
なにも難しいことはない。
演奏施設となるのは砂防ダム等堤体類。
音楽専用設計ではない「堤体前」という空間で目指すもの。
絶対に準じるべき理論が構築されていないなかで、できるだけの努力をする。そして、できるだけ良い音楽をする。
実践に際しては「できるだけ」という思いとともに一番良い場所が探られる。
わからないながらも一生懸命さがしてみた場所。
その場所でおもいきり歌ってみた。
これで十分。
最良の選択はできている。
答えはだれかが持っているというより、プレーヤー自身に委ねられていると言えそうだ。
プレーヤー自身の感覚によって、良い・悪いが決められる。
プレーヤー自身によるプレーヤー自身のための音楽ができればいい。
ある意味、幸せな時代を生きているとも言えるのではないだろうか?
そんな身勝手が許されているのだから。
みんながわからない。
どうするのが正解だと言える人物がいない。
メソッドがない。
やっぱり、わからない。
わからなくて、
楽しい。

タイミング
7月5日、午前11時。山梨県中央市下河東「イオンタウン山梨中央」。
店内に入った。
ランチタイムに合わせて来たつもりであったが、店内はもうすでに賑わいの様子。おかしいな。なんて思ったところ、よくよく調べてみたら店は午前9時開店(土日のみ。平日は午前10時開店)とのことであった。
お好きな席へどうぞ!とのことで、テーブル席に腰掛けた。
卓上にならぶ調味料。それにも増して一段と存在感があるのはタッチパネル。最近はどこの店もコレばかりだ。
お好みのメニューを機械が聞いてくれる。なにが食いたいだ?どんな味がいいだ?麺が硬いだ?やわらかいだ?
人間の欲を機械に処理してもらう。そのために、われわれ人間側が機械相手に感情表現をする。なんとも現代的なやりとりだ。
普通でいいな。
麺は大盛りも出来るという。
大盛りなんて恥ずかしくて言えないよ、と。そんな同士も、タッチパネルなら臆することなく気持ちを伝えられるだろう。
注文を済ませ、到着を待った。
店内にはなぜか柱が多い。景観としてはちょっとうるさいくらいに何本も立っている。
壁やカーテンほどの完全な遮蔽性は無いものの、なんとなく向こう側が見えづらい。どんな人が食べているのかパッと見ではわからない。
今、この瞬間、この空間に自身の知り合いがいたとしても、すぐに気がつくことはできないだろう。
見えそうで見えない、絶妙な壁を隔てて同じ空間にいる。
まあ、それは“向こうから見たこちら”にだって言えることなのだが・・・。
注文の品が運ばれてきた。
塩ラーメン。
さっそく手を付ける。
ウマい!
自分で選んだだけある。一番ウマいものを選んだつもりだ。
いっしょに頼んだギョーザもいい。こちらは何も付けずいただけるほど。
なんでこんなにウマいのか?
やはりこの答えにたどりつく。
タイミング!
やっぱり食べ物はタイミングだ。
食べたいと思ったときに、食べたいものが食べられること。
これが一番。
一番ウマく食べる方法。
タイミング。
タイミングが最良の選択。

サウナ
午前11時35分、車に乗り込み移動。
広いショッピングモールの駐車場を注意しながら抜け出し、ものの2~3分で到着。
店の名は「湯殿館(ゆでんかん)」。日帰り温泉施設である。
ショッピングモールからススーッと抜け出してきて、あっという間、目と鼻の先ほどしか離れていない。
この不思議さ。
甲府盆地の平坦の上に住宅街やら商店街があって、そこに突如、日帰り温泉施設が出現するという山梨ならではの光景だ。
ビバ山梨!!
アパートのとなりにある駐車場に車を停め、建物に向かった。入り口は自動ドア。ドアには今月の定休日を示したカレンダーが貼られている。
火曜日だけ×印が付いている。火曜日は定休日ということらしい。
きょうは日曜日。
館内へ入った。
下駄箱に靴を入れ、カウンターで受付をしてもらう。前払いで会計を済ませると、小さなバッグをわたされた。
バッグのメッシュ越しに中身が見える。タオルだ。どうやら入館料はタオル込みということらしい。
マイタオル持参も、こちらでは要らなかったようだ。
男湯へ。
浴室はまあまあ広い。メインとなるジャグジー付きの浴槽が1。ジャグジーより少し温度の高い浴槽が1。
水風呂は2つある。正方形の深めの水風呂と長方形の浅めの水風呂が1つずつ。サウナは水風呂のすぐ横にある。
サウナはベンチが3段になっていて、定員はおおよそ12~15人ほどか。しっかりとした熱量のサウナで“にわか”にはけっこうキツかった。専用の帽子を被ったプロの姿もあったので、品質は確かであると思う。まぁ、にわか程度の自力ながら、テレビを見ながらけっこう頑張ったつもりであるが・・・。
ほか、浴室奥のとびらを開けると露天風呂に行くことができた。露天風呂は浴槽があまり大きくないながら、外気浴のスペースもある。これからの暑いシーズンには良さそうだ。
午後1時15分、着替えを済ませ、1階と2階のフロアを探検したのち湯殿館をあとにした。








急きょ買い物
午後1時25分、ふたたびイオンタウンに戻ってきた。
急きょ買い物をすることにしたのだ。ドラッグストアならきっと置いてあるはず。
広い駐車場のいちばん北東側、「ツルハドラッグ山梨中央店」へ。
慣れない店で買い物をすることはリスクをはらんでいる。
店員に場所を尋ねるということが好きじゃない。このせいで買い物にメチャクチャ時間がかかるときがある。
どこに何が置いてあるのかが分からなくて、それでもぐるぐる探しまわって、迷い子になる。そんな状態になっても、とにかく自力で商品をさがしだす。
たかが買い物。
なのに疲れてしまう。
時間的ロスを生みながら、さらに疲れてしまうという「一石マイナス二鳥」の買い物である。
しかし幸いかな。今日はお目当ての品をすぐに見つけることができた。モノは店内入ってすぐのところに陳列されていた。
似ている。
露天風呂に吊るしてあった・・・。あれと似ている。
レジで会計を済ませ、店を出た。




外観の・・・。
午後1時40分、イオンタウン山梨中央の駐車場を出発。笛吹川をわたるため「豊積橋」を目指す。
新山梨環状道路の高架下を走り、山梨県道29号線を使って南下。富岳運輸山梨中央ロジパークまえを通過し、豊積橋を渡った。
中央市に来たなら!
「豊積橋南」の信号交差点で左折し、国道140号線を東進する。
午後2時、目的地に到着。
あれ?
ダメか。
まぁ、いいや。
この巨大な工場が見られただけでいい。これは工場見学だ。外観の・・・。
車を再発進させた。
さきほど走って来た道をもどる。
西へ。
そのまま、「豊積橋南」の信号交差点(←さきほど左折してきたところ)も通り越す。
西へ。
走ることおよそ20分。距離にして10キロ弱。(いずれも工場起点。)
到着したのは「シャトレーゼフォレストモール富士川店」。
正規品だよね、やっぱり!
アウトレット品ねらいで失敗した。失敗したままでは引き下がれず、急きょ至近の店舗に助けを求めた恰好である。
おかげで?ケガの功名。
いろいろな種類のものを買うことができた。
渓行のお供をゲットできた。











堤体に向かう
午後2時55分、堤体に向かう。
さきほど走って来た道をもどるように進んだ。
午後3時15分、再々の「豊積橋南」の信号交差点。
ここで右折し南進する。
1.2キロほど走ると橋があらわれた。橋の名は「作興橋」。
作興橋はわたらず右折する。
また橋だ。
こんどは「新作興橋」。“新”が付いた!
新作興橋もわたらず通りすぎる。
また橋だ。わずか100メートルちょっとの距離に橋が3本も架かっている。
この橋は「大鳥居橋」。
大鳥居橋をわたる。
道は小高い丘を越え、しばらくすすむとシルクの里公園の一帯。
公園の一帯を取り過ぎると、やがてあらわれたのが「千本桜登山道」の看板。看板にしたがい右折する。
右折後、500メートルで「日本三名峰展望遊歩道山之神・千本桜コース登山者用駐車場」。
ここはトイレ(ユニットタイプ)がある。
さらに400メートルで林道ゲート。ゲートを開け、車を通過させたのち、ゲートを閉めた。
再度、車を発進する。
直後には駐車スペース。
駐車スペースに車を駐車した。
午後3時45分、車から降りて、入渓の準備。
ウエーダーを履き。
そうだ!
あれあれ・・・、
「虫コナーズ」。
虫コナーズを身につけ、準備を完了させた。
午後4時05分、堤体に向かう。堤体は駐車スペースからものの100メートル程度の距離。すぐに到着することができた。










荒廃
堤体前は小滝も含めて3段構造。
最上流側には谷止工があり、堤高はおよそ5メートル(水通しまでの高さ)。
そこから下流15メートルの地点に落差1メートル程度の小滝。さらに下流18メートルで、堤高1メートル程度の段差工。
メインとなるのは最上流部5メートルの谷止工。
水は湛水。泡立ちを伴いながら、水裏斜面に激しく擦りつけるような水。水は放水路天端全体のおよそ左岸側半分をつかって落ちている。
のこりの斜面、右岸側部分は苔壁。苔はアツブサゴケ、スギバゴケ、ジャゴケのなかま。シダも生えていて、シケシダ、ヤブソテツ。
水は5メートルの谷止工を離れたあと、小滝に向かう。
河床は荒廃。砂泥質の河床は、夏みかん~大玉すいかサイズ~キンボールサイズほどの石が転がる。さらに倒木、流木、折れた枝葉が混じる。
右岸は石積み風の護岸。対する左岸は荒れ放題の林。右岸は護岸上、スペースを確保するために張り出している。スペースには、テーブルとベンチを置いてミニ公園風に仕上げている。
張り出しにより、流路はせまい。
そのせまい流路の河床。見れば、右岸の護岸際に石組み(景観用に組まれた石組みなのか、落石のたまり場なのかは不明)が見られる。石組みのすき間からはケヤキの幼木が生え、本数としてはさほど多くないものの、暴れ枝調でごちゃごちゃしている。
河床をさらに下って、小滝より下流区間。こちらも荒廃している。河床はやはり砂泥質に転石で、倒木も見られる。倒木は朽ちた破片をばら撒き、荒れた河床をいっそう煩雑なものにさせている。
散らかる谷止工の下流区間。荒廃。お世辞にもキレイとは言い難い状況だ。個人的にはこんな渓流区間も嫌いではないのだが。







いい場所が見つかるまで
設定した立ち位置は堤体から41.5メートルの地点。段差工より下流の区間は河床に降りられるようなスロープがあり、そのスロープ上に立った。
自作メガホンをセットし、声を入れてみる。
鳴らない。
立ち位置の目前にある段差工。この段差工の落水ノイズが大きい。
ノイズ発生源を目前にして、響きが聞こえづらくなっている。
ならば・・・、と段差工に乗ってみる。堤体との距離は32メートル。あまり印象の良くない距離だ。
ふたたび声を入れてみる。
嫌な予感は的中。鳴らない。
この距離では堤体との距離が近すぎる。
それではと、立ち位置をいちばん下げておよそ45メートル。
段差工の落水からは、空間にしてもうワンクッション離れることができた。
声を入れてみる。
しかし、ここも良くない。
立ち位置のひだりななめ前方すぐに壁がある。スロープを形成するための護岸だ。
さらに後方を見る。
やっぱりここか・・・。
もうさらに20メートルほど下がったところに林道が見える。
林道上に上がることにした。
スロープを駆け上がり、林道上へ。
なんともスッキリ。河床に立っていたときに存在していた護岸も荒れ放題の林も、ここではきれいさっぱり無くなっている。
未舗装の道路がきれいに敷かれているだけだ。
メガホンを使って声を入れる。
ようやく。
ようやくここで響きを聞くことが出来た。






自分自身に合った場所さがし
結局、この日は午後7時まで堤体前で遊んだ。
立ち位置をあれこれ変えることになったが、最終的にはキッチリ鳴らせる場所を見つけることができ、よかった。
堤体前の空間の形状は、その堤体ごとに違っていて、ゆえに声の響きかたも変わってくる。
ひとつとして同じ堤体前が存在しないなかで、その場所ごとに一番いい響きが得られる立ち位置をさがす。その作業が必要になってくる。
毎回、計測している堤体との距離。
こちらは(過去の実績をもとに)だいだいこれくらいだ・・・。という目安になるもの。
その数値が参考になるということは言うまでもないが、では、毎回いい数値でやらせてもらえるかといえば、そうもいかないのが堤体前というところである。
ノイズ発生源が近い。
それではとノイズ発生源を避けたら、堤体との距離が近すぎる。
壁がある。
壁が近すぎる。
立てないほどの水の深みがある。
堤体本体が見えにくい場所。
立木が邪魔をしている。
倒木が邪魔をしている。
大きな石が邪魔をしている。
いいところにある石。しかし乗りづらい石。乗ることができない石。
下流に堤体があって、これ以上さがれない。
川の流路が蛇行しすぎて、堤体との距離を確保できない。
ここだ!とおもった立ち位置がありつつも、その場に立たせてもらえないということが発生する。
やむなく場所を変更し、声を入れてみる。だが、
?!
いや。
ここも違う。
と来れば、またしても場所の移動。
いいところが見つかるまで移動。
いいところが見つからなければ「場所を変えては声を入れ」の作業のくりかえし。
もう!
なんて言いつつも・・・。
じつはこれが楽しかったりする。
どの堤体前も、どちらかといえば立ち位置に制限のかかるところのほうが多い。
そのような状況下、探るのはプレーヤー自身にとっての一番いい場所。
自らの足で見つけ出した、いちばん良い場所。
ベストポジション。
自分専用の立ち位置を見つける。このことに、楽しさがあると思っている。
探すのはプレーヤー自身の体の大きさ、声の大きさに合った場所。
自分自身に合った場所さがし。
退渓をするそのときには、もはや感謝の気持ちすら生まれてくる。立ち位置としたその場所に対して。
思い出は、あの、あそこの堤体前に立って歌った。なんて生易しいものでは無く、もっと具体的なものになるだろう。
あの石のうしろの・・・、ケヤキの大木の下の・・・。
具体的な立ち位置まで憶えることになる。
逆にいえば、そのくらい立ち位置というのは重要で、実践に際しては「できるだけ」という思いとともに一番良い場所が探られる。
わからないながらも一生懸命さがしてみた場所。
その場所でおもいきり歌ってみた。
これで十分。
最良の選択はできている。
正解はわからない。
みんながわからない。
どうするのが正解だと言える人物がいない。
メソッドがない。
そんな時代を生きている。
やっぱり、わからない。
わからなくて、
でも、
探してみるから楽しい。
歌ってみるから楽しい。






