健康ランド発、深夜便

健康ランド発、深夜便

今回は深夜便ということで堤体に向かった。

この時期ならではの朝のゲームに挑むためである。

出発地点は健康ランド。

健康ランドを発ち、堤体に向かう。

途中にはさまざまな関門が。しかし、これも旅の楽しさ。

堤体前で歌うことだけを楽しみとして切り取るのではなく、やはり全体を通して良かったと言えるような旅がしたい。

砂防ダムの音楽だ。これはゲームだ!

まずは楽しむことを目標に。

歌える堤体さがしの旅。深夜便に出発した。

セルフサービスのガソリンスタンド

燃料を入れる

午前1時05分、静岡県静岡市清水区西久保。

セルフサービスのガソリンスタンド。

車は?

ガソリンを入れてやればいい。

人間は?

きょうは健康ランド発。温泉もサウナももうキッチリ済ませた状態である。

あとはウマいものさえ胃袋に収めれば・・・、完璧な仕上がりである。

あ~、ラーメン食いてぇ―

夜闇に光る看板が眩しい。

ガソリンスタンドから見えるラーメン屋の看板。

いや、だめだ。

燃料は車だけで十分。人間用の燃料は今は入れられない。

食べたらきっと眠くなる。

これはれっきとした旅だ。

健康ランドからの帰りがけではあるものの、本職の「遊び」に出かける旅である。軽んじることなく、あとあと、きちんと評価ができるような内容にしなくてはならない。

たしかに帰りがけという状況。ホントのホントに本気なのか?と言われれば無理がある。無理があるのだが、いまは梅雨の時期。おかげさまで本日は運良く快晴の朝をむかえられるという予報だ。

時期は夏至の頃で、

堤体は東向きで、

晴れていて、

雲がない空で、

水はしっかり流れていて、

堤体はある程度高さのある方が良くて。

ことに太陽の方向を直接向くようなゲームではいろいろな条件をそろえなければならず、実現のための確率が下がる。

堤体本体は動いたり、向きを変えたりしないから、候補にあげた堤体のなかから選ぶだけでいい。ただ、天気であるとか、いまは何月であるとかいった条件は、堤体前に立つべき「いつ」と照らし合わせてみて噛み合わなくなる可能性が出てくる。そのため、思い立ったときに。とか、暇が出来たときに。というタイミングでは、実現させることがなかなか難しい。

より絞り込んだ計画のなかで実現させていく、少し面倒なタイプのゲームである。

ただ、そんな面倒があるなか、今回は運良く条件が揃った。どうやら、朝のゲームが実現できそうなのである。

これは千載一遇のチャンス。

逃がすことができない。

ならば、こんなところで仮眠をとっていて、ヤラかすようなことがあってはならないのだ。そんなことが起きでもしたら今夏以降のワンシーズン、まるまる後悔するような未来が待っている。

ここはひとつ「欲」に耐えるかたちで乗り越えたい。乗り越えたその先にはきっと大きな報酬が待っているはずだ。

給油を済ませ、ふたたび車に乗り込んだ。

よし、ここから!

健康ランドを出てからまだ5キロしか進んでいない。

先を急いだ。

深夜ラーメンは、また今度!

辺境への入り口

午前1時20分、国道1号線を経由し、東名高速道路「清水インターチェンジ」へ。

料金所を通過し、東京方面の看板にしたがう。

ややあって現れた「清水ジャンクション」では、中部横断自動車道・新東名高速道路方面へ。

清水いはらインターチェンジを通過し、新清水ジャンクションからは中部横断自動車道へ接続。

中部横断道路に入って4本目のトンネル「樽峠トンネル」にて山梨県に入る。

富沢本線料金所、富沢インターチェンジ、南部インターチェンジ、身延山インターチェンジを通過する。

「次だ。」

上八木沢トンネルをぬけ、下部温泉早川インターチェンジにて中部横断自動車道を下りる。

山梨県道9号線を北上し、波高島トンネルまえの丁字路を左折。富山橋をわたり、600メートルほど走ったところで「上沢」の信号交差点に到着。

ピリッと。

緊張の。

上沢の信号。

ここを直進で突破すれば、山梨県道37号線(南アルプス街道)への旅路ということになる。

以降は山梨県南巨摩郡早川町奈良田へとつづくおよそ35キロの一本みち。

走るに難しいことは無い。道はしっかりしている。途中にはトイレもある。飲み水にも困らないだろう。

ただ唯一の難点。

店が無い。

具体的には深夜営業のコンビニ。

上沢の信号を右折する。この道を300メートルも走ればセブンイレブンがあるからだ。

ここならば深夜でも営業している。

辺境への入り口。その突破をまえに、夜の補給基地へ。

午前2時15分、セブンイレブン身延下山店に到着。朝と昼用、2食分の食料を買いこみ、再び車に乗り込んだ。

夜の補給基地。セブンイレブン身延下山店。

サファリパーク

午前2時25分、ふたたび上沢の信号まで戻ってきた。

いやはや、先ほどとは気分がちがう。食料を手に入れただけでこんなにも余裕綽々、気分上々になれるのか?

上沢の信号を右折し、山梨県道37号線へ。

5.3キロほど走ると「早川町」の看板。山梨県南巨摩郡早川町に入った。

おっ。と・・・。

鹿が横断したのだ。ニホンジカ。角が生えていないので雌の鹿であろうか?

山梨県道37号線は長い長い道が延々とつづく。そのため焦ってしまいがちだが、運転は慎重に。鹿が突然、道路を横断することがあるためスピードの出し過ぎは禁物である。

シカが多い。

ならば!

スピードを落としてジワジワ走ればサファリパークのように・・・、ならなくもない?

何てったって、シカによっては逃げることすらしない個体もいるくらいだ。

もう全く人慣れしてしまっているのか?道端に留まったまま、こちら(車)が走り去るのをじっと待つような有り様なのである。

コラ!野良猫だってもうちょっとちゃんと逃げるぞ!

怒鳴りつけなどしたら、逆にシカに怒られそうだ。オマエら誰の道路だと思っているのだと。

夜の時間帯はシカの専用道路と言っても過言でないくらい。郷に入りてはシカにしたがう。ではないが、人間という立場はもはや当地においては劣勢にすら感じられる。それくらいシカが多い。いっそ、サファリパーク気分を味わいたいなんていう人は徐行運転による夜ドライブをどうぞ!

車は早川町大原野まで走った。(ここは上沢の信号からおよそ21キロほど走った地点。)

画像Aの看板をこえて200メートルで右折。つづら折りのカーブを8個越えると、正面に林道入り口があらわれた。

午前3時20分、早川町大原野の林道入り口に到着。車は林道入り口の端に置いた。

2匹いる。
運転は慎重に。
こちらが走り去るのを待っているようだ。
もはや工事現場の光にもビビらない。
画像A(早川町大原野)

入渓の準備

午前4時半、車から降りて入渓の準備。

ウエーダー、ライフジャケット、登山用ポールなどはいつもの通り。今日は、堤体前の照度を測りたいので環境測定器を持ち込むことにした。

メーカーはマザーツール。型番はLM-8102。

あとは三脚。環境測定器は三脚に固定して使用する。このことによって、同一場所における照度の変化を計測することができる。

早朝、すでに懐中電灯がなくても視界が確保できるほど明るくなっている。だが、これ以降には日の出を控えている。日の出をむかえることによって、空間はさらに明るくなることであろう。

明らかな変化が起こるであろうことが予想される。ならば、どれだけ変化したのかということを数値によって一目瞭然、わかるようにすることが狙いだ。

環境測定器の利用によって、客観的な評価ができるようになるだろう。

さらに数値の変化を記録する専用のビデオカメラも用意。こちらは、照度の変化を克明に記録するためのもの。データを残すための準備も抜かりない。

午前5時05分、入渓の準備を済ませ出発。林道入り口に置かれているバリケード横を越え、あるいて行く。

バリケード直後にはカーブミラー。道は左側に向かってカーブしている。

車を置いた位置からは見ることが出来なかったが、林道はすぐに山側の法面が崩落していた。

かなり時間の経った崩落で、直す気力みたいなものは微塵も感じられない。

崩れたら崩れたまんま。こんなところはこのまま廃道にしてしまおうかというくらいの扱いである。

幸い、人でも動物でも余裕を持って往来できるほどの幅があって、歩くのには困らなかった。

崩落によって山盛りになったガレに乗り、林道をすすんだ。

午前5時15分、林道が開けた。林道が開けた下方にはブルドーザーで成形した盛り土の土地が見える。さらに、盛り土の斜面より下がったところには川が。

盛り土を降りて川へ。川は小砂利を基調とする緩やかなチャラ瀬区間。一目見て堤体あるいは滝の堆積地だとわかる。

下流方向を向く。

堤体の袖天端を確認することができた。

堆積地を下流側に向かって歩き、左岸側袖天端に乗ると堤体の外側へ。ちょうど堤体の外側付け根部分には水裏側へと降下できるハシゴと鉄製階段が付いていた。

そのままハシゴと鉄製階段をありがたく利用させてもらい降下すると、堤体副堤上の護岸に到着。

さらに下流にすすんで、今度はハシゴも階段も無いガレ場をつたって副堤分の段差を降りた。

午前5時25分、新宮川第二ダムの堤体前に到着。

林道入り口のようす
法面の崩落
道は比較的きれいな区間も。
寒い地域はいまごろウツギが咲く。
堆積地へ。
ハシゴと鉄製階段をつたって降りる。
堤体前へ。

石の多い区間

豊富な流れ。

堤体は二段構造。主堤プラス副堤の堤体である。水は主堤から副堤の水タタキへ落下したのち約20メートルの護岸区間を経て、副堤より落下する。

落下直後、渓流区間に戻った水は蛇行する。流れの抵抗物質となる石が転がっているため、直線的に流れ下ることができない。

流れは横スライド。

まっすぐ流れ下ることができるのは、水が石の頂部を越えられたときだけ。

そんな部分もところどころにはあって、水の落ち込みを発生させている。

石の存在によって複雑化させられた流れ。

石は大きなものでは、大型重機のタイヤサイズほどもある。これらは主に、両岸斜面より供給された「落石」なのではないか?

そのほとんどは角ばった形をしていて、上流から流れついたというよりは、短時間のうちに当該場所にあらわれたという感が強い。

銘板によれば堤体の完成年は昭和52(1977年)。

堤体の完成当初は、とくに河床低下にともなう斜面の削れが起きやすい。斜面の土が削れることによって、斜面上にあった石はその場に留まることができなくなり落下する。

石のひとつひとつはコケが乗っているので(落下からは)だいぶ長い年月が経っているようだ。

石の存在によって複雑化させられた流れはつい最近できたというものではなく、何十年と続いているのだろう。

主堤
副堤
豊富な水の流れ
石が多い。
銘板
環境測定器とビデオカメラをセット。

日の出をむかえる

午前6時20分、自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

声はまったくといっていいほど響いている感じがしない。

やはり堤体前。

石の存在。

複雑化させられた流れ。

流れによるノイズ。

ノイズ発生源はあちこちに点在し、しかも豊富な水量もあいまって非常に重たいノイズだ。

ノイズが重く。では、これに対抗するための手助けがほしい。

堤体前。両岸斜面は細く狭まった谷底から、一気に開放されていくような広角V字型の斜面。渓畔林を構成する木も多くて、一見すると音を還してくれる要素に非常に豊富な斜面にも思える。

しかし、実際その場に立ってみると、斜面や渓畔林の存在以上にとにかくノイズが大きい。

空間を支配する圧倒的なノイズ。

上流より絶え間なく供給される水が豊富で、さらに片時も隙がないとなれば、音のパワーバランスのなかで声だけを露呈させていくのはやはり難しいのか。

午前6時40分、日の出をむかえた。

堤体前空間は急激に明るくなった。

自然と声が出る。

ただただ自然と声が出る。

これは快楽なのか?

はたまたストレスなのか?

いや、

ただただ、

眩しい!

そこまで深く考えない。

快楽だのストレスだの、現段階ではよくわかっていないこと。ただ、言えるのは「歌う」その場の環境が急激に変化したということ。照度計の状況から、堤体前空間が急激に明るくなったことがわかる。(照度計の画像参照。)

堤体は東向き。
立ち位置はおおよそ50~80メートルくらいまでが範囲。
無風という条件だった。
午前6時36分撮影。
午前7時24分撮影。
午前6時59分撮影。392ルクス。
午前7時04分撮影。2106ルクス。
午前7時47分撮影。10×420ルクス。(最大値)
急激に変化する明るさのなか、歌った。

きょうのゲームに対する印象

結局、この日は午前9時まで堤体前で過ごした。

堤体前の石の多さ。豊富な水量。両者によって生みだされる水の流れの複雑さ。

響きづくりを難しくさせる要素に多い堤体前であった。

音楽ひとつのためにわざわざ山へ出かけている。わざわざ山へ出かけて、道具も用意して、それなりの緊張感ももって入渓して、しかし響きが出ない。

こんなことは、よくあること。

堤体前に立てば、必ず響きが得られます・・・。と、ならないのがまた、砂防ダムの音楽の面白さ。

水の流れが生みだす自然の音に人間の声で抗ってみて、しかし、まったく歯が立たずにただただその場で時間だけが通り過ぎてゆくという無常。

そんな無常を突きつけられることがある。

ただ、今回はゲームの途中に日の出をむかえるという展開があった。

日の出をむかえたことによって、堤体前空間は急激に明るくなった。

眩しい!と感じるまでに。

空間としても明るくなっているし、水面や木の葉っぱが太陽の直射日光をうけて「輝き」を発するようになった。

信じるのは、こういった空間の明るさや「輝き」といったものがプレーヤーの心情に何かしらの影響を与えるのではないのか?ということ。

明るさの変化に並行して、ヒトの心理状態も何らかの変化をするのではないかという推論を持っている。そして、そういったものを砂防ダムの音楽が持つ優位性として、活かしていきたいとも思っている。

日の出による急激な明るさの変化。

そのことによるヒトの行動の変化。

「歌いづらくなった。」と感じる人も中にはいるのでは?

しかし、それもまた研究者としては興味深い出来事。

少なくとも、空間の明るさが急激に変化すること。そのことによって、プレーヤーの心境にも何らかの変化が及ぶ。そんなことが言えるようになるのでは?

明るさの急激な変化。

それが良い方に傾くのか?悪い方に傾くのか?

影響は人それぞれ違おうとも、明るさの急激な変化がプレーヤーの歌う。歌わない。に影響をおよぼすということが証明されれば、これは大きな発見であると思っている。

この日、森山自身においては圧倒的に歌いやすくなった。というのが所感。

これを狙って予定を組み立て、深夜便にてこの場にやって来た。

その甲斐あって。予定通りの・・・?高揚する気分とともに歌わせてもらうことができた。

これは、まさに日の出のおかげ。

健康ランド発、深夜便。

響きの面においては難しい展開が待っていたものの、ゲーム全体としては決して悪い印象もなく締めくくることができた。

いい朝をむかえられた。

日の出に照らされた朝のゲームであった。
ホソエカエデ
イヌシデ
アカメガシワ
フサザクラ
バッコヤナギ
シバヤナギ
サワグルミ
ネムノキ
イロハモミジ

屋根があるところ

ノイバラ

屋根があるところ。

演奏施設となる堤体前。より充実した環境は?と問われれば、屋根があるところだと答える。

どんな屋根がいいのか?

きっちりプレーヤーの頭上を覆ってくれ、暗がりを供給してくれるような屋根。

屋根があるときと無いときでは、歌っている感覚が違っているからだ。

屋根の素材は?

葉っぱ。

スレートでも鉄板でも瓦でもない。

葉っぱ。

しかし頼りになる。これがあるのと無いのでは大違い。

葉っぱでできた屋根に頼るのである。

屋根があるところ。

今回は、屋根があるところへ行ってきた。

北口本宮冨士浅間神社の第一鳥居

壮観

ここは屋根も柱も立派なところ。

5月23日、午前8時半、山梨県富士吉田市上吉田。

北口本宮冨士浅間神社。

国道138号線よりすぐの「第一鳥居」をくぐりぬける。

くぐった直後。

もうすでに満足感で一杯だった。

長い参道にはスギの並木が。

そのスギの一本一本。

立派なものだ。

いままで見たことも無いような太い木。太い木は社殿へとつづく参道の両脇に。

この参道もまた、立派なもの。

玉砂利の敷かれた参道。

歩くためのものだ。参道は。

しかし、歩くことがうまくいかない。

足が止まっている。

壮観だ。

壮観だから、一つ一つ確認しなくてはいけない。

見て、驚いて、感心して。柱から屋根までぐっと見上げてから前にすすむ。

もう満足感で一杯。

石像や神楽殿やいくつかの拝殿も見てまわったが、ここが一番よかった。

参道には立派なスギの木が。
見上げる。
仁王門礎石
また、見上げる。
参道と富士山大鳥居

昼食

午前11時。

昼食をとることに。

向かったのは富士吉田市上吉田6丁目。中央通り(国道139号線)に隣接する「ふじ山食堂。」。

店の東側にある開き戸の玄関を開けると、店の間がスッとあらわれた。せまい玄関で靴を脱ぎ、下駄箱にくつを入れて上がらせてもらう。

行灯のぶらさがった天井の低い座敷。隠れ家のような店だ。

壁ぎわに設置された座卓にこしかけ、メニューから選ぶ。各座卓には紙とボールペンが用意されていて、希望のメニューに印をつけて提出すれば良いようだ。

紙に○を付け、提出。

さて一息・・・、

つく間もなく。

料理は驚くほど早く運ばれてきた。

まずはそのままひとくち。

強いコシはご当地グルメ「吉田うどん」の特徴。噛めば噛むほど口の中は、小麦の味が充満する。濃厚味競争をしているような現代の麺料理とはまったく似ても似つかない食べ物である。しかし、この感じは好きだ。

それに、味はあとから足すことができる。

すりだね。

吉田うどんには無くてはならない存在。すりだね。

すりだねを入れて味付け。

この店のすりだねはサラッとしていて調整がしやすそう。自身は辛い料理がもともと苦手で、まず調整できることそのものがありがたい。

数本のうどん、箸でつまめる程度の量に、小指の爪の先・・・、よりもわずかなすりだねがあればいいはずだ。

小さな木さじの先っぽにすりだねを掬ってうどんの麺にかけてやる。すりだねは一瞬、だしに浮いたかと思うとスッと中へ沈んでしまった。

こんどはちょっと赤い粒が付いたうどん。再び口に運ぶ。

強烈な辛み!ほんとうにわずかに掛けただけにも関わらず、しっかり辛くなった。やはり利用に際しては、様子を見ながらすこしずつ足していくのがよさそうだ。

すりだねの辛み。と、うどんの小麦。

口にいれて何度も何度も噛んでたのしむ。ゆっくり味わって食べられるのがいい。

そして、店の雰囲気も人もそんな食べ方を手伝ってくれる。

味も食事もとてもいい店だった。

ふじ山食堂。へ。
店は隠れ家的な雰囲気。
吉田うどん。吉田のうどんとも。
ふじ山食堂。の吉田うどん
すりだね

ワープ

午前11時35分、ふじ山食堂。を出て、駐車場に向かう。

中央通りを北上。通りに隣接する駐車場には、ものの3分程度で到着した。

駐車場はタイムズのB駐車場。名称は「富士吉田市上吉田6丁目7駐車場」。

駐車場の解釈としては、堤体至近の駐車場。

この駐車場から歩く。

当地から堤体までは直線距離にしておよそ5キロ。この距離を富士急行線の電車を使ってワープし、約1キロまで縮める。

富士吉田市内。発達する交通網を活かした移動である。

車から入渓用の道具一式をおろす。ウエーダーは履いたまま歩けないので背負子に搭載。

フローティングベストはレインウエアで隠す。レインウエアはサイクリング用のリュックサックまで覆い隠せるもの。

こちらは背中のところに付いているファスナーを開放して使う。この機能によってレインウエアは表面積が大きくなり、衣服、リュックサックもろとも雨から逃れられる。

これが本来の使用方法。

だが今回は、リュックサックではなくフローティングベストを着た状態で使用する。

寸法の足し算。

単純に、寸法の足し算が行われるということで変わりはない。“内容物”がリュックサックからフローティングベストへ変わったというだけである。

寸法の足し算分をファスナーを広げることによって対応した。(覆い隠すことができた。)

午後0時半、タイムズのB駐車場を出発。

中央通りを北上し、富士山駅をめざす。

午後0時45分、富士山駅に到着。

午後1時24分、富士急行線、上り電車に乗り込んだ。

午後1時34分、寿駅に到着。

駅前道路はタイムズのB駐車場があった中央通りと同様「国道139号線」である。無事、電車をつかったワープに成功した。

国道139号線を北上する。

富士吉田西桂スマートIC入口交差点を通過。

富士吉田市上暮地歩道橋を過ぎたところで左折。道なりに進んだ。

午後1時50分、日月神社前踏切に到着。

ファスナーを閉じた状態。
ファスナーを開放した状態。
開放したことにより、厚みのあるフローティングベストを隠すことができた。
富士吉田市「中央通り」
富士山駅
上り電車に乗り込んだ。
寿駅
国道139号線、上暮地歩道橋

踏切

いまだかつてこんなことがあっただろうか。

なんと、遮断棒を手で持ち上げてわたる踏切の登場である。踏切は、人ひとりが歩いてわたれる程度の幅しかない。

歩行者・自転車・バイクのための踏切といったところか。非常に簡易的で、しかしながら歴とした踏切である。

このようなタイプは専門的には第4種踏切というらしい。

警報機、遮断機なしの踏切だと第4種。遮断機は富士急行が独自に設置した設備で「手動式簡易踏切遮断機」が正式名称とのこと。(同社ホームページより。)

実際に遮断棒をにぎってみると決して重いものではない。これを持ち上げられる身長さえあれば、小学生くらいの子どもでも十分持ち上げられる程度の重さである。

遮断棒を持ち上げると黄色の回転灯が点灯した。

踏切内に入って遮断棒を下ろし、今度は反対側の遮断棒を持ち上げる。

無事、線路をわたりきることができた。

手動の遮断機。利用に際しては、いちど上げた遮断棒について、また元あったように下げておかなければいけないとのこと。

遮断棒が上げっぱなしになっていると踏切内に通行人がいる!という判断になり、列車が緊急停止してしまうらしい。(看板に注意事項として書かれていた。)

人がいるのか、いないのかは電車運転手による目視と、さらに「設備」という二重チェックの構造になっているようだ。

日月神社踏切
通れる幅は歩行者、自転車、バイクくらいまで。
遮断棒を持ち上げてわたる。
遮断棒は使い終わったら下げておく。
貴重な体験であった。

堤体へ

日月神社前踏切をこえ、さらに北上する。

午後2時15分、富士吉田市上暮地7丁目2(電柱)の十字路を左折。

「白糸町会館」でもう一度左折。道なりにすすみ、消火栓の箱を見たら左折。そのまままっすぐすすむと富士吉田市上暮地7丁目5のあたりで、最終民家。最終民家を過ぎて林道に入ったところで背負子を降ろした。

午後2時35分、背負子に搭載されているウエーダーをほどいて、靴から履き替える。

フローティングベストを隠していたレインウエアを脱ぎ、フローティングベストも脱ぎ順番を逆にする。(レインウエアのうえにフローティングベストを着る。)

午後2時45分、歩行を再開。

林道沿いの祠を過ぎて、コンクリート製の橋をわたると道は二本に分岐。直進か、橋をわたるかの分岐である。

直進を選択し、林道を奥へ。

直進の林道には沢が一本並行する。この沢が本日入渓する「翁沢」であるので、沢の状態を確認しながら(魚は泳いでねぇ~か~?)すすんだ。

午後3時5分、林道わきに大きな堤体があらわれた。(翁沢川堰堤)

大きな堰堤を越えておよそ30メートル。堆積地に下りられるブルドーザー道が出現。

ブルドーザー道を下りたところで翁沢に入渓。

午後3時半、本日の目的地、翁沢堰堤に到着した。

白糸町会館
この橋はわたる。
この橋はわたらずに直進する。
翁沢川堰堤
堆積地に下りられるブルドーザー道
いつの間にやら霧雨天気に。(フタリシズカ)
入渓点

甘いノイズ

堤体を湛水する水。

水は右岸側に一筋、1メートル程度の幅で落ちている。

放水路天端の一部に集中して落ちる水。泡立ちも見られる。しかし、勢いがない。

水はゆっくりと水タタキに着地。着地のあとは、縦およそ20メートルの護岸区間をゆったりとした速度で転がる。

護岸区間のおわりには落差30センチ程度の落ち込み。コンクリートの床でコロコロ横幅を広げた水は渓流に回復後、収束に向かう。

収束は徐々に。

川は夏みかん~大玉すいかサイズの転石からなる極浅区間から、少しずつ幅を狭くしていく。

しかし、いつまでも流れは浅い。

転石に乗ることができないほどの浅い流れ。どうにか乗ることが出来ているのは、腐植に埋もれた低い石で、これを越えるときにわずかな落下をしている。

わずかな落下。

わずかな衝撃。

わずかな衝撃によって、水はノイズを発している。しかし、そのボリュームは微々たるものである。

こんな小さなノイズでは脅威にはならない。もちろん、それは歌のもととなる声とのバランスを言っている。

いま、この場で歌うことに関して何も危惧することはない。

ただただ、この甘い感じのノイズの中で歌えればいいのである。

翁沢堰堤
落水は右岸側に一筋。
ゆっくりと水タタキに着地。
護岸区間から渓流に戻るところ
流れは浅い。

変えたくなる

立ち位置として設定した地点は堤体からおよそ40メートル。

自作メガホンをセットし、声を入れてみる。

声は立ち位置の前後左右でよく鳴っている。林の奥に深く響く感じが心地よい。

響きを作っているのは堤体前とそのまわり広範囲に生える樹木たち。渓畔林域、渓畔林域外の樹木。

樹木から樹木への声の伝搬。ここは枝の多い樹種(ケヤキ)が多くて、より効果的に響いていると思う。

樹木から受けられる恩恵だ。

こうなると、

変えたくなる。

遊びをさらに追求したくなる。

悪だくみは、設定する立ち位置を変えてみるということ。

再度、設定した立ち位置は70メートル付近。ふたたび声を入れてみる。

こちらもよく響いている。

立ち位置からは堤体本体が見えにくくなった。プレーヤーの上流延長線上にアブラチャンが何本も生えているからだ。

中低木層のアブラチャン。

さらに高木層にはケヤキ。

渓畔林域外のスギ。

堤体本体が見えにくくなっているだけでなく、堤体前が全体的に木々に覆われていて暗い。

光は上空からのものも、霧雨の空から飛び込んでくる横方向からのものも完全にシャットアウトしている。

暗がりの空間にワワッと声を入れ・・・。その響きを楽しむという遊び。

かなり楽な感じで入れてみても、約束したように声が返ってきてくるので安心して歌うことができる。

距離はおよそ40メートル。
風は無風
堤高12メートル。放水路天端までだと約10メートル。
方位は北西。
アブラチャンの木(画像中央)
堤体前は暗がりになっている。
これは約40メートルの立ち位置。

安心

結局、この日は午後6時まで堤体前で過ごした。

今回は、非常に樹木に豊かな堤体前で遊ぶことができた。

その木の多さから、暗がりができたり、堤体本体が見えにくくなったりするほどの空間であった。

堤体前という場所を専門に音楽的優性を求めて歩きまわっているが、「響き」のみならず「歌いやすさ」という点においても、やはり木の多い空間は優れているなという印象をもった旅であった。

高木層の木、中低木層の木。ともに充実した堤体前は屋根があった。

屋根はプレーヤーに、安心をもたらした。

屋根の素材は?

葉っぱ。

スレートでも鉄板でも瓦でもない。

葉っぱ。

しかし頼りになった。これがあるのと無いのでは大違い。

屋根があるところ。

葉っぱでできた屋根に頼ったのである。

これから夏に向けて、樹木は葉っぱの量が最大化する。葉っぱの量が最大化するなかで歌という楽しみも最大化していきたい。

響きに、歌いやすさに、安心に。樹木のもたらす機能は数多い。今夏もまた樹木に頼るシーズンになりそうである。

葉っぱの屋根。
アブラチャン
コクサギ
キブシ
ケヤキ(樹皮の白い木)
ハリエンジュ(ニセアカシア)
フサザクラ
ミズキ