
堤体の周辺環境という考えがある。中心にあるのはつねに砂防ダム等堤体類。その半径100メートルにあるもの、その半径1キロメートルにあるもの、その半径10キロメートルにあるもの。
すべて周辺環境だ。
業務連絡。
周辺環境ベースで集客しましょう!
考え方としては、うまいメシを出してくれる店も、温かい温泉でもてなしてくれる宿も堤体本体と分離されたものではないということ。
お互いに協力し合って集客をおこなう観光インフラだ。
周辺環境として一心同体の関係にある。敵じゃない。お互いが仲間同士。

かいのび
4月26日、午前10時、山梨県甲斐市篠原。
車を置いたのは甲斐市役所駐車場。そこから、市役所前道路を南へちょっと進むと安全鋼板に囲まれた建設現場があらわれた。
甲斐市市営しのはら公園子ども体験学習施設「かいのび」。その建設現場である。
かいのびとは。
※雨の日でも思い切り体を動かすことができる大型遊具を備えた遊戯体験スペースや図書スペース、子育て相談や子どもの一時預かりスペースの設置を予定しているほか、県緑化センターが果たしてきた役割を継承し、子どもたちの遊び・学びの場として、木育を中心とした体験学習を行うなど、地域における子育て支援の活動拠点として整備します。
※広報甲斐 令和6年5月号より
子どもたちのための、そして、その親たちの施設ということらしい。
コンセプトは、
「次世代へつなぐ創造の森」。
そうだ。ここはもともと森であったのだ。
過去に一度きている。何であったか?山梨県のちょっと古い感じの地図を見ていた折り、地図上に「山梨県緑化センター」なる記述を発見し、その存在を知ったのだ。
緑化センター?何?と早速、ネット検索。だが、その頃にはすでに施設は閉鎖済み(平成26年3月)であった。
廃墟か。
だが、その敷地を航空写真で見れば明らかに緑化センターの名残と思われる森が残っていた。
樹木好きの血が騒いだ・・・。
施設は、立ち入り禁止やら防犯カメラ撮影中の紙が何枚も貼られていて侵入できないようになっていた。
訪れたときの暦は9月。施設を囲む市道からは、鬱蒼と茂る緑、放置されて暴れ枝になった庭木、自由気ままに伸びる生垣。敷地内はまるでジャングルのような様相であった。
ガサガサ・・・、
?
猫だ。きっと猫にちがいない。猫だと思いたい・・・。
正体不明の動物の存在も相まって、なんとも不気味な廃墟スポット。
キイロスズメバチの羽音に冷や汗を垂らし、
蚊に食われながら、
それでも市道越しにではあるが、いろいろな樹木を見て回ったのであった。
いい一日だったと記憶している。
個人的には、そのまま改修工事などもせず「再解放」のようなかたちで開園してくれれば十分であった。
管理の行き届いていない木々であろうと、その種であることに変わりはない。改修の都合上、切り倒され、種を減らすことのほうがマイナスだ。(実際、今回の改修工事によってどれだけの木が伐採されたのかは不明であるが。)
木は実物を見なければ覚えられない。どんなに素晴らしい教材が開発されようとも実物を見るという行為には敵わない。
タブレット端末?
わからない。生まれたその瞬間からアイフォーンで動画撮影されてきた、そんな世代の脳は。
ただ自身も含め、昭和生まれのジジババには悪影響だと断じて言える。
実物と紙の図鑑こそ最強の組み合わせ。
新規オープンは来年の3月とのこと。やはり紙の図鑑を持って訪れたいと思っている。どんな樹木が見られるのか。子どものための施設であるとのことだが、期待は大きい。



昼食
午前11時、市役所前の公園で昼食を食べることに。昼食は近くの「ほっともっと」で買ってきた弁当だ。
市役所前の公園。公園には東屋があり、座って過ごすことができる。なんとも平和な市役所前公共スペースである。
春の陽気。
日影であるのに、ちっとも嫌気がしない。つい数日前であったら、こんな風にはならなかったであろう。
市役所と敷地を同じにする市立竜王図書館。その玄関脇にはツツジが咲いている。
ツツジはよくある生垣くらいの高さに整えられたツツジではなく、さらに低く刈り込まれたもの。
地を這うかというくらい低くなった株に、力強く咲く花がなんとも見事である。最近よくテレビに出ているフィギュアスケートの選手みたく、小さくても非常にエネルギッシュだ。
午前11時20分、弁当を食べ終え、竜王図書館に向かう。
貸出カードを作っておこうと思った。本を借りられるようになれば、家に持ち帰って調べものができるようになる。
それだけでは無い。
山梨県甲斐市。隣接する自治体は山梨県甲府市。県庁所在地には「山梨県立図書館」がある。
県立なら・・・。
そんなふうに考えていた。
ものごとを浅はかに考えていると損をするらしい。気がつくことが出来たのは、図書館の蔵書をよーくよーく調べてみたからである。
これはつい最近のことだ。
蔵書数でいえば圧倒的に県立。だからといって県立が絶対ではない。本が多いことと情報保有しているかどうかの可能性は比例しない。
市立だからこそ見つかる資料というものがある。
バカにしてちゃいけなかった。小さな図書館を。
通える足があるというなら、さらにあちこち行ったほうがいいらしい。
午前11時50分、甲斐市役所駐車場を出庫し、市役所前道路を北進。「竜王駅入口」交差点にて左折し、国道20号線を走る。
竜王立体を越え、竜王北小学校前横断歩道橋をくぐる。ユタカ農機まえの右カーブをこえて道をすすむと「赤坂台総合公園入口」交差点。
ここで右折し、赤坂台総合公園(ドラゴンパーク)を右手に見ながら直進。つきあたりの丁字路交差点まで走ったら左折。
クスリのアオキ、海老菜給食センターまえを通過。美容室LUCIDAの看板を見たところで左折。
午後0時20分「湯めみの丘」に到着。
ここは日帰り温泉施設。ひとっ風呂浴びるのである。







APITAに行く
午後1時5分、湯めみの丘を出発。
西進し、「竜地」信号交差点。堤体に向かうなら北進(右折)なのであるが、逆方向。南進する。つきあたりの丁字路交差点で右折したのち、国道20号線へ。西進し、「双田」信号交差点まで走ったところで左折。眼前にあらわれたのは「APITA」の文字。
午後1時15分、APITA双葉店(ラザウォーク甲斐双葉)に到着。
立体駐車場3階へ。
つかの間の休息。
午後2時、1階売り場へ。銀座コージーコーナーにてシュークリームを購入。
午後2時20分、車の中でシュークリームを食べたあと、APITA双葉店(ラザウォーク甲斐双葉)を出発。堤体に向かう。
ふたたび「竜地」信号交差点までもどり、北進。道なりにすすみ「西町」信号交差点で左折。
道をひたすら北上した。
午後3時50分、林道観音峠大野山線のゲート前駐車スペースに到着。









湿地帯
車から降りて入渓の準備。
ウエーダー、ジャケット(風を通さないもの)、フローティングベスト、ヘルメット、登山用ポールなどいつも通りの装備。
午後4時15分、林道を200メートルほど下る。下ったところにあらわれるのがカーブミラー。そのカーブミラー手前、林道から分岐しているブルドーザー道があるのでブルドーザー道に逸れる。
ブルドーザー道を下りきったら、「亀沢川」の本流があらわれるので川をわたり対岸へ。なおもつづくブルドーザー道にしたがうと、谷止工2基があらわれた。
谷止工を右岸側から2基とも巻く。上流側の谷止工を巻くと湿地帯があらわれたので湿地帯に入った。
湿地帯をほんの数十メートル遡行すると、眼前に谷止工が。
午後4時半、目的の谷止工に到着。






見かけの高さを上げる工夫
水は放水路天端の横幅一杯をつかってきれいに落ちている。
堤体水裏は、水が落ちているところと、そうで無いところとで完全なツートンカラー。
水量はほんとうに少ない。ここは前述の亀沢川の支流となる沢。ここより上流の流程長は不明であるが、距離的に見て甲斐市・北杜市の分水嶺が非常に近い。
堤体水裏にうすい水膜をつくるような湛水は、もはや遠目にはほとんど流れていないようにすら見える。
堤体の最下段には、高さ60センチ程度の段差。段差には奥行き方向のくぼみがあり、水膜を保持できなくなった水が落下する。
やっと、水の存在がはっきり露呈される。
落下し、堤体からはなれた水は岩盤へ。
堤体直後(約15メートル以内)では岩盤上を。以降は堆積するガレの中を。
ガレのなかで水は意外なほどおとなしい。
層にもならないうすい膜状の流れである。水はガレの石に乗ることができない。
ガレ石ひとつひとつの足下を何事もなかったようにシレッと通過するだけの水。
ガレを越えた水は湿地帯へ。
湿地帯は腐植をたっぷりと含んだ、真っ黒な湿地帯。
湿地帯の畦には芽生えたばかりのミゾソバがびっしりと生え、真っ黒な土の上に緑のシートをかぶせている。
プレーヤーの立ち位置はなるべく下がり気味に。湿地帯まで引いた方がいい。
堤体は見えている基礎部分から放水路天端まで6メートルほど。この堤体をボリュームアップさせるには斜面の尺を利用する。
見えている基礎部分から放水路天端までの高さ+斜面の高さ=堤体の見かけの高さ
目視できている堤体本体の高さに斜面の高さがプラスされれば、より高い建造物として見ることができる。
引くだけ引けば(より下流側に立てば)、見かけの高さが上がる。
このようにして、高い位置をねらえるように工夫する。さらに、引いているので的が遠くなる。的までの直線距離が伸びる分、より広い空間での音楽ができるようになる。なにより、上を向いている方が気分がいいではないか!
立ち位置は決まった。
あとは実際、声を入れて響きを楽しむだけ。一点だけ。注意点。足場のぬかるみは一級品のぬかるみ。踏みどころによってはズボッと足がハマってしまう。これにハマるのはまた感触として面白いのだが、ハマったあとに転んでしまうかもしれない。
とくに、泥だらけになって思い出作りをしたいなどという希望がなければ、足場の固いところを探って歩くほうがよさそうだ。






ストレートに
自作メガホンをセットし、声を入れてみる。
非常に単純な鳴り。
声が堤体本体に当たって、立ち位置後方の山の斜面で響いている。
眼前、堤体前は沢登りでいうところの「函(はこ)」と呼ばれるような地形。声は函の断面だけを拡散せずに走っているという感じだ。
ストレートに走って、ストレートに帰ってくる声。
意外にも、左岸側・右岸側両岸の渓畔林が効いていない。声は両岸の崖・樹木を越えて横方向に広がることができないらしい。
細く狭まった直線的な流路の両サイドに控える密度の濃い林。しかし、その木々が声をうまく拾ってくれない。
風が吹いてくれようものなら、声のほうからふらふら両サイドに寄り道をしてくれるのかもしれないが、無風のためそれも叶わない。
距離にしておよそ40メートル。奥のコンクリートの壁に当たった声が、何事もなく跳ね返ってきているというきわめて単純な響きだ。








業務連絡
結局、この日は午後6時まで堤体前で遊んだ。
当地は、細く狭まった直線的な流路に対し、両岸の崖・樹木が迫ってくるような空間。
横方向にコンパクトな空間は見るからに響きの創造に長けた空間であった。両岸から迫る樹木に声がよく絡み、特色ある響きを聞かせてくれるものとの期待も込めて声を入れてみた。
しかし、期待は裏切られた。
声を入れることを何度も試みたものの、谷の直線的なルートに沿った声はそのままストレートにコンクリートの壁に当たっては、直接プレーヤーの方向に帰ってくるだけだった。
堤体前。やはりこの空間は、実際に立って声を入れてみなければ、どうなるのかわからない。
一見して何かが起きそうだと予想した場合でも、実際、声を入れてみるとなんともなかったりする。
全くもってやってみなければわからない。
やってみること。
実践。
実践にて知るのだから、実践なくして語れない。
これを仕事にしたいという立場の人だったら必須の作業。
人、場所、道具。
ぜんぶ大事。
ぜんぶ大事ななかで、失敗をヤラかす脆弱性があってはいけない。
ここでいう失敗とはうまくいかなかったことという意味では無く、実践を省略して空想のまま商品化・事業化してしまった結果のことをいう。
必ずテストをすること。
テストという段階を踏んでから商品化・事業化していく。
ありがたいことにテストの現場はいつでも開いている。朝、昼、夜。今、この瞬間だって!
いつでもその場に行って歌える。
それが砂防ダムの音楽。
春。挑戦してみたくなったら堤体前へ。いつでも歌う環境は用意されている。







