。